転生したら帆波ちゃんだったので、綾小路君の相棒になってみようと思います 作:レイラレイラ
「そういえば、今日は水泳の授業があったよね。清隆くんはどれぐらいの順位狙ってたりする?」
「オレは目立たないようにしたいからな。平均あたりを狙うつもりだ」
「あはは…………。予想はしてたけど、本当に平均狙いかー」
清隆くんと一緒に登校していると、この時期には異端とも言える水泳の授業の話を私は切り出した。
彼の方針は原作と全くと言っていいほど変わらなくて、苦笑してしまうくらいはしょうがないと思う。
まあそれはそれとして、水泳の授業ということは池くんとか山内くんを初めとした男子たちのはしゃぎ様を見て女子の多くが授業を見学してしまうのは火を見るより明らか。
この件も原作でクラスポイントを削った要因なんじゃないかなって私は考えてる。
もちろん私はずっと前から知っていたから、そのあたりの対策はすませてるよ。
須藤くんに頼んで男子の大多数に牽制をかけてもらったんだけど、それだけだと強硬派(仮)が女子や須藤くんの目を盗んで動きを見せるかもしれない。
だからここは私が直接動くことになったんだよね。
女子が嫌がるからやめてって言うのは簡単。
でも、私はあえて違う方法を取ることにした。
水泳授業の前日に池くんと山内くんの所に行って、こういう話題をふってみたの。
『中学三年生の時から男子の視線が集まるようになった』って。
私の胸が大きく育ってきたのも同じ時期だっていうのは別として、この話題をふった理由は遠回しに『女子はそういう視線を嫌う』っていうことを伝えたかったから。
効果はこれ以上ないほど如実に現れて、池くんたちは話をしている最中ずっと気まずそうにしていたね。
あとは決定的なとどめの一言。
『池くんも山内くんもいい人だし、私たちも安心して泳げそうだね!』
言外に女子から信じてるよって伝えれば、それが性犯罪者でもない限りは止まってくれると思うの。
想像通りに池くんたちからは、そういう目で見たりしないっていう文言を引き出せた。
しかも女子である私の前で宣言したから、もしもこれを破れば明日以降の立場が危うくなるのは必至。
こんな脅すような手段は取りたくなかったけど、ここは心を鬼にしてなんとか実行に移した。
それでせっかく築いた連帯感を崩したくなかったしね。
ちなみにその日、清隆くんからは『おまえマジか』みたいな目で見られた。
清隆くんに少し引かれたのはショックだったけど、これもクラスのためだからとひとまずは飲み込んだ。
「それにしても、何でこんな中途半端な時期に水泳の授業があるんだろうな」
薄々感づいているくせになんて言えるわけもなく、だから当たり障りのない反応をした。
「私もわかんないや。でも、泳いでいて損はないんじゃないかな」
「そうだな」
「ねえ、帆波ちゃんって何かスポーツやってたりする?」
「え? どうしたの急に」
桔梗ちゃんが水着に着替えてる途中でいきなり聞いてきたから、私はびっくりして思わず聞き返してしまった。
「帆波ちゃん細身なのに鍛えられてるのが分かるっていうか、普通の人とはちょっと違う感じがして」
そういうことね。
純粋な疑問だったみたいで、気を悪くしたらごめんねって謝られた。
別にそんなことで怒ったりしないのに。
でも、正直に話すわけにもいかないんだよね。
それを言っちゃうとどうしてもホワイトルームのことは避けて通れないから、悪いとは思いながらもここは誤魔化すしかない。
「中学の時まで陸上とか、あとはテニスもやってたかな。だからかな、今でも朝に走る癖が抜けなくて」
「そうなんだ。帆波ちゃんって、あんまりスポーツ女子ってイメージないから驚いちゃった」
「にゃはは。よく言われるよー。中学でも上位には入ってたのに、なかなかそういうイメージが定着しなくって」
桔梗ちゃんは先に着替え終わったみたいで、話を切り上げてプールへ駆けていった。
滑って転ばないといいけど。
「一之瀬さん」
さっきまで一向に話に入ろうとしなかった堀北さんだったけど、桔梗ちゃんがいなくなった瞬間話しかけてきた。
そんなに桔梗ちゃんのこと嫌いなのかな。
「何かな? 堀北さん」
「あなたのその胸はいつから?」
「ふぇっ!? 何時って…………中学3年のあたりかな。どんどん育っちゃって。それがどうしたの?」
あれ、堀北さんがこの話題をしてくるのはもう少し先だったような…………
あ、そっか。
こうして同じクラスになってるわけだし、聞いてくるなら妥当なタイミングだよね。
「いえ、理解したわ。あなたが持て余し気味にしている理由が」
あんまり理解する必要がないと思うけど。
それに持て余すって、確かにまだ使う予定のない胸だけどね。
それに清隆くん以外に触られたくないもん。
「それともう一つ。これは個人的な感想だけど、あなた意外とムッツリなところあるわよね」
「にゃっ!?」
確かに今朝清隆くんの水着姿想像したよ!?
服の上からだと分かりにくいけど、かなり仕上がってる感じの筋肉とか鮮明に思い浮かべてたよ!
まさか顔に出てたとか!?
「それじゃあ、お先に」
言うだけ言って歩きだす堀北さん。
ムッツリじゃないもん!
好きな人でそういう想像しちゃうのは普通だから!
普通…………だよね?
「どうした帆波。随分と落ち込んでいるようだが」
室内プールにダントツで遅れてきた私に清隆くんが声をかけてくれた。
やっぱり何だかんだ優しいよね。
「…………清隆くん。私って思ってること顔に出てたりする?」
「堀北に何か言われたのか」
さすが清隆くん。
彼が特別鋭いのか、あるいは私が分かりやすいだけかも。
「堀北が特別なだけだと思うぞ。帆波が言うほど分かりやすいってことはないんじゃないか」
「本当にそうかな。何か自信なくなっちゃった」
「…………今日の放課後にカフェに行くか? 愚痴ぐらいなら聞くぞ」
清隆くんなりの不器用な気遣いなのかな。
私を元気づけようとしてくれてるんだと分かって、おまけにそのデ、デートに誘ってくれてるわけでいつまでも落ち込んではいられないよね!
「約束だからね! 放課後すぐに!」
「ああ」
「よーしお前ら集合しろー」
言い方は悪いけど、ゴリラの擬人化みたいな先生が生徒たちに呼びかけてきた。
「思ってたより見学者は少ないな」
私が根回ししておいたからね。
さすがに軽井沢さんと愛里ちゃんは無理強いはさせるわけにはいかなかったから、見学組に回ってもらった。
ちなみに愛里ちゃんとは部屋が隣同士だから、色々と話す機会も作りやすくて仲良くなれたと思う。
そのおかげか、少しは顔を俯くことも少なくなってきたと思う。
愛里ちゃんが雫ちゃんだってことも知ってること、それを絶対に秘密にすることを条件に部屋にあげてもらったりもしたなー。
思い出を振り返っている間に、泳げないのを克服させる宣言は終わっていたみたい。
たまに考え事に没頭しちゃうのが私の悪い癖だよね。
なんとか直さないと。
準備体操を終えて、軽く50mを泳ぐことになった。
いきなり全力を出すのもあれだから、ひとまずタイムのことは考えずに泳ぎきった。
ちょうど一巡したタイミングで、先生が男女別50m自由形を始めると告げる。
優勝者には5000ポイントが特別ボーナスとして支給されるということもあって、ほとんどの人がやる気になっていた。
ポイントは多いに越したことはないし、そろそろ本気を出しちゃおっかな。
「はぁ…………はぁ…………上出来以上かな…………」
「…………ほう。なかなかやるじゃないか、ビューティフルガール」
タイムは23秒09。
ぎりぎり高円寺くんのタイムを上回る形になって、クラスが騒然となった。
さらには女子の水泳世界記録を上回っていたこともあってか、クラスメイトたちからは称賛の嵐が降り注いだ。
男女総合一位を記録したことも加えて、先生からは10000ポイントの特別ボーナスをもらったよ。
これで外食を出来るぐらいには余裕が出来たね。
放課後は清隆くんとパレットっていうカフェに行っておもいっきり楽しんじゃった。
私の方がポイントに余裕もあるから奢るよって言ったんだけど、こういう時は男に格好をつけさせてくれって清隆くんに返された。
本当に無自覚にそういうこと言うし、何もしなくてもカッコいいんだから気にしなくてもいいのにね。
次は私が絶対に奢ってあげるんだから!
本作では愛里救済を目指していきます!
次回は小テストと5月始め回を予定しています
帆波(憑依)に『■■のホワイトルーム生』的な二つ名をつけるとしたら
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慈愛のホワイトルーム生
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偶像のホワイトルーム生
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単純にホワイトルーム生No.2