転生したら帆波ちゃんだったので、綾小路君の相棒になってみようと思います 作:レイラレイラ
原作だと平田くんが勉強会を開くと宣言する予定の一日前、私と愛里ちゃんに清隆くんは食堂に集まって作戦会議を開いていた。
もちろん会議の内容は赤点組の救済をどうするかというもの。
「というわけで、二人からも案を募りたいんだけど何かあるかな?」
「案と言われてもな…………やっぱり勉強会を開くしかないんじゃないか?」
「私もそれ以外思いつかないよ…………」
攻略法がわかっているのに敢えて二人にこんな質問をしているのは、私なりの攻略法を違和感なく話す土台を整えるため。
清隆くんは中間テストの範囲が変更になってから過去問の入手に動いていたけど、私はそれを知っているからわざわざ的外れな範囲を勉強させることはない。
だからまずは、二人に考えを話した上で納得してもらって私を中心に動いてもらおうと思ってる。
Bクラスから赤点は一人も出させたくないし、何よりこれは意識改革の仕上げにもなるからね。
動かない手はない。
「もちろん勉強会はするよ。でも、その前にやることがあるの」
「勉強会の前にすることって、テスト範囲の確認とか?」
「愛里ちゃんの言うことも当たらずとも遠からずかな。実は陸上部の先輩に聞いたんだけど、1年生の中間テストの範囲はね…………」
「ぎりぎりになって変更されるかもしれない、か?」
さすがは清隆くん。
正解だというように私は頷くと、清隆くんは少し考える仕草を見せてからハッとなったように顔を上げた。
清隆くんも私が考えた攻略法に行き着いたみたいだね。
「ちょうど頼れる先輩に心当たりがあるんだよね。その人に過去問を売ってもらおうと思ってるの」
「確かにそれなら高得点は取れるかもしれないけど、必ずその問題が出てくるとは限らないんじゃ」
「確かにね。でも、やってみる価値はあるんじゃないかな。もしも範囲が変わらなかったらそれでいいし、変わってもこっちにとっては好都合なんだから」
愛里ちゃんの疑問は正しいけど、過去問の内容は今の二、三年生が一年生の時に受けた内容と全く同じものだから心配はいらない。
テスト範囲変更後に清隆くんが過去問を売ってもらって、その内容と一文字も違わなかったことからもそれは間違いないと考えていいと思う。
「帆波の言いたいことはわかった。その考えを否定するわけじゃないんだが、少しだけ問題があるんじゃないか?」
「問題って?」
「首尾よく過去問を手に入れたとしてだ。すぐにその問題をさらしたら緊張が緩む可能性が高いということだ」
清隆くんがの言う問題は、原作で彼自身があげたもの。
確かに清隆くんがしたようにテスト前日に明かすべきかもしれないけど、私は違うアプローチを取ることにした。
「だったら、過去問を過去問だって教えないまま勉強に使ってもらったらどうかな?」
具体的に言えば、私がテスト対策用に考えた問題という風にみんなには伝えればいいんじゃないかな。
「なるほどな。それなら緊張感を保ったまま過去問の内容を覚えさせることができる」
清隆くんも納得してくれたみたいで、もう彼からは何も言われることはなかった。
「作戦会議なのに、私の意見だけ一方的に言っちゃってごめんね」
「そんなことないよ! 私なんてろくに意見も出せなかったし、こっちこそごめんなさい!」
「にゃはは。気にしないでいいよ。愛里ちゃんは自分で考えて、私の意見に疑問をぶつけてくれたじゃない。一ヶ月前からしてみれば大きな進歩だよ」
「そ、そうかな…………」
本当に愛里ちゃんはかなり成長してる。
クラスメイトとも目を合わせて話せるようになってきてるだけじゃなくて、伊達眼鏡も教室では外すようになった。
私と一緒にいることが多いからか、人の視線にも少しは慣れたみたい。
なんだか妹の成長を見守るお姉ちゃんの気分だな。
前世では当たり前に見ていた光景だったけど、今世ではほとんど一緒にいてあげることが出来なかった。
「…………帆波ちゃん大丈夫?」
心配そうに私の顔を覗き込んでくる愛里ちゃん。
顔に出ちゃってたのかな。
気をつけないと、みんなを不安にさせちゃうもんね。
「心配してくれてありがとう。でも、私は大丈夫だよ」
「本当に? もし辛かったら私に言ってね。私なんかじゃ頼りないかもしれないけど」
そんなことないよ。
そう言ってくれるだけでも、私にとっては充分に救いになってるもん。
「そうなったら遠慮なく頼らせてもらおうかな」
「自分で言っておいてあれだけど、なんだかプレッシャーだな…………」
せっかくいいこと言ってたのに、良い感じに膨らんでいた自信が一気に萎んじゃったみたい。
まだ成長の余地ありってことで、今は及第点にしておこうかな。
「帆波」
作戦会議という名の私の意見表明を終えてから、会話に割り込まなかった清隆くんが口を開いた。
「実に今さらなんだが、堀北にこの事を言わなくてもいいのか? 後で文句を言われるのは目に見えているだろ」
…………すっかり忘れてた。
いくら今の堀北さんでも、この作戦に利があると分かれば納得はしてくれると思うから大丈夫…………だよね?
「報告は私の方からしておくね。堀北さん抜きで作戦会議を開いたことには色々と言われるかもしれないけど」
「いや、作戦の立案から過去問の入手まで帆波にさせてしまっているから報告はオレがする。佐倉は帆波の手伝いをしてやってくれ」
「う、うん。わかった」
愛里ちゃんにも役割を与えて、自分だけ何も出来ていないっていう不安を清隆くんがうまく取り除いてる。
さすが周りをよく見てるね。
「なら放課後に作戦を決行だね! 絶対にみんなで中間テストを乗り切ろう!」
教室に帰ると清隆くんが堀北さんに報告していたけど、ぐちぐち文句を言われていた。
そして翌日を迎えた。
みんな変わらず真面目に授業を受けているみたいで、ひとまずは安心かな。
動き出すなら今しかない。
「そろそろ中間テストも近くなってきたから、今日から勉強会を開きたいと思うんだ。これは強制じゃないから、参加したい人だけで大丈夫だよ」
「もちろん参加させてもらうよ。僕もちょうど勉強会を開きたいと思っていたところだったしね」
平田くんの了承を筆頭に、続々と参加の表明を示す生徒たちが増えてくる。
「みんなやる気みたいだね。早速だけど、今日の5時からこの教室でテストの日まで毎日2時間やらせて欲しいの。途中で抜けてもいいし、部活とかどうしても外せない用事があったら無理せず言ってね。こっちで調整するから」
あくまでも強制しない。
やる気のあるなしに問わず、強制という言葉を使うだけでも良い印象を持たれなくなってモチベーションの低下に繋がりかねないから。
「参加しない人も、今から配るプリントは受け取って欲しいんだ。気が向いたらでいいから一通りやってみてくれると嬉しいかな」
先頭の人に列の人数分のプリントを渡して、それをまた後ろの方に回していく。
全員にプリントが行き渡った時点で、一度切った話を再開する。
「このプリントに乗ってる問題はテスト対策のために考えたもので、これが出来るようになれば間違いなく高得点が取れると思う」
「おいマジかよ!」
「なにそれ、超ラッキーじゃん! 一之瀬さん頼りになるわ!」
事情を知らない人たちからあがる喝采の声。
過去問の問題をそのまま乗せただけだからちょっと罪悪感。
ちなみに過去問は茜先輩から1万ポイントで売ってもらった。
「一之瀬さん、ちょっといいかな?」
やっぱり来たね平田くん。
最初に気づくのは彼だと思ってたから、とくに驚くことはなかった。
「このプリントの問題なんだけど、ほとんどが今回のテスト範囲からずれてるよね? これはどういう意図があってのものなのか、よければ教えてもらえないかな」
教室に広がる動揺の空気。
これも想定通りだね。
「これは先輩から聞いた話なんだけど、先輩たちが1年生の中間テストの時に突然範囲が変更になったって聞いたの。だから変更後のテスト範囲を教えてもらって、そこからテストに出そうな問題を作ってみたんだよ。不安にさせちゃったならごめんね」
「いや、こちらこそごめん。知らなかったとはいえ、一之瀬さんの気遣いをむげにする言い方になってしまった。お互い様だよ」
しっかりと理屈の通った説明がされたことで不安が払拭されたようで、もう一度やってくる期待と羨望の眼差し。
そういうのは慣れてないから、ちょっとくすぐったいな。
「もしも分からないことがあったらお互いに解ける問題教えあったり、成績上位の人に聞きに行ったりしてもいいからね。私や平田くん、堀北さんにも遠慮なく聞きに来ていいよ」
「ちょっと一之瀬さん! 何を勝手に」
「え? 堀北さんが教えてくれるの?」
「すっげえ! 豪華ラインナップじゃんか!」
堀北さんの訴えはあっという間に喧騒に掻き消されて、こっちに届くことはない。
もっとも聞こえていたとしてもやめるつもりはないけどね。
堀北さんには多少強引にでも人と関わることが必要だろうし、ある程度の荒療治だと思って諦めてもらおうかな。
「それじゃあ放課後にね! みんなでこの中間テストを乗り切るために頑張ろう!」
示し合わせたように清隆くんと愛里ちゃんも、私と同じタイミングで教室を出ていく。
廊下を走るわけには行かないから、注意されない程度に早歩きで。
食堂に着くまでの間、堀北さんの圧を感じながら歩いた。
愛里ちゃんもBクラスの名に恥じないほど有能になっています
帆波(憑依)に『■■のホワイトルーム生』的な二つ名をつけるとしたら
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慈愛のホワイトルーム生
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偶像のホワイトルーム生
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単純にホワイトルーム生No.2