転生したら帆波ちゃんだったので、綾小路君の相棒になってみようと思います 作:レイラレイラ
個人的には帆波(憑依)も崇拝の対象になると解釈してます
それはそうとよう実アニメ続編おめでとうございます!
「…………眠れない」
愛里ちゃんが帰ってから数時間経って布団に入ったものの、どうしてか少しも眠気が来なかった。
ホットミルクでも飲めば寝つけるかなと思って冷蔵庫を開けようとしたんだけど、ハンバーグを作るのに牛乳を使いきっていたのを思い出して途中で止めた。
このまま諦めて布団に入ればいつかは寝られるかもしれない。
でもなんとなく原作の清隆くんが同じ時期に似たような状態だったことを思い出して、大人しく眠る気分にはならなかった。
どうせ寝られそうにないし、コンビニに牛乳を買いに行くついでに様子でも見てこようかな。
制服に身を包んで、端末をポケットに入れてから部屋を出る。
エレベーターに乗り込んで手早く一階に降りると、寮の外に歩を進める。
寮の裏手の角を曲がってみると、清隆くんも堀北兄妹もいなかった。
来るのが早すぎたのか、それとももう既に終わった後なのかは分からなかったけどその場に留まるのも不自然だったから予定通りコンビニに向かう。
1Lの牛乳パックを二本ほど買って、寮への帰り道を辿っていると人の気配を感じて咄嗟に身を隠す。
「どんなにお前を避けたところで、俺の妹であることに変わりはない。お前のことが周囲に知られれば、恥をかくことになるのはこの俺だ。今すぐこの学校を去れ」
「で、出来ません…………っ。私は、絶対にAクラス上がって見せます…………! 事実Bクラスにも上がりました」
「お前の力ではないだろう。それは一之瀬あっての成果だ。本当に愚かだな、お前は」
「兄さん────私は────」
「お前には上を目指す力も資格もない。それを知れ」
清隆くんが助けることは分かってる。
私が行かなくても清隆くんが会長と戦って、堀北さんを守るのは好きなシーンの一つだったから。
でも堀北さんの身体が浮いた瞬間、ビニール袋を放り出して無意識のうちに飛び出し堀北会長に迫っていた。
堀北さんに一撃を加えようとしている腕を掴んで、ぎりぎりのタイミングで動きを抑え込むことに成功する。
「──────一之瀬か。こんな時間に何をしている?」
「それはこっちの台詞ですよ、生徒会長。妹に手をあげるなんて、同じ妹を持つ身として放置するわけにはいかないんです」
「ほう? お前も妹がいるのか。ならば妹が愚を犯している時、躾をする必要性を理解出来るのではないか?」
「確かに妹が悪いことをしたら叱ります。痛みを与えて分からせる、なんて方法はとりませんけど」
睨み合うこと数秒。
私たちの意見が対立することは、初動からしても明らかだった。
「やめて、一之瀬さん…………」
沈黙を絶ちきったのは堀北さんの弱々しい声。
清隆くんもこの意外すぎる声を聞いて、仕方なく手を離しちゃったんだよね。
仕方ない、この先の展開は読めてるから大人しく従っておこうかな。
ゆっくり堀北会長の手を放した瞬間、思わず怯みそうなほどの速度で裏拳が私の顔を目がけて飛んでくる。
まともに受けるのはまずいと踏んで、身体を大きくのけぞらせて避けた。
すかさず急所を狙った鋭い蹴りが容赦なく飛んでくる。
堀北会長、女性相手でも容赦無さすぎじゃないかな!
「っぶない!」
実際に戦って身に染みる思いだった。
この人だったらホワイトルーム生とも普通に戦えそうだな。
堀北会長は感心したような表情を見せると、一呼吸する間もなく右手を真っ直ぐ、開いた状態伸ばしてくる。
地面に叩きつける目論見なのは分かってる、ならどう対処するか。
清隆くんがやったようにはたくようにして流すか、あるいは後方に逃げるか。
だけど私は第三の選択をした。
体勢をぎりぎり相手の手の狙いから下になるように低くして、堀北会長の反応が追いつく前に顔に拳を叩き込む。
「ぐっ!」
辛うじて反応されたのか、思ったようなダメージは与えられなかった。
まあ怪我させたいわけじゃなかったから、正直間に合ってくれて良かったけどね。
「いい動きだな。お前はつくづく優秀だと思っていたが、こちらの狙いを立て続けに読まれるとは思わなかった。何か習っていたのか?」
攻撃の手が止んで、こっちも構えを解く。
「バイオリンと華道なら習ってましたよ。全国音楽コンクールで優勝したこともあります」
「どうやら冗談まで上手いようだな。食えない女だ」
後半はともかくバイオリンと華道は本当に経験者なんだけどね。
「鈴音、まさかこいつと友達になっていたとはな。正直驚いた」
「彼女は…………友達なんかじゃありません。ただのクラスメイトです」
確かに友達宣言したわけじゃないけど、いざ目の前で言われると悲しいんだよね。
「相変わらず、孤高と孤独の意味を履き違えているようだな。一之瀬、お前には期待している。俺に面白いものを見せてくれるとな」
私の来た方に消えていくと思ったら、牛乳パックの入ったビニール袋を私に手渡してくれた。
こういう気遣いできるのに、妹にはこういう不器用なやり方しか出来ないのがなんとも言えない。
その後、本当に帰っていく堀北会長を見てなんとかなったと安堵する。
堀北さんは壁際に座り込んで俯いている。
これ以上清隆くんに盗み聞きみたいなことさせてると、堀北さんにバレた時が怖いから呼んでおくことにした。
「清隆くん、こういう時は男の子がさっと出てきて戦った方が格好いいと思うけどな」
私に呼ばれて渋々出てきた清隆くん。
なんというか、バツが悪そうな顔をしてるからちょっと面白いかも。
「帆波がいるのが見えたから、オレは必要ないと思ったんだ。オレが出てったところでコテンパンにされるのは目に見えてたしな」
「あはは…………」
よく言うよ。
私なんか君に一回も勝てたことないのに。
「最初から、聞いてたの…………? それとも偶然?」
「偶然だよ。私は牛乳買いに行ってただけだしね」
「オレも似たようなものだな。自販機でジュース買ってたら外に行く堀北が見えて追いかけただけだ」
まあ嘘ではないね。
追いかけたのは完全に故意だけど。
「お前の兄さん、あれ相当強いだろ。殺気とか半端なかったし」
「空手…………5段、合気道4段だから」
うん、知ってるよ。
もっとも体感的にそれが正しいか疑いたくなるけど。
「一之瀬さん、あなたも何かやってたでしょう。それもかなりの有段者」
清隆くんにするはずの問いかけがこっちに飛んできた。
これも清隆くんの隠れ蓑効果として、とりあえず甘んじて受け入れる。
「にゃはは、ちょっと反射神経がいいだけだよー。暴力とか嫌いだしね」
「それにしては躊躇なく殴っていたように見えたのだけど?」
ホワイトルームでは躊躇ってたらすぐにお仕置きの嵐だったからね。
そのせいでいざ戦いの場になると、本当に躊躇わなくなるから嫌になる。
こればっかりはもうどうしようもないかもしれない。
「テストは入試含め、全教科満点。バイオリンと華道を習ってると言いながら、武術に精通した動きを見せたり。本当にあなたのことが分からない」
清隆くんのテストの点数と一緒に茶柱先生に教えられたのかな。
まあ、それは不思議なことでもないからスルーしよう。
「あはは。まだ出会って一ヶ月ぐらいしか経ってないし、知らないことの方が多いんじゃないかな。知りたいなら色々と話すよ?」
「別にいいわ。興味ないし」
そっちから言ってきたのに、とんだ言い草だよね。
想像通りの反応だから気にはしてないけどさ。
「そろそろ戻るわ。万が一変な噂を立てられても面倒だもの」
すっかり調子を取り戻した堀北さんは、颯爽と立ち去っていった。
ひとまず元気そうだし、今日のところは一安心かな。
「意外だな」
「え?」
「帆波のことだから、色々と声をかけてやると思ったんだが」
「確かに言いたいことはたくさんあるよ。でも、この状況で私が言っても聞く耳もってくれたかどうか」
「なるほどな」
堀北さんは会長に異常なほど尊敬の念を持ってる。
そんな人物が目の前で他の人を絶賛するなんて、本人からしたらたまったものじゃないだろうね。
ましてその人物に励まされたりしたら、相当に惨めな想いをするのは想像に難くない。
「だが、このまま放置しておくのはまずいんじゃないか? もしも堀北が今後も変わらないようなら、まず間違いなくクラスの足を引っ張ることになるぞ」
「だとしても、今のところ打てる手がないんだよね。とりあえずしばらくは様子見かな」
「わかった。その辺の対応はお前の判断に任せる。手伝えることがあったら言ってくれ、出来る限り手を貸す」
「目立たない範囲で、だよね?」
「そうだな」
堀北さんのこともそうだけど、とりあえずは目先の中間テストも大切だから。
当面はそっちに注力していこうと思う。
とは言っても、全体の点数の底上げぐらいしかやることないんだけどね。
ホットミルク美味しいですよね
帆波(憑依)に『■■のホワイトルーム生』的な二つ名をつけるとしたら
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慈愛のホワイトルーム生
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偶像のホワイトルーム生
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単純にホワイトルーム生No.2