転生したら帆波ちゃんだったので、綾小路君の相棒になってみようと思います 作:レイラレイラ
あれからあっという間に時が過ぎて、今は中間テストの前日になっている。
テスト範囲が急に変更されたというトラブルはあったものの、私が渡していた過去問と見事に範囲が合致していたから大きな問題にはならなかった。
それよりもとうとう明日が本番の中間テストということもあって、大なり小なりみんな緊張しているみたい。
今日はとうとうネタバラシ決行の日でもある。
このネタバラシの反応しだいで中間テストの結果も変わるかもしれないけど、それぞれ自信もついてきたから大丈夫だと思う。
「みんな! ちょっとだけ私の話を聞いてくれないかな!」
「何言ってんだよ帆波ちゃん! 俺らならいつでも話聞くぜ!」
「そうでござるよ! 我らがリーダー帆波たそのためならば、例え火の中水の中でござる!」
さすがにそこまでは求めないよ外村くん。
ちなみに火中の栗を拾う的なことも無しでお願いね。
「まずはみんなに告白したいことがあります」
教室内が騒然とした雰囲気に包まれながら、このことを知っている清隆くんや愛里ちゃんに堀北さんは一切の動揺を見せない。
高円寺くんたちみたいな例外を除いてだけど。
「前にみんなに渡した問題があったでしょ? 実はあれ、私が作った問題じゃなかったの」
私の真剣な雰囲気を察したからか、さっきと違ってみんな大きな動揺は見せなかった。
「あの問題集は三年生の先輩にもらった過去問をそのまま出したものなんだよね。それから、みんなにはこれから配る問題を見て欲しいんだ」
愛里ちゃんに頼んでそれぞれの列にプリントを配ってもらう。
全員にプリントが回ったところで、とうとう反応を抑えることは出来なくなったみたいで近くの人と話し始めたクラスメイトたち。
当然と言えば当然だよね。
「それぞれ二種類のプリントが渡されたと思うけど、それらの問題は二年生と三年生の先輩が一年生の一学期で受けた中間テストなの。それを見て何か気づくことはないかな?」
「これは…………ほとんど同じ問題になっているね」
平田くんの言うように、過去問の内容はほとんど同じ内容になっている。
つまりこれは、中間テストの攻略法の一つでもあって年々続けられてきた学校側の生徒の実力を測るための手法でもあるわけで。
「そう。過去問を先輩にもらったのは勉強会を開く前日だったんだけど、すぐに問題の内容に私も気づいたの。これを覚えれば中間テストは乗り越えられる。でも、今後の学力試験のことを考えるとその場しのぎにしかならないって」
「それは…………」
成績に自信のない一部の生徒たちが揃って顔を伏せる。
キツい言い方になっちゃったけど、さっきも言ったように今後のことも考えればその場しのぎにしかならない。
テスト前に緊張が緩むということもあって、ぎりぎりまで伏せることで自力で問題を解けるようになれば自然と全体の学力向上にも繋がる。
だから私は正直に話さずに、あくまでも私が変更後の範囲を想定して作った問題ということにした。
「騙すような真似をしてごめんなさい。…………ううん、実際にみんなを騙してたわけだし私が全面的に悪いよね」
「おい一之瀬」
須藤くんがじっとこっちを見つめてくる。
そうだよね、信頼されてた私がこんな風に騙していたなんて知ったら許せないよね。
「ありがとよ」
次に口を開いた時には盛大に罵倒が飛んでくると思ったら、意外にも須藤くんニカッと笑うと優しい声でお礼を言ってきた。
「えっ? それって…………」
「一之瀬が過去問のこと黙ってたのも、全部は俺たちのためなんだろ? 何も悪いことなんてしてないのに、謝る必要はねえよ」
照れくさそうに後頭部をポリポリと掻く須藤くん。
それに賛同するようにみんなが肯定的な声をかけてくれる。
「俺は馬鹿だからな、もし過去問をそのまま覚えるだけだったら後でまた一之瀬に頼ってたかもしれねえ。だから必死こいて問題解けるようになって嬉しかったんだ。むしろこっちから礼を言わせてくれ」
「須藤くんの言う通りだ。一之瀬さんのおかげで、みんな自力で過去問を解けるだけの学力はついた。本当にありがとう一之瀬さん」
そっか、私の気にしすぎだったんだね。
入学初日もこんな感じだったな私は。
Bクラスのリーダーとして、もっと胸を張っていないといけないね!
「そっか。なら、みんなの気持ちに報いられるようにこれからも頑張ることを宣言するよ! 明日の中間テストまで、みんな気を抜かずに頑張ろう!」
「「「おおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」」
男子たちの熱い咆哮が教室に響き渡るなかで、女子側はやれやれと言った風に腕を上げていた。
男子みたいに叫びはしないけど、気持ちは同じということかな。
「ちなみに頑張ろうとは言ったけど、みんなほとんどの問題を解けるから休みをいれてもいいからね。以上っ」
「おいおい、気を抜かずにって言った本人がそれ言っちゃ世話ないぜ!」
これで完全に緊張は取り払えたと思う。
出来るだけのことはしたから、あとはみんながミスをしないように祈ってるよ。
中間テスト当日の朝、茶柱先生が不敵な笑みを浮かべながら教室に入ってきた。
ああいう笑いかたをする教師キャラは私は結構好きだよ。
フィクションに限ってだけどね。
「欠席者は無し、ちゃんと全員揃っているみたいだな。それで一之瀬、成果の方はどうだ?」
「結果が出てないのでまだ何も言えませんが、少なくとも赤点は取らないので心配はいりませんよ」
「自信があるようで何よりだ。もし、今回の中間テストと7月に実施される期末テスト。この二つで誰一人赤点を取らなかったら、お前ら全員夏休みにバカンスに連れてってやる」
実際はバカンスの皮を被った無人島サバイバルだけどね。
さすがにここで話すわけにもいかないから口を結ぶしかないけどさ。
「バカンス、ですか」
「そうだ。そうだなぁ…………青い海に囲まれた島で夢のような生活を送らせてやろう」
悪夢のような生活を送らせてやろうの間違いじゃない?
「皆…………やってやろうぜ!」
『うおおおおおおおおおおおお!』
池くんのセリフに続いて男子の咆哮が轟く。
清隆くんまで叫んでるけど、それでも無表情だから絵面がすごいシュールなことになってる。
水着、可愛いの探さないとね。
そうこうしているうちにプリントが全員分回されて、茶柱先生の合図と共に一斉に表に返す。
社会、国語、理科、数学と四時間目まで続いたテストはみんな余裕そうで笑顔が絶える様子はなかった。
過去問を暗記していた原作と違って、私は小テストの問題を応用して基礎の理解を深めてから過去問の理解へと繋げた。
そのおかげですらすらと問題を解ける生徒が多いのが窺える。
そして昼休み。
私と清隆くんと愛里ちゃんのいつものメンバーで、堀北さんの周りに集まっていた。
「どうやら帆波の作戦が上手くいったみたいだな」
「そうね。一之瀬さんが指揮を取ってくれたおかげで、ここまで問題なく進めることが出来たわ」
「意外。堀北さんが帆波ちゃんを褒めるなんて」
「私は事実を述べただけよ。褒めたつもりは微塵もないわ」
「あはは…………」
堀北クオリティを間近に感じつつ須藤くんの様子を見てみると、焦りの表情は欠片も見受けられない。
寝落ちせずにしっかり取り組めたのは見ていてよく分かった。
これ以上は何も言わなくてもよさそうだね。
茶柱先生が教室に入った瞬間、ただでさえ張りつめていた空気に重みが増した気がする。
「先生。本日採点結果が発表されると伺っていますが、それはいつですか?」
「喜べ平田。今から発表する。それからお前たち全員、一之瀬に感謝しておくんだな。正直、今回の結果には心底驚かされたぞ。元Dクラスのお前たちからは考えられなかった成果だ」
生徒の名前と点数の一覧が載せられた白い紙が黒板に貼り出された。
私は全教科満点を取ったから一番上の所に名前があった。
そして肝心の須藤くんの点数は、五教科全てが60点代後半を取っていたことにホッと胸を撫で下ろす。
なんとかなったみたいだね。
一番点数が低い須藤くんでも60点を越える点数を取ったことで、必然的にBクラスから赤点の生徒は出なかったことになる。
「みんなよくやった。文句なく合格だ。次の期末テストでも赤点を取らないよう精進するように」
茶柱先生は激励言葉を投げるとすぐに教室を出ていった。
僅かに口元が緩んでいたのは気のせいだったのかな。
「い、一之瀬」
次の授業の準備を進めていると、須藤くんが遠慮がちに声をかけてきた。
「どうしたの? 須藤くん」
「今回は助かった。一之瀬がいなかったら俺は赤点を取ってたかもしれねえ。本当にありがとな」
「にゃはは。須藤くんが頑張ったから乗り越えられたんだよ。私は少し手伝っただけ」
「それでもだ。何か困ったことがあったら言ってくれ、今度は俺が助けてやるから」
「わかった。もしもの時は須藤くんに助けてもらおうかな」
「おう!」
チャイムが鳴って須藤くんは自分の席に戻っていった。
ちょっと顔が赤かったけど風邪でもひいたのかな。
本来こなすべきイベントを事前に消費してしまったので一気に中間テスト前日まで飛びました
ようやく1巻完結です!
次話から2巻入ります
本作の須藤くんが性格イケメンになってる件(自業自得)
うかうかしてられない綾小路くん
帆波(憑依)に『■■のホワイトルーム生』的な二つ名をつけるとしたら
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慈愛のホワイトルーム生
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偶像のホワイトルーム生
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単純にホワイトルーム生No.2