転生したら帆波ちゃんだったので、綾小路君の相棒になってみようと思います   作:レイラレイラ

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前話でオリ主がお胸の心配をしていましたが、帆波ちゃんになったんだから大丈夫というね


思わぬ出会い

 いずれ入学する『高度育成高等学校』で生き残るために、とにかく勉強とかを頑張ろうと思ったけど今の環境では色々と制約が多いことに気づく。

 

 経済的な面は、図書館で図書カードを作って参考書などを借りればいいからそこは対して重要な問題にはならなかった。

 

 そう、借りる()()なら問題はなかったんだけどね。

 

 そこで発生した問題っていうのが、私の年齢についてだったりする。

 

 だってそうでしょ? 

 

 まだ三歳かそこらの子どもが、中高生レベルの参考書を借りようとしているんだから誰だっておかしいと思うよね。

 

 子どもの背伸びだって微笑ましい目で見られるだけならまだいいんだ。

 

 参考書の代わりに絵本とかを勧められたものだから、私はつい意地になっちゃって数学の連立方程式を目の前で解いたり、円周率を息の続く限り言い続けた。

 

 そうしたら周囲の大人たちの目はみるみる変わっていった。

 

 大半の人たちが私を恐ろしいものでも見るかのような目で見ていて、そこで私はやっと自分のしたことに気づいて図書館から急いで出ていく。

 

 前世の記憶が戻ってからおよそ一年経っていたのに、私ははっきりと今の自分のことを理解できていなかったんだと思う。

 

 中身がどんなに大人だったとしても、今の私は小学生にすら上がっていない小さな子どもなんだって。

 

 だから私は、表向きは年齢通りに振る舞いつつも頭の中で復習を繰り返し続けた。

 

 覚えている限りの知識を何度も何度も反復して、決して取りこぼさないように脳に刻み続けた。

 

 給食の時間とか、トイレに入っている間は比較的捗った方かな。

 

 食べている間はおしゃべりしちゃダメだって親に言われてると言っておけば、皆が気を遣って話さなくなるから。

 

 トイレは個室に入っておけばわざわざ話しかけてこないしね。

 

 もちろん運動も欠かさないように、暇を見つけては身体を動かして体力をつけるようにした。

 

 調子に乗ってバク転を披露した時は先生たちにしこたま怒られた。

 

 同じ組の子どもたちには絶賛されたんだけど、さすがに私もまた叱られるのはゴメンだったからやらなかった。

 

 余談ではあるけど、元から多かった告白の数がその日を境に三割ぐらい増したような気がする。

 

 これも帆波ちゃんパワーなのかな。

 

 まあ帆波ちゃんだもんね。

 

 可愛すぎる帆波ちゃんがいけないね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれからまた一年が経ちました。

 

 色々とやることが多すぎて、時間があっという間に経っちゃうね! 

 

 私が今何をしているかと言うとね、なんとお使いをしています! 

 

 妹は幼稚園に送ってきたし、私は悠々と家事とか色々とすませられちゃうの! 

 

 私は幼稚園行かないのかって? 

 

 にゃはは、ちょっとおサボりしちゃった! 

 

 本当はずっと前からお手伝いをさせて欲しいってお願いしてたんだけど、まだそういうのは早いってやんわり断られちゃったからようやくって感じかな。

 

 まだ十時と少しぐらいだからかな、すれ違う人が大人ばっかり。

 

 見上げるくらい大きい人たちがいっぱいいて、何ていうか気圧されちゃうよね。

 

 今日の晩御飯の食材を求めてあちこち歩き回ってると、中途半端な時間だからいつも以上に注目を集めてるみたい。

 

 大人たちの視線は無視して引き続き食材探しに戻る。

 

 たまにだったらお菓子を買ってもいいかな。

 

 あ、もちろん妹のぶんね。

 

 私もお菓子が食べたいとは思うけど、お姉ちゃんだから我慢してる。

 

 でも、それが全く苦だとは思ってないよ。

 

 前世の私も妹がいたから、むしろこっちからお菓子をあげてたくらい。

 

 お菓子をあげた時に嬉しそうに笑う顔がとにかく可愛くって、本を読んだりして作り方を覚えたり。

 

 友達からはシスコンだなんだとからかわれたけど、シスコン上等って感じで開き直ってた。

 

 その影響もあってか、今世でもとにかく妹を甘やかすようにしてる。

 

 そのうち「子ども扱いしないで!」みたいな感じで突っぱねられちゃうのかなって思うときもある。

 

 ただその時には私も『高度育成高等学校』に入ってるだろうから、妹の反抗期とか彼氏ができるところとか見れないのが寂しくもあって。

 

 とりあえず今はできることをコツコツやっていこうと思う。

 

 ホワイトルームの刺客とかの対策も考えなきゃいけないし、やることは山積みだ。

 

 さっさと会計を済ませてスーパーを出る。

 

 明日は体力作りとリフレッシュも兼ねてランニングでもしよう。

 

 武術の特訓とかできたらいいんだけど、誰か教えてくれる人いないかなぁ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 買い物袋をぶら下げて歩くスーパーからの帰り道。

 

 袋を地面に擦らないように注意しながら歩くのは一苦労で、体力よりも精神力が持っていかれる。

 

 早く身長伸びて欲しいなぁ。

 

 たとえ高校に上がっている頃には、皆が見惚れるナイスバディになっているのが分かってるんだから! 

 

 未来は明るいよ! (肉体面のみ)

 

 未来の自分(帆波)ちゃんの姿を想像していると、思わずニヤニヤしてしまう。

 

 

 

 

 

 突然鳴り響くクラクションの音。

 

 身体がビクッとなって、その場で止まってしまう。

 

 よほどボーッとしていたのか、信号が赤なのにも関わらず横断歩道を渡ってしまったらしい。

 

 

 そんな…………

 

 まだ何にもしてないのに! 

 

 原作キャラの誰にも会えず、こんなストーリーとは何の関係もないところでリタイアなんて絶対に嫌! 

 

 無駄だと分かっていながら、身体をぎゅっと縮ませる。

 

 もしかしたら、覚えてないだけで前世もこんな死に方だったのかも。

 

 だったらむしろ覚えていなくて正解だ、ボーッとしていて車に轢かれたことすら気づかないなんて情けなさ過ぎるもの。

 

 

 いつまでも衝撃がやって来なくて、瞑っていた目を恐る恐る開く。

 

 私に当たるぎりぎりで止まっていたのは黒塗りの高級車だった。

 

 とりあえず死んでいないことの安堵と、緊張の糸が切れたからか意識が暗い底へと沈んでいくのを感じる。

 

 次は気をつけて横断歩道を渡るようにしよう、そんな当たり前のこと再認識しながら…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 首から下が柔らかいものに包まれているのを感じながら、浮上し始めた意識とともに目蓋を開いていく。

 

 なんだか高級そうなベッドに寝かされているみたいで、何とも言えない至福を覚えてしまう。

 

 はっきりしない意識で自分の状態を確認する。

 

 どこも怪我とかはしてないみたいでひとまずは大丈夫そう。

 

 ただ服装が違っていて、パッとしない私服から可愛らしいパジャマに着替えさせられていた。

 

 誰かが介抱してくれたのかな? 

 

 気絶する前に見えた車から見ても、多分だけど相当なお金持ちなんじゃないかな。

 

 周りを見渡してみると、値段が想像つかなそうな絵画や壺らしきものが置かれていて、遅れながら自分がとんでもない場所にいるのだと気づく。

 

 寝ぼけ眼もそりゃ消し飛ぶよ! 

 

 急いでこの場を離れる? 

 

 着替えと食材を放って行くわけにはいかない。

 

 それに介抱してくれたってことは、いい人かもしれないし勝手に離れるのも相手の厚意を無下にするみたいで申し訳ない。

 

 判断に困って動けずにいると、扉がガチャリと開く音が。

 

 こうなったら受け入れるしかない。

 

 まずはお礼をしよう、そう考えていたら思わぬ人物の登場に頭が真っ白になってしまう。

 

 

 

「おや、目が覚めていましたか。どうやら元気そうで安心しました」

 

 

 

 ──────────坂柳有栖ちゃんとの思わぬ出会いに、私はまた意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 




今話は前半が四歳ぐらい、後半が五歳ぐらいです。

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