転生したら帆波ちゃんだったので、綾小路君の相棒になってみようと思います   作:レイラレイラ

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原作2巻で綾小路くんが『一之瀬に任せておけば大丈夫な気がしてきた』と言っていましたが本当にそうなりそうで怖いです


救済の前準備

「須藤。お前に少し話がある、職員室まで来てもらおうか。理由は分かっているな?」

 

「…………うす」

 

「顧問には話をつけている。余計な心配は無用だ」

 

 放課後を迎えると、須藤くんは茶柱先生に促されるまま職員室に連行されてしまった。

 

 この場合は任意同行が近いのかな? 

 

「どうしたんだ、須藤のやつ。あいつが自分から何かをやらかすようには思えないけどな」

 

「顔は怖いけどなんだかんだいいやつだもんな。何かに巻き込まれたとか…………」

 

 須藤くんが職員室に連れていかれたことに対する反応が、原作と比べてもかなり良い方に改善されていることが聞き耳を立てなくてもわかる。

 

 退学になってた方がいいなんて言われてなくて、私としてもそれは嬉しいけど感慨にふける暇はない。

 

 動揺が広がりきる前に手を打っておかないと。

 

「みんな落ち着いて! 須藤くんのことは気になるかもしれないけど、明日になったら学校側から何か通達があるかもしれない。須藤くんが安心出来るように、私たちも普通にしていようよ!」

 

「帆波ちゃんがそう言うなら…………」

 

「そうだな。俺たちが気を揉みすぎても健に悪いしな」

 

 私の呼び掛けに、クラスのみんなが徐々に落ち着きを取り戻していく。

 

 どのみち明日には須藤くんとDクラスの一件は聞かされるからその場しのぎにしかならないけど、時間稼ぐだけならこれだけで充分。

 

「相変わらず人を纏めるのが上手いわね」

 

 堀北さんが鋭い眼差しで私の方を見て、何だか煽っているような声音で声をかけてきた。

 

「あはは。いきなりクラスメイトが先生に呼び出されたら不安になるだろうし、だったら私がそれをどうにかしてあげられたらなって。堀北さんも須藤くんが心配じゃない?」

 

「これっぽっちも心配していないわ。もともと須藤くんも一之瀬さんのおかげで丸くなったように見えるけど、初日の彼の言動から見てもいずれ問題を起こす可能性は危惧できていた。それが今になって浮かんできただけのことよ」

 

 それだけ言い残すと、堀北さんは鞄を肩にかけて教室を出ていってしまう。

 

 堀北さんが須藤くんを仲間だと思えるまでまだまだ先みたい。

 

 私のことも嫌ってるみたいだし、今後片付けないといけない課題は山積みだね。

 

「混乱も収まったし、私たちも動こっか。荷物とかどうする? 先に置いてきちゃった方が楽だよね」

 

「オレはそうするつもりだ」

 

「じゃあ私は準備して待ってるね」

 

 結局三人で下校して、寮まで一緒に帰った。

 

 私は愛里ちゃんの隣の部屋だからほとんど時間がかからないんだけど、清隆くんが女子の部屋に一人で入りにくいと言われて直接迎えに行った。

 

 暗躍してる時の遠慮の無さというか、ふてぶてしさをこういう時こそ発揮して欲しいんだけどな。

 

 

 

 

「うーんこれは…………」

 

「証拠としては不充分だろうな」

 

「う…………」

 

 愛里ちゃんの部屋で三人同時にパソコンを覗き込んでいると、知っていたとは言っても少しだけがっかりしてしまう。

 

 愛里ちゃんの愛くるしい表情で写っている自撮り写真の数々。

 

 その中に、喧嘩騒動のタイミングを押さえた1枚があった。

 

 夕暮れに染まる校舎の廊下で、須藤くんが石崎くんを殴った直後の現場写真。

 

「確かにこれなら愛里ちゃんが現場にいたことは証明出来るかもしれない。でも、須藤くんが無罪の証拠にはならないかな」

 

「おまけにデジカメで撮ったものであれば、パソコンなりで日付の変更をしたと疑われても仕方ない」

 

「ごめんね、私役にたてそうもなくて…………」

 

「そんなことはないぞ佐倉。これはこれで相手に動揺を生むことが出来るはずだ。一時的なものだけどな」

 

「清隆くんの言う通りだよ。確かに決定打にはならないけど、役立たずなんてことはないから。きっと愛里ちゃんは今回の件で重要な要素になってくるはず」

 

「ありがとう二人とも。ちょっとだけ安心出来たよ」

 

 私と清隆くんで慰めると、愛里ちゃんは沈んでいた顔を少しだけ綻ばせた。

 

 やっぱり愛里ちゃんには笑顔が似合うね。

 

「佐倉、帆波少しいいか?」

 

「綾小路くん?」

 

「…………清隆くんも気づいたよね」

 

「ああ。今回の騒動、須藤が無罪を勝ち取る方法はない」

 

「そんな…………」

 

「まず間違いなく、Dクラスは須藤を加害者として訴えてくるはずだ。そして明確な証拠を提示出来なければ、何があろうと向こうは嘘をついていることを認めないだろうな」

 

「愛里ちゃんたちがいた特別棟は人の出入りもほとんどなかったはずだし、確実な証拠を手に入れるのはまず不可能だろうね」

 

「ならどうすればいいのかな?」

 

 私はこの事態の解決法を知っているし、清隆くんもなんとなく気づいているはず。

 

 愛里ちゃんに正直に言うわけにはいかないけど、本格的に動いても違和感のないタイミングはもう少し先になる。

 

「まずは須藤くんからも話を聞こうよ。現場調査もしたいしね」

 

「オレも賛成だ。事件の詳細を知ることが出来れば、自ずと取れる手段も増えるはずだからな」

 

「私もそれでいいよ。何が出来るかは分からないけど」

 

 ひとまずの方針だけ固めて、そのまま愛里ちゃんの部屋に残って三人で夜ご飯を済ませた。

 

 いつの間にか三人で一緒にいることが当たり前になっているけど、私はこの心地いい空気がとても好き。

 

 いずれこの平和はあっさりと崩れ落ちると分かっていても、今だけはこうしていたいと思うのは悪いことじゃないよね? 

 

 

 

 

 

 そして翌朝のホームルーム。

 

 茶柱先生からの想定通りの連絡事項が伝えられた。

 

「今日はお前たちに報告がある。先日学校でちょっとしたトラブルが起きた。そこに座っている須藤とDクラスの生徒との間でトラブルがあったようだ。端的に言えば喧嘩だな」

 

 須藤くんとDクラスが揉めたこと、責任の度合いによっては須藤くんが停学になること、さらにクラスポイントの削減が行われることが淡々と告げられた。

 

 茶柱先生のこういう時の感情を表に出さないのは単純にすごいと思うけど、少しは味方して欲しいという気持ちがないわけじゃない。

 

「結論が出てないってことは、須藤くんとDクラスの意見が食い違っている。だから真実が分からずに保留するしかないってことですよね?」

 

「察しがいいな一之瀬。耳が早いことだ」

 

「あはは」

 

「訴えはDクラスからだ。一方的に殴られたらしい。ところが真相を確認したところ、須藤はそれが真実ではないと言った。彼が言うには自分から仕掛けたのではなく、Dクラスの生徒たちから呼び出され、喧嘩を売られたとな」

 

「確かに手を出した俺にも責任はある。だがよ! 最初に手を出したのもあいつらだ! それに、一之瀬のことを卑怯ものだって馬鹿にしやがったんだぞ! 許せるわけねえだろ!」

 

「だが証拠がない。違うか?」

 

「ぐっ、それは…………」

 

「つまり今のところ真実が分からない。だから結論が保留になっている。どちらが悪かったかでその処遇も対応も大きく変わるからな」

 

「俺のことはまだいいんだ。一之瀬の前で頭下げさせねえと気が収まらねえ」

 

「本人はこう言っているが、今現在信憑性が高いとは言えない。須藤がいた気がするという目撃者が本当にいれば少しは話も変わってくるんだがな。どうだ、喧嘩を目撃した生徒がいるなら挙手をしてもらえないか」

 

 愛里ちゃんがこっちに軽く視線を送ってくる。

 

 私は了承するように、そっと首を縦に振った。

 

「わ、私は須藤くんとDクラスの生徒が揉めているところ見ました! 須藤くんの言っていることは真実です!」

 

 茶柱先生が面白いものを見るように口元を歪ませるのを私は見逃さなかった。

 

 本当に邪悪な表情がよく似合う先生だよ。

 

「では佐倉、今日の放課後に詳しく話を聞かせてもらうぞ。話は以上だ。最終的な判断は来週の火曜日に下されるだろう。それではホームルームを終了する」

 

 茶柱先生がいなくなった途端、教室内は喧騒に包まれた。

 

「帆波ちゃんが狡いことするわけねえじゃんか!」

 

「そうだ! 狡いのはその可愛さとスタイルだけなんだよ!」

 

 私を庇ってくれるのは嬉しいけど、池くんも山内くんもその優しさを須藤くんにも分けてあげてね。

 

「僕は須藤くんを信じるよ。須藤くんの言ってることが事実なら、一之瀬さんを馬鹿にされたことは僕としても許せない。精一杯協力させてもらうよ」

 

「あたしもさんせー」

 

 平田くんの賛同のあとに軽井沢さんも声を挙げた。

 

「もし濡れ衣だったら問題でしょ? とにかく無実なら可哀想だし、あたしも一之瀬さんを貶されたのはムカつくし」

 

 クラスメイトとの交流の中で、軽井沢さんとはある程度親しい間柄にはなっている。

 

 具体的な過去の内容までは聞けてないけど、クラスの雰囲気がとてもいいからか少しは安心出来ているみたい。

 

 もう少し深く踏み込ませてくれるように、軽井沢さんとの距離も縮めていければいいな。

 

 それはさておき、男女問わずクラス一丸となって目撃者を探してくれることになった。

 

 下手したら原作のBクラス並に連帯感が強まってるかもしれないね。

 

「よかったな帆波。すっかり慕われてるみたいだぞ」

 

「あはは。なんかちょっと照れくさいね」

 

 清隆くんの顔は相変わらず無表情だったけど、何だか拗ねてるように見えたのは私の気のせいだったのかな。

 

 

 

 

 

 




綾小路くんファイト!

帆波(憑依)に『■■のホワイトルーム生』的な二つ名をつけるとしたら

  • 慈愛のホワイトルーム生
  • 偶像のホワイトルーム生
  • 単純にホワイトルーム生No.2
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