転生したら帆波ちゃんだったので、綾小路君の相棒になってみようと思います 作:レイラレイラ
昼休みの私と平田くんをはじめとした中心人物で会議を開いて、放課後に部活等の用事がない場合は手分けして情報収集することが決定した。
当事者の須藤くんは寮の自室で待機してもらうことになったけど、幸いにもすぐに了承してくれたよ。
私に何度も迷惑をかけたことに深く頭を下げてきたことには驚いたものの、迷惑だとは思ってないことを伝えるとすぐに頭を上げてくれた。
平田くんにはサッカー部の先輩への聞き込み、桔梗ちゃんには他クラスの友達に証言者がいないか確認をとってもらってる。
愛里ちゃんは茶柱先生に色々と聞かれてるから、残念だけど今日の調査活動には不参加。
じゃあ清隆くんと私が何処にいるのかと言うと…………
「なあ帆波、ここ暑くないか?」
「そうかな? 私はそれほどじゃないけど」
7月に入って蒸し暑さが増しているのか、ぱたぱたと手で自分を扇いでいる清隆くん。
この学校には衣替えがないから、一年中ブレザーを着ることになっているせいで
私は暑さに強いのか、特別暑いとは思えないんだよね。
夏場でしかもクーラーのついてない特別棟なんだから、校舎と違ってギャップ激しいぶん清隆くんみたいに暑いというのが普通なのかもしれないけど。
二人で廊下の端まで歩いて、天井から壁の隅まで隈なく見てみても使われた形跡のないコンセントがあるだけで監視カメラの類いは見つけられなかった。
知ってはいたことだけど、改めて事実を認識させられると落胆するのもしょうがないよね。
「やっぱりないかー」
「学校の廊下にも監視カメラはなかったしな。特別棟が同様の形をとられていても不思議じゃない。それより帆波」
「何かな?」
「お前、最初から証拠探しなんてしてないだろ」
「どうしてそう思うの?」
「他クラスの人間から有力な証言が見つかる可能性は限りなく0に近い。そもそもこの特別棟に監視カメラがあれば、最初から学校側はこの件を問題にはしていないはずだ。にも関わらず現場調査を実行しているということは、須藤とDクラスの騒動が発覚した時から解決法は決まっていたんじゃないか?」
やっぱり清隆くんは誤魔化せないね。
薄々バレるとは思ってたけど、もう看破されるなんて。
「そうだよ。今回の件、Dクラスが須藤くんひいてはBクラスを陥れるためにわざと起こした事件なのは確実だと思う。それを実行犯に命じたのは…………」
「龍園か」
「この間宣戦布告されちゃったしね。もっとも、向こうにとっては小手調べみたいなものかもしれないけど」
実際のところはどうなのかは分からないけど、その可能性は充分にあると考えていいはず。
原作と違うのは最終的にAクラスを潰すための通過点に過ぎなかったこと、私というターゲットに狙いを定めているなら実力を図る意図があったんじゃないかな。
「清隆くんだったらどう対処する?」
「多分帆波の想像している通りだ。他クラスからの証言も得られない、監視カメラによる明確な証拠もないなら…………」
「「事件そのものをなかったことにすればいい」」
見事に重なった二人の答え。
でも、この解決法が大きな効力を発揮するのはまだ先になる。
平田くんたちにわざわざ他クラスや先輩をあたってもらっているのも、Dクラスに対して必死に情報を集めてますよアピールというわけだね。
後で外村くんに偽の監視カメラを設置してもらう必要もあるし、費用は私の方で払えばいいかな。
「だけど現状は完璧な一手とは言いがたいんだよね」
「そうだな。これはどちらも主張を曲げるつもりはない状況と、Dクラスが嘘をついたことで生じる被害の大きさによって成功率も左右してくる。しばらくは様子見だな」
長く話し込んでいて暑さが限界に来たのか、窓際に近づいて涼しい空気を得ようとしている。
窓を開けた瞬間に外から熱風が入り込んできて、条件反射とも言える俊敏さで窓を閉めた。
「あはは。清隆くんってたまに抜けてることするから面白いよね」
可愛いとか言うと怒られそうだから、面白いに言い換えておく。
清隆くんは顔に出さないぶんその圧がとんでもないことになるから、下手なことを言ってそれを食らいたくないしね。
「アイスでも食べに行かない? 奢るよ」
「ポイントはめったに使わないからまだ残ってる。気持ちだけ受け取っておく」
特別棟から出ると、私たちはコンビニに行ってアイスを買った。
私はぶどう味の棒アイス、清隆くんはバニラ味のソフトクリームを食べた。
清隆くんにとっては初めてのアイスだったからか、とても新鮮なものに写ったかもしれないね。
そういう私もアイスは前世以来だから、久しぶりの醍醐味に感動しっぱなしだった。
ちなみにデートみたいだとドキドキが止まらなかったのはここだけの秘密。
翌日を迎えても、平田くんたちから上がってくる報告は成果無しというものばかり。
最初からそっちはブラフのために動いてもらっただけだから、もともとそれらに意味はないんだよね。
もしも奇跡的にAかCクラスから目撃者、あるいは証拠が見つかったとしたら驚いて腰を抜かす自信がある。
昼休みを迎えて、私は清隆くんと一緒に茶柱先生に進路指導室に来るように呼び出されていた。
昨日の放課後に愛里ちゃんから聞いた話について、私の意見も合わせて深く掘り下げていきたいらしい。
「なるほど。クラスの連中の成果は芳しくなかったようだな」
「はい。今のところは愛里ちゃんから聞いた話以上のことは分かりませんでした。今日もまた調査を行う予定です」
「火曜日までまだ時間はある。せいぜい励むことだ」
「もちろんそのつもりです」
「一之瀬。有能なお前のことだ、もうすでに対策を講じているのではないか?」
茶柱先生もなかなかの洞察力を持っているようで、私が不安を全く感じていないことに気づかれたみたい。
解決法の詳細までは分からないだろうけど、私がどうにか出来ることに確信を持っていることは間違いないと思う。
「さあどうでしょう。もしかしたら何も考えてないかもしれませんよ?」
「ありえないな。初日にSシステムや評価査定にも深い理解を示していたお前に限っては特にな。それだけじゃない、過去問の入手を含めた数々の実績から考えてお前は人並外れた能力を持っている。逆に何も考えてないというのは不自然じゃないか?」
「あはは。さすがは茶柱先生ですね。気づかれちゃいますか」
「これでも色んな生徒を見てきたからな。その中でもお前…………いや、お前たちは異端の生徒だよ」
私と清隆くんを見る茶柱先生の表情は心底楽しそうで、あまり嬉しくない期待を寄せられているのはすぐにわかった。
絶対に私たちを利用してAクラスに上がる気満々だよこの人。
「帆波は異常かもしれませんが、オレはいたって平凡な生徒ですよ」
「高1の学習範囲外を解けるようなお前が言うか? 実力を隠しているぶん、お前の方が質が悪いぞ綾小路」
「意地の悪さには自信ありますけどね」
そういうところだと思うよ清隆くん。
「話を戻すが、どうだ一之瀬。お前は今回の件どう考えている」
仕方ない、へたに誤魔化すよりも言っちゃった方が楽でいいだろうね。
清隆くんが言うより、私の方に注目を集めることも出来るし。
「今回の一件は、証拠探しや目撃者探しはほとんど意味がないと思います。動き回っても得られるものはないです」
「ほう。では、何故それをクラスの連中に話してやらない。せっかくやる気になっているのに真実を話さず、無駄な行為をさせているというのに」
「そうですね…………一言で言うなら『成長』のためですね」
今は私を中心に強い連帯感を築いているBクラスだけど、逆を言えば私がいなくなればあっという間にクラスは崩壊することを意味する。
調査の過程で自分達が今していることが無意味だと気づくなら上々。
気づかないなら、また次の機会に別の課題を設けるだけ。
「なるほどな。いい話を聞かせてもらった。ならば、私は担任としてお前たちの成長を暖かく見守らせてもらおう」
「帆波」
茶柱先生との話し合いを終えて、廊下を歩いている最中に清隆くんに声をかけられて足を止める。
授業時間が迫っているからか、幸いにも周囲に他の生徒はいない。
私の最後の発言の真意に気づいているんだろうね。
彼の目的の一つでもあるから当然かもだけど。
「清隆くんもみんなの成長は望ましいことでしょ。だって…………」
「…………」
これ以上は口には出せない。
清隆くんも分かっているから、何も言っては来ない。
私たちの目標はAクラスに上がることではなくて、あくまでも自由になること。
そのためにはみんなに成長してもらうのは必須条件。
すでに愛里ちゃんと須藤くんは大きな成長を見せてくれた。
いずれは私たちを越えてもらわないといけない。
私たちは最終的に
一つだけ我が儘を言わせてもらえるなら、
「清隆くんそろそろ行かないと、授業に遅れちゃうよ」
「…………そうだな」
だからまずは目の前の問題を片づけないと。
私たちのためにも、みんなのためにも────
2年生編に出すような描写を出してしまいました。
帆波(憑依)と綾小路くんのペアだからこそ出せる内容ですね(汗)
帆波(憑依)に『■■のホワイトルーム生』的な二つ名をつけるとしたら
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慈愛のホワイトルーム生
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偶像のホワイトルーム生
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単純にホワイトルーム生No.2