転生したら帆波ちゃんだったので、綾小路君の相棒になってみようと思います   作:レイラレイラ

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早くよう実2期が見たい…………


決着

 端末が確認すると、時刻は3時40分過ぎになっていた。

 

 放課後を迎えた特別棟は冷房なんてついているわけもなく、さすがに私でも蒸し暑く感じてくるくらい。

 

 あんまり長引かせてもしょうがないし、早いところ要件を済ませたいところだね。

 

「ごめんね清隆くん。桔梗ちゃんにお誘いメール送るように言ってもらって」

 

「構わない。帆波が必要だと言うなら、目立たない範囲では協力するさ。お前に指示されたと言っておけばそれほど弊害は無いしな」

 

「あはは…………」

 

 私も清隆くんの隠れ蓑に使われるのはドンと来いぐらいの心づもりなんだけど、普通に押しつけてくる気満々なのはちょっと複雑かな。

 

 まあ、それだけ頼りにされてると考えていいってことなんだよね。

 

 清隆くんの役に立てるなら、それ以上に嬉しいことはないもの。

 

 手筈通りに事が進んでいれば、もうすぐDクラスの3人が到着するはずだ。

 

 少しばかり待っていると、例の石崎くんを含めた3人組が暑い暑いとぶつくさと不満を垂らしながらもやって来た。

 

 それぞれの表情は期待に満ちたものだというのが、声色だけでもよく分かる。

 

 あの桔梗ちゃんからお誘いメールを送られたとなれば、デートのお誘いかあるいは告白されるかもしれないと考えるのは思春期の男の子なら不思議なことじゃない。

 

 その夢のような妄想は哀れにも、私たちの姿を見つけた瞬間に呆気なく崩れ去る。

 

「…………どういうことだ。なんでお前がここにいる」

 

 3人の中でのリーダー格である石崎くんが率先して一歩を踏み出し、清隆くんに対して威圧的な雰囲気を醸し出してくる。

 

 他の二人も同様で、期待を裏切られたこととちょうど話し合いに参加していた人物ということで強い警戒心を剥き出しにしている。

 

 私たちからすれば、この程度の威圧なんてそよ風どころか無風にも等しい。

 

「櫛田はここには来ないぞ。例のメールは真っ赤な嘘だ。オレが彼女に頼んで嘘のメールをさせた」

 

 石崎くんが明らかに不機嫌そうな足取りで清隆くんに詰め寄っていく。

 

「ふざけやがって。いったい何の真似だ?」

 

「こうでもしないとお前らは無視するだろうからな。話し合いがしたかったんだよ」

 

「話し合いだと? そんなものが俺たちに必要なのか? 暑さに頭でもやられたんじゃねえのか?」

 

 確かに清隆くんは少し暑さに弱いかもしれないけど、この程度でやられるほどヤワな頭はしてないよ。

 

 物理的にも知能的にも。

 

「どう足掻いても事実は隠せねーんだよ。俺たちは須藤に呼び出され殴られた。それが答えだ。それ相応の報いを大人しく受けろ」

 

 さて、そろそろ出番かな。

 

「どう足掻いても事実は隠せないかぁ。確かに石崎くんの言う通りかもね」

 

「なっ、一之瀬!?」

 

 話しは終わりだと言わんばかりに、私は背を向けようとした石崎くんたちを通せんぼするように立ち塞がる。

 

「嘘で大勢を巻き込んだ君たちからそんな説得力のある言葉が出てくるなんて、正直驚いちゃったよー。ううん、だからこそかもしれないね」

 

 全部分かってますよと言うような私の口振りに、少なからず動揺を見せる石崎くん。

 

 まだまだ取り乱すには早いよ3人とも。

 

「…………俺たちは嘘を言ってない。被害者なんだよ俺たちはな。ここに呼び出されて須藤に殴られた。それが偽りなき真実なんだよっ!」

 

 自信満々だったさっきまでと違って、かなり弱々しい反論で引き下がらせようとしている。

 

 でも、もうそろそろこの茶番劇もお開きの時間だよ。

 

「えーい、悪党は最後までしぶといっ。そろそろ年貢の納め時だよ!」

 

 まさかこの台詞をリアルに言う日が来るなんて夢にも思わなかったな。

 

 今は大事な場面なんだから、嬉しすぎて顔がにやけそうになるのをなんとか抑える。

 

「昨日も言ったけど今回の事件は、君たちが嘘をついていること。最初に暴力を振るったこと、全部お見通しなんだよね。それを明るみにされたくなかったら今すぐに訴えを取り下げるべし」

 

 視線だけで清隆くんが、もうお前に任せてもいいかと訴えてくる。

 

 ダメだよ最後まで付き合ってとこっちも視線で返す。

 

「訴えを取り下げろだと? 笑わせんなよ。寝ぼけたことぬかすんじゃねぇ。お前らBクラスの証言なんて当てになんねえんだよ。あれは須藤が喧嘩を仕掛けてきたんだ。なあそうだろ?」

 

 石崎くんの声に他の二人も強く同意する。

 

「もう少し頭を使いなよ。君たちの狙いなんて、最初からバレバレなんだよ? 昨日の話し合いで必死に嘘をついてる君たち、一周回って同情したくなるくらい可哀想だったよ?」

 

「あ? バカにしてんのか?」

 

「事実だもん。それに今回の学校側の対応だけど、随分とおかしいとは思わなかった? 君たちが学校側に訴えた時、どうして須藤くんがすぐに処罰されなかったのか。数日間の期間を与えてまで、挽回するチャンスを与えたのか。答えは単純。学校側は、君たちDクラスが嘘をついてることを知ってるってことだよ。それも最初からね」

 

 普通は誰も考えたりはしないだろうね、訴える前から学校側がそれを認知していてわざわざあんな茶番劇の主催者になっただなんて。

 

「笑わせんなよ。俺たちが嘘をついていて、それを学校側は知ってるだと?」

 

「君たちはずっと手の平で踊らされていたんだよ。確実な証拠だってある。アレを見れば分かると思うけど」

 

 私は、この廊下の少し先にあるものを指差した。

 

 つられるように、石崎くんたちもそちらに視線を向ける。

 

「なっ──────!?」

 

 あり得ないものを見たかのように、驚きに満ちた声が漏れる。

 

 特別棟の廊下の天井付近で、隅々までその目をあちこちに向ける監視カメラ。

 

「ありゃりゃ、あれはばっちり映ってるだろうね。決定的な瞬間が」

 

「ば、馬鹿な!? 何でカメラがここに!? ウソだろ!? だって、他の廊下にはカメラはなかったし、ここにも無かったはずだ! 映ってるわけねえ、俺たちが先に須藤に殴り掛かったとこなんてのは!」

 

 ──────カチッ。

 

「はい、ゲームセット」

 

「…………は?」

 

「やっと言質取れたね。苦労したよー」

 

『ば、馬鹿な!? 何でカメラがここに!? ウソだろ!? だって、他の廊下にはカメラはなかったし、ここにも無かったはずだ! 映ってるわけねえ、俺たちが先に須藤に殴り掛かったとこなんてのは!』

 

 一言一句違わずに流れる石崎くんの声。

 

 見事に彼らが口にした文字通り決定的な証拠。

 

 事前に購入しておいたボイスレコーダーが功を奏した瞬間だった。

 

「これを学校側に提出したらどうなるだろうねー。君たち全員は退学、Dクラスはクラスポイントの大幅減点は免れないんじゃないかな」

 

「てめえ! 俺たちを謀りやがったな!」

 

「君たちが親切に話してくれたんじゃない。ありがとう、本当に助かったよ!」

 

「おい、どうすんだよ石崎! このままじゃ俺たち退学になっちまう!」

 

「クソが! 元Dクラスの不良品どものくせに! なめやがって! まだだ、そいつさえ壊しちまえば証拠だって…………」

 

「結論を出すのは早いんじゃないか?」

 

「清隆くんの言う通りだね。そこでDクラスのみんなにある提案をしたいと思います」

 

 私の突然の提案に呆気にとられる石崎くんたち。

 

「大人しく訴えを取り下げること、それをすれば事件が存在しなくなってどっちのクラスも救われる。この条件をのんでくれれば、君たちを咎めることは絶対にしないって約束するよ。退学か、それともお互いの状況を事件前に戻すか。どっちがいい?」

 

 どっちを選んでも彼らにとっては地獄なんだけどね。

 

 退学は言わずもがな、後者を選んでも龍園くんによる折檻が待っているんだから。

 

 原作のやり方だと自棄になられて学校側に確認されたら一貫の終わり。

 

 確実に事態を収束させるための一手。

 

 偽の監視カメラとボイスレコーダーを合わせて5万ポイントもの出費。

 

 必要経費ということでここは呑み込んでおこう。

 

「一之瀬の提案を受け入れよう石崎!」

 

「ま、待て! あの人に確認しねえと…………やべえだろっ」

 

「もう俺たちの負けだよ! 退学だけは嫌だ! 頼むよ、石崎っ」

 

「…………くっ! わかった…………取り下げる…………取り下げればいいんだろ…………」

 

 提案を蹴った瞬間に突きつけられる退学という名の死刑宣告を前に、石崎くんはなす術なく膝をついた。

 

 絶対的な敗北を刻みつけられて。

 

 

 

 

 

 

 

 Dクラス3人を生徒会室に放り込んだあと、私たちは監視カメラを取り外しに特別棟に来ていた。

 

 完全犯罪に後処理は欠かせないからね。

 

「いやーすっきりすっきり! 完全勝利だったね! ありがとね、手伝ってくれて。気持ち良かったよ~」

 

「オレはほとんど何もしてない。帆波が勝手にやって、勝手に勝っただけだ」

 

「にゃはは。それでも手伝ってくれたのは本当だもん。とりあえずは一件落着ってことで」

 

 後処理を済ませたらアイスで勝利の祝杯といくのもいいかもね。

 

 夏になると身体がアイスを求めるのか、祝杯にもアイスを持ち出す始末。

 

 もしかして私ってアイス中毒になりかけてる? 

 

「それにしても意外だったな」

 

「意外って、何が?」

 

「帆波なら確実にあいつらを退学させると思ってたからな。クラスメイトが陥れられたんだ、おまえの中ではそうするには充分すぎると思うが」

 

 確かに須藤くんを卑劣な嘘で追いつめたことは許すつもりはないけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()? 

 

 それにこれは彼らの成長のための一歩だからね。

 

「帆波がいいなら、オレも別に構わないけどな」

 

 清隆くんからは深くは突っ込まれることはなく、あっさりと引き下がってくれた。

 

 私がどうしたいのか、なんとなく想像がついたからだろうけどね。

 

 監視カメラの取り外しを終えて、私たちは一度それぞれの部屋に戻ったあとで愛里ちゃんや須藤くんとも合流。

 

 4人で食べたアイスは普段食べているものよりも格段に美味しく感じた。

 

 

 

 




ちょっとだけホワイトルーム生らしさが出ちゃった帆波さん

結末は同じですが、過程は少しだけ違います
この過程にも意味はあるので今後の展開をお楽しみに
これで2巻の内容も終わりです!


帆波(憑依)に『■■のホワイトルーム生』的な二つ名をつけるとしたら

  • 慈愛のホワイトルーム生
  • 偶像のホワイトルーム生
  • 単純にホワイトルーム生No.2
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