転生したら帆波ちゃんだったので、綾小路君の相棒になってみようと思います 作:レイラレイラ
「チェックメイト」
「くっ、もう一度だけお願いします!」
「にゃはは、もう何度目かな。もう一度だけって言ったの」
再び失った意識を取り戻してから、私は坂柳さん(お父さん)の所に連れていかれてそれはもう何度も謝られた。
有栖ちゃんのお父さんは『高度育成高等学校』の理事長というだけあって、そういうことにはしっかりしているみたいで娘と同い年の私に対しても深々と頭を下げてきた。
あの事故は未遂で済んだということと、何よりも私がボーッとしていたことで起きたことだからと説得するとようやく頭を上げてくれた。
でも、さすがに何もしないわけにはいかないって言われちゃって。
だから私はこう言ったの。
『有栖ちゃんとお友達になってもいいですか』ってね。
私なら有栖ちゃんにも色々と合わせられるし、坂柳家と関わることメリットも多いから一石二鳥なんだよね。
そして現在、私たちはこうしてチェスに興じている。
まだこの時点ではチェスをやったことがなかったみたいで、とりあえずルール説明から始めた。
さすがは天才有栖ちゃん。
すぐにルールを覚えるだけにあきたらず、プロもびっくりの戦略を編み出してきたぐらいなんだから。
といってもそこは年季の差が出てくるというもので。
前世でも私はチェス部に所属するほどチェスが大好きだったし、プロになる気がなかっただけで実力だけで言えばプロレベルはあったと思う。
転生してからも勉強だけだと飽きるから脳内チェスを毎日のようにやってたわけだけど、そのおかげもあってか今のところ負けはない。
戦績を言ってしまうと15戦やって全勝してしまった。
いくらなんでも五歳児に負けてたら、精神的に大人なんだから面目丸つぶれもいいとこ。
大人だったら勝ちを譲ってやれって?
勝負の世界は厳しいのだよ。(無慈悲)
というより、一度だけわざと負けるように打とうとしたらおもいっきり睨まれちゃったんだよ。
接待プレイは好みじゃないのは分かっているけど、中身が中身だからどうしても年下に見てしまう時がある。
だから全力で打ち負かした。
そしたらもう一度、もう一度って何度もせがまれるようになっちゃって。
「今日はもうおしまい。お母さんたちも心配してるだろうし、そろそろ帰らないと」
「私をこんな風にしておいて、いらなくなったらポイですか。ちゃんと責任取ってください」
「えぇ…………」
どこで覚えたのそんな言葉。
大人顔負けなほど頭良いのは知ってたけども、何で齢五歳でそんなこと知ってるの。
私みたいに前世の記憶持ちだったりする?
「許して有栖ちゃん。また今度ね」
某ブラコン忍者さんみたいにおでこにコツンとしてやると、むすっと拗ねたような顔を見せる有栖ちゃん。
くっ、可愛すぎる!
その顔はお姉ちゃんに効くんだよ!
「…………今日は勘弁してあげます。でも、また来てくださいね。勝ち逃げだけは絶対に許しませんよ」
「もちろん。せっかくまともにチェスで張り合える相手が出来たのに、それを逃すわけないじゃない」
「張り合えるって、一回も勝ててない相手に言う台詞としてはどうかと思いますよ?」
「そうなんだけどね。でも何だか嬉しくって、ついね」
「はぁ…………まったく仕方のない人ですね。必ずあなたを負かしてギャフンと言わせてやります」
「ふふっ」
「…………なんですか」
「なんでもないよ~」
最初は警戒していたはずなのに、気づけば有栖ちゃんはもう友達と言ってもいい間柄になっている。
こんな子といつか競い合えたらすごく楽しいだろうな、私はそんな風に考えながら例の黒塗りの高級車に乗せられて帰路を辿る。
でも、それが叶うのは私たちが『高度育成高等学校』に行ってからになるということをこの時点の私はまだ知らなかった。
「あ、ここで降ろしてください」
運転手さんに頼んで、さっきの横断歩道がある場所に降ろしてもらった。
何で家まで送ってもらわなかったかと言うとね、お母さんたちをびっくりさせちゃうかもしれなかったから。
夕日もほとんど沈んでいて、もう夜になりかけている。
特にうちは門限とか言われてるわけではないけど、まだ小学生にもなっていない子どもが帰ってくるには遅い時間だった。
それに私が事故にあいかけたと知ったら、余計に心配をかけてしまっていよいよ申し訳なくなってくる。
まずはごめんなさいからの方がいいのかな。
それともただいまの方が安心する?
友達の家にお呼ばれしてたら遅くなっちゃったとか…………ちょっと言い訳くさい気がする。
…………もうすぐ家に着いてしまう。
久しぶりに感じたな、この帰りづらい気まずい感覚。
特別悪いことをしたわけじゃないんだけど、親に心配をかけるようなことをしちゃって帰りづらくなる。
それでまた帰るのを躊躇って、さらに気まずさが増していく悪循環。
こういうのはお互いのためにも、スパッと覚悟を決めて帰るのが一番だと思う。
──────キィと、車がすぐ側で止まる音が聞こえた。
暗闇に紛れてよく見えないけど、車種は多分ハイエースの類い。
カラーリングから見ても夜になったらほとんど目立たないだろう。
スライドドアがスッと開かれ、黒づくめ+サングラスの男性が数人出てくる。
「なっ、なになに!?」
何だかお金持ちのお嬢様が連れ去られるシーンみたいだな、そんな場違いなことを考えてしまうくらい動揺していた私だった。
でも危機感だけは確かに残っていて、囲まれる前にさっさと逃げようと思った瞬間、
「むぐっ」
背後から誰かに捕らえられ、変な匂いのする布のようなもので鼻と口が塞がれてしまう。
どんどん意識が遠ざかっていく。
身体がふわっと持ち上げられる感覚と、ゆさゆさと揺れる感覚が完全に意識が途切れてしまう前に私が最後に感じたものだった。
目が覚めてすぐに視界に入ってきたのは
真っ白な雪原って言ったほうが分かりやすいかな。
白一色の世界は穢れを許さないと言わんばかりで、私の髪の色すらも異物なのではないかと錯覚させる。
何故か着ている服もブカブカのワイシャツみたいなものに変えられていて、何というか下の方がスースーする。
この空間、今の自分の状態など、それらを鑑みてすぐに全てを理解した。
まず間違いなくここは『ホワイトルーム』なんだろう。
こんなアニメぐらいでしか見ない部屋とか見れば、何かは分からなくても候補ぐらいは絞り込めるだろうし。
それよりもお母さんたちは大丈夫かな…………
どうしてホワイトルームが私を狙ったのかは想像がつくけど、二人に余計な被害が及んでいないことを祈るしかない。
年齢的に考えても、私はきっと『魔の4期生』のうちの一人になっているはず。
ということはカリキュラムも一段と厳しいのは明確。
だって綾小路くんがいるはずだもの。
だったら、私は何がなんでも生き残る。
絶対にホワイトルームもとい、綾小路くんのお父さんには負けないんだから!
なんかよく拉致られる帆波ちゃん
ホワイトルームなら拉致ってもおかしくないよね
帆波(憑依)に『■■のホワイトルーム生』的な二つ名をつけるとしたら
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慈愛のホワイトルーム生
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偶像のホワイトルーム生
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単純にホワイトルーム生No.2