転生したら帆波ちゃんだったので、綾小路君の相棒になってみようと思います 作:レイラレイラ
他の方とサブタイが被っていたのがわかったので変更しました
私たちは話し合いの末に3人ずつの4チームを作って、ひとまずは3時までにさっきまでの場所に戻ることを条件に探索を開始した。
私は清隆くんと愛里ちゃんの二人と一緒に森の中を程よいペースで歩いている。
清隆くんと二人だけなら人目がないのをいいことに全力ペースであちこち動きまわれるだろうけど、愛里ちゃんに合わせると必然的に平均以下のペースになってしまう。
もちろんそれを責めるつもりは欠片もないし、ましてや愛里ちゃんを置いていこうなんて気は更々ない。
それに何処から見られてるのか具体的に分からないから、迂闊に清隆くんに全力を出してもらうわけにもいかないしね。
「愛里ちゃん大丈夫? そろそろ休憩しようか?」
「だ、大丈夫だよ。せっかく立候補したんだから役に立ちたいし」
森の深くまで進むにつれて道も険しくなっていることあって、ジメジメした暑さも手伝い容赦なく体力を奪っていく。
足場も悪く不安定な上に、徐々に坂になっていくのも要因の一つなんだろうね。
森のあちこちに視線をやっていると、愛里ちゃんが声をかけてきた。
「本当に帆波ちゃんはすごいな…………」
「すごいって何が?」
「だっていきなりこんな無人島に連れてこられて、みんなに的確に指示を出してクラスを纏めてる。普通の人にはそんなこと出来ないよ」
「あははは。私は出来ることをやってるだけで、特別すごいことをしてるつもりはないんだけどな」
少なくとも私にとってはごくごく当たり前のことであって、今も幅広い手札を有効活用しているだけ。
特別なことは何もないんだよ。
「帆波は出来ないことを探す方が難しいんじゃないか? オレなんかじゃ、一生かかってもこいつに勝てる部分が見つからないだろうな」
清隆くんの擬態のためとはいえ、事実と180度真逆のことを言われている状況に一言もの申したいところだ。
私が清隆くんに勝てるものは料理と人脈の多さくらいなもの。
チェスだって今に勝ち越したことが無いし、これだから公式チートくんは!
「それにしても、帆波ちゃんは何処に向かってるの? 周りはこまめに見てるけど、基本的に足取りに迷いがないって感じがする」
さすがは愛里ちゃんというべきか、細かい部分までよく見てるね。
この観察力を鍛えれば必ず大きな武器になってくれるはず。
ご褒美というわけじゃないけど、そろそろ話してもいいかと愛里ちゃんに目的地に関して話すことにした。
「ここからしばらく進んだ先に洞窟があるの。そこが学校の用意したスポットだと思うんだ」
「もしかして、さっきの島の周りを回ってたのって…………」
「十中八九学校側からのヒントだろうな。普通ならアナウンスで意義あるだなんて変な言い回しはしない、そうだな帆波」
今もさらっとこっちに意識が行くように丸投げしてきたよ。
私も好きでやってるから全然いいんだけどね。
「そういうことっ。でも愛里ちゃんに無理させるわけにはいかないし、もう少しだけペースを下げよっか」
「わ、私は大丈夫だから。頑張ってついていくよっ」
かなりの汗をかいていながらも、懸命に頑張る意思を愛里ちゃんは見せてくる。
この頑張りを否定するようなことはしたくない。
だから私は愛里ちゃんの決意を尊重することに決めた。
「どうしても辛くなったらちゃんと言ってね。清隆くんは愛里ちゃんの後ろについてあげて。転びそうになったら支えられるからね」
「わかった」
「お、お世話になります…………」
私を先頭に、愛里ちゃんを挟むように後ろに清隆くんが位置するように列を作った。
これでいざというときに前後から愛里ちゃんをサポート出来る状態が出来上がるというわけだね。
そういえば、動き出す前にやらないといけないことがあったのを思い出した。
「ちょっと道の安全確認をしてくるから、二人はここで待っててくれるかな。3分もしないうちに戻ってくるからさ」
「き、気を付けてね」
わかったと言うように軽く頷くと、私は清隆くんたちから離れて先へと進んだ。
草木が生い茂っている部分を注意深く進んでいると、ちょうど足下に違和感を覚えて足を止める。
もしも私の想像通りなら『あれ』があるはずだ。
茂みをかき分けて探ってみたところ、明らかに不自然な違いが現れる。
「やっぱりあったね」
茂みとは違う緑の葉っぱに、一部の箇所から黄色い実が顔を覗かせていた。
学校の用意した人工的に栽培されたトウモロコシなのは土をざっとみた限りでも充分に分かる。
念のために一本だけ引き抜いてよく調べてみると、スーパーなどで売っていても不自然じゃないほど綺麗な形のトウモロコシだった。
場所を見失わないようにハンカチを丈夫そうな木の枝に結びつけてマーキングしておくことも忘れない。
引き抜いたトウモロコシを持ったまま二人のもとへ戻ると、愛里ちゃんは心底驚いたように声をあげた。
「凄いよ! これトウモロコシだよね!? そんなの何処で見つけたの!?」
「この先の道に危ないものが無いかチェックしてた時に見つけたんだ。これで食料に使えるポイントも削減出来るんじゃないかな」
「お手柄だな。でも、一度に多くは運べない上に今は探索の途中だ。トウモロコシを運ぶのは戻ってからにすべきだな。探索にも支障が出る」
「うん、だから目印も残してきたよ。平田くんのところに戻ったら報告だけしておこうか」
ひとまずの方針だけ定めたら、私たちは再び洞窟への進行を再開した。
数分道なき道を進んだところで開けた場所に出た。
人が切り開いたと思わしき道は大木が排除され、整備し踏み鳴らした跡もある。
この無人島においてはスポットが近い証拠に他ならない。
「ここって…………道、なのかな?」
「そうみたいだな」
三人で切り開かれた道を歩いていく。
程なくして辿り着いたその場所は、まさしく私たちの目的地である洞窟の入り口だった。
天然の洞窟に見えるものの、中はしっかりと補強が施されていることからも明らかに学校側の手が加わっていることが分かる。
洞窟自体も人が作ったものであるかまでは不明だけど、そこは大して重要な問題じゃない。
「凄いよ! 帆波ちゃんの言う通りだったね!」
洞窟を確かめるべく愛里ちゃんが先行して駆け出そうとしたところで、一人の男子が出てくるのに気づいた私は愛里ちゃんの腕を引いて物陰に引き込んで姿を隠す。
清隆くんも反対の茂みに身を隠していて迅速な反応に感心する。
こっそり男子生徒の様子を窺ってみると、特徴的な人物だったからすぐにAクラスの葛城くんだと判明した。
葛城くんは入り口の前で立ち止まってジッとしたまま、南西の方角を1、2分ほど見据えて佇んでいる。
戸塚くんと二人で早々にスポットの確保に向かったのなら、なかなかのスピードだと言わざるを得ない。
しかもキーカードを名前を見えないようにちらつかせているあたり、隅々にまで保険をかけていくという周到っぷり。
葛城くんに続いて戸塚くんも出てきた。
二人は何度か言葉を交わすと、何処かへと移動を開始した。
多分他の施設の捜索に向かったんだろうね。
戸塚くんのBクラスへの非難は相変わらずだったみたいだけど気にしたってしょうがない。
物陰から少しだけ顔を出して周囲を探ってみても、二人の姿は確認出来なかったために一息をついた。
なんだか愛里ちゃんの手にかかる比重が重くなった気がする。
気をつけていたつもりだったけど、いつの間にか力を入れすぎてしまっていたのかもしれない。
「ごめんね愛里ちゃん。苦しかったよね」
「だ、だだだ大丈夫! むしろご褒美だから! 心臓が止まるかと思ったけど、全然平気だから!」
「そう? ならいいんだけど…………」
最近愛里ちゃんの言っている意味がよく分からない時がある。
顔も沸騰しそうなほど赤い上に、息も何故か平時よりすごく荒くなっている。
「さっきの二人組。話の内容からしてAクラスみたいだったな」
「そうだね。清隆くんは愛里ちゃんを見ててあげて。私が様子を見てくる」
「悪いなさっきから。帆波に頼りっぱなしで」
「あはは。気にしないで、私が好きでやってることだしさ」
洞窟の内部に入ると、モニター付きの端末装置が壁に埋め込むようにして設置されていた。
画面にはAクラスと表示されていて、7時間55分とカウントダウンを刻んでいた。
これで他クラスは一切の手出しが出来なくなったわけで、私は早々に諦めて洞窟を出ることにする。
愛里ちゃんも復活したのか、二人は洞窟まで歩いてきていた。
「もしかしてさっきの人がリーダーってこと? だとしたら凄い秘密、知っちゃったね」
「うーんそれはどうかなぁ。カードの名前が見えなかったし、フェイクの可能性があるかも。平田くんたちにもこの情報は共有はするつもりだけど、過信はしない方がいいかもね」
「そ、そうだね…………」
洞窟の件は不発に終わってしまったからここに残る理由も無いし、私たちはさっさと撤収することにした。
平田くんたちにトウモロコシとスポットについて報告した時の反応は見事にアップダウンを繰り返して面白かったことだけ伝えておく。
もっとも平田くんは冷静なままだったけどね。
ちなみに高円寺くんはあちこち自由に駆け回った後で海に向かったそうです。
本当に自由な人だなぁ。
「ここだぜ! 俺たちが見つけたスポット! どうだ凄いだろ!」
「凄いよ池くん! 水も綺麗だし、いい感じに日光も遮られてる。地ならしした地面に開けた空間。理想のキャンプ地だよ!」
「へへっ。まあそれほどでもあるぜ」
他の探索チームも戻ってきたところで、池くんの先導のおかげで川辺のスポットに辿り着くことが出来た。
不自然な大岩が一つあって、そこに装置が埋め込まれている。
テントなどの必要荷物を川の側に置くと、みんなを一纏めにして作戦会議を開くことにした。
「リスクはあるかもしれないけど、背の高い人に壁になってもらってリーダーになった人にはキーカードで占有してもらうってことでどうかな? 川の占有が出来るのは大きいしね」
「となると、問題はそのリーダーを誰にするかだね。かなりの重役だから出来れば責任感のある人に任せたい」
平田くんの言うようにリーダーを誰にするかは死活問題だ。
私が指名するのは簡単だったけど、ここは敢えて待つことにした。
ある人物に堀北さんを推薦してもらうために。
「ちょっといいかな」
予定通りに桔梗ちゃんが小さく声をあげてくれた。
誰もが嫌がる役目を堀北さんに押しつけられるんだから、堀北さんを嫌ってる桔梗ちゃんが動かない理由はない。
「私も色々と考えてみたんだけど、平田くんも帆波ちゃんも嫌でも目立っちゃうでしょ? でも、リーダーを任せるなら平田くんの言うように責任感のある人がいいよね。その両方の条件を満たしてるのは堀北さんだと思うんだ」
堀北さんもリスクなどの諸々を考えれば断るわけがない。
「私も堀北さんに任せたいかな。お願いできるかな堀北さん」
「……わかったわ。私が引き受ける」
数瞬だけ間を置いたあとで、堀北さんはため息をつきながら了承してくれた。
堀北さんの同意が得られたと同時に平田くんが茶柱先生のもとに向かい、キーカードを受け取って戻ってくる。
キーカードは堀北さんに託されて、全員がさりげなく装置に触れることでカモフラージュも行った。
「占有も無事に済んだわけだけど、次の問題が川の水かな」
誰かが川に触れるまえに私が率先して水を掬うと、躊躇なくそれを口の中に入れた。
「ちょっと、一之瀬さん!?」
「今すぐ吐き出して! もし雑菌とかあったら…………!」
全体にドッと広がる動揺の空気。
慌てて駆け寄ってくる篠原さんたちがおろおろとしているのは申し訳ないけど、飲み水として大丈夫なのは分かってるから私が慌てる必要はない。
「大丈夫だよ。味も問題ないし、周囲の環境から見てもここは人工的に作られた場所なのは間違いない。念のために時間は空けておいて、私がお腹を下さなかったら飲み水として使おうよ。それに池くん」
「な、なんだよ。帆波ちゃん」
「池くんは何て言うか、全然慌ててなかったよね。私がこの水を飲んでも大丈夫だってわかってたんじゃない? もしかしてキャンプ経験者だったりするのかな」
「あ、ああ。一応あるけど、そんなに自慢出来るものじゃないっつうか」
「そんなことないよ。素人と経験者だと信頼度も違うし、安心してそのあたりの指揮を任せられるからね。池くんにやってもらいたいんだ」
「…………おし。わかったぜ、この池様に任せておきなっ!」
「うんっ。お願いするね」
私の指名でキャンプの指揮を取ることになった池くん。
男女問わず耳を傾けていて、水に関するトラブルは一つ回避出来たことになる。
そして70ポイントを消費することでハンモック、調理器具、小型テントにランタンに仮設トイレや釣竿、さらにウォーターシャワーに食料品諸々を買い揃えた。
支給されたテントは男女1つずつ、じゃんけんで負けた人はハンモックと小型テント組になるということで決着がついた。
帆波(憑依)に『■■のホワイトルーム生』的な二つ名をつけるとしたら
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慈愛のホワイトルーム生
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偶像のホワイトルーム生
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単純にホワイトルーム生No.2