転生したら帆波ちゃんだったので、綾小路君の相棒になってみようと思います   作:レイラレイラ

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今回は帆波が綾小路くんとイチャイチャします

一部綾小路くん視点入ります


刹那の休息

 無人島特別試験も3日目に入って、これといったトラブルも起きることなく過ごすことが出来たと思う。

 

 何か変わったことがあったとするなら、Bクラス全体のビーチフラッグ大会を行ったぐらいかな。

 

 余った大きめの段ボールを旗の形に切り取って砂浜に埋め、一定の距離を置いた上で審判の合図のもと旗に目掛けて猛ダッシュする。

 

 最終的に旗を取った人が勝利するというシンプルな対決方法を採用し、男女別のトーナメント形式で最強を決めるというごくありふれたもの。

 

 強制ではなくあくまでも任意参加だったからか、目立ちたがらない生徒や運動を得意としない生徒は不参加ということでBクラスのうち半分程度しか参戦しなかった。

 

 ちなみにビーチフラッグの男子優勝者は須藤くんで、女子優勝者は私だった。

 

 特に優勝賞品があるわけでもないから、得られるものと言えばクラス内でちょっと優越感に浸れる程度のもの。

 

 

 それでも学校の友達と旅行先でワイワイ遊ぶという行為はとても心踊ったのは確か。

 

 これが本当の青春なんだなと実感しつつ、この世界では小中学校にも経験出来たことを全て不意にしてしまったんだなと勿体ない気持ちにもなる。

 

 ホワイトルームでは決して経験出来なかったこの一時は何物にも代えがたい、代えちゃいけないものなんだとしみじみと実感する。

 

 昨日の思い出を振り返るのも終わりにして、今は4日目のお昼頃に一人でビニールシートを広げて腰を下ろしながら海を眺めている状態。

 

 昼食後にこっそりと抜け出した私は、愛里ちゃんも清隆くんもいない一人っきりの時間を過ごすことにした。

 

 どうしてそんなことをしたのかと聞かれれば、大切な人たちとの大切な時間の尊さを再確認するためかな。

 

 私は元来寂しがりやな性格で、人との繋がりを多く作っているのもその寂しさを誤魔化すためでもあった。

 

 そしてDクラスのベースキャンプは見る影もなく、寝そべってごろごろしたとしても誰にも文句は言われないだろうね。

 

「海綺麗だな…………」

 

 船の上から見る海も、みんなと一緒に遊んでいる時に見る海も格別だったけど一人で見る海というのもなかなか乙なものだと思う。

 

 日焼け止めはしっかりと塗っておいたとは言っても、それでも多少は日焼けするだろうから覚悟はしておいた方がいいかもしれない。

 

 ただ一人でいるとどうにも退屈で、3日半ぐらい蓄積した疲労と合わさって徐々に眠気を誘発させる。

 

 その気持ちのいい眠気に委ねたまま、私は深い眠りに落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

「無防備なやつだな」

 

 Aクラスの調査を終えてからDクラスの様子を探るべく浜辺までやっきたが、帆波が幸せそうにスヤスヤと眠る姿を見て思わずそう口に出してしまった。

 

 肉付きのよい太ももや足の先、美しい顔や自己主張の激しい胸などにどうしても視線が行ってしまう。

 

 年頃の男子であれば手を出すとはいかないまでも、悶々とした気分になることは想像に難くない。

 

 現にオレも例外ではなく、こいつに触れようとする手を無理矢理抑え込むので必死だ。

 

 だからといってこのままこいつを一人にはしておけないし、ボディーガード的なものだと言い訳しながら帆波の隣に腰を下ろす。

 

 そしていざ近づいてみると、さらさらな髪が目について無意識に手を伸ばす。

 

 触れてみると指をすり抜けているんじゃないかと錯覚させるような優しい触感に、感嘆の声が出そうになった。

 

「っ…………」

 

「おっと…………」

 

 さすがに起こしてしまったかと慌てて手を引っ込めるが、僅かに身じろぎしただけで再び寝息をたて始める。

 

「んぅ…………」

 

 本当に何をやっているんだろうな、オレは。

 

 無防備に眠る帆波の姿を見て、オレはどうしても心配で堪らない気持ちになってしまう。

 

 普段は誰にもフレンドリーに接する癖に、隙を見せるようなことは一切ない少女が眠っている時はこうも隙だらけなのかと。

 

「き……く…………ん…………」

 

「ん?」

 

 寝言のようなものが聞こえ、それを聞き取るために帆波の口元に耳を寄せる。

 

 これは純粋な興味であって、やましい行為なのではないのだと自分に言い聞かせる。

 

「清隆くん…………行かないで…………」

 

 オレに置いてけぼりにされる夢でも見ているのだろうか。

 

 何があろうとオレは帆波と別れてどこかに消えるつもりはないし、離れ離れにならないように最善は尽くすつもりでいる。

 

 こいつがいない未来など考えたくもない。

 

「んー…………」

 

 あまりにも近づきすぎたためか、オレの存在に気づいた帆波の目蓋はうっすらと開いていく。

 

 まだ意識が完全には覚醒していないようで、その目の焦点は合っていない。

 

「清隆くん…………見ーつけたー…………」

 

 ぼんやりとした顔も可愛らしいと思いながら見ていたために、警戒を怠ってしまい帆波が突き出してきた腕に難なく捕まってしまう。

 

 沈み込むような柔らかな胸に顔を押しつけられ、色々な意味で呼吸がままならなくなってしまう。

 

「えへへ…………清隆くんはいい匂いだねー…………」

 

 誉めてくれるのは素直に嬉しいが、現実は天国のような地獄状態だ。

 

 まさかホワイトルームの刺客が来る前に想い人に殺されることになるとは夢にも思わなかった。

 

 このままでは不味いと、せめてもの抵抗として帆波の腕を少し強めに叩いてみる。

 

「っ…………ぅん…………」

 

 それが功を奏したのか、オレの頭部を拘束していた腕の力が緩むのを感じてなんとか抜け出すことに成功する。

 

 眠っている時の帆波の方が圧倒的に危険だと認識させられたところで、帆波の肩を揺すって起こすことにした。

 

 帆波は眠たそうにしながらも上半身を起こすと、程なくしてオレの存在に気づく。

 

「…………清隆くん?」

 

「よく眠っていたな。まさかその胸で窒息死を狙っていたとは思わなかった」

 

 細やかな意趣返しとして、先ほど帆波が寝ぼけてした行動を話してやると彼女の頭が突如ポンッと湯気を吹いた。

 

 顔もトマトのように真っ赤に染めて、羞恥心でいっぱいになっているのが端から見ていてもよくわかる。

 

 オレのセクハラ発言も多少はあるだろうが、それは後で謝っておくとしよう。

 

「ま、まさか…………あれって夢じゃなかったの…………!?」

 

「顔を近づけたことについて言ってるなら、そうだな。こんなところで寝ているから様子を見に来てみれば、水中に潜むワニに食われたような有り様だったからな」

 

 表現としては大袈裟だったかもしれないが、オレにとってはそれほどの緊急事態だったということを理解してもらいたい。

 

 心臓が今もばくばくと鳴り続け、まるで収まる気配を見せてくれないのだ。

 

 あまりお互いに恥ずかしい思いをし続けるのもあれだと考え、オレはさりげなく話題を逸らすことにした。

 

 もともと帆波が起きた時にしようと思っていた話だったから、あながち関係ない話題とも言いきれないんだが。

 

「疲れたなら素直に言ってくれ。クラスリーダーだからといって、無理をするべきじゃないだろ。特に帆波は人に甘えるのが下手だからな」

 

「あははは、ごめんね。なんだか言い出しづらくってさ。お姉ちゃんだからかな?」

 

 確か帆波には妹がいるんだったな。

 

 長女というのは世話焼きな反面、甘え下手になる傾向が強いと聞いたことがある。

 

 帆波個人の面倒見のよさも相まって、余計に弱みを吐きにくくさせているのかもな。

 

「ここにはオレたち二人だけだ。多少甘えるくらいは許されるんじゃないか?」

 

「そ、そうだね。なら、お言葉に甘えてもいいかな…………?」

 

 オレが許可をすると、帆波は躊躇いがちに腕を組んできた。

 

 これが帆波にとっての甘えるという行為なのだろうか。

 

 誰かに甘えた経験がないオレにとっては何が正しいのかわからないが、彼女がしたいというなら受け入れるしかない。

 

「…………清隆くん」

 

「何だ?」

 

「もう少しだけ、このままでいてもいいかな?」

 

「好きにしろ」

 

 これが俗にいう青春というやつなのかもしれない。

 

 二人っきりの甘酸っぱい時間は、Cクラスの神崎と柴田とかいう男子生徒が来るまで続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これはまだ無人島特別試験が始まる少し前のこと。

 

 1学期終業式の日のお話。

 

 清隆くんにしては珍しく浮かれていた様子で、かくいう私も清隆くんや愛里ちゃんとの初めての夏休みを前に喜ばないはずがない。

 

 そろそろ来るというのは分かっていたはずなのに、いざ目の前に現れてみると有頂天の状態から急降下させられた気分になる。

 

「綾小路と一之瀬。帰る前に少し話がある、指導室に顔を出すように」

 

 ホームルーム終了直前、茶柱先生による強制呼び出しを食らってしまった。

 

 来なかったらお前たちは退学だという脅しをされるのが目に見えているから、拒否権はないことを嫌でも痛感させられる。

 

 愛里ちゃんに心配そうな視線を送られながら、私たちは教室を後にする。

 

 指導室前に着くと、扉にもたれかかった茶柱先生が俯きながら待っていた。

 

 逃がすつもりはないという圧力を感じるのは私の気のせいじゃないよね。

 

「入れ」

 

「私たちが呼ばれる理由に心当たりがないんですけど、それについて教えて頂けませんか?」

 

「中で話す」

 

 取り付く島もないっていうのはこういうことを言うのかもしれない。

 

 私たちは言われるがままに指導室に入れられて、何とも複雑な気分になるのは仕方ないことだと思う。

 

「指導室と聞くと嫌なイメージがあるだろうが、ここは存外に悪くない場所だ。何故なら監視の目がない。個人のプライバシーに多くかかわる話をすることが多い故の配慮だ」

 

 先生方には普通にプライバシー侵害されてるんだけどね。

 

「それで話って何です? 今から夏休みの計画を立てるので忙しいんですけど」

 

「お前たちは付き合っているのか? だったら悪いことをした」

 

「つ、付き合っ…………!?」

 

 せっかくの夏休みなんだから、私だって清隆くんと二人きりで出掛けられる日を作れないかと思案したりもする。

 

 でも誘う勇気が出なくて、いつものメンバーで落ち着いてしまうヘタレな私。

 

「今日は少し、私の身の上話を聞いてもらいたいと思ってお前たち呼んだんだ」

 

「えっと…………話長くなりそうですから、お茶でも淹れますね」

 

 先んじてパイプ椅子から立ち上がって給湯室の扉を開いても、そこには当然誰もいない。

 

 分かってはいたことだけど、念のためにね。

 

「この話を他人に聞かせるつもりはない。納得できたなら席に戻れ」

 

「…………はい」

 

 強引に帰ることも出来なくはないけど、適当に理由をでっち上げられて退学なんて目も当てられないので大人しく椅子に座り直す。

 

「おまえたちBクラスには、担任の私はどんな風に映っている?」

 

「そ、それは…………」

 

 正直に言ってしまうのもなんだか悪くて、清隆くんに視線を向けるとオレが答えると言うように茶柱先生の質問に答えてくれた。

 

「他所の担任と比較して構わないなら、Bクラスの行く末などどうでもいいと感じている、生徒に興味のない冷たい担任。といったところでしょうかね」

 

 まだある程度の差はあるとはいっても、Aクラスまでは充分に狙える位置に近づきつつある。

 

 原作以上に茶柱先生の執念には火がついているはず。

 

「間違ってます?」

 

「いや、その通りだ。否定するものは何もない。だが、その真実とは違う」

 

 過去を振り返るように天井を見据える茶柱先生。

 

 哀愁と後悔のようなものが、茶柱先生の瞳からは感じられた。

 

「私は以前この学校の生徒だった。おまえたちと同じDクラスだった」

 

「意外です。茶柱先生は優秀そうなのに、どうしてDクラスだったのか気になりますね」

 

「フッ…………。私たちの時代は今のように極端な差がある状態ではなかった。三つ巴からぬ、四つ巴とでも表現しようか。卒業が迫る3年の3学期まで、AとDの差は100ポイントもなかった。些細なミスひとつで均衡が崩れるほどの接戦だったわけだな」

 

 言葉の節々からも悔いるような雰囲気が感じ取れる。

 

「ということは、何かDクラスでその些細なミスが起きたってことですか?」

 

「ああ。ミスは突然やって来た。私の犯した過ちによって、Dクラスは地獄へと叩き落とされてしまったということだ。当然ながらAクラスに上がるという目標も、夢も呆気なく崩れ去った」

 

 もう遠い過去の話。

 

 私たちにはどうしてあげることも出来ないし、清隆くんに至ってはその気すらないだろう。

 

「話が飲み込めませんね。その身の上話とオレたちに何の関係があると言うんです?」

 

「おまえたちの存在は、Aクラスに上がるために必要不可欠だと私は感じている。特に一之瀬は大きな成果をあげているしな」

 

「冗談でしょ。帆波ならともかく、オレにそんな力はありませんよ」

 

 それこそ冗談でしょって言いたいのをグッと抑えて、今は茶柱先生の話に耳を傾ける。

 

「数日前、ある男が学校に接触してきた。綾小路清隆並びに、一之瀬帆波を退学にさせろとな」

 

 茶柱先生の言っていることは嘘だ。

 

 今の時点で清隆くんのお父さんはこの学校に来てはいないし、坂柳理事長ならともかく一担任である茶柱先生に接触するというのがそもそもとしておかしい。

 

「退学させろ、というのは当然無理なお願いのはずです。本人の意思を無視して退学をさせるなんて出来るはずがないと私は思います」

 

「一之瀬の言う通りだ。第三者が何を言ったところで退学になど出来ようはずもない。この学校の生徒である限り、おまえたちはルールによって守られている。しかし…………問題行動を起こした場合は別だ。喫煙、苛め、盗み、カンニング。何らかの不祥事を繰り返せば退学は避けられない」

 

「残念ですけど、どれもするつもりはないんで」

 

「おまえたちの意思は関係ない。私がそうだと判断すれば全てが現実になるということだ」

 

「私たちは脅されているということですか」

 

 もともと私自身はAクラスに上がるかどうかには執着していない。

 

 あくまでもこの学校で、みんなと楽しい生活を送りつつ私たちに勝てる人材に育ってもらうのが理想だから。

 

「これが取引だ、一之瀬に綾小路。おまえたちは私のためにAクラスを目指す。そして私はおまえたちを守るために全面的にフォローする。良い話だと思わないか?」

 

 どこにも良いと思える要素がないでしょう。

 

 体よく利用する気満々だよね。

 

「行くぞ帆波。これ以上この話を聞く必要はない」

 

「残念だ綾小路。おまえたちは退学になり、BクラスはAクラスに辿り着くどころかDクラスに逆戻りするだろう」

 

 茶柱先生には、躊躇う様子は微塵も感じられない。

 

 自分の成すことが出来なかった夢を、生徒を利用してまで叶えようとしている。

 

「もう一度だけ聞こう。Aクラスを目指すか退学するか。好きな方を選べ」

 

 清隆くんが長机に左手をつき身を乗り出した。

 

 茶柱先生の胸ぐらを掴み上げているけど、私には清隆くんを止める意思はない。

 

 私だけの話ならともかく、清隆くんまで退学させられるという話をブラフだと分かっていても容認出来るはずもなかったから。

 

「一之瀬が自発的にBクラスを導いているとはいえ、保険をかけておくに越したことはない。今ここで決断しろ。私に手を貸すのか貸さないのか」

 

 みんなの成長の過程でAクラスに上がることはあっても、本当の意味で茶柱先生に従う必要性は欠片もない。

 

 表向きは従っておくことにして、時が来るまでは様子見をしておくのが一番だろうね。

 

「後悔するかも知れませんよ。オレたちを利用しようとしたこと」

 

「安心しろ。私の人生は、既に後悔だらけだ」

 

 私たちの自由のために、しばらくの間は不自由を強制される。

 

 皮肉まみれのお話だった。 

 

 

 

 

 

 




綾小路くんのラノベ主人公!!(誉め言葉)

帆波(憑依)に『■■のホワイトルーム生』的な二つ名をつけるとしたら

  • 慈愛のホワイトルーム生
  • 偶像のホワイトルーム生
  • 単純にホワイトルーム生No.2
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