転生したら帆波ちゃんだったので、綾小路君の相棒になってみようと思います 作:レイラレイラ
あれから約一年が過ぎた。
ホワイトルームにいると、時間の感覚までおかしくなりそうになるから曖昧な表現もしたくなるってものだよ。
原作を読んでいたときにも思ったけど、やっぱりここはろくでもない場所だというのが正しい認識だ。
徹底的に管理された生活で自由な時間なんてありはせず、娯楽ももちろんなくカリキュラム通りにすることを強制される。
子どもたちの人生を何だと思っているのかな。
もっと自由が欲しいはずなのに、もっとやりたいことがあるはずなのにそれら全てをこのホワイトルームは奪っていく。
次々と脱落していく子どもたちを私は見ていることしか出来なくて、顔にこそ出さなくても内心では悔しさでいっぱいだ。
それでも、今は動くことは出来ない。
いつか来るホワイトルームが稼働しなくなる時期まで、私はせいぜいこの施設を利用させてもらうつもり。
まとめてやり返すためにも、とにかく鍛えまくって自分を高めることに集中しようと思ってる。
そのはずだったんだけど…………
「
「ひゃ、ひゃいっ! にゃ、にゃにかな
おもいっきりかみかみになりながらなんとか返事をする。
なんと、私に声をかけてきてくれたのは綾小路清隆くんなのです!
まだ声変わりもしてない可愛いお声で名前を呼ばれるだけで、私が抱えていた悩みなんて遥か彼方に消えさっちゃう!
本来の私にショタ適性なんてなかったけども、清隆くんだけは話が変わる。
好きな人であれば年齢なんて関係ないっていうのを初めて実感した瞬間だった。
「また外の話を聞かせてくれないか? お前の話は聞いていて飽きないからな」
「もちろん喜んで! 出来ればもっと私のことも聞いて欲しいかな!」
「もう散々聞いてるだろ。というか、こっちから聞かなくても勝手に話すのはいつものことだからな」
「にゃはは、まあそうなんだけどね。私のお気に入りのカフェの話しとかどう?」
「その話、一週間前にもしてなかったか?」
「あれ、そうだったっけ?」
今ではこうしてよく清隆くんからも話しかけてくれるようになってるけど、初対面の時は目線をくれるだけでも良い方だった。
場合によっては完全無視もありえたぐらい。
こっちから根気よく話しかけていくうちに、最初は仕方なく話を聞いている感じだった清隆くんもだんだんと耳を傾けてくれるようになった。
外に関する話をしている時でも彼の表情はほとんど変わらなかったけど、それでも熱心に私の話を聞いてくれてる時だけは割りと楽しそうにしていると思う。
やっぱり彼なりに外への興味はあったんだと感慨深い気持ちになる。
清隆くんと話している時間は、ここがホワイトルームという名の地獄であることを忘れることができるほどに幸せでいっぱいにさせてくれる。
いつか清隆くんと一緒に色んな所に行ってみたいな。
遊園地でも、おしゃれな喫茶店でも、ゲームセンターでも何処だっていい。
心から楽しいと思えることをたくさん共有したいって思う。
「じゃあ、私の男性のタイプとか…………」
「いや、それはいい」
「え~」
つれない清隆くんも素敵すぎる!
ほんの少し先の未来で私から離れていくのだとしても、清隆くんにとっての勝利のために貢献できるなら本望だ。
彼が私のいないところに行ってしまうと考えて、ほんのちょっとだけ胸が痛くなったのは気のせいだと思う。
気のせいだといいなぁ。
さらにまた半年くらい経ったと思う。
私たちは二人でチェスをやっている。
思考力向上を目的としたカリキュラムにチェスが採用されて、こういうのは順繰りで色んな人と対戦していく普通だと思うんだけど今のところその様子はない。
ホワイトルーム側の言い分としては、私たちの成績が特に突出しているから二人でやりまくれっていうことらしい。
最高傑作と言われている清隆くんをより磨きあげるために、私をゲームの経験値みたいに扱っている節がある。
実力が下の人と争わせても大したデータにはならないって言外に言っているも同然で、他の子どもたちは役に立たないという思考が丸分かりだった。
成績がほぼ同じということからすべての課題で一緒になることは決定事項らしくて、清隆くんと一緒で嬉しい気持ちが勝ってしまっている自分にちょっと罪悪感。
ちなみに成績は685戦して342勝343敗で負け越している。
一年半も対戦を繰り返しておきながら、私は一回も彼に勝ち越したことがない。
指し筋から考えても手加減されているとか、意図的にそういう結果を狙っているということもないのはわかる。
私が勝って、彼が勝つ。
それぞれあと一勝で勝ち越しという状況では、必ず清隆くんは勝ちを拾っているんだよ。
まるで私には負けたくないって意地になっているような…………なんて、そんなことあるはずないのにね。
もしもこれが監視され続ける空間じゃなくて、二人で学校の放課後にチェスをしているとかだったら思わず鼻血が出ちゃいそうなくらいに幸せなんだけどな。
今日の課題も終わって充分なデータが取れたからか、少しだけ多めに自由時間が与えられた。
娯楽も何もないホワイトルームで出来ることなんて碌に無いし、またチェス盤を持っていく許可でももらって来ようかな。
同室なのを良いことに、私たちは課題用のボードゲーム類を部屋に持ち込んでは対戦してるんだ。
向こうからしてみれば都合の良いデータ採取の機会なわけで、意外とすんなり許可が出るんだよね。
「ふっふっふ…………清隆くん、今日こそ私が勝ち越させてもらうからね!」
「そう言っておいて、何度オレに負け越してきた? そういうのは勝ち越せる見込みがあるヤツが言えるセリフだ」
「じゃあ、もしも私が勝ち越せたら?」
一瞬だけ悩む仕草を見せる清隆くん。
すぐに妙案が浮かんだらしく、私に向かって勝利のご褒美の内容告げてきた。
「帆波の言うことを何でも一つだけきいてやる。もちろんオレができる範囲でだけどな」
何でも…………何でもって言った?
もしかして、あんなことやこんなこともいいの?
脳裏にピンク色の妄想が溢れて止まらない。
ベッドの上で、しかも何にも着てなくて…………
「にゃ──────────っ!!」
清隆くん置き去りにして、先に部屋に飛び込んでしまう。
遅れて戻ってきた清隆くんとチェスをやったけど、集中力を欠いていて二連敗。
清隆くんは気を使ってくれて、今日の勝負はノーカンにしてくれた。
もしもあれが盤外戦術なんだとしたら、ちょっと意地悪が過ぎると思うな…………
原作には無いホワイトルームの設定に驚かれる方もいるでしょうが、本作なりの独自設定として楽しんでいただければ幸いです。
清隆くんの帆波ちゃんへの印象
・変なやつ
・外のことを教えてくれる同期
・気になる女子
帆波(憑依)に『■■のホワイトルーム生』的な二つ名をつけるとしたら
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慈愛のホワイトルーム生
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偶像のホワイトルーム生
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単純にホワイトルーム生No.2