転生したら帆波ちゃんだったので、綾小路君の相棒になってみようと思います 作:レイラレイラ
「…………」
「…………」
有栖ちゃんにすっごい見られてる。
それが清隆くんだったら恥ずかしいけど、やっぱり嬉しくてどうにかなっちゃいそうなのに…………
分厚い窓ガラス越しに、形容し難い滅茶苦茶な圧を感じるよ!
確かに私にも非はあるかもしれない、でもホワイトルームに拐われたのもわざとじゃないし情状酌量の余地はあると思うの!
一度は目を逸らしてもう一度有栖ちゃんに視線を送ると、もう目と鼻の先まで近づいていた。
なんかのホラーゲームみたいに一瞬で距離を詰めてきたよ!
有栖ちゃんって本当に身体弱いのかな、どう考えても人間離れしすぎてる!
キングクリムゾン発現してたりしない!?
「なあ帆波、お前の後ろにいるのは誰だ?」
「ナンダロウネー、ゼンゼンシラナイヒトダヨー」
「それにしてはずっと帆波を見てる気がするんだが?」
「キノセイダヨー」
「本当にそうか? オレの目を見て言ってみろ」
「ひゃっ!」
どんなに視線を逸らしても、その度に目を合わせてくる清隆くん。
埒が明かないと思ったのか、おもいっきり清隆くんに壁ドンされちゃった!
顔近い!
すごい良い匂いする!
心臓がばくばく言って、胸がものすごい苦しい!
でも言葉にできないくらいに幸せで、ずっとこうしていたいと願っちゃうくらい!
背後からの圧が一気に増した。
顔こそ見えないし言葉にされたわけでもないけど、『突然いなくなっておいて、人前でイチャつくとは正気の沙汰とは思えませんね』って言っているのがわかる。
なんだろう、この幸せと恐怖のサンドイッチは。
サンドイッチいいよね、最近はフルーツサンドが流行ってるしホワイトルーム出たら絶対食べたいな。
もっとも今のサンドイッチは、色んな意味で心が耐えられそうにないから遠慮したいけどね。
「あの…………清隆くん、そろそろ離れてくれないかな?」
本当なら離れて欲しくないんだけど、さすがにホワイトルームを出たあとで有栖ちゃんの折檻だけは避けたいからね。
そして何を思ったのか、清隆くんは離れることなく私をギュッと抱きしめてきた。
顔が満遍なく熱くて、さっきの比じゃないくらいに心臓が爆音をたてている。
もう何がなんだか分からなくてされるがままになっていると、背後の圧が何処かに去っていくことに気づいた。
さすがに見ていられないって、もう帰っちゃったのかな?
ホワイトルームを出た後でやることが増えちゃったな。
そもそも口を聞いてくれるかも怪しい。
数年間ずっと心配させておきながら、こうして男の子とイチャイチャしてばっかりいるんだから愛想を尽かされても文句は言えないもんね。
…………そんな風に考えていた時期が、私にもありました。
「ふふ、どうしました? いつまでも突っ立っていないで、こちらで紅茶でもいかがですか?」
真っ白な部屋の中で、ティーカップ片手に優雅に椅子に腰かけているのはニコニコ笑顔の有栖ちゃん。
お世辞にも長い付き合いとは言えないけど、どう見ても目が笑ってないのが分かる。
うん、なんとなく分かってたけどね!
有栖ちゃんに限って見逃してくれるはずがないってことくらい!
「…………いただきます」
カリキュラム自体はもう慣れたものだけど、今日は色々ありすぎて精神的に疲れちゃった。
ここに来るまでに執拗なくらい職員の人たちに身体チェックされたりしてヘトヘトだし、厳重すぎるくらいに監視カメラが付いている部屋に通されれば何とも言えない気持ちになると思うの。
せっかくの紅茶も気まずさと緊張があるせいで、味もよく分からなければリラックス効果も得られない。
うぅ…………紅茶ってこんな複雑な気分で飲むものだったっけ?
「やっぱり有栖ちゃん怒ってる、よね?」
「ええそうですね。今まで生きてきたなかでも、ここまで怒りを抱いたことはありませんでした」
嘘でもいいから怒ってませんって言って欲しかったな。
そんなことを口にすれば、私の命はないかもだろうからお口チャックするしかないんだけども。
「やっぱり約束をすっぽかしちゃったこと? その…………さっきの、イチャイチャしちゃってたこと?」
「強いて言えば全部ですね」
何が強いてるの?
普通に全部って言っちゃってるよね。
「ですが、あなたが無事だったことだけは素直に嬉しいと思っています。勝ち逃げされたわけでないとわかって安心しました」
前半だけだったら素直に喜べたんだけどな。
完全に逃がす気がない狩人の目をしてるもんだから、ちょっとだけ鳥肌がたった。
「というわけで、久しぶりに勝負をしませんか? 内容はもちろんチェスで。せっかく再会出来たというのに、このまま何もせずに帰るわけにもいきませんから」
だんだんと原作有栖ちゃんに近づいてきてるね。
視線が完全に七歳児のそれじゃないもの。
もちろんチェス勝負を吹っ掛けられて、逃げるつもりなんて毛頭なかった。
「わかった。でも、私はさらに強くなってるからね。勝てなくても泣かないでね」
「その言葉、そっくりそのままお返ししますよ。あの時の私と同じように見てるとしたら負けるのはあなたの方です」
有栖ちゃんからしてみれば、今の私は本物と紛い物のハイブリッドのように見えているかもしれない。
だからといって敵対意識を持たれてるわけでもなくて、純粋に『一之瀬帆波』を見てくれている。
だったら私も全身全霊で返さないと有栖ちゃんにも失礼だし、何より私は勝つ気しかない。
友達でもあり、ライバルでもある有栖ちゃんには負けたくないって、そう思うから。
「──────チェックメイト」
「私の負け、ですね…………」
勝負は私の勝ちだったけど、はっきり言えばけっこうぎりぎりだった。
ホワイトルームに入る前よりも遥かに強くなった自覚はあるし、有栖ちゃん相手に油断していたとかそういうこともないと断言できる。
だからこそ思うんだ。
有栖ちゃんは間違いなく本物の天才なんだって。
「ねえ、有栖ちゃん」
この監視されている白部屋の中で正直に言うわけにはいかないけど、私は一言だけ有栖ちゃんに伝えることにした。
「またやろうね!」
「…………っ! もちろんです。次こそはあなたを負かしてあげます」
本来なら子ども同士の他愛ない約束の一言。
それでも有栖ちゃんは私の意思を汲み取って対応してくれた。
あれから八年か~
何だかあっという間だったような、そうでもないような…………
こうして制服を着て、桜の下を歩くなんて前世以来の体験でかなり新鮮な気分になる。
「いつか大人になったら、こういうところでお酒飲んでたりするのかな」
「別に想像するのは帆波の自由だけどな、オレたちがその頃に自由でいられてるかどうかは分からないぞ」
「なれるよ絶対に。…………ううん、必ずなろうね」
「…………そうだな」
二人は原作通りに松雄さんの所に行って高度育成高等学校に入学しました
帆波(憑依)に『■■のホワイトルーム生』的な二つ名をつけるとしたら
-
慈愛のホワイトルーム生
-
偶像のホワイトルーム生
-
単純にホワイトルーム生No.2