転生したら帆波ちゃんだったので、綾小路君の相棒になってみようと思います   作:レイラレイラ

7 / 39
今話から帆波の大改革が始まるでしょう(多分)

今回は長めです


Dクラス

 教室に入ってすぐに、グループの中心に属するだろう面々の軽井沢さんと櫛田さん、そして平田くんとは早々に仲良くなった。

 

 この三人との接触は、私の発言力の向上の意味もあるけどクラス全体のためにも必要不可欠だったから。

 

 もちろん、普通に仲良くしたいっていう気持ちが一番強いかな。

 

 それぞれかなりの過去を抱えているわけだし、少しでもいいから力になれたら嬉しいなって。

 

 特に櫛田さんからしたら余計なお世話かもしれないけど、私に出来ることがあればどんどん頼って欲しい。

 

「そういえば帆波ちゃん。バスで男の子の肩にもたれて眠ってたみたいだけど、どういう関係なの?」

 

「にゃはは。それ聞いちゃう?」

 

「いいじゃない。教えてよ~」

 

「僕も気になるかな。一之瀬さんと窓際の彼はお付き合いしているのかな?」

 

「つ、付き合う…………!?」

 

 櫛田さんと平田くんに詰め寄られて反応に困ってしまう。

 

 あれ、櫛田さんはともかく平田くんってここまでぐいぐいくるキャラだったかな? 

 

 本当に彼と付き合えたらどんなにいいかと思うけど、それはきっと叶わない願いなのはわかってる。

 

 確かにあんな夢を見てしまうくらいには、私は清隆くんに心底惚れてしまっている。

 

 今にして思えば、私と彼の関係はどういうのが正解なのかな? 

 

 ホワイトルームの同期生? 

 

 友達? 

 

 でも、小さい頃からの付き合いというのは確かなわけで、この場で最も妥当な関係性を口にした。

 

「私と清隆くんは幼なじみだよ。幼稚園から中学までずっと同じだったから、高校でも一緒になれたらいいなって」

 

 清隆くんに手を振ると、彼も小さいながらも手を振り返してくれた。

 

「仲がいいんだね。高校まで同じにするほどなんて」

 

「それで二人とも合格しちゃうんだから凄いよね。愛の力ってやつなのかな?」

 

「だからそういうのじゃないんだってばー!!」

 

 平田くんには納得したような顔されるし、櫛田さんにはからかうような笑みを浮かべて茶化されてしまう。

 

 これも前世以来の感覚で、こんな些細なやり取りにも新鮮味を覚えちゃうね。

 

 ぎりぎりまで話し込んでいたら、始業のチャイムが鳴り響いたので慌てて席に座る。

 

 それとほぼ同じタイミングで、スーツ姿の担任の女性である茶柱佐枝先生が入ってくる。

 

 リアルに見た先生への第一印象は、規律を重んじる堅物先生って感じかな。

 

 髪型はポニーテール調に纏められてて、実際の年齢よりもずっと若く見える。

 

「えー新入生諸君。私はDクラスを担当する事になった茶柱佐枝だ。普段は日本史を担当している。この学校には学年ごとのクラス替えは存在しない。卒業までの3年間、私が担任としてお前たち全員と学ぶ事になると思う。よろしく。今から1時間後に入学式が体育館で行われるが、その前にこの学校の特殊なルールについて書かれた資料を配らせてもらう。以前入学案内と一緒に配布はしてあるがな」

 

 資料の束が前から回され、私もそれにならって資料を一部もらってから後ろに回す。

 

 これから茶柱先生がする説明を私は知っているけど、自分の認識が間違っていないかを確認するという意味でも集中して耳を傾ける。

 

 この学校には全国にあるような普通の高校とは違って、特殊なルールが存在すること。

 

 ルールの一つとして、この学校を卒業するまでの三年間は外部との連絡を余程の事情がない限りは禁じるというもの。

 

 その代わりに学校の敷地内にはカラオケやシアタールーム、カフェにブティックなどの一つの街が出来ていると言っていいほど充実した施設の数々が60万平米を越える土地に用意されている。

 

 そして、この学校で最も重要と言える要素がSシステムというものである。

 

「今から配る学生証カード。それを使い、施設内にあるすべての施設を利用したり、売店などで商品を購入することが出来るようになっている。クレジットカードのようなものだな。ただし、ポイントを消費することになるので注意が必要だ。学校内においてこのポイントで()()()()()()()()()。学校の敷地内にあるものなら、()()()購入可能だ」

 

 含みを持たせたような茶柱先生の言い方だったけど、原作知識もあって情報はすんなりと頭に入ってきた。

 

 そう、このポイントで買えないものはない。

 

 具体的には退学取り消しとか、クラスの移籍とかだね。

 

 他にも色々と買えるものはあるけど、今は割愛しようかな。

 

「施設では機械にこの学生証を通すか、提示することで使用可能だ。使い方はシンプルだから迷うことはないだろう。それからポイントは毎月1日に自動的に振り込まれることになっている。お前たち全員、平等に10万ポイントが既に支給されているはずだ。なお、1ポイントにつき1円の価値がある。それ以上の説明は不要だろう」

 

 茶柱先生の言葉に、教室がざわめく。

 

 いきなり高校に入学した途端、10万円が渡されれば誰だって驚くのは当たり前の反応だと思う。

 

 私も知らなかったら、全く同じ反応をしていたのは想像に難くなかった。

 

 高校生に与えられる金額にしては大きすぎるもの。

 

「ポイントの支給額が多いことに驚いたか? この学校は実力で生徒を測る。入学を果たしたお前たちには、それだけの価値と可能性がある。そのことに対する評価みたいなものだ。遠慮することなく使え。ただし、このポイントは卒業後には全て学校側が回収することになっている。現金化したりなんて出来ないから、ポイントを貯めても得は無いぞ。振り込まれた後、ポイントをどう使おうがお前たちの自由だ。好きに使ってくれ。仮にポイントを使う必要が無いと思った者は誰かに譲渡しても構わない。だが、無理やりカツアゲするような真似だけはするなよ? 学校はいじめ問題にだけは敏感だからな」

 

 本当にやり口が嫌らしいよね。

 

 明らかに生徒たちがポイントを消費するほうに誘導する言い方で、甘い誘惑をしているようにしか聞こえてこない。

 

「質問はないようだな。では…………」

 

「先生!」

 

 シュビッと勢いよく挙手をする私。

 

 茶柱先生は訝しむように私を見た後、一瞬だけど口元が歪んだ気がした。

 

「なんだ一之瀬」

 

「黒板を借りてもいいですか? 少し大事な話がしたいんです」

 

「いいだろう。それが終わったら、黒板は綺麗に掃除しておくように」

 

「はーい!」

 

 なんだなんだと、10万ポイント時より小さなざわめきが生じる。

 

 まあ驚くのは無理もないかもね。

 

 いきなり大事な話がしたい、なんて言われたらみんな疑問に思うのは仕方ないかな。

 

 チョークを持って、黒板に私の名前を書き込んでいく。

 

 一斉に注がれる視線に緊張しないでもないけど、堂々と胸を張っていこう。

 

 池くんが私の胸をガン見してるけど、とりあえず気にしない方向で。

 

「まずははじめまして! 私は一之瀬帆波って言います! 三年間よろしくね! さっそくだけど、皆のことをよく知りたいから自己紹介とかどうかな?」

 

 本当ならこれは平田くんのやることだったはずが、私が率先して名乗りをあげることで注目を集めることになる。

 

 平田くんにリーダーを任せておけない、というのもあるけどね。

 

「趣味は楽しいことならなんでも! 何か困ったこととかあったら遠慮なく頼ってね! 嫌じゃなければ気軽に名前で呼んでくれると嬉しいな!」

 

 私の自己紹介が終わると同時に、ほとんどの人が拍手をしてくれた。

 

 さすがは帆波ちゃんパワー。

 

「じゃあ、次は僕だね。僕の名前は平田洋介。中学では普通に洋介って呼ばれることが多かったから、僕のことも気軽に下の名前で呼んで欲しい。趣味はスポーツ全般だけど、特にサッカーが好きで、この学校でも、サッカーをするつもりなんだ。よろしく」

 

 平田くんの自己紹介に女子から黄色い声があがる。

 

 清隆くんほどじゃないけど顔がいいだけあって、さすがと言っていいだろうね。

 

 私たちに続くように、井の頭さんと櫛田さんから流れが定着し始めてみんなも自己紹介をしていく。

 

 そして、予想通りというか知っていたというべきか、須藤くんがその流れを断ち切った。

 

「俺らはガキかよ。自己紹介なんて必要ねえよ、やりたい奴だけでやれ」

 

 須藤くんの物言いに、ムッとする人たちがちらほら出てくる。

 

 平田くんならここで謝って次の人に回していたけど、私は彼とは違う行動をとってみようと思う。

 

 今後のDクラスのためにもね。

 

「ねえ、君体格いいよね! 何かスポーツやってるとか?」

 

 須藤くんの席まで移動して、マジマジと見つめながら質問する。

 

 彼もいきなり距離を詰められたことに驚いたのか、少し躊躇いがちにそっぽを向く。

 

「てめえには関係ねえだろ」

 

「当ててあげよっか? そうだなー…………バスケだよね! どう、正解?」

 

「…………チッ」

 

 図星を突かれたからか、須藤くんは悔しげに舌打ちをする。

 

 私の原作知識が明確に役立った瞬間だった。

 

「やった! じゃあ、正解ついでに聞かせて。君はプロを目指してるのかな?」

 

「だったら何だよ」

 

「もしもプロの世界に入ったとして、所属したチームでも自己紹介しないの? 名前も知らないチームメイトと連携したり、コミュニケーションを取れる?」

 

「それは…………」

 

 また図星。

 

 すっかり須藤くんは何も言えなくなってしまい、意気消沈した様子だった。

 

「大人だからこそ、そういうことは大切なんじゃないかな。それは勉強とかマナーでも同じことで、バスケ以外は必要ないなんてことはないって思うな」

 

「…………」

 

 自分の言動を振り返っているのか、その表情は後悔の色に染まっていった。

 

 須藤くんはちゃんと言えば分かってくれる人だって、私は分かってるから彼を待った。

 

「…………悪かった。よく考えたら、さっきの俺の方がガキだったよな」

 

「私は気にしてないよ。それに須藤くんが悪いって思うなら、ここで元気よく自己紹介しよう。汚名返上のチャンスだよ!」

 

「おう!」

 

 すっかり須藤くんの表情が柔らかくなって、私も嬉しくなる。

 

 完全に悪印象が消えるわけではないだろうけど、それでも早いうちからクラスに馴染めるのはなんとなく分かる。

 

「俺は須藤健! いずれバスケのプロ選手になるのが夢だ! さっきはすまなかった!」

 

 ぱちぱちとまばらながらも拍手がなって、須藤くんの印象ある程度改善されたと言える。

 

 とりあえずは一安心かな。

 

 高円寺くんの個性的(控えめな表現)な自己紹介を終えたあと、堀北さんと一部の生徒は無言で外に出た。

 

 私と会話すると須藤くんの二の舞になる、そう思われたのかもしれないね。

 

 今は無理せずに、ちょっとずつ距離を縮めていけばいいよね。

 

 そして、とうとう待ちに待った時が来た。

 

「えー……えっと、綾小路清隆です。その、えー……得意なことは特にありませんが、皆と仲良くなれるよう頑張りますので、えー、よろしくお願いします」

 

 清隆くんに友達を作ってあげたい気持ちはあったんだけど、この自己紹介を直接見たくて敢えて何も改善しなかった。

 

 何て言うか…………庇護欲がそそられるというか、とにかく可愛いすぎてニヤケないようにするのに必死だった。

 

 

 

 

 

 

 




帆波は櫛田の過去と本性を知っていますが、それでも仲良くしたいと思っているのでかなりのお人好しです

あっさり帆波に懐柔される須藤くん

帆波(憑依)に『■■のホワイトルーム生』的な二つ名をつけるとしたら

  • 慈愛のホワイトルーム生
  • 偶像のホワイトルーム生
  • 単純にホワイトルーム生No.2
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。