転生したら帆波ちゃんだったので、綾小路君の相棒になってみようと思います   作:レイラレイラ

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事前準備は大切

「ふぅ…………今日はここまでにしようかな」

 

 早朝5時に目を覚ました私は、顔を洗ってからジャージに着替えて敷地内を走り込んでいた。

 

 これは健康を保つ意味もあるけど、体力向上のためにも日課にするつもりなんだよね。

 

 とは言いつつも、実際のところホワイトルームでもっとキツいカリキュラムなんて普通にあったから気休め程度の効果しかないかもだけど。

 

 時刻は午前7時くらい。

 

 もう少しだけ余裕があるなと思いながら、すぐ近くのベンチに腰を降ろす。

 

 まだ四月上旬ということもあって早朝は肌寒いくらいだったけど、さすがに2時間も走っていれば身体も火照ってくる。

 

 首にかけたタオルで汗を拭いて、持っていたペットボトルのキャップを外して水を勢いよく飲む。

 

 疲れた後に飲むものは、例え水であってもかなり美味しく感じるのはどうしてなんだろう。

 

 単純に汗で体内の水が減っているからなのか、それとも走り続けたことによる達成感だったりするのかな。

 

 まあ、達成感の話をするならもう一つ理由があるんだけどね。

 

 端末をポケットから取り出して、電源をつけたら連絡先の一覧を表示させる。

 

 そこに表示されていたのは、堀北さんと高円寺くんを除いたDクラスの仲間たちの連絡先だけじゃない。

 

 およそ二十人弱の連絡先が新たに追加されていた。

 

 そう、もう一つの達成感というのはこの新しい連絡先のこと。

 

 これは走っている時に出くわした陸上部の先輩たちもの。

 

 二、三年生の先輩たちに挨拶をするという名目で話しかけ、上手いこと話を弾ませて親しくなることが出来た。

 

 そうしたら皆快く連絡先を交換してくれて、クラスもA~Dまで都合よくバラけてくれていたことも大きな成果だった。

 

 この先輩たちというツテがあれば、中間テストの過去問入手とかにも大きな助けになると思う。

 

 ついでに抜き打ちの小テストとかについてもぼやかしながら聞いてみたけど、やっぱりというべきか言えないということだった。

 

 小テストについてはクラスの皆に言うべきかは正直迷ってる。

 

 中間テストみたいにやる日が分かりきってるものならともかく、小テストでしかも抜き打ちのものを気取っていたらさすがに不自然だもん。

 

 クラスポイントと天秤にかけて、結論は言わないという方向で行くことにした。

 

 出来ることなら皆に教えてあげた上で、勉強を見てあげることで不安を取り除いてあげたいよ。

 

 皆に隠し事をしていることに胸は痛むけど、Dクラスの土壌は整い始めていると言える現状から考えても全体的な不利益は原作より大幅に減衰しているはず。

 

 それならきっと大丈夫だと思う。

 

 Dクラスは確かに問題を抱えている人が多いかもしれないけど、それを帳消しにしてもお釣りが来るぐらいのポテンシャルを持っていることを私は知っているから。

 

 とりあえず部屋に戻ってシャワーでも浴びよう。

 

 そして、私はまた走り始める。

 

 もちろんオーバーワークにならないようにジョギング程度のペースでね。

 

 

 

 

 ちなみにさっきまで怒涛の勢いで陸上部に勧誘されていたから、部活動説明会に行くのが少し憂鬱だったりする。

 

 こっちもどうしようかな…………

 

 

 

 

 

 

 学校も二日目ということもあって、授業に関する方針や内容についての説明だけだった。

 

 そこは原作で知っていた通りだったけど、私にとって大きな変化を目の当たりにすることが出来て素直に嬉しい気持ちでいっぱいになる。

 

 本来だったら授業中の携帯電話使用だけじゃなくて、居眠りや私語のオンパレードのはずのDクラスの皆が真面目に授業を受けている。

 

 いきなりは難しかったのか、遅刻しちゃう人もまだいたけどこれは大きな進歩なんだと思う。

 

 教科担任の先生たちも最後まで真面目に授業を受けているのに心底驚いたみたいで、私は内心でガッツポーズをとっていた。

 

 すぐに先生たちに私の友達はちゃんとやれるんだよって自慢したい気持ちに駆られるけど、授業中にそれをするわけにはいかないから自重した。

 

 そうしているうちにやって来た昼休み。

 

 平田くんをはじめとした女子グループからお昼に誘われたけど、今回はお断りさせてもらった。

 

 清隆くんと行きたいから断ったと思われたのか、「学食デート楽しんできてね~」というからかい混じりの応援をされちゃった。

 

 もちろん清隆くんと学食行きたいのは事実だし、否定したくない気持ちがあるのも確かだよ。

 

 でも、今回は先約があるから一緒にお昼ご飯を食べるのはお預けかな。

 

 清隆くんには他クラスの友達とご飯を食べるって伝えたら、心なしか寂しそうな顔をしているように見えた。

 

 じっと私の方を見つめてくる清隆くんに申し訳なくて、結局私は折れてしまった。

 

「やっぱり清隆くんも一緒にご飯食べよっか! 清隆くんがいないと私も寂しいもん!」

 

「いいのか?」

 

 顔には出さないけど、安心したというか嬉しがってるようにも思える清隆くん。

 

 私はもう周囲の生暖かい視線なんて気にならなくなっていた。

 

 これが惚れた弱みってやつなのかな…………

 

 

 

 

 

「なるほど、それで()()()()()()()のお食事の機会をぶち壊したわけですか。ええ、気にしてませんよ? 全然、まったく、これっぽっちも」

 

 それ気にしまくってる人のセリフだよね! 

 

「だからごめんってば~~!!」

 

 食堂で先んじて椅子に腰かけていたのは、何を隠そう高校生になった有栖ちゃんだったのです! 

 

 実は昨日、清隆くんと別れてから数分後のこと。

 

 自室の扉の前で有栖ちゃんが待ち構えていたんだよね。

 

 そこで連絡先の交換と、今日のお昼ご飯を一緒に食べる約束をしたの。

 

 別に二人だけだなんて言ってなかったし、清隆くんは知らない一人じゃないからいいよね? 

 

 …………とか言ったら一晩中チェス勝負をさせられそうだから口には出さないけどね。

 

「坂柳。少しいいか?」

 

「何ですか? 綾小路くん」

 

「二人じゃないといけない理由はないだろ? それとも、帆波と二人っきりにならないといけない特別な何かでもあるのか?」

 

 清隆くんの容赦のない正論が有栖ちゃんを攻め立てた。

 

 確かに食堂に来るまでの間有栖ちゃんとの約束の詳細は話したけど、清隆くんの擬態キャラからしてこういう行動に出ないと踏んでいたのに! 

 

 有栖ちゃんのことを覚えているなら面倒な擬態は必要ないと考えてのことだろうけど、よくこんな肌が凍りつくような空気の中で親子丼食べてられるよね! 

 

 有栖ちゃんの額に青筋出てきちゃってるんだけど! 

 

「それは…………宣戦布告と受け取ってもよろしいですか?」

 

「どう認識しようがお前の自由だが、オレは帆波に誘われてここにいるんだ。それを侵害する権利は坂柳にないと思うが」

 

「はい、ストップストップ! 二人ともそこまでだよ!」

 

 二人を制するように、私の腕をお互いの視線の間に割り込ませて声がけしたのが功を奏したらしい。

 

 二人とも冷静さを取り戻したのか、それぞれの食事に戻っていった。

 

 それにしても有栖ちゃんはともかく、清隆くんはこんなに好戦的だったかなぁ。

 

 もともと今回の約束だって、再会を祝してという意味もあったけどお互いの持ってる情報の交換という側面もある。

 

 現時点で私が話せることと、有栖ちゃんの手に入れた情報はほぼ同じものだったから結局は普通にご飯食べるだけになったんだけど…………

 

「…………」

 

「…………」

 

 目を離した隙に、また二人がバチバチとした視線を交わすものだから満足に味を楽しむ余裕はなかった。

 

 

「本日、午後5時より、第一体育館の方にて、部活動の説明会を開催いたします。部活動に興味のある生徒は、第一体育館の方に集合してください。繰り返します、本日──────」

 

 

 部活動説明会に関する放送はすぐ近くのスピーカーから聞こえてるはずなのに、何だか今日は音が遠く聞こえるよ…………

 

 

 

 

 

 




さすがの帆波でも、清隆くんと有栖ちゃんを同時に相手するのは大変でしょうね…………

帆波(憑依)に『■■のホワイトルーム生』的な二つ名をつけるとしたら

  • 慈愛のホワイトルーム生
  • 偶像のホワイトルーム生
  • 単純にホワイトルーム生No.2
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