とあるボーダー職員の話。   作:天青石

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 今回の小話はいつも以上に捏造満載です。時系列とか原作で判明してないところはふわっと書くことで可能な限りぼかしているので、明らかな矛盾が無い限りあんまり突っ込まないで頂けると助かります。
 どう見ても原作設定と矛盾してるところはじゃんじゃん指摘してください。どうしても20巻以上ある原作の隅々までチェックは出来ていないので、温かい目で見守ってください。


閑話③

「ランク戦の実況が欲しい?」

「はい!あの、何か困ったりしたら基本的に東雲先輩に聞けばなんとかしてくれるって聞いたんです。」

 

 とある休日の午後、ボーダー基地内の廊下で、オペレーターの制服を着た中学生くらいの少女にお願いします!と勢い良く頭を下げられて私は困惑していた。ちょっと事情が掴めないのだが、周りの視線が痛いので取り敢えず頭をあげてくれ。

 

「えっと、そもそも君の名前とかランク戦の実況ってなんだとか色々聞きたいことはあるんだけど、まず最初に聞かせて。誰だ、私のこと紹介したの。」

 

 そう聞くとオペレーターの月見先輩に言われました!と笑顔で告げられる。なるほど蓮ちゃんかー、そっかー。確かに部隊に所属もせず何でも屋みたいな事してるのは認めるけど、全部丸投げはないでしょ!?後で絶対巻き込んでやる。と何も分かってない中、心に誓う。

 

「あー、分かった。ひとまず話は聞くから場所変えよっか。立ち話で済むような事じゃなさそうだし。」

 

 ラウンジに移動しながら名前聞いても良い?と尋ねれば武富桜子、オペレーター訓練生です!とこれまた元気な返事が返ってくる。蓮ちゃんの紹介ならまあオペレーターで納得はする。最近、通信室勤務で基礎を学び終えた訓練生達に部隊所属に向けての指導役やったって言ってたし、多分そこで知り合ったのだろう。蓮ちゃん、後輩の女子達から凄い慕われてるからなあ…。

 

 ラウンジのテーブルを1つ確保し、自販機で適当に飲み物を2本買う。概要も何も分かってないけど、多分かなり時間がかかる類いだろう。防衛任務で普通の高校生よりは稼いでるし、後輩に飲み物くらい奢って格好つけたい。

 席に戻り、桜子ちゃんにカフェオレとオレンジジュース、好きな方を選ばせてまずは一息つく。さて、わざわざ蓮ちゃんが私を紹介したのだ。何か現役オペレーターではなく私が向いているような事情があるのだろう。

 

「えーっと、ランク戦の実況が欲しいって言ってたけどもう少し詳しい事教えてもらっても良いかな?」

 なんで欲しいのかとか、具体的にどんな事がしたいのかとか聞かせてくれる?というと目を輝かせながら桜子ちゃんが語り始める。

 

「B級以上のランク戦は観戦を自由に出来ますけど、C級隊員が見たところで戦闘が高度すぎて参考にしにくいと思っているんです。

 立ち回りや技量についてなど学ぶべき事は沢山あるのに、自分達じゃそれすらも分かりません。どうにか解説をしてくれる師匠や先輩方を見つけて、初めてその戦術や技術を理解できるというのが現状なんです!」

 

 確かにランク戦はボーダー隊員なら訓練生も含めて誰でも観戦したりログを見たりできる。実際師匠を務める隊員達が弟子を連れてモニターで観戦したり、ログを見て研究したりしている姿はよく見かける。

 だが、やはり対戦相手の研究といった側面が強いのかそうした姿はB級以上の隊員の方が圧倒的に多いのは事実であるし、かなり高度な戦闘が多く見ても訳分からんということも実際ある。

 

「C級の私達にとって解説をしてくださる人を見つけるのはかなり大変なんです。ログを使って行われてるポジションごとの勉強会も、レベルが高すぎて訓練生である私達では意味がないんです。だから、ランク戦の実況や解説を行って欲しいんです!」

 

 勉強会は私が企画しているものだな。B級上りたての隊員の参考になればと思って終了したシーズンのログをみんなで見ながら、気軽に質問したり、なんだったら上位陣も議論を交わせる場所として意外と人気があるのだ。

 きっかけは私自身、チームでの戦闘経験があんまり無いのでランク戦を見ても訳が分からないことが多かったことである。時間がある時は友人達と一緒に見て、分からなかったことをすぐ聞いたりしていたが、チームを組んだばかりの後輩達が困っているのを見て、一緒に勉強会開こう!と思い立ったのが始めだっただろうか。

 

「勉強会だとハイレベルすぎるってことかな?もっと初心者向けというか、基礎から学ぶ場所が欲しいってことで合ってる?」

「はい。もっと気軽に、それこそC級隊員がなんとなくランク戦を見て興味を惹くようなものが良いと思うんです!」

 

 

 桜子ちゃん曰く、勉強会は難しいしかなり興味がある人じゃないと参加しにくい。それに対してモニターに映し出されるランク戦は大迫力であり、勝ち負けが分からないのは盛り上がる。もし解説などで分かりやすい試合となれば、C級隊員達はその姿を真似て強くなれるだろうし、何よりモチベーションに繋がるとのことだった。

 

「なるほどねー。確かに勉強会のメインターゲットはB級以上だ。まだチーム戦をしないC級隊員へのフォローは考えてなかったよ。」

 現状、訓練生全員に師匠が付くことは不可能であることを考えると、ランク戦という教材をC級隊員も最大限利用できる桜子ちゃんの案は悪くなさそうである。

 

「桜子ちゃんは実況っていう形が良いと思うんだよね?」

「そう、そこですよ!実況はランク戦を盛り上げるのです。真似したい、強くなろうって思わせるならやっぱり実況が必要だと思うんです!」

 

 ふむふむ、一理ある。実況というシステムはランク戦の見学というものに対してのハードルを下げることに繋がるだろう。必要になりそうな要素を具体的に考えていく。

 

「実況や解説は誰がやるとか考えてる?基本的に今のボーダー、人員に余裕がないからそういうものは有志でやるしかないんだけど。」

「実況は私がやります!解説はA級の方などでそのランク戦に出ていない人にお願いできればと…!」

「解説の方は、まあそうなるだろうね。でも実況は全部君がやるわけにはいかない。ランク戦は平日の昼間にだって普通に行われるし、回数だってかなりあるからね。今後ずっと継続していくことを考えるなら、君以外に出来る人を探さないといけない。」

 

 うーん、戦況ををしっかり把握できる能力があって、それを言葉でしっかり伝えることが出来る人かあ…。話すのが得意な人なら広報部の人がぱっと思い当たるけど、戦闘に関しては別に専門でも何でもない。戦闘員上がりの人もあの部署ほぼいない筈だし…。そうしてしばらく頭を悩ませていると、目の前に座る桜子ちゃんの制服が目に入る。オペレーター用のそれが。

 

そうだ、戦況を把握できてそれを言葉で伝える能力がある人いるじゃん…!

 

「桜子ちゃん、オペレーターの皆にお願いしてみよっか。」

 誰よりも戦闘中の状況を把握してそれを誰かに伝える事に慣れている人だ。これ以上適切な人もなかなかいないだろう。

 なるほどー!と言う桜子ちゃんに頷き返しつつ、私は端末を取り出して早速連絡を取り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで実況役をオペレーターにやってもらいたいと言うわけね?」

「そうそう、戦闘のプロで喋れるのなんてオペレーターしかいないからねー。取り敢えず桜子ちゃんと一緒に過去のログ見ながら実況をやってみてくれない?それでそもそも実現可能か、とか必要なものは何かとか考えるたたき台にしたいからさ。」

 

 後日、桜子ちゃんと共に隊室に突撃した私は蓮ちゃんに協力を求めていた。正直やってみなければわからないことが多すぎるので、まずはやってみてそこから考えていこうと私は思ったのだ。

 

「聞いた感じ、実現すれば悪くないシステムみたいね。良いわ、やりましょう。」

 解説役はシノがやってくれるの?と聞かれて私は首を横に振る。

 

「無理無理、私にチーム戦の解説なんて出来ないよ。三輪君、お願いしても良い?」

 振り返りながら聞けば、我関せずと言った顔でお茶を飲んでいた三輪君がむせていた。大丈夫かー?

 

「どうしてオレが…?」

「だって三輪君、チーム戦の経験たっぷりあるでしょ。今回はお試し、そんなに難しく考えないで良いからさ。ちょっとやってみてよ。」

 

 まあまあ良いじゃない、と宥めながら彼の背を押しモニター前に移動させる。何やら面白そうだと、三輪君と一緒におやつタイムをしていた米屋君もやってきて、皆でオペレーター用のモニターを覗き込む。なんだか恥ずかしいわね、なんて蓮ちゃんが言いながら早速ログを再生し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「佐崎さーん、今ランク戦の実況を考えててですね。こう戦況をマップ上で説明できるシステムが欲しいんですけど組んでいただけないでしょうか。」

 

「榊さん、榊さん。ランク戦の観戦ブースにモニターを操作したり出来る機材を設置したいんですけど、予算ってどれくらいかかりますかね?」

 

「羽矢ちゃん、前に話したランク戦実況用のシステムできたんだけどさ、ちょっと見づらいから画面デザイン考えてくれない?」

 

 お試し実況会が終わった後、蓮ちゃんや三輪君、見ていた米屋君などから出た意見を参考に私は必要なものをかき集める為、伝手を辿ってあちこちにお願いをしていた。皆快く引き受けてくれたのでなんとか実況が出来そうな環境は整ってきたところである。

 実況役も蓮ちゃん達を通してオペレーター陣にお願いすると、忙しい中OKを出してくれる人ばかりであり、本当に助かった。後は解説役に当てを見つけて本部の許可を取るだけだ。

 

「あの、解説役をやってくれそうな方を今日は紹介していただけるんですよね?」

「そうそう、一応初回予定のランク戦には絶対出ない人もいるから、オッケー貰えたら後は本部に企画書出してプレゼンだ。」

 

 あ、いたいた。と事前にアポを取ってラウンジで待ち合わせをしていた相手を見つけると緊張した様子の桜子ちゃんを連れて待ち合わせ相手の元に向かった。

 

「東さん、風間さん。お待たせしてすみません。」

「いや、オレ達が早かっただけだ。気にするな。」

 既に来ていた2人に謝罪すると風間さんにきっぱり言われる。やっぱり格好のいい先輩だなあ、風間さん。

 

「それでそちらのオペレーターが東雲が話していた?」

「はい、今回のランク戦実況を企画している武富桜子ちゃんです。」

 東さんに聞かれて桜子ちゃんを紹介しどこか強張った表情をした彼女の背をそっと押しすことで自己紹介を促す。

 

「はじめまして!オペレーター訓練生の武富桜子です。今日はお2人に、私が考えたランク戦実況での解説役をお願いしに来ました!」

 

 事前に考えてきた文章で桜子ちゃんはランク戦実況について説明をしていく。C級隊員が感じている問題点とそれを解決する為の工夫、今考えて用意している機材やシステムなどだ。

 

 一通り説明し終え、東さんと風間さんからの質問に答えると2人とも快諾してくれた。元々、きちんと説明すれば引き受けてくれるだろうと考えてこの2人に声をかけていたが、実際にOKを出していただけると安心する。

 

「ありがとうございました!」

 元気に頭を下げる桜子ちゃんにお疲れ様を伝え、先に帰らせる。初対面の年下だからと言ってこうした企画とかに妥協する人達ではないが、ぶっちゃけた話を聞きたかった。

 

「今日はありがとうございました。」

 どうでした、この企画。と聞けば予想通り先程言った通りだ、と返ってくる。やっぱり変に気を遣ったらはしない人達である。

 

「少し気になったのは彼女がまだ訓練生であることだな。」

 オペレーターを目指すなら、まずは自分が正隊員になることが優先だ。話はそれからだ、なんて言われかねないな。と東さんに指摘される。そこは言われるだろうなあ…。

 

「一応、蓮ちゃん達に猛特訓つけてもらってるので昇格の目処は付いてます。後はスターターこそ彼女にお願いするつもりですが、継続していくなら正隊員皆でやっていけたらなあとは考えてます。」

 

 その為にも解説役の話を広めておいていただけませんか、今後きっと皆さんにお願いすると思うので。と頼めばこちらも快諾してくれる。

 

「今はC級隊員向けの側面が強いですが、いずれは誰もが利用するシステムになるよう目指していきたいと思っています。皆で作って、皆が使うシステム。今後も何か気付いたことがあったら是非教えてください。」

 

 私は解説も実況も出来ないので、そうした視点から協力していただきたいです。とお願いすれば当然のように頷かれる。頼りになる先輩方に改めて礼を言い、今日はお開きになった。

 

 

 

 

 

 その後は割とトントン拍子で進んだ。ランク戦は本部の管轄なので企画書を出してから忍田さん達に向けて行ったプレゼンは、流石に桜子ちゃんと2人ずっと緊張していたが事前に資料を東さん達にチェックしてもらった事もあり、無事に終了した。

 

 観戦ブースの工事も終わり、遂にやってきた実況ありで行われるランク戦の初戦。事前に告知した事もあって訓練生も含めてブースは満員である。

 

「じゃあ私は席で見てるから。頑張っておいで、桜子ちゃん。」

「はい!東雲先輩、ありがとうございました!」

 お礼は終わってからね、ランク戦実況システムはこれから始まるんだから。そう言ってほらもう準備しないと、と彼女の背を押すと私は適当な席を探して座る。

 

「ボーダーの皆さん、こんばんは!本日実況を務めます武富桜子です!解説をお願いするのは東隊長と風間隊長です!」

 

 実況として彼女の元気な声が定着するまでに時間はそうかからなかった。




 C級の指導とかやってるキャラがランク戦実況に関わってないわけないよなあ、という考えから生まれた小話です。月見さんと気兼ねなく頼り頼られる関係性を描こうとしたらいつの間にか桜子とのコミュになっていた…。

 なんだか説明的なお話になってしまったのであまり面白くないような気がしています。そのうち修正するかもしれません。

 一応、実況システムは桜子が訓練生の頃から粘り強くプレゼンし続けた結果(だと記憶している)のですが、本作中ではシノがアレコレ準備を手伝ったのでその辺が短縮されたという想定です。ランク戦実況の歴史が原作より少し長いかもしれない。

 感想が、感想がもっと欲しい…!強欲なのは分かっているんですが、是非気軽に書いてください!
 ここの描写分かりにくいやなんか矛盾してない?と言ったご指摘から、この話面白かったorつまらなかったなどの感想があれば改善に活かせますし、何より励みになります。

 アレコレ長く書く必要は全然ないので何卒よろしくお願いします…!
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