「開発室から装甲関係のデータ来たぞー。」
「え、硬くない?良くこれ1人で落とせたな?」
「これトリガーセットによっては詰みません?必要とされる最低火力が高すぎる。」
通信が飛び交う中、私は現在の所属しているボーダー本部通信室の隅の席でイレギュラー
元々は対策練るのを手伝ってくれる人達が所属してる隊室に適当に集まって、私は報告書作りながら、他の皆を中心に色々考えようなんて予定だったのだがなんか思ったよりも参加者が多かった。今回は絶対報酬ないよ?と確認したが、ののを始めとした同級生組以外にも各隊のオペレーターや隊長などが次々と手を挙げてきたのだ。最終的には本部の通信室勤務の職員やエンジニア達も含めて20人を超えていたので1つの隊室で実際に集まるなんて到底無理、通信でやりとりすることになった。流石にもう夜遅いので、高校生以下は家に連絡して許可取ってこいとは言ったが。
報告書自体はそんなに時間がかからなかった。見たものまとめるだけだし、具体的なデータはトリオン兵の残骸を解析している開発室から報告が上がる。白熱したのは対抗策の方だった。
「通常時はなんとかなると思うよ?ガンナーとかだとキツいかも知れないけど、アタッカー武器の火力なら余裕で足りる気がする。ただ、その後の自爆前に硬化してたのがなあ…。」
話題は装甲の硬さ、これをどう突破するかで皆頭を悩ませているようだ。数値としての情報はもう送られてきたが一応、実際に戦った者としての感覚を共有しておく。
「シノさんはアイビスで落としたんでしたっけ?トリオン量に物言わせればなんとかなる範囲なのか…。」
「いや、私のトリオン量多い方だけど、それでも硬化後は装甲抜けてないよ。凹んだりはしてたから何回か撃てばまた違ったかも知れないけど。」
荒船君の認識に軽く訂正を入れる。彼は理論派のスナイパーで隊長も務めてる高校生だ。私とは狙撃や立ち回りなんかでこうやって色々議論したりする事が多く、そこそこ仲が良い。こういう時、彼のような理論派の人がいると話し合いがしやすくて助かる。
「シノは硬化する前に装甲抜いてたからな、そこから内部狙ったんだよ。」
オペレートしてたののが説明してくれるのを聞きながら、送られてきたデータを見ていく。確かに自爆するまで倒されないという執念を感じる装甲の硬さだ。
「警戒区域内なら最悪、勝手に自爆するのを待てばいいんだけれどね。今回みたいに市街地狙われたら厄介だわ。」
「それなあー。」
オペレーター陣を中心に声が上がる。防衛任務を想定するならば隊単位で対応する。だから基本、一定以上の火力はあるだろうから爆撃を止めて自爆を待つ戦法はありではある。ただ、意見で出たように市街地狙いされたらその戦法は取れないし、警戒区域には避難時に置いてきてしまった市民の大切な物が山程ある。選べるので有れば自爆以外の方法を考えたい。
「でもこれ、旋空の理論値出せれば十分なんとかなりそうですよ?アタッカー武器を主軸にするのはアリじゃなーい?」
「空中で毎回最大火力狙えるのは天才共だけなのよ…。」
そう、データ上だけならどうにかできる火力はある。ただ、武器の火力はどうしたって使い手に左右されるからなあ、その辺が難しいのだ。皆、自分の隊ならどうするかという策を出し合いながら対抗策を出していく。私はそれを聞きながら汎用性のある案はマニュアルのようにまとめて、今この話し合いに参加していない隊員達にも共有できるように準備を進める。
一通り意見が出尽くす頃には深夜を迎えていた。しょうがない、議論が白熱したんだから!自分にはそう言い訳しつつ、高校生達を急いで帰るかボーダー基地に泊まるように伝える。特に女性陣はこの時間に1人で帰らせるわけにはいかないので、親に連絡をした上で隊室に泊まるか誰かに送ってもらうよう言った。
私も明日は色々振り回されるかも知れないので対抗策案まとめはそこそこにしつつ、席を立つ。すると、今日も何度もお世話になった馴染みのオペレーターのおっちゃん、佐崎さんに声をかけられた。
「シノちゃん、これからどんな感じになるのか”お告げ”はないのかい?」
「お告げとか、そういうのやめてくださいよ。」
あんまりそういう表現は好きじゃないので適当に返しておく。佐崎さんも悪意があっての言葉ではないだろう、すぐに悪い悪いと謝ってくれる。
「明日の朝までは動きがないっぽいので今晩は体力温存しておくとかですかね?ただ本部からきちんとした指令が来てないことからわかると思いますけど、あんまり当てにしないでくださいね。」
佐崎さんはそれを聞くと、その辺も含めて室長に伝えとくわ、と言って自身の仕事場へと戻っていった。私も明日に備えて休まないと。
お先に失礼します、と一礼してから通信室を出る。家族に今日はボーダーに泊まる旨を連絡してロッカーから常備している着替えなどを引っ張り出し、仮眠室へと向かう。流石に今日は疲れたのでこのまま寝てしまおう。
翌日。昨日と同じように本部の車を出して玉狛支部に向かう。警戒区域は結構広いので足がないと意外と移動が大変なのだ。戦闘中はトリオン体だからあまり気にならないけど、徒歩だけだと絶妙に不便なんだよなあ。
玉狛支部についてインターホンを押すと、すぐにほーいと声がして支部長が玄関を開けてくれる。
「おはようございます、林藤さん。」
「おはようさん、東雲。悪いな、朝から。」
迅はまだ朝食食べてるからちょっと上がっていくか?お茶ぐらい出すぞ、というお誘いに頷く。いつ来てもアットホームな支部だ。
「あれ、シノさん。おはようございます。」
「京介君おはよー、朝からお邪魔するね。」
リビングに入ると玉狛支部の皆が口々に挨拶してくれるのでそれに返していく。古株の戦闘員であるレイジさんに小南ちゃん、先ほど1番に挨拶してくれた京介君にオペレーターの栞ちゃん、そしてカピバラに跨った陽太郎君。うん、いつもの玉狛支部の風景だ。
「ちょっと迅、シノさんもう来ちゃったじゃない!早くしなさいよ。」
小南ちゃんがテーブルで食事をとっている迅くんを急かす。時刻は9時前。これから用事がある事も含めてちょっと遅めの朝食だ。
「まあ約束に間に合えばいいから、ヘーきへーき。」
迅君の適当な答えに不満げな表情をする小南ちゃん。他の面々は私も含めてしょうがないなあ、みたいな苦笑いだったりいつもの事だとスルーしたりしている。
「東雲は流石にもう食事は済んでいるか?簡単な物なら出せるが。」
レイジさんに尋ねられ、一瞬悩む。朝食はボーダーの食堂で済ませてきたがレイジさんの料理美味しいんだよなあ…。
葛藤の末、もう食べてきたので大丈夫ですと答える。あんまり時間もないし、今回は我慢しなければ。そんなやりとりをしていると林藤さんがコーヒーを持ってきてくれたので、それをいただきながら迅君が食べ終わるのを待つ。
本当に暖かい場所だ。本部の雰囲気も嫌いではないが、玉狛は本当に居心地がいい。時折、旧ボーダー勢でも玉狛支部所属でもない私には踏み込めない場所があるが、それも不快ではない。私にとってここは”友達の家”なのだ。
そう、旧ボーダー勢。本部なら城戸指令や忍田本部長など、ここにいる面々ならレイジさんに小南ちゃん、林藤さん、そして迅君。彼らはボーダー設立前、4年半前の大規模侵攻以前から戦い続けてきた人達なのだ。ネイバーの、トリオン兵の存在が公になる前からひっそりと戦ってきた彼らの話は隠すような事じゃないから、と聞けば色々教えてはくれた。
ネイバーは私達と同じような人間で、いい奴も悪い奴もいること、ボーダーは元々交流を目的としていた事、今に比べて足りない装備や技術で戦って犠牲者も沢山出た事。そうした事を聞いた上で誰も私に対して態度を変えないのだ。だからここが私の居場所になることはなくても、踏み込めないことがあっても不快ではない。
「ごちそうさまでした、レイジさん。」
迅君は食べ終わるとさっさと出かける準備を始める。どうやら彼以外は今日は支部にいるようだ。イレギュラーゲートに備えて全員待機のようである。
「コーヒー、ご馳走さまでした。」
私もそろそろ出発する準備を始める。さて、今日のお仕事もひとまず運転手だ。
昨日三雲君と約束した待ち合わせ場所に向かう為、蓮の辺方面に車を走らせる。時間ギリギリになりそうだが、遅刻はしないだろう。
待ち合わせ場所の公園で迅君を先に降ろすと近場のパーキングに車を止めに行く。免許取ってからこの一年弱で運転上達したなあ、なんて思いながらサクッと駐車をし。迅君に合流しに行くと三雲君も既に来ていた。おはようございます、なんて簡単に挨拶を交わすと迅君が行くぞー、と先導してくれるのでそれについて行く。
「さあ、この先にイレギュラーゲートの原因を知る人間がいる。」
「!迅さんの知ってる人ですか!?」
「いや、全然。」
そんな三雲君と迅君の会話を聞きながら歩くが、どうやら警戒区域に向かっているようだ。というか、迅君ずっとぼんち揚食べてるけど君朝食食べてすぐだよね?よく食べれるなあ。
警戒区域に入って直ぐに戦闘の痕が目立つ場所に辿り着く。そこには昨日出会った白髪の小柄な少年、空閑君が何やらこちらに背を向けてしゃがみ込んでいた。
「空閑…!?」
三雲君が驚いた声を上げると、空閑君もこちらに気付いて振り返る。
「おう、オサム、それにシノノメさん。…と、どちら様?」
軽く手を振っておくが今日の私はただの運転手。話を進めるのは迅君に任せておく。
「おれは迅 悠一!よろしく!」
迅君がフレンドリーに自己紹介をして、おまえちびっこいな、なんて言いながら空閑君の頭をわしゃわしゃと撫でている。こら、身長に関しては気に触る人だって多いんだぞ、私とか!
空閑君の名前に何か思うところがあるのか、ちょっと迅君が気にする様子を見せるが、ひとまずお互いの自己紹介が終わると、迅君がいきなり爆弾を放り込んできた。
「おまえ、向こうの世界から来たのか?」
ビクッと体を硬直させる三雲君に身構える空閑君。そりゃいきなり言われればそうなるよな。実際私も結構衝撃を受けたし。でも成る程、向こう側─ネイバーフット、侵略者側の世界から来たのならなんらかのトリガーを持っていて当然だ。あの巨大なトリオン兵を動かせるとなると相当だが。
「いやいや、まてまて。そういうあれじゃない。お前を捕まえるつもりはない。」
そのまま迅君が向こう、ネイバーフットに行ったことや実際に交流した経験がある事を伝えると、2人はひとまず警戒を解いてくれた。あ、いや空閑君は私の方をちょっと伺ってるな。
「私は実際に行ったことはないけど話は聞いてる。それに、私の考え方は昨日伝えた通り。今、君を捕まえようなんてつもりはないよ。」
はっきり告げれば、彼は今度こそ警戒を解いてくれる。警戒心の割になんかちょろくないか、君?
その後、迅君のお決まりのセリフが飛び出したのでサイドエフェクトの説明し、彼らが驚くというテンプレの流れを見た後、空閑君がついさっき突き止めたという原因を見せてもらう。
「犯人はこいつだった。」
そう言って彼がぶら下げる小型のトリオン兵?を受け取り詳しく見せてもらう。6本足に長い尻尾のような形はサソリや昆虫か何かをイメージさせた。とは言っても胴体は人の顔ほどの大きさがあるのでサソリなんかに比べれば相当大きいが。
『詳しくは私が説明しよう。』
いきなり第三者の声が響き顔を上げる。声の主は空閑君の指輪からにゅっと出てきた黒い、黒い…。なんだこれ?どこか炊飯器を彷彿とさせる丸いボディに目とウサギのような耳が付いている物体だった。宙に浮いていて、自由に動けそうな感じを見るに、トリオン兵に近い何かなのだろうか。
『はじめまして。ジン、それにシノノメ。私はレプリカ。ユーマのお目付役だ。』
「おお、これはどうも。はじめまして。」
「は、はじめまして。」
慌てて挨拶を返すとレプリカさん?は前言通り詳しい説明を始めた。いや、あなたの自己紹介それで終わりなんですか?
レプリカさんによると今回の原因はこのラッドと言う小型トリオン兵の
そして改造によって付けられた
「じゃあつまり、そのラッドを全て倒せば…」
「いや〜きついと思うぞ」
『ラッドは攻撃力こそ持たないが、その数は膨大だ。今感知できるだけでも数千体が街に潜伏している。』
何やら空閑君とレプリカさんが三雲君に話している横で私はパシャパシャとラッドの記録写真を撮影していた。一通り撮影し終わると開発室と広報部、そして通信室宛にメッセージを作成し、先程の写真を添付する。隣で同じように端末をいじっている迅君は恐らく林藤さん宛にメッセージでも送っているのだろう。
「全部殺そうと思ったら何十日もかかりそうだな。」
空閑君の言葉に三雲君がショックを受けているが、これなら大丈夫だ。
「いやめちゃくちゃ助かった。こっからはボーダーの仕事だな。」
迅君の言葉に頷き、私も口を開く。
「まあ見てなよ、ボーダーって結構凄いからさ。」
イレギュラーゲート解決するまでは取り敢えず投稿したいと思っています。その後は評価と自分の満足度によるかなあ。
佐崎のおっちゃん
システムエンジニアとして通信室に勤務している職員。女性以外のオペレーターがいないわけは無いけど、並列処理が高くないならこういった仕事内容かなあという想像です。おっちゃんやおっさん、大人なキャラが基本好きな筆者なので、オリキャラが増えると基本的にそういったキャラになるのが予想されます。
通信室勤務(本部)
各隊所属のオペレーターとは違い、戦闘をリアルタイムで支援するというよりはそれに必要なシステムの開発や情報の解析などがお仕事のイメージ。大規模な作戦では本部の指令を各隊に伝達したりもする。一応シノの所属はここであり、C 級オペレーター達なんかと一緒に基礎的な機器操作を勉強して、防衛任務の臨時部隊で人が足りない時にオペレーターなどをしている。トリオン兵相手の支援ならなんとかこなせる程度の実力。対人戦などはとてもではないけど無理。
感想で指摘があったので一部描写を変えました。プロット出来た後、細かい描写が設定と食い違わないように気をつけてるんですが、やっぱり主にチェックするのは該当部分の原作になってしまうので感想などでご指摘していただけると助かります。