やはり俺が吸血鬼なのは間違っている。続 作:角刈りツインテール
今までの快適な暖かさとは打って変わって肌寒さを感じ始め、乾いた風が哀愁を乗せて吹いてくる。
そんな木曜日の放課後、俺はいつもの通学路とは異なる道を歩いていた。目的地は由比ヶ浜結衣の家である。
「……ここか」
もはや隠す必要もあるまい。あの時のレインコートの正体———それは由比ヶ浜である。…というかもう既にどこかでもう言ったか?詳しくは忘れたけどまぁいいか。特に支障はない。
あの時。
レインコートのフードからちらりと覗いた髪は桃色がかった茶髪で、そんな色の髪の人間を俺は1人しか知らない。
…まぁ、単に交友関係が狭いだけで他にもいるのかもしれんが。
今回はその可能性を除いて構わないだろう———というのは、勘に近いもので———だが、確実に合っている自信があった。
「…ふぅ」
一度深呼吸をしてから俺はインターホンを鳴らす。部屋の中から「ピンポーン」という音が聞こえ、続いて「はいはーい」と元気な声が聞こえてきた。
暫くしてドアが開き、その声の主が姿を現す。
「あ、どう…」
「あら、ヒッキーくん!久しぶり〜!」
「…っす」
彼女は由比ヶ浜の母。どのような人物かと問われれば…まぁ、この親あってあの娘ありという感じだ。要するに物凄く明るいし、美人だ。20代と言われても納得するレベルの肌の潤い。これを美人と言わずして何と言うのか俺は知らない。
「結衣なら自分の部屋にいるわよ〜!さ、どうぞどうぞ!」
「…お邪魔します。あ、これ良かったら」
「本当に!?もう気使わなくていいのに…わ、美味しそう…!」由比ヶ浜の母は太陽のような笑みを浮かべた。「ありがとね!」
やっぱテンション高いなぁ10代かよと感心しつつ靴を脱ぎ部屋に上がる。以前に一度入ったことがあるとはいえ、昨日も雪ノ下の家に上がったとはいえやはり女子の家に上がるのには緊張がつきものだ。
「で、憑き物もいるわけだが…」
「?何が?」
「何でもありません」
微妙な親父ギャグを言ったのち、由比ヶ浜の部屋の前にたどり着いた。ドアの前には『ゆい』というハート型のネームプレートがある。姉妹もいないんだからいらねぇだろ。
「結衣〜ヒッキーくんがきたよ〜」
「あ、ヒッキー!?ちょ、ごめんちょっとだけ待って!」
ドア越しに慌ただしい音が聞こえだす。それだと俺が突然やってきたみたいな感じになってない?ちゃんとメールもしたし返事も返ってきてますよ?
「…お待たせ」
ガハママ(?)も下へ降りてしまいそこから2分ほど経ったころ、ようやく扉が開かれる。その息切れと頬の紅葉については問わない方がいいのであろう。男女問わず自分の部屋の汚さに触れてほしい人間なんて存在しないのだ。
「…っす」
「入ってよ」
「…あぁ、そうする」
入らなかったら俺は何をしにここまで来たんだよ、というツッコミはなんとなく飲み込んで由比ヶ浜の部屋に入った。前に彼女の家に来た時はこの部屋まで来ていなかったのだが、いやはや予想通りというべきか何というか…高校生男子が想像する乙女の部屋、みたいな感じだった。部屋は全体的にピンクで構成されており、俺でさえ知っているようなキャラクターのぬいぐるみなども沢山ある。
「…あんま見んなし、馬鹿」
既に座っている由比ヶ浜は恥ずかしげにそう言った。だから上目遣いは反則ですって。どこのあざとい後輩だよ。…あれ、誰だ後輩って。部活にもいないしそんな存在いないと思うのだが。
宇宙意志を感じる。
「ここ座って」
ぱんぱん、と自分の横の床を叩く。
叩いたその手は左手で。
そして、右手には———
「やー、久しぶりだね、ヒッキー」
「別に言うほどだろ」
「そうだっけ?」
はは、と笑ってみせる由比ヶ浜。だが、そんなものでは俺を騙せない。その笑顔の裏には何かが隠されている。
空虚な笑みだった。
だから、俺も似た表情を浮かべながら話しかけた。
「なぁ由比ヶ浜」
「…何?」
「風邪は治ったのか」
どきり、と肩が震える。分かりやすすぎて面白くなるほどだ。
だがこの現状は、ちっとも笑えない。
「あ、えっと、うん、だ、大丈夫だよ!昼にはもう治っ」
「休んだ原因、それだろ」
俺は右手を指差して———
♦︎♦︎♦︎
卒業式間際の今思い返せば、俺の周辺に異変が訪れたのはこれが最初かもしれない。由比ヶ浜の一件をきっかけに雪ノ下や一色や———大勢が怪異に巻き込まれる羽目になった。
「ヒッキーは何でも分かるね」
「なんでもは分からねぇよ。分かることだけだ」
「…えぇっと、どういうこと?」
「さぁな、さっぱりわからん」
「言った本人すら分からないんだ!?…うん、そうだよ」
悲しげにそう言った由比ヶ浜は、その包帯をするすると解いていく。全てが外されて露わになった彼女の腕を見て、俺はこう思った。
あぁ。
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている、と。
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ちなみに
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前作から見てる。
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続から見てる。