やはり俺が吸血鬼なのは間違っている。続   作:角刈りツインテール

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水族館デートなんてしたことないんですが…?
まぁ別に羨ましくなんてないですよくそが。…そんな感じの第五話です、よろしくお願いします!


005 水族館デート、それはフィクションである。

修学旅行とは。

日本において小学校、中学校、高等学校、義務教育学校、中等教育学校、特別支援学校の小学部・中学部・高等部の教育や学校行事の一環として、教職員の引率により児童、生徒が団体行動で宿泊を伴う見学、研修のための旅行。特に「宿泊を伴うこと」「行き先がある程度遠隔地であること」で遠足や社会科見学とは区別され、「宿泊施設が野営地ではないこと」で野外活動と区別される。(wikiより抜粋)

 

簡単にいえばそれは文字通り「学を修める」旅行なのだ。

それなのにリア充どもはバスを降りるたびにイチャイチャイチャイチャと乳繰り始め、俺たちはそれを間近で見続けなくてはならない。

妥協。それが修学旅行で学べる『学』なのだ。

 

そして残念なことに、俺はどうやら前者らしい。

 

♦︎♦︎♦︎

 

場所は京都。

古都として昔の景観を残すこの地で、なぜか俺たちは最初に水族館を訪れていた。もはや教師陣営すら俺たちに学ばせる気がなくて笑えてくるほどだ。大丈夫か総武高校。

 

「では2時間後に再集合だ。遅れたら次の温泉街まで走ってこいよ」

俺のクラスの担任であり奉仕部の顧問である平塚先生は拡声器も使わずに生徒へ叫んだ。続けて、はーい、と不協和音が響く。うるさい。そしてこのアドレナリンマックスな状況下、数名が遅刻することは間違いないだろう。おそらく男子だ。

 

だが彼らは知らない。

平塚先生は本当に走らせる人間だということを。

ちなみに温泉街までの道はおよそ6キロである。

 

「どったのヒッキー?」

後ろから名前を呼ばれて現実に引き戻される。

「あ、あぁ…なんでもねぇよ」

「そう?じゃあ行こっか!あ、ゆきのんどこだろ…」

「どこだろうな…って」

由比ヶ浜に加勢して俺も雪ノ下を探し始めたのだが、見つけたのはそれよりもっと禍々しいものだった。

「うわぁ……」

こちらを睨んで血の涙を流す平塚先生。「お前だけは味方だと思ってたのに…」とでも言いたげな表情だがそれに関してはアンタが仕向けたも同然だろ。こちらとしては感謝したいくらいだ。

…そういえば、俺があの時、平塚先生の『部活に入れ』を『教育委員会に訴える』なんて屁理屈で強引に蹴っていたらどうなってたんだろうか。それはそれである意味平凡で幸福な人生を送れていたのかもしれないが今となっては想像もできない。

閑話休題。

 

「なぁ由比ヶ浜。ここじゃ人が多いから一旦中に入ろうぜ」

「あ、そうだね。じゃあ私メールしてみる」

 

俺は先生の視線から逃げるようにすごすごと館内へと向かった。

その道中、由比ヶ浜が俺の手を握ろうとしてやめたのは見なかったことにした。

可愛すぎて理性が飛びそうなんだよ。ったくもう。

 

にしても水族館デート、か。

「あれって架空の存在じゃなかったのか」

「あっはは…まぁ私も初めてなんだけどね?…って、あ!いたいた!おーい!ちょっとゆきのんなんで目逸らすの!?」

まだ俺が見つけられていない雪ノ下は、どうやら先週の俺と全く同じ行動をとったらしい。

可哀想に。

あとでラムネでもあげよう。

 

♦︎♦︎♦︎

 

「わ〜見て見て!マンボウだよ!!!気持ち悪ぅ…」

「本人を前にそりゃねぇだろ…」

「けど、確かに似ているわね」

「本人を前にそりゃねぇだろ!?」

分かる人には「奉仕部グループ」だと理解し納得できたのかもしれないが分からない人には分からなすぎる班。それが我々である。

 

そこの腐り目、何者だよ———こんな具合に。

 

加えて由比ヶ浜と俺の関係性については既に公然の事実と化しており、それが尚更そのグループを異色化させていた。

 

なんでいるんだ、雪ノ下———こんな具合に。

 

 

「…………はぁ」

周囲からの目が痛い。ハリセンボンのように身体中に針が突き刺さっているような感覚に気が滅入りそうだ。俺は誰にも気付かれないようにため息をついた。

ふと俺は水槽ではなく周囲を見る。予想通りリア充で溢れかえっており、俺の目はさらに腐った。…あぁ、俺もこいつらと同じなんだった…つい本能が拒否してしまう…。

「そういえば比企谷くん、土曜日は楽しかったのかしら?」

「…!?」

いやいやいやなんで知ってんのこいつ。まじで鳥肌立ったんだけど。

「な、な、何のことでしゅか」

無駄なことと分かっていながらも抵抗を試みる。

「あら、わからないのかしら?」彼女はにこりと微笑む。「ならもう少し直接的な言い方をしましょうか。由比ヶ浜さんとのデー」

「わ、ちょ、馬鹿やめろ!楽しかったから!」

そう、と自分で言っておきながら興味なさげな感想を口に出す雪ノ下。本当に何がしたいんだよ、急に大声出し始めたり…心臓止まるかと思ったじゃねぇか。

「…では」それでこの話題は終わりかと思いきや、さらに雪ノ下は声を出した。

「その、わ…私とも…いつかいいかしら」

「———っ!」

雪ノ下は顔を赤らめながら上目遣いで俺に問いかけた。

可愛い。脳内がそれ一色になった。

『一色』という文字に対する謎の既視感に疑問を抱きながら俺は「考えとく」という言葉をなんとか捻り出し足を速めた。後ろから女子2名の笑い声が聞こえたためこいつらの関係性も良好なようだ。良かった、俺のせいで不仲になってたりしたら人間関係の難しさに再びひきこもり始める所だった。

 

「おぉ…これはすげぇな」

「綺麗…!」

「そうね…」

それから俺たちはクラゲの水槽のトンネル、お触りコーナー(無理矢理ナマコを触らせられた)、エイなどほとんど全てのブースを周り終え、残るところは()()しか残っていない。時間的にもこれを見たらお終いであろう。そう思い我々は歩き出す。

あれとは何か、なんてのは愚問だ。水族館のメインイベントと言って差し支えないだろうし、事実俺も小町と水族館に行った時はいつも見ていた。

そう。

 

「きゃーーーー!すごいすごい!!可愛い〜〜〜!!」

 

イルカショーである。

あまりの可愛さに語彙力が幼稚園児と化していた。…割といつも通りか?

 

「比企谷くん、珍しく楽しそうね。あなたのことだから『はっ、下等生物が泳いでるのなんて見て何が面白いんだか』とか言いそうだと思っていたのだけれど」

「いや流石の俺でもそこまでは言わねぇだろ」

俺いつもそんな感じだと思われてるのか…。

哀愁を漂わせようとした瞬間、ザパーン、と勢いよくイルカが跳ね上がり最前席の人々がブルーシートに身を寄せ合う。

俺たちが来たのはショーが始まる寸前だったため前方の席は埋まっており、結局最後尾に立つこととなったのだが、これはこれでいい眺めだ。陽キャどもを見下……上から見るゆえにショーを全貌を見ることができ、最善席とはまた違った楽しみ方をすることができた。

 

ちなみに。

恥ずかしながら俺も少しワクワクしていた。

 

『ミューちゃんに大きな拍手をッ!!』

 

それは由比ヶ浜も雪ノ下も同じであろう。普段あまり表情を動かさない雪ノ下さえも表情筋を緩ませて拍手をしている。

 

———あぁ、幸せだ。

イルカの大ジャンプを見ながらそう感じざるを得なかった。




次回、温泉街です。感想・評価なども是非よろしくお願いします!!

ちなみに

  • 前作から見てる。
  • 続から見てる。
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