やはり俺が吸血鬼なのは間違っている。続 作:角刈りツインテール
帰宅。
「おかえりお兄ちゃ———いやなんでいつもより目が腐ってんの!?」
「眠い。今だけは寝かせろ…」
「あいあいさー」
久しぶりの愛する妹とのハートフルな会話を終えた俺は一目さんに自室のベッドへ向かい倒れ込んだ。
ふはぁ、と我ながら気持ち悪い声が出てくるが嬉しいことに、今までのように自室に他人がいるなんてことはない。これこそが俺の望んでいた完全なぼっち世界なのだ。だから今だけは少しくらいは許容してほしいと思う。
「はぁ…」俺は仰向けになって懐かしい天井のシミを見つめる。
それにしても疲れた。が、同時に楽しくもあった。ホテルの同室が葉山一味だったことを除けば基本的に充実した修学旅行になったのではないかと思う。どうやら戸部が海老なんとかさんに振られたらしいが俺の知った話じゃねぇ。他人のせいで気分悪くなってたまるかっての。
「…寝るか」
もう既に体は悲鳴を上げていて、懐かしささえ覚えてしまうこの家の空気に俺の瞼は閉じるのを我慢しきれなくなっていた。
幸運なことに明日は土曜日だ。
全力で休むことにしよう。
おやすみ。誰に言うでもなくそう呟いてから意識を海の底に沈ませた。
♦︎♦︎♦︎
「ん…?どこだ、ここ…」
いつの間にか床に倒れていた俺は目を覚まし、立ち上がる———いや、これは夢だな、となんとなく理解する。
ふわふわと揺蕩う感覚。
そして、ありえない光景。
俺は今、雪ノ下の部屋の中にいた。なんか見覚えあると思ったわこの豪華な部屋。とはいえ夢にまで見るほど切望した覚えはない。掃除一つでも疲れてしまいそうだし何より気が休まらない。家は安息の地であるべきだ。であれば一体どうしたことだろうか。
「…正夢とか」
ボソリとこぼしてから「ねぇか」、と首を振る。それにもしそれがありえるなら同じ割合で逆夢の可能性だってあるのだ。とやかく言ったところで意味はない。
無意味で、無価値だ。
「…あ」
不自然に開いている扉の向こうから吐息が聞こえる。おそらくは眠っている雪ノ下だろう。
———と、そう思ったのだがどうやら違うらしい。
「は———あッ…はぁ…はぁ…はぁ」
ただの呼吸というよりは喘ぎ声のような艶めかしい雰囲気だった。
どきりと心臓が鳴る。
「…まさかな」
はは、と笑おうとするも表情が引き攣ってしまい上手く笑えない。夢だと分かっているのに、裏切られた気持ちになってしまう。
どうする、俺。
無論これはただの夢だ。
だが本当に見てもいいのか…?
「は…はぁ….んっ…」
見たら確実に後悔するぞ。
それでも、本当に。
「た———
たすけて?
喘ぎ声———ってまさか。
先程からおまけ程度の吸血鬼の嗅覚でなんとなく匂っていた血の香りは。
「雪」
雪ノ下、と叫ぼうとしたその瞬間、体がぐらりと傾いた。息が苦しい。どうしたものかと、ふと自分の腹を見るとそこには獣が爪で引っ掻いたような大きな切り傷があった。
「か…は…ッ!」
先程の雪ノ下のように酸素を取り込もうとして必死に呼吸をするが上手く出来ない。音がなくなっていく。視界が霞んでいく。
間違いない。
雪ノ下はこいつに殺されたのだ。
いったい誰だ、と満身創痍のなか最後に見たものは——黄色いレインコートを着た———猿のように毛深い腕を持つ何者かだった。
「く、そが……」
これが現実じゃなくて良かった、と薄れゆく思考のなかで思いながら俺はゆっくりと瞼を閉じた。
さて、こいつは一体誰なのか…とか言いつつ皆さんもう分かっていると思いますが…まぁ少なくともばるかん後輩ではないですね。
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ちなみに
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前作から見てる。
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続から見てる。