やはり俺が吸血鬼なのは間違っている。続   作:角刈りツインテール

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タイトルが本当に思いつかない…。


009 比企谷八幡の心は乱れ、奉仕部の波も乱れ始める。

———という悪夢を見た3日後の朝。天気は晴れだが対照的に俺は至極不愉快な気持ちで登校をしていた。あの後あまり眠れていなかったからか、心なしか頭痛がするし寝不足状態で俺の目はいつにも増して濁り切っていた。

それにしても、夢にしてははっきりしてたなぁと思い返す。

まるでその場にいたと錯覚してしまいそうな感覚。

加えて、夢から覚める前に見たあの人物には心当たりがあった。

レインコートからちらっと覗いた髪の毛の色は。

 

「あ、ヒッキー!やっはろー!」

噂をすればなんとやら、で靴箱の向こうに由比ヶ浜が立っていた。いつものように軽く挨拶を返し、並んで歩く。

「…この状況、いいのか?」

「へ?何が?」

「だってお前、朝2人で登校してたら勘違いされてもおかしくねぇだろ」

「?別に勘違いじゃないんだし良くない?」

何を言っているんだこいつは、と言いたげな表情を浮かべた由比ヶ浜は、そう尋ねた。まぁそうなんですけどこちらとしても準備がいると言いますかなんと言いますか。てかほんとすげぇな。よくそこまでオープンに出来るわ。阿保ゆえだろうか。阿保ゆえだな、うん。

「てか、付き合う前から時々一緒に階段上がったりしてたじゃん。今更でしょ」

「まぁ確かに」

いつも通り。そう考えることで少しは気が楽になった気がする。先ほどから心音が大きすぎてどうかなりそうだ。

「そういえば戸部っちからの依頼ってどう?出来そう?」

「ありゃ厳しいだろ。つーか、そもそもアイツでなくても人間関係ってのは壊しやすい割に修復すんのは難しいんだよ。例えばいじめだな。今まで仲良かった奴がいじめっ子側についたとするだろ。たとえその理由がいじめっ子が怖いからであって内心では心配していたとしてもお前はそいつを許せるか?」

「え?あー、…たしかに許せないかも」

「そういうことだ」

ま、悪の組織から救うくらいのことをすりゃ話は別だがな———俺は心底どうでもよさそうにそう呟いた。

あまりにも幼稚な考え方だったため誰にも聞こえないように発した言葉だったはずなのだが、由比ヶ浜にはギリギリ聞こえていたらしく。

「もうあんなことはしないでよ」と言われた。

あんなこととはどんなことだろうか、と脳内検索を行なってしばらくしてから文化祭でのことだと思い当たった。

自分が悪役になるという一番楽な方法。

訓練されたぼっちである俺はそれくらいで傷つかない。故にそういった行動も迷わずできてしまうのだ。だから保証はできないと思い、そのまま素直に「頑張る」と返した。それだけで満足だったらしくうんうんと頷く由比ヶ浜は世界一可愛いのかもしれなかった。

閑話休題。

修学旅行から帰ってすぐの月曜日の放課後。久しぶりの奉仕部にいきなり依頼人がやってきた。それが由比ヶ浜も所属している、我らが2-Fの陽キャ集団のうちの1人・戸部(かける)だった。

依頼内容は「関係を修復したい」。

修学旅行2日目、戸部は同じく陽キャグループの海老名姫菜に告白し見事に砕け散った。その日の夜は戸部が泣いててうるさいことこの上なかたのだがその話は置いておこう。

つまりこういうことだ。

『振られたせいでグループ内が気まずくなっており、どうにかして解消したい。』

 

お前が蒔いた種だろうがと言いたくなる気持ちは山々なのだが、由比ヶ浜の上目遣いにやられて結局引き受けることになってしまった。やはり可愛いは正義。

 

「…ま、善処する」

「…うん、ありがとね」由比ヶ浜は悲しげな表情を浮かべてから俯く。

「私、戸部っちのあんな顔見るの初めてで…だからどうしたらいいのか分かんないんだよね。この関係が終わっちゃうのかなぁって、少し怖くて…だから、お願い」

瞳をうるうるさせながらの由比ヶ浜の懇願。これを断れる奴この世に存在しないだろ。

と言えるわけもなく、なるべくいつも通りに「だからやるっつってんだろ。人の話聞けよ」と返した。

「…ヒッキーって、優しいよね」

「だろ?」

「そうね、その通りだわ」

階段の先に、ロングの女子の姿があった。というか、雪ノ下雪乃だった。

…今、その通りって言った?あの雪ノ下さんが俺のことを優しいって言った?あの深窓の令嬢が?嘘だろ?何か裏があるんじゃねぇのか。と思ったがいつもの暴言は返ってこず、それはつまりただ褒めただけということを表していた。

 

「おう」

そんな思考を読まれないように由比ヶ浜にした時と同様に挨拶をする。

 

「…比企谷くんはもう少しまともな挨拶ができないの?」

「何言ってんだ。会話が出来ないから友達も出来ないんだろ」

「どうしてそこまで胸を張れるのかしら…まぁ、貴方らしいといえば貴方らしいけど。では行きましょうか」

そう言って雪ノ下は俺の横についた。彼女の頬は桃色に染まっていた。風邪か、なんて聞けるほどに俺は鈍感系主人公ではない。敏感どころかむしろあれこれ勘違いしてしまう救いようのない男なのである。

 

だから、これも勘違いなのだろうか。

それとも、夢———

 

「…雪ノ下さん?」

「あら、何かしら」

「これこそ勘違いされると言いますか、何と言いますか…」

「だからそれも事実じゃん」由比ヶ浜が笑う。同じように雪ノ下も笑い、同時に俺はため息をつく。

それ———つまり、二股。

しかも俺が提案したことなのだから文句を言える立場ではないことは分かっているのだが、なんというか、『なんだあの美少女2人に挟まれている目が腐った男は….!』みたいな視線が先ほどから突き刺さっていて痛い。むしろ痛々しいと言うべきかもしれない。

 

だがしかし、別に嫌なわけではない。「ほれ、早く行くぞ」と言って2人の背中を無理やり押す。2人は驚いたのち顔を見合わせながら小さく笑い合った。仲がよろしいことで。

 

 

———と、言いたいところだったのだがそんな安いポーカーフェイスで俺の目は騙せない。

「…………。」

由比ヶ浜結衣の表情にはどこか陰りがあったことを、俺は見逃していなかった。

 

 




おや?由比ヶ浜のようすが…みたいな第9話でした。如何だったでしょうか。感想・評価などお願いします!

ちなみに

  • 前作から見てる。
  • 続から見てる。
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