小石一投、波紋を生ず   作:ヒョロヒョロ

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宝島編始めました。
が、今話内では、原作との分岐が殆ど描写できませんでした(白目)
どうしてもこの辺りのソユーズ視点が書きたかったんだよ~~~!(言い訳)


発端

 ──龍水のあげた船員リストに従い、ペルセウスに乗り込んだ船員たち。出航後に、一度は乗船を拒否したはずの銀狼が、自ら泳いで追いかけてきたりもした後。

 今回の旅の目的が、“宝島”と仮称された島での()()()だと、千空から告げられる。

 人類を石化から解放する復活液、その原材料一つである硝酸。それを実質無限に生産可能とする宝物──超希少金属・プラチナ。

 百物語の伝承によれば、その白銀に輝くという金属は、“宝箱に眠る”という──

「──鉱石の宝箱は、宇宙船・ソユーズだ……!!!」

 千空の口から出たその名称に、ずっと()()()で生きてきた青年は、己の()()()()の“由来”を知った。

 この情報は、きっと、重要なものだ。だから、どれほど恐ろしくとも、言わねばならないのだ。

 ──ありったけの勇気をかき集めて、同じ船に乗った仲間たちに告白する。

「……オ、オレは、ホントは、石神村の人間じゃない」

 幼い頃に浜に流れ着いた自分を、不憫に思った村人が己の子と偽って引き取ってくれた、と。己の本当の名が、石神村には馴染まぬものだったから、ずっと名無しで生きて来た、と。

「オレの、本当の名は──ソユーズ」

 そんなソユーズの告白に、石神村の面々は激しく動揺したが、千空はいつものように不敵な顔で笑った。

「ククク、確実度100億%の情報提供だ、実におあがりてぇ。──よく話してくれたな、()()()()

 当たり前のように自分を()()()で呼んでくれた千空は、未だ見えぬその島を見据えるように、遠くへ視線を投げる。

「宝島は今、無人島じゃねぇ。石神村の連中とルーツを同じくする、ISSの連中の子孫が、今も暮らしている……!」

「──ッ!」

 ずっと謎だった、己のルーツ。

 宝島──かつて、創始者たちが降り立った島。他の人間が全て石になってしまった世界で、当時、世界で唯一の有人島となった場所。

 ──そこには、今も人が居て、己は、そこで生まれたのか。

「百夜が百物語を通して“いつの日か日本を目指せ”と遺したから、宝島で生きてた子孫の誰かが、どっかで根性出して日本まで渡りきった」

「それが、俺ら石神村のご先祖か!!!」

 千空の言葉に、クロムが興奮した声を上げる。

 ククク、と笑いながら頷き、千空は更に続けた。

「そういうこった。だが、全員でバンザイ特攻は無謀すぎる。当然、島に残った連中も居て──その子孫は、今も宝島で暮らしているっつーことだな」

「友好的だといいけどね~~~」

 軽い口調で相槌を打ったゲンに、千空は人の悪い笑顔を向ける。

「んじゃなかったらメンタリスト、テメーの出番だ」

「丸投げドイヒ~~~」

 渋い顔で呻くゲンだが、実際、現状で“交渉”に最も長けているのは、彼だ。いつもの千空的適材適所。

「あ? 逆らうなら、とっととブチ殺しゃいいじゃねぇか。こんだけいんだぞ、戦士」

「前にも言ったが、人を攻撃するのは悪いことだぞ、マグマ!」

「良い悪いではなく、問題は要不要ですよ、大樹クン。まあ、君にできなくとも、必要なら私が()るだけですが」

「必要ねぇから()るなバカ」

 人殺しに躊躇いのないマグマと氷月を、大樹と千空が止める。

「あちらから殺意を向けられたら? 黙って()られてやるんですか、千空クン」

「そもそもそういう事態にならねぇように動くっつってんだよ。テメーはマジでイチイチ物騒だな……」

 氷月の声はどこまでも殺伐として冷えているのに、呆れたような千空の声のせいで、イマイチ深刻さがない。

 と、交わらない二人のやりとりを絶つように、深刻そうな表情で何やら考え込んでいたクロムが、低い声で告げた。

「──ホワイマンなんじゃねえのか? その、宝島の連中が」

「!!!」

 その推論に、ソユーズも思わず息を呑んだが、最も激しく動揺したのはコクヨウだった。

「名無し改めソユーズ! なぜこんな重要な情報を黙っていたのだ! 貴様が石神村の()()()()()()()()()という──」

 そこで、コクヨウは、ぐっと息を呑むように言葉を切る。──おそらくは、思わず唇を噛みしめてしまったソユーズの気持ちを、(おもんぱか)って。

「……いや……よくぞ今、告白してくれた」

 ソユーズにそう告げてから、バァン! とコクヨウは両手で己の両頬を叩いた。──己の失言を、悔いるように。

「──う~ん、狭い島の資源で、飽和する電波が撃てるほど、文明発展できるかなあ……」

 クロムの推論に対し、羽京が懐疑的な声を上げた。

「はっはー! そんな科学力があったら、孤島にひきこもったままのはずがないだろう!」

 高らかに笑った龍水も、羽京に同意する。

「水平線の彼方に、何があるのか──世界の全てが見たい! 全てを知りたい!! その欲望に、人類は決して逆らえない……!!」

 “知りたいという欲望”──それは、ずっとずっと、ソユーズの中にもあった、衝動。

「オ……オレも、ずっと、知りたかった」

 自分だけ皆の仲間でないなら、自分の仲間とは?──かすかな記憶を頼りに船を出しては、嵐に阻まれて引き返し。

 知ってどうする。今更何の意味もない。でも、()()()()──

「オレはただ、知りたかったんだ──」

 ずっと胃の腑に呑み込んでいた熱いものを吐き出すように、告げれば、

「──あ゛ぁ」

 短くも、万感のこもった呟きが、千空から返される。

「その、ただ知りてぇってのが、科学全部の原動力だ」

「じゃあ、もうと~~~っくに、()()()()()()()じゃない、ソユーズちゃんも♪」

 何でもないことのように告げられたゲンの言葉に、ソユーズの中にずっとあった疎外感が、溶けた。

(──オレは、()()()()()()()()()()

 そう、()()()()()を定義することが、今、初めて、叶ったのだ。

 

 ──ソユーズが何度も越えようとして挫折した海路を、科学の船は容易く進む。

 嵐さえも破り──否、これを好機と利用すらして、その島へと迫り寄る。

 そして──ついに、風雨の向こうに見えたその島影に、ソユーズの顔が、雨ではないもので濡れた。

「──忘れるもんか」

 母と思しき女性(ひと)の背と共に、この目に、記憶に、しっかと焼き付いていた景色。

「間違いないよ。オレの生まれた──故郷の風景だ!!」

 断言したソユーズに、千空が低く笑う。

「辿り着いたぞ、百夜──宝島だ」

 ソユーズたちの始祖にして、彼の父である人の名を、呼んで。

「鬼が出るか、蛇が出るか──唆るぜ、これは……!!!」

 

 ペルセウスがギリギリ岩陰に滑り込んだのを見計らったかのように、島側からの目眩ましを担っていた嵐は止み、打って変わって快晴となった。

「──偵察隊、出発すんぞ!」

 「宝探し」「皆殺し」とそれぞれ逸った陽とマグマを、ニッキーが沈める横で、千空が冷静に宣言する。

 千空に注目する一同の背後で、龍水が何故かおもむろにドカッと樽を甲板に置き、その上で器用に胡座をかいた。そうして、一同に聞かせるように声を張る。

「大人数で突入すれば即戦争だ、違うか!? メンバーは必要最低限で行く!!」

「あ゛ぁ、プラチナさえ、宝箱からゲットできりゃぁいいんだ。とっとと見つかりゃそれでよし。でなきゃ島民から場所聞き出すっきゃねぇ。わざわざ現地民ともめるのは、百害あって一利なしだ」

「フゥン、つまり偵察隊のメンバーは、4人!!」

 龍水は千空の言葉に頷くと、そう言って派手に指を弾く。

「まず、千空!」

「俺がいなきゃプラチナがわかんねぇからな」

 当たり前のように名指しされ、当たり前のように頷く千空。

「ソユーズ! 唯一の現地民だ!」

「が、頑張って何か思い出すよ……!」

 気合いを入れ直すソユーズに、龍水は満足げに頷いて、続ける。

「ゲン! 島民との交渉担当! コハク! 護衛(プラス)視力!!」

 ゲンは若干ひきつった顔をしつつも受け入れ、真剣な面持ちで得物に手を添えたコハクは、

「羽京は同行しないのか? 彼の聴力も欲しいが」

「何やら海底が気になるようでな、ソナーを睨んでいる」

「あいつの本職はソナーマンだからな。現状はそっちを優先させる」

「そうか、ならば仕方がない」

 龍水と千空の言に、コハクも納得したように頷いて──用意していた装備を背負って、4人の偵察隊は出発した。

 

 偵察に出てしばらく、ふとコハクが船のある方を振り返った。

「──船の方で何やら光ったような気もしたのだが……気のせいか?」

「んん? 一応確認しよっか」

 ケータイを背負っているゲンが、ペルセウスへ電話をかけるが、

「……電波悪! 全然無理(リームー)、かけても繋がんな~い。千空ちゃんとコハクちゃん、先行ってて~~~」

 ちょっと高いことトコから試そうと言うゲンに付き添い、ソユーズは彼と見晴らしのいい高台に上がる。

「──しもしも~」

「こ……こっからなら、直接船の様子が見えそうだ」

 さっそく電話をかけ直すゲンの横で、ソユーズは携帯式の望遠鏡を覗き込み──

 

 見て、しまった。

 

 ついさっきまで語りかけてくれた人が、物言わぬ石に変じているという、悪夢の再現を──

 

 ──幼い頃の記憶を呼び起こす、その、光景を。

 

  * * *

 

「最後に──ゲン!」

「──ジーマーで!!?」

 ペルセウスの船員発表。龍水のその言葉に、呼ばれたゲン本人だけでなく、例の不平屋たちの顔色も変わったのを、ゴーザンは見た。

(──司さんが残るってだけで、やっぱ抑止になるんだな)

 よし、と頷くゴーザンを余所に、ゲンが信じらんないとばかりに叫ぶ。

「ラストが俺ぇ!? なんで!? 司ちゃんじゃないの!?」

「司については『選ばれても今回は乗らない』と、本人から申告があったからな。最初から今回のリストには載せていないぞ」

「えええぇ?──あー……なるほど、そ~ゆ~……言っといてよね、千空ちゃ~ん……」

 龍水の言葉に、ゲンは首を捻りかけて──すぐに察したように呻いた。

「司ちゃんが乗らないのは()()()()けど……俺、そっちに要るぅ???」

「要るに決まってんだろメンタリスト。交渉役が現場来ねぇでどうすんだ」

 千空の言葉に、ゲンはしばし目一杯顔をしかめて悩んでいたが、結局は自分に言い聞かせるように理由を述べながら、自ら船へと乗り込んで行った。

 ──船員たちが帆を張り、ペルセウスが海原へと出航した後。

「……ゲンさん、自分は選ばれないと思ってたんですね」

 思わずゴーザンが呟いた言葉に、司が苦笑する。

「多分、俺が残ることを、千空から聞かされてなかったんだろうね。──人間関係のトラブルは、自分の管轄だと思っていたんだろう」

「あ~……」

 つまり、例の不平屋の件だ。

「でも、まさかゲンが、自分のことを『船に“要らない”人間』だと思っていたとはね……俺なんかよりよっぽど、代えの利かない重要な人材だろうに」

「え、そうなんスか?」

 目を瞬いたゴーザンに、司は苦笑を深めて、

「──逃げ場のない大海に浮かぶ船内(密室)ほど、人間関係に気を使わなければならない場所なんて、この世にそうそうないよ」

「ああぁ~……」

 そう言われると納得しかなくて、ゴーザンはただ深く頷くことしかできなかった。




世界線変動:氷月とほむらが、貨物じゃなく船員としてペルセウスに乗ってる。

こっからは、はちゃめちゃに筆がのるか、はちゃめちゃに苦戦して更新が滞るかの、どっちかだぜ……!!!(白目)
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