小石一投、波紋を生ず   作:ヒョロヒョロ

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誤字報告、ありがとうございます! 助かります!
(特に東西を間違えるというアホ丸出しのミスを修正して下さってありがとうございます!)
ゼノのクソデカ感情の描写がありますが、いつものように、BなLや、腐った意向は特にないです。


糾弾

「──ゼノじゃん、悪いの!!」

 そう、正面からズバッとゼノを糾弾したのは、チェルシーだ。

 南緯3度7分、西経60度1分──約3700年前、地球全体を包んだ石化光線の“爆心地”へ向かう航海中、保護された自力復活者である。

 約3700年前のあの日、彼女はゼノたちと同じ場で石化した。しかし、復活が年単位で遅れたことと、視力の悪さ故にゼノたちが残した看板すら読めなかったせいで、彼女はゼノたちと合流できなかったらしい。

 一人サバイバルをしていた彼女は、科学王国が地理把握のために出した偵察機(立派な戦闘機なのだが、彼らは偵察にしか使う気がないらしい)によって発見され、無事に()()・ペルセウス号へと保護されたのだ。

 保護直後は新種の珍獣のような姿になっていたせいで、わからなかったが──文明の恩恵を受けて身なりを整えた彼女を見て、ゼノは彼女がかつて一度対面した地理学者だと、やっと気づくことが出来た。

 ゼノを知っていた彼女は、一同のリーダーをゼノだと勘違いしかけ、その訂正と共に一同の関係性を聞かされて──その後の第一声が、冒頭の一言、という訳である。

「同盟交渉でいきなり銃出すとかナイし! そもそも独裁とかよくないじゃん! 千空が反対するの当たり前だし! っていうか何で千空撃ったの? 弟子なのに! 仲良くしろし!」

「おおぅ……言うね、チェルシーちゃん……」

 怒濤の勢いでブッ込むチェルシーに、事情を説明したゲンが若干引いている。──いや、ゼノが彼女の物言いに怒り出さないか、案じているのか。

 しかし、以前ならともかく、今のゼノは、かつての己の愚かしさを苦く思うことこそあれ、それを指摘する相手へ怒りを抱くことはない。

「あの時の僕は、それが最善だと思い込んでいたんだよ。──今振り返れば、とんでもない思い上がりだったと、わかるのだけれどね」

「思い上がり?『独裁しよ!』って考えが?」

 首を傾げるチェルシーに、告げる。

「それ以上に、『千空を“下”に見たこと』が、僕の最大の誤りだったんだ」

 ──ゼノが自分の()()()()()を自覚したのは、二度目の石化から解放された時。

 無明の闇が晴れた直後、目の前にあった深紅の双眸を見て──そこでやっと、ゼノは自身の思い違いに気づけたのだ。

 ──ゼノはずっと、千空を“()()()()()()()()()”だと思っていた。

 彼に、“絶望”をまだ知らない“子ども”の頃の自分を、重ねていた。

 彼が“絶望”を知らぬままでいるには、誰かの庇護が必要なのだと、思い込んでいた。

 けれど、それは、前提から間違っていたのだ。

 ──彼は()()()()()()()()()()()()

 千空は、()()()()()()()なのだ。

 情緒と合理性という相反する要素を、笑顔で両取りするような男に育てられた、子ども。

 ──そうではなかったゼノとは、()()()()()()()()人間(存在)だった。

(どうして、こんな当たり前のことに、もっと早く気づけなかったのだろう)

 彼の深紅の眼差しには、あんなにもはっきりと──()()()()()()()()()()()が、宿っていたのに。

(……僕も結局は、衆愚と見下した者たちと同じ、()()()()()()()()ということだ)

 ゼノは、世界の謎を追う探究者として挫折を覚えた時、その原因を『自分を取り巻く環境』だと判じた。“探究”の意味も理解できない“衆愚”が()()()()()()()()()()だと。

 だから、“独裁”を目指した。“探究”の意を知らしめ、“衆愚”を正しく導き、よりよい世界を築こう、と。

 人より知性に恵まれた自分には、その資格があると、信じていたから。

 けれど──実際には、ゼノもまた、己の都合の良いように現実を歪める、愚かで盲目な“衆愚”の一人でしかなかった。

 精神的な思い込み一つで、見える真実(もの)さえ見えなくなる。どれだけ知能指数が高かろうと、()()()()()()()()()()()()のだと、ゼノはもう思い知ってしまったのだ。

 ゼノは、()()()()には成れなかった。成れる器では、なかった。ゼノに、世界を導く資格など、最初からなかった。

 だから、己の身の程もわきまえず、理不尽を灼く“恒星”の前に、“理不尽”そのものとして躍り出て、まんまと灼かれる羽目になってしまったのだ。

(僕一人で灼かれたのだったら、ただの自業自得で済んだのだけれどね)

 愚かにも、ゼノはよりにもよって、スタンリーを巻き込んでしまった。

 ──ゼノの頼もしき騎士(ナイト)。親愛なる竹馬の友。

 彼はいつだって、ゼノを肯定してくれた。

 彼はいつだって、ゼノの望みを叶えてくれた。

 その彼の献身に甘えすぎた結果が、今だ。

 ──彼が今も無明の牢獄に囚われているのは、他ならぬゼノの咎なのだ。

 だから、今のゼノがすべきことは、千空たちと協力して、一刻も早く月の敵を討つことだけ。他ならぬ千空が()()()()()()くれた条件なのだから、それこそが、スタンリーを石の檻から解き放つための、最短にして最善の道。

 他の道を行こうとすれば、千空(恒星)も、その周りの人間(惑星)も、必ずそれを阻んでくる。──ゼノは確かに愚かだったけれど、この上、同じ愚を二度も繰り返す馬鹿に成り下がるつもりはなかった。

「んん?……それってつまり、ゼノは『千空を甘く見たから失敗した』と思ってて、“独裁”を企んだこと自体は『悪かった』って思ってないってこと?」

 チェルシーが、今度は反対側へ首を傾ける。

「実際のところ、()()()()()()()()()()は、身の程知らずの愚行だった。けれど、“独裁”という手段そのものは()()()()ではないと、今でも思っているよ」

 ゼノにその資格()がなかったと言うだけで、資格()がある者が衆愚を導くべきだという考え自体は、特に変わっていない。

「千空による“独裁”が成されたなら、それこそ素晴らしい世界になると思うのだけれどね」

 本心から告げれば、聞いた千空が凄まじく顔を歪めた。

「死んでもしねぇわ。クソ面倒くさい上に、絶対割に合わねーだろうが、そんなモン」

 予想通りの答え。──だからこそ、かつてのゼノは、千空を討とうとしたのだ。

「まあ、確かに、決して楽しいものじゃなかったね」

 真顔でそう言ったのは、司である。

「自分で選んで起こした面々にも、結局、俺は心を許せなかった。いつ裏切り者が出るかと疑心を抱えて、ずっと気を張っていた。実際、殆ど皆に裏切られてしまったしね」

「あ゛~? テメーの帝国を内側から切り崩した俺への恨み言かぁ?」

「いいや。恨み言じゃなくて、感謝だよ。犠牲者を出さない形で、俺を止めてくれてありがとう、千空」

「何回礼を言う気だテメー、耳タコだわ」

「まだこれで二回目だよ」

 司と千空の、笑みを含んだ気安い会話。しかし、その内容に含まれる情報は、凄まじく不穏なものだった。

「……え? え!? どゆこと!? 司、“独裁”してたん!?」

「うん。当時の俺にそのつもりはなかったけれど、今振り返ると、“武力独裁”以外の何物でもなかったね」

 チェルシーの問いに、司は素直に頷いた。

「待ってくれ。どういうことだい? 君は、千空と大樹に起こされたはずでは? それとも、前に言っていたライオンの下りは、丸々嘘だったのかい?」

「いや、それは丸々本当だよ」

 それは本当なのか。ゼノとしては、それこそ嘘であって欲しかったのだが。

「その後に、大樹の想い人で千空の友達でもある女の子を人質を取って、無理矢理“復活液”の製法を聞き出した上で、千空を()()したんだ。自分の理想の新世界を築くためにね」

「いや、やり方酷すぎない!!?」

 チェルシーがドン引きの調子で叫んだ。

 ──司がどうして“独裁”を選んだのか、司に()()されたはずの千空がどうして今も無事なのか、色々と気になることはあるが、ゼノの最大の疑問は、

「……君、そこまでやって、どうして途中で()()()()()()()()()んだい?」

 そこまで思い切ってしまった以上、もはや()()()()()()()()()勢いだと思うのだが。

「俺が詐術でこいつの配下の大半を寝返らせた上で、こいつの妹を人質にして停戦を迫ったからな」

 けろっとした調子で、そう答えたのは千空である。

 司はその答えに眉をひそめて、

「千空、その言い方は誤解を生むよ。どうして、君はそう、偽悪的な物言いをするんだい」

「テメーに言われたくねーわ。なんださっきの説明。あれじゃ、テメーが血も涙もねー極悪人みたいじゃねーか」

 返す千空も、不機嫌顔だ。

「事実を述べただけだろう。それに、やったことからすれば、俺は実際極悪人だ」

「そんなん言ったら、有りもしない希望で100人詐術にかけた俺だって極悪人だろーが」

「じゃあ、その案を千空ちゃんに提案した俺も極悪人だね~♪」

 司、千空に続いて、ゲンまで自称:極悪人に名乗り出てきてしまった。

「っていうか、一番罪深いの俺じゃない? 司ちゃん直々に起こしてもらったのに速攻で千空ちゃんに寝返ったし、詐術の提案者も実行者も俺だし」

「いや、ゲンがそうしてくれなかったら、それこそ俺は止まれなかったよ」

「あ゛ぁ、罪深いっつーか、むしろ平和の立役者だな。科学王国はテメーがいなきゃ詰んでたわ」

 悪ぶるゲンを、真顔の司とニヤニヤ笑いの千空が、すかさず持ち上げる。

「ぎゃ~! やめてやめてここぞとばかりに俺を褒め殺すの!」

「いや、今の割り込み方は、むしろ(マト)になり来たようなようなモンだろ」

「うん。あれだね、フリってやつだね」

「まさか司ちゃんからその言葉を聞くとは思わなかったな~!?」

 隔意の欠片もない3人のやりとりに、ゼノは思わずチェルシーと顔を見合わせ──ぶはっ、とチェルシーが吹き出した。

「何が何だかわかんないけど、科学王国メチャメチャ仲良しじゃ~ん! メンタル変態すぎる! ヤバ~!」

 明るく笑うチェルシーに、ゲンが微妙な顔をする。

「え、それ、褒めてる?」

「メッチャ褒めてるし! 助けてくれたのが、ゼノ独裁国じゃなくて、仲良し科学王国でよかった~!」

「……お~、そうかよ」

 チェルシーの言葉に、千空は小指で耳をほじりながら、気のない様子で相槌を打つ。

 ニヤ~と笑ったゲンが、チェルシーに身を寄せて、

「ちなみに千空ちゃんは照れると、悪魔みたいな笑い方か、今みたいに素っ気ない物言いをするよ~」

「あ、じゃあ、これ照れてるん? え、かわいいじゃん、ヤバ」

「おいコラ、デタラメ吹き込んでんじゃねーぞ、インチキマジシャン。テメーも真に受けんな地理学者!」

 くわっと顔を歪めて一喝してから、「ああ、そうだった」と千空は真顔になった。

「地理学者様に聞きてーことがあったんだよ。話があっちこっちに飛びすぎて、危うく本題忘れるとこだったわ」

「え、なに~?」

 首を傾げたチェルシーに、千空は端的に訊ねた。

「いい加減、ゴム素材が欲しいんだよ。この辺に生えてるとこねーか? ゴムの木」

 

 * * *

 

 ペルセウス号の出航後、コーンシティは米軍チームに任せてしまう方向で話がまとまった。

 “復活液”さえあれば、畑を作り、町を築く人手は増やしていける。しかし、ペルセウス号を万全に動かすためには、今いる船員を欠くことは出来ないからだ。

 さらに言うなら、下手に科学王国から人を残すと、それこそ軍人たちの人質(火種)にされかねないというのもある。ブロディを筆頭とした技術班は大丈夫そうなのだが、戦闘班には一部スタンリー過激派がいるのだ。筆頭はシャーロット。

 そのため、“戦後証人”であるルーナたちも、彼女たちの安全のために、一緒にペルセウス号へ乗ってもらうことになる。

 コーンシティ側のまとめ役には、諸々を加味して、ブロディが選ばれた。

 しかし、それらが決まっても、すぐには出航せず、まずペルセウス号を空母へ改造することになった。せっかく飛行機があるのに持って行かない手はない、ということらしい。

 ブロディや、彼の部下の技術者たちも、実に生き生きとペルセウス号改造計画に協力してくれていた──のだが、

「──え、何事?」

 ある日、ゴーザンが作業場に顔を出すと、何でかブロディがわかりやすく凹んでいた。

 彼と話していたらしいニッキーが、ゴーザンへと苦笑を向ける。

「いや、ウチらが出航した後は、“復活液”の製造と管理も、ブロディたちに任せることに決まっただろう?」

「そうッスね」

「だから、その話をしようとしたんだけど……『それは、お前ら科学王国でも限られた人間しか知らない、トップシークレットなんじゃないのか』って言われて」

「……へ?」

「なんかね、『“復活液”の製法を知る人間は、科学王国でも限られている』って、言われてたらしいんだ」

 実際のところ、“復活液”を実際に製造したことのある人間こそ限られているが──単に製法(レシピ)だけなら、ペルセウス号の船員全員が把握している。

 宝島の住人もそうだし、日本に残った面々も、一部の後続復活者を除いて、殆ど全員が製法を共有している。

 つまり、トップシークレットと言われるほどのものではないのだが──

「……あ、もしかして、交渉上のハッタリ?」

「らしいね。意外なことに、ゲンじゃなくて司が言ったそうだよ」

「え、マジか」

 でも、司に堂々と言い切られたら、圧に呑まれて、どんなデタラメでも信じてしまいそうだ。ゲンとは別方向で、司はハッタリに向いているかも知れない。

「──ブロディはいるかい?」

 噂をすれば影、とばかりに、そこに司がやってきた。

 司の顔を見るなり、ブロディは苦虫を噛み潰したような顔で、口を開く。

 それに、穏やかに微笑んだ司が何やら返せば、ブロディはムッツリと黙り込んだ。

「ニッキーさん、今、何……って、何事!?」

 ニッキーが、何故か顔を赤らめていた。

「……『“復活液”の製法は、知らない科学王国民の方が少ないそうじゃないか。何が「大樹を筆頭に、絶対に“千空を裏切らない人間”だけが、その情報を共有している」だ。とんだデタラメじゃないか、この野郎』」

「……ん?」

「『デタラメ? とんでもない。製法を共有している科学王国民は、誰一人だって、絶対に千空を裏切らない。俺は、そう確信しているだけだよ』」

「おぅふ」

 ニッキーの赤面の意味が分かった。──これは、さっきの二人のやりとりの和訳だ。

 実際に“その情報を共有”している身としては、照れくさいほどの信頼である。

「千空といい、司といい、龍水といい、科学王国のトップ陣は、人誑しの気があるよね……」

「まあ、だからこそのカリスマなんじゃないスか……?」

 ニッキーとゴーザンが照れている間に、司はここに来た本来の用件を告げたようだった。ブロディが、悩むように顎に手を添える。

「……なんて?」

「『精密機械の分解・組立が出来るような技術者に、心当たりはないかい?』だって」

 しかし、どうも、ブロディも、ブロディの部下たちも、大型建造方向へスキルが偏っているらしい。

 ただ、「精密機械をいじれる人員が欲しいってんなら、腕時計の職人でも起こしたらどうだ。確か、この辺にも高級腕時計の会社があったと思う」というブロディのアイディアは、より正確な場所の情報を龍水から得て、採用された。

 ──空母に改造されたペルセウス号が出発する時、そこには腕時計職人のジョエルも、仲間として加わっていたのだった。




世界線変動:科学王国民(+α)みんなで、空母・ペルセウス号で南米へ出発。

ついに『reboot:百夜』を読みました。
感想は「あ゛ああ~~~ッ!!!(クソデカ感情による語彙消失)」につきる。
石神一族……何なの……尊いが過ぎない???
結果として、引きずられるように、拙作のオチまで定まってしまいました。
あり得たかも知れないIFを書く二時創作で、“あの子”と人類を再会させるのは、もはや義務の域でしょ(断定)
ただ、そうすると当然、拙作のオチ=『reboot:百夜』のネタバレになってしまう。
皆、『reboot:百夜』を読もう!!!(クソデカボイス)

(以下、今話のゼノの思考の補足と、筆者の個人的な各キャラ解釈です)
(長いから興味ないなら読まなくてもいいよ!)
ゼノは千空を“恒星”として、“衆愚”を()()()存在として捉えている。
しかし、実のところ、“衆愚”=『精神的な思い込み一つで、見える真実(もの)さえ見えなくなる人間』という定義ならば、普通に千空も“衆愚”の枠を出ない。
向いてる方向性はともかくとして、個人としての“思考の視野”の広さだけなら、ゼノと千空に大した差はない。
実際、ストーンウォーズ時には、“思考の死角”を突かれて、氷月&ほむらに放火されている。千空も、決して全てを見通せる超人ではない。
両者の違いは、『自分の“視野”の死角を、他者の“視野”によって補うスキルがあるか否か』に尽きる。

千空には、まず百夜がいて、大樹とも出会った。
よき親であり大人である百夜はもちろんとして。友となる大樹も、千空と出会う以前から、既に自分の“芯”を、『人を殴ることは悪いことだ』という、揺るぎない“信念”を持っていた。
だから、大樹は、基本的に「千空が言うならそうなのか!」と千空の意見を丸飲みするけれど、その“芯”に抵触する部分では、「それは違うと思うぞ!」と自分の視野から物を言う。言える。
そういう大樹と一緒に育つことで、千空は、自身の“芯”を保ちつつも、自分とは違う視野からの意見を、自身の思考へ取り入れるスキルを、幼いうちから自然と身につけることが出来た。
だから、ゼノの意見に染まることも、その意見をシャットダウンしてしまうこともせず、「そういう考えのヤツも居るんだな」と、自身の思考の一要素として胸に留めておくことも出来た。

一方、ゼノには、スタンしかいなかった。スタンにも、ゼノしかいなかった。
二人とも、普通に家族はいただろうけど、典型的な“ギフテッドの家族問題”にぶち当たったタイプだと思う(ゼノの知能はもちろんだけど、スタンの万能さもギフテッドの域に思える)
ゼノは、家族とうまく行かなかったからこそ、“人間”への興味(期待)を捨てた上で、自分の知能と好奇心を科学へと全振りしたのかもしれない。
その状態の幼少期ゼノが、唯一自分から興味(期待)を持てた人間が、万能の天才であるスタンだった。そういうことだと思う。
そのスタンは、何でも出来るけど、何にも持っていない状態でゼノに出会って、そのまま自分の“芯”に“ゼノ”を据えてしまった。
だから、ゼノに「どう思う?」と聞かれても、スタンは「できんよ」「やんじゃん」「任せな」としか言わない。それはゼノ視点の全肯定に過ぎず、スタンの視野からの意見ではない。
だから、ゼノは、自分とは違う視野からの意見を、自身の思考へ取り入れるスキルを、柔軟な幼少期のうちに身につけることが出来なかった。
後に、NASAで百夜と出会い、メール越しに千空とも出会うけれど、その時点でゼノの思考は既に自己完結型に固まってしまっていて、ゼノは彼らの視野からの意見を、自身の思考へ取り入れることも出来なかった。

『他者の視野からの意見を柔軟に取り入れることで思考の死角をなくし、万難を廃して理想を達成する人間』を“大器”と呼ぶならば、千空は間違いなく“大器”。
ゼノの言うところの“恒星”=“大器”ならば、千空は確かに“恒星”。
“恒星”を自身の“上”だと認めたから、ゼノは自身による“独裁”を諦めた。
けれど、実際には、その“恒星”を“恒星”たらしめているのは、ゼノ自身を含めた数多の人々の視野からの意見である。
その“真実”に気づくことがない限り、ゼノにとって、“恒星”は手の届かない“上”の存在のまま。
もしかしたら、科学王国で暮らすうちに、何かの拍子にアイディアロール発生させて気づく可能性もある。けれど、“恒星”の在り方の“真実”に気づいてしまえば、それが“独裁”の対極であることもわかってしまう。

なので、どちらにせよ、ゼノによる“独裁”フラグは折れたし、もう立たない、ということです。
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