小石一投、波紋を生ず   作:ヒョロヒョロ

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本編が更新できないなら、番外を更新すればいいじゃない!
というわけで、小話2つ詰め合わせ。
こんなタイトルですが、内容は別にホラーって訳じゃないです。
むしろ下ネタ注意。


番外編
こわい話


・モズくんはゲンがコワい

([発覚]~[探知]くらいの時間軸)

 

「──全っっっ部、ウソじゃん!!!」

 モズは腹の底から叫んで訴えた。

「なーにが『石化武器が島からなくなれば、イバラ消してモズちゃんがトップになれる』だよ! 最初っから俺がトップになる目なんかなかったじゃん!」

 正当な後継であるソユーズがいる以上、イバラがいなくなったところで、モズが頂点に立てる目など最初からなかったのだ。

「あれ~? 俺らが島からいなくなった後、ソユーズちゃんを消してトップに、とは考えないんだ?」

「……わかってて言ってんだろ……」

 白々しく笑うゲンに、ぎりぎりと歯噛みする。

 そんなことをしたら、それこそ島中の人間から恨まれるだろう。モズなら逆らう人間を武力で押さえつけることは出来るが、そんなやり方では女たちからだって嫌われる。情事の最中に刺されるような最期はごめんだ。

「──まあ、いいけどさ……俺は別に、()()トップになりたかったわけじゃないし。イバラがいると、後宮の女の子たちがカワイそうだと思っただけだし」

「あ~、なるほどね。そういう感じだったんだ、納得」

 ゲンは、あっさりとモズの言い分を信じた。──本心だが、口に出すと負け惜しみめいて聞こえると、モズ自身でも思ったのに。

「……お前、マジで心読めんの……?」

 目の前にいるのは、人間のフリをした()()()()なのでは? と、モズはわりと真剣に疑ったが、

「ジーマーな話すると、別に心の中の声を読んでるとかじゃないのよ。俺にわかるのは『相手の言ってることがウソかどうか』、『こっちの言葉が間違ってないかどうか』くらいね~」

 ゲンは苦笑めいた表情で、そんなことを言った。

「いや、それでも十分意味わかんないんだけど……」

「そう? モズちゃんだって、戦いの時に、相手がフェイントかけてくるのとか読めたりするでしょ? それと似たようなもんじゃない? 俺戦えないから、あってるか自信ないけど」

 ──そう言われると、何となく感覚がわかったような気がした。

 この、ひょろっちくて武器も持てないような男は、言葉という“武器”を交わすことで、相手を()()()いるのか。

「──なるほどね。……でも、それはそれとして、騙されたのはやっぱムカつくから、お詫びにイイ女紹介してよ。会わせてくれたら、あとは自力で口説くから」

「う~ん、らしいご注文! でも、急にそんなこと言われてもなぁ~……たとえば、どんな人が好みなの? モズちゃん」

 ゲンの問いに、モズは即答した。

「カワイイ()、もしくは綺麗な女性(ヒト)

「わ~~~、清々しいまでに外見重視~」

 ゲンは感心とも呆れともつかない声を上げるが、外見以外に重視することなど何があるというのだろう。

「──あ、そうだ、あの耳飾りの“声”の女性(ヒト)! あの“声”は絶対美人の声でしょ」

 ふと思い出して告げたモズの言葉に、ゲンは一瞬ぽかんとして、その後、思いっきり悪い顔で笑う。

「──『せっかくのご指名だけど、私、モズちゃんはタイプじゃないの。ゴメンね?』」

 耳飾りから聞こえていた“女の声”が、ゲンの口から出てきた。

「………………は?」

 視覚と聴覚の情報の齟齬で、モズは混乱する。

「『俺、声マネも特技なんだよね~♪』」

 追い打ちのように、ゲンは氷月の声で告げた。

 声は完全に氷月なのに、口調はゲンのまま。声と口調の齟齬まで加わって、モズの頭は完全にグチャグチャなってしまい──

「──やっぱりお前“妖怪”じゃん!!!」

 悲鳴のように叫んで、一目散にその場から逃げ去ることしか出来なかった。

 ──モズの人生で初の、情けない敗走である。

 

 これからしばらく、モズはゲンを視界に入れることさえ避けるようになる。

 

 

・モズくんは千空もコワい

(上のヤツのちょっと後くらい)

 

(……よく考えたら、『声マネ』ってことは、元になった“声”の持ち主が()()んじゃん!)

 ゲンの前から敗走してからしばらく後、モズは()()と思い至った。

 ということは、あの“声”を持つ()()はちゃんと実在してるはず。モズは調子を取り戻して、近くにいた暇そうな男へ、()()のことを尋ねたのだが──

「──ゲンの声マネの女?……あ~、リリアンか!」

「リリアンちゃんっていうんだ? その人、今どこにいんの?」

 わくわくと尋ねたモズに、男──陽の表情が陰る。

「……もう、いねーよ。どこにも」

「──は?」

「とっくの昔に亡くなってんだよ、リリアンは」

「……そんな……」

 まさかの故人。モズはわりとガチ目に落ち込んだ。

「けど、何だってお前、リリアンのこと探してたん?」

「……イイ声だったから、絶対美人だと思って……」

「いや、そーゆー!? 口説く気だったんかよ!」

 確かに美人だったけどさ、という陽の言葉に、モズはますますリリアンの死を惜しんだ。

「……お前、この島じゃ相当(そーとー)プレイボーイだったみたいだけどよ~、この船の()には、変にちょっかいかけねー方がいいぞ、マジに」

 と、陽が真剣な声になって、そう警告してくる。

「何で?」

「龍水……は、ちょっとわかんねーけど、千空がキレそう。特に、杠とかに変なマネしたら、絶対(ゼッテェ)ブチキレる」

 ──杠、と言われて、モズは洞窟で見た()を思い出した。

 あの時は疲れたような表情だったけれど、それでもカワイかった。明るく笑ったら、きっともっとカワイイはず。

「なんだ……あの()、千空の()()()()なんだ」

「いや、違う違う、杠の相手は大樹」

 モズの言葉に、陽はパタパタと手のひらを振った。

「誰?」

「え~と……一番最初に、お前にぶっ飛ばされてもすぐ起きあがったヤツ、つったらわかる?」

「ああ……『縛られてるから耳ほじれない』とか、ボケたこと言ってたヤツ……」

「そっちで記憶してんのかよ! いや、まあ、アイツ、スゲーいいヤツだけど、スゲー天然だから……」

「……あの()カワイイのに、変わった男の趣味してんね」

 杠の好みがアレだとすると、モズでは脈がないかもしれない。

「──って、じゃあ何で、あの()にちょっかいかけると、千空がキレんの? そこは大樹じゃないの」

「いや、大樹も怒るかもだけど、アイツ、人に攻撃できねーから。千空の方がコワい。キレてんの見たことねぇけど、キレさせたらヤベーよ、絶対(ゼッテェ)

 陽は想像するだけでコワいと身震いするが、モズからすると意味が分からない。

「いや、だから何で、千空がそこで出てくんの」

「千空と大樹って、ガキの頃からの友達なんだと。っつーか、あれはもはやほぼ兄弟。千空、杠とも親友だし。大樹と杠の仲邪魔したら、絶対(ゼッテェ)キレる」

「あー……そういう……」

 キョウダイの恋路は邪魔させん、ということか。

「──でも、千空がキレたところで、それこそ何がコワいのさ。あいつ、ハチャメチャ弱いでしょ」

「わかってない、お前は千空をわかってない!!」

 陽はそう訴えながら、ガッと掴むように肩を組んでくる。そうして、潜めた声で、

「──アイツは、もう意味わかんねーレベルで頭イーの。自分じゃ『俺は医者じゃねー』とか言ってるけど、医者並……うんにゃ、下手な医者よりよっぽど、薬にも毒にも詳しい訳。石化解く復活液作ったのも、千空だかんな?」

「……毒でも盛るって? 氷月に『殺すな』って言うような甘ちゃんが?」

 鼻で笑ったモズに、しかし、陽は真顔で、

「確かに千空は、死人が出るような事態は徹底的に避けるけど、逆に言やー、“死なない”範囲内なら、わりとエッグいこともやる。する」

「……エグい?」

「──命は無事でも、男としては“死ぬ”……二度と“勃たなくなる”ような毒とか、盛られたくねーだろ?」

 

 ──モズは、杠にだけは絶対手を出さないと、胸に誓った。




別名:モズ君の災難集
陽は最初、モズをからかうつもりで言ってたけど、言ってるウチに(いや、マジで千空はやるかも……?)という気になってきて、最後には自分でもビビっていた。
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