そして、バレンタインも全く関係ないよ。
アメリカ編に先だって「入れておくべきだな」と思った、短い補足回です。
・大人の矜持
([発端]のちょい後くらいの時間軸)
「──はい、では、第3回、石世界復活者保護者会会議を開始したいと思います」
議長であるカズキ父の一言を合図に、一同の「よろしくお願いします」という声が唱和する。
石世界復活者保護者会──読んで字の如く、この
かつて突然降ってわいた石化という災い。それによって、世界は凄まじく様変わりしてしまった。
3700年という途方もない年月と、その間に蘇った大自然に押し流され、人類が築いた文明は一度完全に消えた。目下、200万年の叡智をそっくり頭に修めたような天才少年の音頭で、文明復興の最中である。
我が子共々、その天才少年が発明した復活液で石化から解放された身として、親としても大人としても、彼の力にならねばと、ここに集う保護者たちは思っているのだが──
「──あいつら、どうにかしてもう一回石化させられないかしら」
「気持ちはとてもわかるけど、それ言っちゃダメなヤツです」
思わず、という調子で一人がこぼした呪詛に、隣の席から制止が入る。
その
ここにいる保護者たちは、先に復活していた我が子の身内枠として起こされたのだが──別の事情で起こされた人々の中に、
いや、「頼んでもいないのに、勝手に、何にもない世界で起こされた」と思えば、まあ不満を覚えるのもわからないではないが──だからと言って、年若いリーダーへ、嫉妬なのか八つ当たりなのかわからない不平をぶつけるのはやめろ。
そのリーダー──千空だって、石化という災害によって、“父親”という大切な存在を喪っているのだ。
まだ十代の少年だ。親を亡くした悲しみで嘆き暮らしたっておかしくないのに、千空は「石化の謎を解いて、全人類を叩き起こして、文明復興すんぞ!」と、八面六臂の活躍を見せている。
頼もしい、と思うのと同時に、子を持つ親としては、痛ましい、とも思う。──悲嘆を振り切るために、前だけ向いて走っているようにも、見えるから。
だからこそ、どんな理由があれ、そんな健気な少年を貶すなど、大人なげない以前に、人間としてアウトだと思うのだ。
「──今回は司君がこっちに残ってくれたから、あいつらも比較的大人しくしているが……問題は次だ」
「行き先はアメリカだろう? 行って帰ってくるだけで、数ヶ月。あちらで町作りなりをするとなったら、数年仕事だぞ。その間、あいつらが馬鹿をしでかさないでいてくれるか……」
「ルリさんの話によると、次は、司君と入れ替わりに、コクヨウさんが残ってくれるらしい」
「コクヨウさんが! それは頼もしいな」
「ただ、あいつら、石神村の人たちのことも“原始人”とか言って下に見てるからな……」
「なーにを偉そうに! じゃあ、お前は電気の仕組みがわかるのか? 発電所を作れるのか? 既にあった文明に首まで浸かってただけの身で、それをここまで復興させた石神村の人たちを、よくもまあ貶せるものだ!」
「あいつら、石器だけ渡して、どっかに放逐しちゃダメかな……」
「それで野垂れ死なせるのは千空君の意に沿わないだろうし、それで生き残ったら生き残ったで、これから復興して人類圏が広まったらどっかでカチ合うからダメだ」
「結局、ウチの息子みたいにガタイのいいので囲って、変なこと考えさせない、やらせないのが一番よ。屁理屈こねてきた時は、私を呼んで。論破してやるわ!」
「頼もしい! さっすが元弁護士!」
「──そろそろ、法律とかも整えた方がいいのかねぇ……」
「とは言っても、かつての六法全書をそのまま適用する訳もいかないわ。現状に沿わない法律は、結局ただの悪法だもの」
「となると、やっぱり一から、現状に合わせてルールを作ってくしかないのか」
「まずは“科学王国でやってはいけないこと”と、“やってはいけないことをした時の罰則”をきちんと明文化して、全体に周知するべきだわ。それだけでも、かなり抑止になるはずよ」
「石神村の
「ルリさん──は、今、めちゃくちゃ忙しいよな……」
「ご隠居さんたちから話を聞いて、それを下敷きに、草案だけでも作っておこうか。ペルセウス号が帰ってきたら、首脳陣に提出する形で」
「それが現状のベストかな……異議がある人は?」
議長の言葉に、「異議なし」という声が唱和する。
「じゃあ、これで行こう。──第3回、石世界復活者保護者会会議、これにて終了とします」
──後日、保護者会から提出された草案は、ほぼそのまま“科学王国法”として採用されることとなる。
(子どもにばっかり、仕事をさせる訳にはいかないさ。私たちは大人で、そして、親なのだから)
具体的なルールについては、筆者の知識と教養ではマジで手に余るので、読者のみなさんの脳内で各自良い感じに補完して下さい(白目)
不平屋たちは、ペルセウス帰還以降、簡易とは言え明文化されたルールと、プラチナによって爆発的に復活していく人口の勢いに圧される形で、大人しくなります。
ある程度少数の集まりだからイキってられたけど、マジで国規模になったことで怖じ気づいた、そんな感じです。