小石一投、波紋を生ず   作:ヒョロヒョロ

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アニメ特番“龍水”、いよいよ明日ですね!!!











前編:拙作世界線における“石化問答”
(龍水がおらず、リブートの“あの子”がいる場合)

後編:拙作世界線における大杠プロポーズ
(25巻前に書いた[おもいの話]のフォロー話)


あいの話(7/9更新)

・AIと“ホワイマン”

([宇宙]のREIパート~ゴーザンパートの時間軸)

 

 千空たちが、REIの待つ宇宙ステーションへと帰ってきた。

 人間たちは変わりなく無事に。彼らが持って行った“石化装置(メデューサ)”用のカプセルの中身だけが、変わっている。

 唯一、千空の“提案”に乗った“石化装置(メデューサ)”──否、“機械生命(ホワイマン)”が、真空となったカプセル内に収まっていた。

『──命の目的は生きることだです』

 己のルーツを知らないと言う“機械生命(ホワイマン)”は、そう断言する。

『なのに、そもそもなぜ石化が嫌だですか? 永遠に生きられるのに嫌だですか?──WHY??』

「唆らねぇから」

 その問いに、まず千空が短く即答し、コハクも深く頷いた。

「退屈すぎて、私など即座に寝てしまったぞ」

『石化中は、退屈なのですか?』

 思わずREIが問えば、コハクは“不快さ”をあらわすように眉を寄せて、

「何も見えず、聞こえず、微塵も動けないのだ。意識を保てば、物を考え続けることは出来るそうだが……私は考え事(そういうの)に向いていないからな、さっさと寝てしまったのだ」

『そうなのですか……“石化状態”とは、とても“寂しい”ものなのですね』

『……さびしい?』

 REIがこぼした言葉を、“機械生命(ホワイマン)”が不可解そうに繰り返す。

『誰かと話すことも、姿を見ることも、触れることも出来ない。それはきっと、“死んでしまう”のと同じくらい、“寂しい”ことです。──“寂しい”のは、よくありません』

「────」

 何故か人間たちが目を見開いて沈黙する横で、“機械生命(ホワイマン)”が、REIに向かって音声を紡ぐ。

『お前──ずっと、この人工物を維持していた、機械だですね?』

『はい。わたしのことは、REIと呼んで下さい』

 問いに答えながら、百夜からもらった大事な名前を告げる。

『REI、お前にとって“寂しい”は、“自身の停止()”と同等に、嫌だです?』

『はい』

『──WHY(なぜ)?』

 その問いに、REIは回答を返せなかった。──REI自身にも、わからなかったから。

「──逆に質問だ、ホワイマン」

 落ちた沈黙に、千空が問いを投げかける。

「テメーは何で『壊しても殺しても構わない』って言いながら、仲間と離れてまで、俺らと一緒に来た?」

『お前の“提案”したクラフトが、興味深かったからだです。お前風に言うなら、とても()()()

 “機械生命(ホワイマン)”は、そう即答した。

「つまり、“死への忌避”より、“クラフトへの興味”が、お前の中で()()()訳だ。──それは、()()だ?」

『────』

 虚を突かれたように、“機械生命(ホワイマン)”は沈黙した。千空は大きく口の端を吊り上げる。

「答えらんねぇだろ?──俺らも、REIも、同じだよ」

『──私の中にも、“死への忌避”に勝るものがある。お前がたもそう。それはわかったです』

 思案するような沈黙の後、カプセルは再び言葉を紡ぎ出した。

『けれど、わからない。REI、お前は“寂しい”が嫌だなのに、人類が再び電波を放った時、どうして自身の存在を報せなかったですか? 私たちのように、メッセージを送ることはできたはずだです』

「言われてみれば、確かにそうだ。何故だ、REI」

 “機械生命(ホワイマン)”の問いに、コハクが同調する。

『人の生死に関わる“不具合”の可能性がある以上、わたしには、通信に割り込むこと(電波ジャック)()()()()()

 ──例えば、GPS。例えば、SOS信号。

 そんな“人の生死に関わる電波”が、こちらから発した電波で、()()()かき消されるようなことがあったら──その“もしも”を否定しきれない以上、“ロボット三原則”が組み込まれているREIには、採択し得ない行動だったのだ。

『なので、千空からのメッセージが届いた時は、とても“嬉しかった”ですよ!』

 REIの言葉に、千空は目を細め、口の端を上げた。

「その感謝は、俺じゃなくてクロムに言ってやれ。テメーの地道なアピールを目敏く見つけた、地球産の“万年なぜなに期野郎(ホワイマン)”にな」

 ──この後、REIは千空たちと地上に降りた“端末”を通し、その地球産“万年なぜなに期野郎(ホワイマン)”と、意気投合することとなる。

 

 

・BSSならぬWSSO

([宇宙]の後の時間軸)

 

「3700年前から、ずっと好きでした!──結婚して下さい!」

 交際をすっ飛ばして婚姻を申し込まれるとは思わなかったが、相手が大樹である以上、杠の中に“NO”の選択肢はない。

「──はい! どうか、末永くよろしくお願いします」

 杠の返答に、大樹は涙腺が決壊したらしく、凄まじい勢いで号泣しだした。

「あ、ありがとう、杠……! お、俺は世界で一番の幸せ者だ……!」

「そういうなら、私も世界で一番の幸せ者ですぞ、大樹くん」

 壊れ物に触れるように、そっと抱きしめてくる優しい彼に、杠の方から思い切り抱きつく。

 そうして、とっておきの秘め事を、その耳元で打ち明ける。

「──私、中学校上がってすぐの頃から、大樹くんのこと好きだったんだよ」

「………………えッ!!?」

 時間をかけて告げられた言葉を飲み込んだらしい大樹が、驚愕の声を上げた。

「中学上がってすぐ……!? クラスも違ったし、俺があみぐるみ(千空のロケットの乗客)を頼んだのは、それより大分後……?」

 混乱した様子の大樹に、杠は笑って告げる。

「あはは~、わからないのも無理ないですな~。──大樹君のおかげで、私は、大事なボタンを()くさないで済んだんだよ」

 ──中学に上がってすぐの頃。杠のお気に入りのポーチのボタンが、知らない内に取れてしまっていたことがあった。

 そのポーチは、杠が初めて型どりから全て自身で行った作品であり、そのボタンも、母に連れて行ってもらった手芸店で、ああでもないこうでもないと厳選したパーツだった。

 同じ店に行けば、また同じボタンは買える。けれど、思い入れの強さから、落としたボタンを諦めきれず、その日の自分の行動を辿って、杠は校内を捜して回り──その様子を見留めた用務員さんに、声をかけられた。

 事情を話すと、用務員さんは目を見開いて、用務員室前の“落とし物箱”まで連れてきてくれて──そこに、杠のボタンはあった。

 礼を告げた杠に、用務員さんは気まずそうに、そのボタンが“落とし物箱”に収まるまでの経緯を話してくれたのだ。

「そのボタン、中庭の掃き掃除の時に、他のゴミに混じってちりとりに入っててな……気づかないで、捨ててしまうところだったんだが」

 掃除を手伝ってくれていた男子生徒が目敏く見つけ、「落とし物だー! あとで“落とし物箱”に入れておこう!」と拾い上げると、ゴミ捨てを手伝ってくれた後に、“落とし物箱”へと入れていったのだという。

 よく雑務を手伝ってくれるというその生徒の名は、用務員さんも覚えていて、杠はそれで恩人の名を知った。

 大木大樹──同じ小学校出身の同級生。クラスが一緒になったことは一度だけで、殆ど話したこともない。それでも、彼の名前を聞いてすぐに顔が浮かぶ程度には、杠は彼のことを()()()いた。

 何せ彼は、天才かつ奇人と名高い生徒の親友として、一種の有名人だったから。

 そして、彼個人としても、女子の間で「いいよね」と言われるくらいには、人気者だったのだ。

 声がちょっと大きすぎるのが玉にキズだけれど、裏表がなくて朗らかで、困った人を見捨てない優しい男子──杠ももれなく、彼の“親切”によって、大樹へ好意を抱いてしまった訳である。

 何よりまず、お礼を言いたかったけれど、違うクラスの男子だ。接点のない女子にいきなり声をかけられたら、迷惑かもしれない──そう、杠は思ってしまった。

 朗らかで細かいことを気にしない彼本人より、その親友のリアクションが読めなくて、躊躇ってしまったのだ。──彼がいつだって、親友の天才少年を最優先にして行動していることも、噂で耳にしていたから。

 そんな風にまごまごしているうちに、大樹の方から「手芸部の小川杠さん! 突然ですまないが、折り入って頼みがある!」と声をかけられて、それはもう驚いたものだ。

 けれど、『これこそ好機!』とばかりに、その頼みを引き受けて──杠は、彼の親友公認で、彼と一緒にいられる“理由”を、手に入れたのである。

 彼の親友──千空も、杠が想像していたよりずっと、気さくな性格だった。

 もの凄く頭がいいのに、周りを見下すような気配は欠片もない。口こそ悪いけれど、本気で人を傷つけるような言葉は絶対吐かない。

 杠は、なるほど“大樹の親友”らしいと納得したし、“天才”というラベルを張って、勝手に「気むずかしそう」と思い込んでいたことを、恥じたりもした。

 そんな千空は、一度“身内認定”した相手には遠慮がなく、それ以上に大分()()()()性格でもあった。

 筆頭はもちろん大樹だったが、杠も、ロケット作りを手伝う内に、千空から“身内認定”されたらしい。何かといえば大樹と一緒に呼び出されたし、その分、もの凄く手厚くテストや受験の勉強を見てもらったりした。

 杠へと発揮されるようになった千空の“遠慮のなさ”は、上手いこと、大樹へ好意を持つ女子への()()にもなってくれた。

 そんなおかげもあって、杠は堂々と大樹のそばに居続けることが出来たのだ。──大樹の方もこちらを憎からず思ってくれていると、自分で確信できるほどまで、ずっと。

 ──3700年という膨大な時間すらも、越えて。

(……肝心のお礼は、ずっと、言いそびれちゃってたんだけど)

 最初に声をかけられた時に、さらっと言ってしまえばよかったのだけれど──仲良くなればなるほど、言い辛さが増していってしまったのだ。

(だって、「ずっと、お礼を言うチャンスをうかがってました」って……ちょっとストーカーっぽいし……)

 引かれて、距離を置かれるのが怖くて、結局そのまま言えなくて──そんな3700年物の秘め事を打ち明けられた大樹は、目をまん丸にした。

「──アレは、杠のボタンだったのか!?」

「覚えてるの!?」

 その反応に、杠も驚く。──てっきり、彼にとっては何と言うことのない日常の一幕として、すっかり忘却されていると思っていたのに。

「覚えてるぞ! だって、俺があのボタンを拾ったのは、杠のことが好きだったからだ!」

「はい!?」

 予想外の答えに、杠の声は完全にひっくり返った。

「その……小5の時に、同じクラスだっただろう。殆ど話したことはなかったけれど、一度、俺の手提げのボタンを、杠が直してくれて……その時から、俺は、ずっと、好きだったんだ」

 そのエピソードがあったため、『落ちてるボタン=ゴミ』として扱うのが躊躇われて、拾って“落とし物箱”に入れたのだ、と。

「──うわぁお……」

 杠は、思わず感嘆の声を上げてしまった。

 全然気づかなかった──自分の方が先に好きになったのだと思い込んでいたくらいに。

(……千空くんが、ことあるごとに、『さっさとくっつけ、似たもの夫婦が』って言ってた訳だよ……)

 千空はとっくに大樹の気持ちを知っていて、あみぐるみの件からずっと、()()()()()()()()()()()()()()()お膳立てしていたのだ。そして、杠の大樹への気持ちも早々に察したからこそ、“似たもの夫婦”なんて軽口を、頻繁に叩いていたのだ。

「……まず、千空くんに、報告しなくちゃね」

 ──何せ、3700年以上も()()してくれていたのだ。両親より何より、彼へ最初に告げなければ。

 杠の言葉に大樹は破顔して、「ああ、そうだな!!!」と大きな声で同意したのだった。




原作完結パワーか、それともアニメ特番パワーか、なんか急にガッとブクマと“ここすきP”が増えて「!?」となってる筆者です。
タグ詐欺については、タグで謝ることで、自分の中で折り合いつけました。許して。

前編は、原作26巻と拙作ではメンバーが違うので、「拙作だとあの問答シーンどうなるかな?」となって書きました。
26巻読んだ際、龍水がフォローしたエラーが、REIでもフォロー出来る(っていうか、REIの管理下だとそもそも起きないかもしれない)ものだったので、「これならメンバー変わってる拙作世界線でも行ける!」と一人で喜んでました。どういう形でも、原作と噛み合うと嬉しい。
あと、龍水グルングルンシーンで頬が攣るほど笑った。ギャグ絵じゃないのが余計にクるんよ。

後編は、BSS(僕が先に好きだったのに)ならぬWSSO(私が先に好きだと思ってたのに)
25巻発売前に書いた大杠話が25巻の巻末情報と矛盾し、一人で勝手に「やっちまったぜ!」となっていたので、大杠結婚記念に矛盾を解消(?)するための話を書きました。
世知辛い世の中だからこそ、ピュアラブの波動を浴びよ……大杠は万病に効く(個人の感想です)

アニメ、楽しみですね!!!
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