小石一投、波紋を生ず   作:ヒョロヒョロ

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何でメロス構文? って言われそうだけど、思いついた以上、こりゃ書くしかないかなって。


美食

 ──短くも濃い気球での大冒険を経て、龍水とクロム(冒険者たち)がお互いを認め合い、千空と共に石神村へ到着した後。

 龍水は奮起した。必ず、かの石神村の食事情を改善すると決意した。龍水には調理はわからぬ。龍水は富豪の生まれである。船に乗り、世界中を巡って暮らしてきた。故にこそ美食に関しては、人一倍に敏感であった。

「──はっはーー! 見つけるぞ食料も!! 空からな! 絶対に絶対に絶対に絶対に絶対にだ!!!」

 龍水は、雄叫びに等しい勢いで、断言した。

 この焼き魚一色の食卓が、石神村の人々による心尽くしの持て成しであると、龍水はきちんと理解している。しかし、否、だからこそ、この現状を座して見過ごすことなど出来はしない。

 たまに狩れる獣の肉を御馳走だと言う、石の世界(ストーン・ワールド)で生まれ育った純朴な村人たちは、知らないだけなのだ。かつての文明世界に溢れていた、数々の美味を。

 ──知らないから、“欲しい”とも思わぬだけなのだ。

 何と哀しいことなのか。()()()()()龍水が、彼らへ()()機会を与えることは、もはや義務だ。それを為さないことは、許されざる怠慢だった。

 必要な食材は、龍水が必ず見つけ出す。そのための足は──否、翼が、既にある。

 だが、それだけでは()()()()ことも、龍水にはわかっていた。

「──千空! 貴様が気球の燃料にした可燃性の薬品は、本来は石化を解除するための復活液だと言っていたな!? あれは貴重なものか?」

「ぅん?──まあ、現状、素材の関係で量産できねぇから、貴重っちゃ貴重だ。なんだ、誰か起こしてぇヤツでも思い出したか?」

 焼き魚にかぶりついていた千空は、口の中のものを飲み込んでからそう答え、龍水に問い返す。

「ああ、そうだ! 俺の執事兼シェフ、フランソワを是非とも起こしたい!!!」

 龍水自身にはない、高度な調理知識と技能を持つ人物が、不可欠だった。

「フランソワ?」

 龍水が告げた名を繰り返した千空は、小さく首を傾けて、思い出したように言う。

「起きた直後に呼んでたな。石化時も、テメーと一緒にいたのか?」

「ああ。奴はいつでも、俺の声の届くところに控えていた。──食事はもちろん、サービスの全てを取り仕切る、もてなしの美学を持つプロフェッショナルだ!」

 熱弁する龍水を静かに見つめていた千空は、確認する調子で問いを投げる。

「それは、テメーに必要だから起こしてぇのか?」

「もちろん、俺にとっても必要だ! しかし、それ以上に、この村にこそ奴が必要だ! 奴ならば、今のこの食材からでも、もっと美味いものを作り出せる! その調理法を、皆に広められる……!」

「──現状、ただの美食に割くリソースはねぇ」

 龍水の主張を、千空はばっさり切り捨てた──かと、思いきや、

「だが、テメーのお付きだったっていうなら、当然、テメーの船でもメシ作ってた訳だ。──なら、保存食の類もイケんな?」

「──もちろんだ!!!」

 ニヤリ笑って続けられた言葉に、龍水も口の端を吊り上げて、力強く断言した。

 

 

「──龍水様、主である貴方様をお助けすべき執事の身でありながら、逆にお助けいただいたこと、心より御礼とお詫びを申し上げます」

 石化解除直後、用意していた服を素早く身にまとったフランソワは、正面に立つ龍水に向かって、そう深々と頭を下げた。

「はっはー! 構わん! 忠実な配下に報いるのは主の義務だ! どうしても気に病むというなら働きで返せ、フランソワ!」

「寛大なお言葉、心より御礼を申し上げます。よりいっそう職務に奮励し、このご恩に報いることといたします」

 そして、その言葉に違わず、龍水の執事は、素晴らしい働きを示してくれた。

 

  * * *

 

 気球探索班が野生の小麦を発見し、その農耕が始まって間もなく。

 千空の電話召喚により、カセキと南がゲンの運転するスチームゴリラ号Ⅱ(カセキリメイク)で石神村へ行ったと思ったら、翌日にゲンだけ帰ってきた。──スチームゴリラ号Ⅱに、山盛りの土産を詰んで。

「は~い! 船造り&農耕班のみんな~! 素敵な差し入れ持ってきたよ~♪」

 ゲンが石神村から運んできた物、それは──各種様々な菓子パンである。

「──ウッマ……」

 久しぶり過ぎる文明の味に、ゴーザンだけでなく、復活者たちの多くが泣いていた。

 石神村の出身者たちは、一口食べるなりしばしフリーズしていたが、やがて夢中になって、手にしたパンにかぶりつく。

 ──野生で発見した小麦の殆どは種に回してしまうため、今回作られたパンの数は多くなかった。

 いや、車に山盛り詰まれているのを見た時は『スゴい量』だと思ったのだが、実際に百近い人数で分けるとなると、一人当たりの数はそうでもなかったのだ。

ほほ(よこ)せ!」

()れは()れんだ!!!」

 しまいには、しょっちゅう角を付き合わせているマグマと陽が、パンの奪い合いを始めてしまった。すぐに「ケンカはよくないぞー!!!」と間に突っ込んだ大樹の勢いで、仲良くまとめて吹っ飛ばされたが。

「あんたたち! ケンカする元気があんなら仕事しな!」

「そ~そ~♪ この小麦が量産できれば、このパンだっていつでも食べれるようになるんだからね~♪」

 ニッキーの一喝に続き、ゲンが告げた言葉が鶴の一声となった。農耕チームが目の色を変え、手にしていたパンを食べ終えるなり、畑へと作業に戻っていく。

(いや、本当にウマいな……)

 パンもだけど、ゲンのやり口も──そんな風に思いながら、ゴーザンは最後の一口を名残惜しく飲み込むのだった。




世界戦変動:洞窟が吹っ飛んでないので復活液に余裕があり、気球完成直後にフランソワ復活。黒こげパンの悲劇は起きなかった。南の持ってる復活液は使われていない(龍水以外にバレてない)。

原作読み返してびっくりしたんですが、もしかして試作のパンって全部石神村にいたメンバーだけで食べちゃった? 種に回すため、野生からゲットした小麦の消費抑えるにしたって、そんな酷いことある???
いや、ページの都合で描写がカットされてるだけで、絶対造船&農耕班にも配ってモチベ上げしてるはず! ゲンなら絶対そうする! と思ってこの流れにしました。美味いモンは皆で食えよー!

フランソワの口調むずかちい(白目)
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