そのウマ娘は狂おしく身を捩るように走るという。

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ある方のイラストに触発されてしまい衝動が抑えられませんでした。反省しています


悪魔のウマ娘

旧湾岸道路を利用した国内最大のウマ娘用トラックコース

湾岸ウマ娘競技練習場

通称湾岸コース。

 

首都高速のうち湾岸エリアの本線付け替えや廃止により廃棄された高速道路を利用して作られた一周14kmの国内最大のコース。

 

アスファルトを剥がし土と芝を移植するだけでなく、ダートコース、さらに海外の硬い芝を再現したエリアも存在する。

中には駅伝などの一般道路を走る競技のためにアスファルトがそのまま使用されている区間などもある。

通常のトラックと違い芝やダートなどの各エリアは折り返しのスプリントコースとなっているのが特徴となっている。

ただし距離だけで言えば各種類ともに4500mととられておりステイヤーでも問題なく練習として使用できるようにされている。

そのため障害、駅伝、長距離から短距離までさまざまな練習場として使うことが可能な複合練習場として日々多くのウマ娘が利用している。

 

 

スペシャルウィークはそのコースに日暮れになってやってきた。

湾岸は24時間開場となっており常に監視員と湾岸専属の救護隊が各中継所に待機している。

 

「ナイター戦にも慣れておかないといけないからな」

 

「へえ、夜ってこんな感じなんですね」

 

時刻は19時を回ったところ。

ウマ娘のレースは原則として昼間に開催されることが殆どであるが、時間がずれるや会場のレーススケジュールによってはナイターとして18時以降の日が暮れた後に行う場合もある。そう言ったレースは昼間と違い見え方に違いが出る。慣れているのといないのでは雲泥の差があった。特にドリームレースは通常レースの最後に行われるためその傾向が顕著となる。

 

通常であればトレセンのコースを使用するところだがトレセン学園もやはり学園であり校内設備の利用時間は18時までと規則で定められている。

 

 

人はまばらであり昼間の喧騒は鳴りを潜めた元高速道路にはスペシャルウィークの息継ぎと足音だけが響いていた。

数分ほど軽く流し体を温めた彼女が本走に入ろうとしたところで耳につけたインカムから声が流れた。

 

 

「スペ、後ろから一人来ている。ぶつからないように注意してくれ」

 

「後ろから?分かりました」

 

(障害レースの子かな……)

スペシャルウィークはちょうど芝コースの端まで来ており折り返しのために撤去された中央分離帯跡地の連絡路を通り復路に入ろうとしていたところだった。

彼女の後ろにはダートコースとの緩衝地帯が続いている。明かりがあっても薄暗いその道の向こうに小さな光が見えた。

公道を自動車と同じ速度で走ることもあるウマ娘はその速度と人と変わらない大きさゆえに自動車への位置表示や視界確保などのため夜間は携帯式のライトと赤色反射板を所持、点灯させなければならい。スペシャルウィークに見えたのはその灯りだった。

独特のハイビーム気味の灯火が一本。

 

走り始めるスペシャルウィーク。

普段の練習で出す速さより少し遅い程度で芝の感覚を掴み地面を蹴り飛ばす。

GⅠを制した彼女はそれでも普通のウマ娘よりかは早い方だった。

しかし走る自分の視界に携帯式ライトの明かりが入り込んだのを見て思わず後ろを振り向いた。

「嘘、もう追いついてきた!」

まだ距離があると思っていた彼女はいつのまにか後ろに迫っていたそのウマ娘に驚きを隠せなかった。

真後ろから素早く右へ移動する光。

「は、早い……」

 

気づけば横に並んでいたウマ娘はそのまま何事もなかったかのようにすり抜けて走り去っていった。

青色を基調としつつ銀色のラインが入った直線で構成されたその服は体操服や私服とは違う。ウマ娘の力を極限まで引き出す特別な衣装。勝負服のそれだった。

短いズボンのような服装は、足を覆い隠す黒いタイツによって見た目よりも肌の露出が少ない。

独特の気配がスペシャルウィークがの背中に寒気を走らせた。

狂おしくも美しいフォームは、時々歪なよじれを描くように左右にしなり加速していった。

腰の部分に入った赤色の反射帯がナイター照明に照らされて怪しく光り、走るたびに独特の軋みが響いていた。

追い抜かされて一瞬追い抜き返したくなる衝動を抑えつつ、ペースを維持する。練習をしに来たのであってストリートレースをしに来たのではないと理性がブレーキをかける。

しかしそのウマ娘と全力で競い合いたいという闘争心は心の底で時を見計らっているかのように爪を研いでいた。それを自覚できない彼女ではなく、走ったことによる呼吸や心拍の乱れとは違う興奮による乱れが起こっていた。

 

気づけば4500mの芝コースの終端に来ていた。ここからは緩衝路を挟み障害走向けのハードルが設置されたエリアとなっていた。その道の先を見つめるスペシャルウィークだったが既に赤い反射板の輝きはどこにもなかった。もしかすれば別の連絡通路を通り旧横羽線方面に向かったのかもしれない。

 

あるいはそれ自体がある種の幻覚のような存在だったのかもしれなかった。しかしその走る後ろ姿はしっかりと覚えていた。

 

「トレーナーさんさっきの青い服の子……」

 

「ああ、速かったな」

 

 

こっちが走り始めるよりも前から走っていたにも関わらずその少女はあっという間にその姿を闇の中に消していった。

GⅠウマ娘が全力を出していないとしても相当な持久力と速さだ。しかしスペシャルウィークは彼女の姿は初めて見た上にトレーナーもあまりピンと来ている様子はなかった。

会って話をしてみたいと思ったスペシャルウィークだったがその日ついにその少女が再びやってくることはなかった。

 

しかしスペシャルウィークはその少女にまつわる噂を耳にする事になる。

 

二ヶ月ほど前から深夜の湾岸競技場に青色の服を着たウマ娘が走るようになった。

恐ろしい速さで湾岸を回り続け長い距離に関わらず衰えない速さと、身をよじるように狂おしく、不気味ながらも美しさのある走りに魅了され勝負を挑む子が絶えないという。しかし走るたびに相手に不慮の事故が起こりはじめ、いつからかその少女は悪魔のウマ娘と呼ばれるようになった。

 

 


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