これは、午前0時から、1時までの出来事である。
事件はリアルタイムで進行する。



昔思いついた一発ネタ

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Fate/twenty four

 俺の名前はジャック・バウアー。連邦捜査官だ……と言いたいところだが、既に死亡して英霊と呼ばれる存在になっている。英霊……この俺が? 笑わせる。ともあれ0時1分現在、俺はある男に召喚され、現世へと蘇った。ここ日本は冬木市で行われる聖杯戦争に参加するためだ。俺が聖杯に託す理由だと? 決まっている。合衆国の自由と民主主義が、テロの脅威に屈することなく永続することだ。

 その青い男は赤い槍を振り回して少年を殺そうとしていた。無実の市民がテロリストに何の躊躇もなく殺される光景。生前、合衆国で幾度となく見てきた光景に、思わず怒りが込み上げる。俺は男に向かって躊躇なく発砲し、奴の槍先を弾丸をもって逸らす。少年は間一髪助かった。

「連邦捜査官だ、武器を捨てろ!!」

 サーヴァントに向かって警告しても無意味なことは分かっている。しかもここは合衆国ではないのだ。連邦政府の統治下にない日本で、連邦捜査官だと名乗ったところで意味はない。だが俺は英霊である以前にCTU捜査官。正式な手続きなしに殺人をすることは許されない。

「7人目のサーヴァントだと!?」

 青い男が驚愕と共に土蔵から後退する。俺の登場がよほど予想外だったのだろう。俺は振り返り、少年……いや、マスターに向かって手を差し伸べた。

「マスター、私は連邦捜査官のジャック・バウアー、セイバーのサーヴァントだ。君を聖杯戦争に巻き込んでしまったことを、本当にすまないと思う。だが契約が成立した以上、君には俺と共に戦ってもらう。悪いが君に選択の余地はない。俺の言っていることが分かるか?」

 俺は一方的にそう告げると、宝具である携帯電話を取り出し、魔力を注ぎ込んだ。

「クロエ俺だ。敵のサーヴァントはランサー、真名を調べろ」

「分かりましたジャック」

 クロエにそう告げると、俺は土蔵の壁に背を付けて銃を構えた。敵は槍使い。こう言っては何だが、旧時代の遺物だ。剣と魔法の時代は、銃の登場と共に終わりを告げたのだ。

 庭の中ほどで再び槍を構えるランサーに照準を合わせ、俺も土蔵を出る。

「もう一度警告する。連邦捜査官だ、武器を捨てろ」

「正気か、貴様。武器を捨てろと言われて捨てるサーヴァントがどこにいる」

 サーヴァントなどではない。無実の市民を殺そうとしたこいつはすでにただの犯罪者だ。そいつが万能の願望器である聖杯を狙っているということは、ひいては合衆国の脅威になる可能性もある。すなわち、こいつは合衆国に仇なすテロリストというわけだ。合衆国政府はテロリストとは交渉しない。

 だがこいつの正体が分からない以上、うかつに仕掛けるのは危険だ。時代遅れの槍兵風情とは言え、危険極まりない宝具を持っている可能性もある。それが対軍宝具や対城宝具であった場合、周囲の一般市民を巻き込む恐れもある。そんなことは連邦捜査官として絶対に許されない。頼むクロエ、早く電話をくれ……。

 そんな俺の祈りが通じたのか、クロエからの着信が入る。俺は銃を構えたまま、携帯の通話ボタンを押した。

「ジャック、私です。テロリストはアイルランド人。名前はクー・フーリン。数日前に日本に入国。マスターの名前は言峰綺礼。しかもこいつ、聖杯戦争の監督役ですよ」

「どういうことだクロエ? なぜ監督役がサーヴァントを有している?」

「それを今調べてるんです! ですがジャック。この聖杯戦争はどう考えてもまともじゃありませんよ」

「同感だな。おそらく首謀者は聖杯を手に入れて合衆国大統領に要求を突きつけるつもりだろう。こうなっては、魔術協会も聖堂教会も信用できない。間違いなく言峰の内通者がいる。だから俺が呼ばれた」

「ではジャック?」

「ああ、俺が言峰を逮捕する。だがそのためには合衆国大統領から日本の首相に要請してもらう必要がある。ホワイトハウスに繋げられるか?」

「正気ですかジャック。今の大統領はあのドナルド・トランプですよ」

「クロエ!!」

「はい……やってみます」

「敵を前にして呑気に無駄話とは、現代生まれの英霊とやらはここまで堕落したか」

 テロリストが俺に向かって挑発している。奴らの常套手段だ。怒りは銃口を鈍らせる。

「お前の宝具はゲイボルグ。回避不能の槍を投擲する。放たれれば、おそらく俺に避ける術はない」

「驚いたな。俺の正体をもう掴んでいるのか」

「CTUの情報分析官は優秀だからな。だがそれは、放つまでお前が生きていればの話だ」

 当たり前の話だが、いかな英霊とて銃弾を避けられる者など存在しない。俺の銃、H&K USPコンパクトとて英霊の持つ銃である以上、ただの銃ではない。俺は生前、この銃でヘリさえ撃ち落とした逸話を持っている。AK-47やRPGで武装したロシア人やムスリム、中国人を何千人と仕留めて来た。スワロフ大統領とて、後一歩で撃ち殺すこともできた。そう、俺の射撃は途方もなく正確なのだ。その性質が英霊となった俺にも受け継がれている。クー・フーリンの槍が必中なら、俺の銃とて必中。どちらが早いかはイスラム教徒でも分かる。

勝負は一瞬で決した。奴が投擲の構えを取ろうとした瞬間、脳天に風穴があきその場にばたりと崩れ落ちた。剣と魔法の時代は、銃の登場と共に終わったのだ。

「クロエ俺だ、フーリンを射殺した。次は――」

「ジャック! こちらにもう1人サーヴァントが接近中です。マスターの名前は遠坂凛。日本人の高校生、犯罪歴はなし。サーヴァント、アーチャーの名前は……これは、一体」

「どうしたクロエ」

「い、いえ……名前は、衛宮士郎。あなたの……マスターです」

 



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