魔術を使うことができる。でもそれは一回きり。しかも発動できるかどうか怪しい。だけどそれを“消す”ことができたなら?その限りでもない、というわけらしい。
「だからこそ君に縮小版ではあるものの、君用に調整したこのA.A.A.を贈ると言っている。」
「以前原理は聞いたがほとんど理解できないものだったぞ先生。」
「なに、すぐに使えるようになる。というわけで実践訓練といこうじゃないか。私のような存在でも扱えるんだ。番外(JOKER)という特殊な存在が使えないわけないだろう?」
なんてことをほざきやがるゴールデンレトリバー(先生)。武器の相談をしにきたらいきなり最終兵器みたいなものを渡された。
「武装量の差で負けるだろこれ!?」
「おいおい、魔法とでも言うべき君自身の異能を忘れてしまったのか?」
「ッ!?」
つまり魔術を能力者が使うことで発生するデメリットを消しつつ、なおかつ空中高機動戦闘で相手の様々な攻撃を消しながら戦うということか。
俺は先生みたいに頭の回転早くないぞ!並列思考も得意なわけじゃない。
「さあ、受験勉強だ。みっちり教え込んであげよう。」
「お、お手柔らかに…」
そして一週間。ずっと戦っていた。ちゃんと休む時はあったけど、疲労は全く解消していない。
待機時、腕時計になっている。二人乗り可能なバイクやキャリケースなどにももちろん変形可能。武装として超電磁砲式狙撃砲が2門。同じく超電磁砲式ガトリング砲が一つ。マイクロミサイルが164門。高周波ブレードとショットガンがそれぞれ2つずつ。以上が武装だ。あとは電波のジャミングであったり、ジャミングを無効化するためのアンチジャミング機能もある。
本家はマイクロウェーブだったりチェーンソーだったりもうわけわからんくらい武装がある。正直、パイルバンカー欲しい。ロマンだ。
「ふむ。これくらいやっておけばアレイスターが相手でもそこそこ戦えるだろう。」
「なんで統括理事長が相手になるんだ?」
「可能性があるとだけ覚えておけばいい。」
そういえばレッサー何してるんだろう。睡眠前にメールでやり取りはしていたが仕事とやらが入ってイギリスに帰っている。
「魔術サイドの彼女のことが気になるのか?」
「なんそれを…」
「彼女はIDを持っていない。」
「チッ…」
「何を勘違いしているのかは知らないが愛する女に会いに行くのだろう?早く行き給え。」
何を考えているのかは検討もつかないが言葉に甘えさせてもらおう。レッサーに会いに行きたいが、今の俺の肉体は連日の戦闘で疲弊しきっているので数日休むことにする。
「全く、私も木原であるとはいえ、義理の息子の恋人を殺す程落ちぶれてはいないんだがね。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
今はイギリスに向かって飛行機で飛んでいる。疲労が抜けきるまで実に1週間かかった。かなりタイムロスしたとはいえ逆にタイミングがよかったかもしれない。レッサー達がそろそろ動き始める頃だろうから。
詳細は知らされちゃいない。何をやろうとしているかも知らないが準備期間としては十分だろう。俺は単純にレッサーと、新たなる光のメンバーに会いに行くだけ。その過程でどんな事件に巻き込まれるのかは少し楽しみではある。
ん?あのツンツン頭は上条だな?なんであの貧乏学生がこんなところに。まあいいや。
さて、イギリス観光をしたくはあるんだがいかんせん魔術師殺害の依頼もついでで貰ってきている。まずはそいつらの始末をしてからだ。
「あっちか。」
俺が何故レベル5ではないのかについて話しておこうと思う。理由は思いの外単純で、消すこと以外能がないやつにどんな価値がある?ということらしい。戦闘面で考えたらレベル5の第3位並らしいので微妙な感じだ。第2位は封殺できるけど。第1位は無理だろうな。
俺の消去は、いわば分解みたいなもんだ。なんでも素粒子レベルまで分解する。目で視て解析してってな感じの処理が俺の無意識下で行われている。物理相手であれば点でも面でも消すことができる。解析できなければ消去ができないわけでもない。そこに存在するものを無条件に消し去るというふうに処理形態を変えれば魔術だろうが未元物質だろうが消し去れる。クソほど頭使うからきついけど。ベクトルは無理。目に見えないから。というかそもそも第一位と俺とじゃ計算速度が違いすぎる。脳に損傷を受けて弱体化したらしいが好んで戦おうなんざ思わないさ。
「んーどれもまだ出てない芽にすぎない魔術師だな。上条当麻に関連する魔術師はリストにないか。」
上条当麻は不幸でありながらも死ぬことはほとんどない。ほとんどという言い方をするのは間違っているだろうが、一度記憶をなくしているという点で一度死んでいるとすればほとんどないという表現になるのは納得してもらえるかな?実はわりとどうでもいいんだけど。
不幸だ不幸だと言っておきながら、手の届く人間を救っている。間接的に人類を救ったりもしている。敵であった人間でさえも。
俺としては敵は殲滅するほうが憂いが残らないで済むから楽だと思うんだが、上条は右手が武器だから殺すことはないんだろう。俺に殺人への忌避感が残っていたのなら、意識という概念を消すことができるように能力開発をしていただろうさ。
「まずは一人目。もったいないよなぁ。女優にでもなれそうなルックスの良さなのに。どうしてオカルトに踏み込んじまったんだか。」
酔い潰れて眠っていたのか、抵抗もなく消すことができた。路地裏で寝るなんて不用心がすぎるだろ。
えーとクトゥルフ関連の魔術を使うらしい。えっと、馬鹿なの?俺も魔術を消すためにいろいろな知識を身に着けたんだが、クトゥルフはヤバい。この世の外側に位置する神の力を借りようとするなんて発狂するに決まっている。
昼飯のお時間です。と、言ってもイギリスはメシマズで有名。美味いところはちゃんと美味いのは確かなんだけどね…ありふれているフィッシュアンドチップスで済ませるか、有名ハンバーガーチェーンで済ませたほうが無難だ。せっかくイギリスに来たのでフィッシュアンドチップスを食べる。前回来たときも食べたんだけどね。
『お、アンタ日本からかい?』
『そうだよ。』
『学園都市っていうすげー科学が進展した街があるらしいじゃん。どう思うよ?』
好きといえば好きだけど闇が多すぎるからなぁ。
『クソッタレな街だよ。』
『へっ、そうかい。んじゃ話に付き合ってくれた礼だ。少しおまけしてやる。』
1.3倍くらいに増えたな。少しじゃない。食べきれるかちょっと不安だ。イギリス観光楽しめよーって送り出してくれたあのおっちゃんの店にはもう一度行こう。
学園都市って閉鎖されすぎてて外側の情報があまり手に入らないんだよな。必要ないくらいには発展してて余裕があるんだけど、そのせいで闇が深くなってるんじゃないかと思う。風通しが良くないとでも言ったらいいか。アンチスキルでさえ対処できていない問題が多々あるから警察とかがでしゃばっても意味はないけれどね。自衛隊くらいじゃないかな。
「消せない…本?」
正しくは一度消している、はずだ。まさか…魔導書?おいおい俺の専門外じゃねーか。電話するか。
「こちらイギリス清教です。」
「学園都市の万物消去って言えば通じるか?」
「ああ、あの。どのようなご用件でしょうか。」
「魔導書らしきものを発見した。流石に俺では対処できないからそっちで対応してくれ。」
「なんとまあ。わかりました。そちらに人員を向かわせます。」
んじゃあとは任せて次に行くか。少し前にイギリス清教と学園都市は手を結んだ。そのおかげか裏の世界にいる俺は色々なところから注目されているらしい。幻想殺しに似たナニカ、とかなんとか。幻想殺しで全部解決できるなら、アイツならとっくにやってるだろうさ。確かに俺はなんでもかんでも消すことができるが、知識があるからこそできる。触れれば異能をなんでも殺せるあの右手と、触れずとも理解さえしてしまえば消せる俺の能力、どっちが強いだろうな?
ちなみに俺は上条を消すことができない。右手以外の場所を指定してもなぜかうまくいかない。ちなみに試しにやったのは髪の毛だ。問題ないだろ? もし上条を殺せと言われてもやる気はないし、もしやるなら物理で戦うさ。A.A.A.を使ったりとかな。
「しっかし昨日からレッサーとは連絡がつかない。新たなる光はそこまで厳しい組織じゃないんだが・・・どっちかっていうと部活とかサークルみたいなものだからな。仕事中なら仕方ないのか。」
さて、残り一人だが殺さなくてもいい人間っぽいんだ。植物関係の魔術を使っているらしい。それで農作物を育てたりして販売しているとか。促成栽培みたいなものだろう。
『こんにちは。』
『あら、こんにちは。観光の方かしら?』
『そんなところです。』
ターゲットと接触。しばらく様子見をするつもり。殺害の期限は設けられていないから。
『でも、どうしてこんな田舎に?周りは畑しかないわ。』
『日本じゃ見れない景色なので一度見てみたいと思いまして。』
日本は畑もあるけど田んぼの方が多い印象。学園都市に住んでいるので詳しくは知らないけど。
『まあ、そんな遠くから。お一人で?』
『一応、イギリスは二回目ですけどね。』
『そう。ゆっくりしていくといいわ。私は畑に出るから何かあったら呼んでね。』
とりあえずベンチに座って休憩する。道端にポツンとおいてある手作りだと思われるベンチ。少しギシギシという音はするが問題はない。
今のところ彼女は優しいお姉さんという印象だ。お姉さんといっても30はあるらしい。年齢と見た目が比例していないな。
「本場なだけあって苦手な俺でも飲める。」
彼女が持ってきてくれた冷えている紅茶だ。毒は入ってないと思う。味の良し悪しはわからないが俺が飲めるということはそれなりに良い茶葉を使っているんじゃないか?知らんけど。
日は出ているが日本ほど湿度は高くないし、日本よりも緯度が高いおかげか涼しいまである。こっちのほうが住みやすそうだな。
「レッサー探しに行くか。」
小型カメラや盗聴器を数台設置して書き置きを残して後にする。
『お茶美味しかったです。』
流石に万物消去だけじゃ限界がすぐに来そうだったのでテコ入れ要員としてダンディなゴールデンレトリーバー先生に頑張ってもらいました。なかなか無理があるなーって思ったり。
PS.
四話完成してると思ってたんですがこの三つだけっぽいです。いつ消したんだろう。なのでまた数ヶ月後に会いましょう。それでは。