ちょーっとうちの魔女が暴走するのを作者が抑えきれなかったやつ
「そこまでにしておけ馬鹿どもが。」
まったく、こんな大っぴらな場所で魔法を放とうなど私よりたちが悪いぞ。
「馬鹿とは何だ!」
「1科が優秀だのなんだのほざいておきながら真っ先に魔法を使おうとしてるのはお前ではないか。なあ?森崎。」
これだからガキは困る。
「このっ!…このっ!なんで魔法が発動しない!?」
「相手が魔法をいつでも使える状態の時に無策で突っ込むやつはいないだろうに。魔法の発動を阻害する魔法を発動している。言うなれば【魔法妨害】か?そのままだが効果はあるみたいだな。」
サイオンを大量にぶつけてやれば魔法を組み上げるためのサイオンが乱れて発動できなくなる、または発動しにくくなるという簡単なものだ。
「さっさと散れ。お前では私に勝てん。」
「だったら!」
「俺が!」
「私が!」
「……はぁ。」
制御しているからこそ個人用の魔法に見えているが、本来は制御などせずに周囲360度無差別に阻害するためのものだが知る由もないか。
「領域型だ。そこの兄妹や警棒の女ならともかく入学したてのひよこなど起動さえできまい。」
私は3000年を生きた魔女。そのほとんどを魔法に費やした無類の魔法好きだ。この度は異世界に来て知らない魔法を学ぶためにこの学校の門を叩いた。今のところはちゃんとこの世界の規格に合わせて魔法を使っている。緊急事態にでもなれば私本来の魔法を使うつもりだが…出番があるといいな。そっちのほうが面白い。
「だから散れと言ったぞ。愚か者共。」
入学初日からこのようなイベントが起きるのは期待しても良いということだろうか。学生生活など微塵も教務がないからな。戦いが起きたほうがいい。
「悪いな。間に割って入って。」
「いえ、気にしないでください。正直とても助かりました。」
「深雪でよかったよな?」
「ええ。ありがとう姫。」
「ふむ…どういたしましてだ。深雪。」
森崎たちは帰った。かなり恨めしそうな目で睨んできていたが。今回介入したのは食堂でのやり取りが気に食わなかったからだ。だからちょっとしたお仕置きのつもりだ。
私は1-Aだと言えば深雪と顔見知りなのも納得してくれるだろう。一応光井と北山も知ってはいたのだがまだ話していなくてな。
「あら、もう終わったのかしら?」
「そこの1年ども一応事情聴取はさせてもらおうか。」
生徒会長と…風紀委員長か?
「魔法を使ったのは私と森崎とその取り巻きだ。正確には発動はさせなかったが。」
「それについては自分が保証します。彼女は口論が発展し魔法を使って攻撃しようとしてきた森崎を止めてくれました。それに使った魔法はなんの攻撃性もないただ魔法を妨害するためのものです。」
「君にはわかるのか?」
「ええ、分析は得意なので。起動式をみればおおよその見当はつきます。」
これは助かる。自己防衛のためとはいえ魔法を使ったことに違いはないからうまい言い訳が思い浮かばなかった。それはそれとしてアイツさらっと森崎を売ったな?ここにいないことをいいことに。
「名前は?」
「1-D司波達也です。」
「私は1-A星ヶ丘姫だ。」
「覚えておこう。で、どうする?真由美。」
「もういいんじゃないかしら?何かあれば後日呼び出せばいいし。」
「じゃあ解散だ。くれぐれも規則を破るようなことはするなよ。」
なんとかなったみたいだな。最悪の場合洗脳とかを使う羽目になる。退学だけは避けたいのでな。
「助かった。深雪の兄。いや、司波達也。」
「達也で構わない。さっき助けてもらった礼だと思ってくれ。」
「貸し借りなし、と。いいだろう。構わない。」
高校生にしては鍛え上げている。それにこちらを警戒しているのか?魔女に対する接し方としては満点をやりたいところだが、残念ながら今の私は星眼の魔女ではなく星ヶ丘姫。あくまで一般人だ。特別何かをする気もない。面白そうな魔法があれば別だが。
「帰りましょうか。皆さん。」
深雪の号令で微妙な空気になることもなく帰路についたのはいいのだが、質問攻めがすごかった。
「あれはグラムデモリッションの応用というか改造した魔法だ。グラムデモリッション自体消費が激しいし、私の魔法妨害は更に燃費が悪い。深雪レベルでも十分は保たないだろう。」
そんなわけで講義している。私の魔力は無限だ。正確には無限に湧き出すという方が正しいがさして違いはない。保有できる最大値があまりにも大きすぎるから多少魔法を使ったところでなんともない。
「私は自分のために魔法を開発している。知識欲と探究心、あとは魔法への愛だな。」
「愛?」
「魔法は素晴らしい。叶えようと思えば何でもできる。不可能だと思われていても時間をかければどうとでもなる。失敗を繰り返せばいつか正解にたどり着く。でなければ私は何年も魔法に傾倒していない。」
少しそれてしまった。
「話を戻すが魔法妨害は上位者には通用しない。濃密なサイオンの中でも魔法を組み上げられるのであれば意味をなさないからだ。あとは物理で殴るタイプの近接。体術だのなんだので接近されれば意味がない。他には…理論上でいけば分解だな。そもそも圧縮しまとめるための魔法を分解されてしまっては無効化される。分解魔法が実在するのかどうかは、おそらくする気はしているが自分で作りたいものだな。起動式を、ないし魔法式を分解するという最強の対抗魔法を。私の想像通りであればグラムデモリッションよりも燃費が良くかつ効果的に無効化できるはずだ。だがまだ起動式と魔法式への理解が浅いためかうまく組み上げられない。ああだから楽しいのだよ魔法というものは!」
うん?先程からやけに静かだが…喋りすぎたか。しかしそんなに距離を取らなくてもいいだろう。5歩分くらい離れているぞ。そんなに怖いか?
「ま、魔法…好きなんだ。」
「光井。私が悪かったのは認めるが下手な慰めはいらないぞ。」
まあ、私がどれだけ魔法が好きかは伝わっただろう。それがいいことなのか悪いことなのかはわからないが。
「それ以外の趣味はあるの?」
「うーむ…無いな。」
「えっ!?」
そんなに驚かなくてもいいだろうに千葉。服も必要最低限しか用意していないし、普段は魔力で編んだローブ一枚だ。そのほうが快適(温度湿度自動調節機能付き、他多数)だから仕方ないだろう?
「本当に人間?」
「人間ではないと言ったら?」
「いや、それはそれで怖いというか納得というか…」
納得するのか。…ふぅ。こういう会話も久しぶりで楽しいな。なにせ研究をするときはだいたい地下にこもる。それも長い間な。学校に通うようになったため最近はこもっても数時間程度だが一ヶ月なんてざらにあった。
「姫、突然だけれど今晩私の家に来ないかしら?」
「突然だな。」
まだ他の友人もいるというのに私だけを直接誘う?そんな大胆なことをするやつには見えなかったんだが、私もまだまだということか。
「まあいい。招待に預かろう。」
「いいなー!」
「エリカたちも機会があれば呼ぶわね。」
「楽しみにしとく。」
いささか急展開ではあるが知り合って当日に晩飯までいただけるとは何があるのやら。世の中ただより怖いものはないとアイツも言っていたしな。
各々帰路について私と司波兄妹の3人で歩いていたが特に会話もなかった。3人になって気付いたが兄の達也が私を相当に警戒しているらしい。心当たりがないんだが…貸し借りなしだし魔法について語ってヤバいヤツだと思われたならそれこそ家に招く理由がわからない。何を考えているんだ?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
しばらくして到着した。普通の一軒家だった。お嬢様の雰囲気があるのに家政婦らしき者も見えない。妹の兄に対する感情的に深雪がすべて家事をこなしているのか?魔法も勉強も家事もこなせるとは完璧超人だな。
「単刀直入に聞こう。何故私を招いた?」
深雪はキッチンで晩飯の用意をしているが普段の柔らかい雰囲気ではないし、目の前の達也は怒っているようにさえ感じるほど鋭い眼差しをこちらへ向けている。
「分解をどこで知った?」
「は?」
いやはや我ながら間抜けな“は”が出てしまった。私の正体について聞かれるのかとかなぜそんなに魔法を研究するのかとかそういうことを想定していたからだ。が、分解か。
「分解、ああ、分解か。たしかにあの時口にしたな。1つ訂正させてもらうが私は自身の経験と知識に基づいた研究によって分解にたどり着いた。すでにあるのならそれでいいし、別に研究・開発するだけで公表したりなどしない。世間一般に広まろうが私の開発する魔法はすべて私基準で作り上げている。並大抵の魔法師では無理だ…それこそ深雪レベルでもなければサイオンが足りずに起動さえできん。そしてそれにプラスして私の論理で書いている。それが解読できなければ発動できない。読めたか?あのときのは。」
「すべては読みきれなかった。大まかにどういうものかだけは理解できた。だが、今は関係ないだろう。なぜ機密に指定されているはずの分解にたどり着く?先程の言い訳では納得できないぞ。」
銃型CADのシルバーホーンか。いいものを持っている。その中にどんな魔法が入っているのかまでは流石の私でもわからないが、銃口を向けられるのはあまりいい気分ではない。
「そう難しい話でもないだろう?森羅万象、無力化するためには破壊か分解かだ。封印?そんなもの生ぬるい。つまりもとの機能を機能させないようにするためにはどうしたらいいかというのがこの話だ。だから破壊または分解を思いつく。破壊はグラムデモリッションがある。では分解は?面白そうだ作ってみようじゃないか!それで試作をあれやこれや。私本来の魔法も参考にしつつ完成に近づけているところだ。【Magic Resolution】なんて名前も悪くない。まあ結局覚えるつもりがないから名前なんて忘れるがな。所詮魔法など作品に過ぎん。」
「お前は何者だ?」
「ああ!その質問を待っていた。私は星眼の魔女。星に祈りを捧げ星に見初められた星々の姫。そして異世界の原初の魔女だ。まさかこんなにも早く種明かしをするタイミングが来ようとは。ありがたい。概ね予想通りだったがな。ああ、それと。達也の魔法は私には効かない。」
「何?」
「この世界の魔法は数字で厳密に処理されている。それがどういうことかと言えば遊びがないのだ。その点は面白くない。変数の代入だのループキャストだの小手先の技はあるが所詮プログラムから大きく逸脱はできない。どこまでいっても科学止まりだ。それが機械に頼った魔法だ。しかし私は歓迎する。それもまた魔法と定義づけられたのなら、魔法として愛そうではないか。…話を戻してそうやって厳密に数字で管理されている場合相手の座標も数式に入る。そこでだ。私の座標を取得できないようにしたらどうか?範囲型でまとめて焼き尽くさない限り発動さえできまい。なぜならそこにいるように見えているだけで存在しないのだから。空気砲やドライアイスの弾丸のように発射するタイプであれば別の話だが、そういうわけでもないのだろう?常時存在座標を乱数にして動かしてある。今この場にいるのは本物かもしれないし残像かもしれない。かなり面倒くさいが魔法への対抗手段の1つだ。」
そもそも私を殺しきれるかどうかさえ怪しい。私は人ではない。生き物ですらない。そんな存在を相手に人間はどう戦う?答えは逃げるか死ぬかだ。私を害するものなどそれこそ神しかいない。
「だから肩肘張って警戒し続けるのも疲れるだけだぞ司波達也。私は別にお前たちの敵ではない。どういう事情により警戒しているのか知らないが私の興味はほとんどが魔法だ。お前たちの抱える事情に興味はない。力を貸してほしいのであれば力を貸してやる。」
せっかく友人になったのだ。それくらいのことはする。
「私を味方にしておいて損はないぞ。世界を相手取れるのだから。」
事実、私は一度世界を滅ぼした。人間はしぶとく生き残って再び繁栄したのだから恐ろしい。どうやったのかといえば隕石を生成し落とすことができる。要は隕石落としだな。私が初めて作り上げた広範囲殲滅魔法がソレだ。
今となってはそれだけではない。魔力砲(要はビーム)を多重展開しての面制圧、火・水・風・雷などの各種属性魔法。言霊もあるし戦闘に関係のない魔法も多数ある。私は色々なことを知っている。だが、そんな私でも知らないことがこの世の中にあるからこそ、魔法を識ることをやめない。
「どうだ?十分魅力的だと思うが。」
今朝方一話投稿したついで的な感じ。深雪とはいい感じにライバルというか師匠?先生?的な関係にするつもりでいたけど達也の警戒が最初から最後までマックスなはずなのでこのあとどうなるかなぁ…?でちょっと書けなくなった。
ちなみに森崎くんとの校門前でいざこざの話がスタートになってます。
作者はキャラが頭の中で動いてそれを書くってスタンスでやってるんで…星眼の魔女が魔法でこんなに盛り上がるとは…もとい暴走するとは…作者の目を以てしても読めなかった。今まで色々と書いてるんですけどここまで暴走したことなかったんですよね。おそらく魔法に重きを置いているか否かなんだとは思うんですけども。既に人間関係ぶち壊れそうなんだもんなー。