それは高校三年生の記憶、あの日、アイツと、放課後で

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後輩と

美術部の後輩と一緒に展覧会に出す絵を描くことになり、展覧会も近いということで居残りすることになった、こいつはまあ学校内でも有名な美少女なんだけど何故か俺の事をすごい好きでいてくれる。美少女に好きになってもらえている、この事実にドキドキしてしまう心臓は無視出来なかった。

「せーんーぱーいー、疲れました〜。」

「これ完成させるまで帰れねぇぞ。俺も手伝うから。」

「は〜い。」

なんて他愛のない会話をしながら作品を描きあげていく。俺と彼女の作品はストーリーを持たせよう、との事で関連性を持たせたものとなっている。俺が出会いの絵、彼女が別れの絵。俺の作品は出来ているのであとはこいつの作品だ。だというのに…

「お前、全然出来てないじゃんか。展覧会近いんだぜ?」

そう、コイツは全然出来てないのだ。俺はそのことを指摘した。…彼女の頬が少し赤くなっているのが見えた。……いやいやまさか、俺の事を好きでいてくれている、って言ってもそれはきっと先輩後輩の関係で、つまり人間的に好きって話じゃねぇのか?これ。恋愛的な話なのか?

怖いが……聞いてみるか。

「なあ、もしかしてだけどさ…」

「な、なにも!何も言わないでください…!」

「お、おう!スマン!」

気まずい空気が部室に流れ出す、こんな事なら聞かなきゃよかった……なんて、もう手遅れな訳で。

それから数分、彼女が、やっと筆を走らせた。

「……この絵、この、別れの絵を描いたら。先輩が私から離れてしまいそうで…。やっとこうやって2人きりになれたのに…。」

と、いきなり喋り始めた。

「先輩は忘れてるかもしれないですけど……。初めての展覧会で出した絵、私のは酷評だったんです…。」

あぁ…覚えている、あのころの彼女は今よりも暗くて、絵も下手だった。今は上手なので筆さえ走らせてくれればいいのだが。

「それでも、1人だけ褒めてくれた人がいたんです。私の絵を…」

彼女はキャンパスから目を離し、俺の方へと向けてくる。…その目はうるうるとしていて、頬は赤くなっている。

「……それが、先輩だったんです。あの日、私の絵を褒めてくれたのは先輩だけだったんです…!」

「…俺はお前の絵が元から好きだっただけだよ。上手い、って言った覚えはない。」

「そうじゃなくて…!好きだって、俺は好きだって言ってくれたのが嬉しかった!だから私は頑張って描いてきたんです…!」

息を荒らげ、立ち上がった彼女は筆を床に落とす。…あぁ、今にも泣きそうになって。

「知ってる、知ってるよ。見てきた、お前をずっと。」

だから、いうしかない。俺はみてきたんだ、知ってるんだ。

「えっ…?」

「あの日、あの展覧会で絵が酷評だったのはお前だけじゃない。…俺の絵もだめだったんだわ。まあでもさ、どうやら物好きなやつはいたみたいで…。」

「わた……し……?」

「そ、お前だけ褒めてくれたって訳だ。知ってるか?あの日から俺、お前から全然目を逸らせないでいるんだぜ?心だってお前の虜だよ。」

淡々と、事実を述べていく。彼女は泣き崩れてしまった。

「あの日の始まりは確かにあった、俺も、お前も、互いに救われていたんだ。…でもよ、この関係が終わる事は無い。」

「…それは……どうして…?」

「…あー……うん、ほれ、それはだな。えぇいもう言ってやる!俺は!お前が!好きなんだよ!お前の笑った顔が好きだ!お前の嬉しそうな顔が好きだ!涙なんか見たくない…流させたくない!」

泣き崩れてしまった彼女に目を合わせて、思いを解き放っていく。

「だからこの関係を終わらせない、お前が絵を描き終えても、俺が卒業しても!ずっとお前の横で俺が守る!だから…だから描いてくれ、この絵は別れだが、俺たちの別れじゃない。」

息を吸って、吐く。言葉をゆっくりと紡ぐ。

「俺たちの、2回目の始まりだ。」

「っ…!はい…はい……っ!」



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