お姉ちゃんのお姉ちゃんによるお姉ちゃんの為だけのヒーローになる、です 作:珱瑠 耀
心操君強化入っていっぱい遊べる!と思ったけど体育祭ってオリ主入れると1番キツくなるって気付いて絶望
『雄英体育祭!ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!』
機械越しに響くプレゼント・マイクの声。
ざわざわと波立つ観客。
『どうせテメーらアレだろこいつらだろ!?ヴィランの襲撃を受けたにもかかわらず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!』
期待と羨望と嫉妬と諦観と、その他諸々をひっくるめた目、目、目。
その中に、唯一ギラリと光る悪巧みの目を見つける。
『ヒーロー科ァ!』
ふっとその視線を同時に外して、私達はニタリと嗤う。
『1年ッ!A組だろぉぉ!?』
そうして周囲が違和を感じる時にはもう、その顔はいつもの穏やかなものに戻っていた。
止まぬ歓声と人の目に晒されながらも、直前のことを思い出す。
轟君が緑谷君と爆豪君に言った言葉。
『緑谷、爆豪』
『ンだよ』
『?えっと、どうしたの?轟君』
『俺は———まだ、
『———でも。限界を超えてでも、この体育祭でお前らの事を
『……ハッ、言ってろや半分野郎!追い付く前にぶっ殺したるわ!!』
『か、かっちゃん……でも、負けたくないのは僕もだ。轟君かっちゃんも、皆々強くて……それでも!トップを本気で狙ってるのに、遅れを取る訳にはいかないんだ』
『———チッ』
『僕も本気で、獲りにいく!!』
原作よりも冷静な目で緑谷君に宣戦布告をした轟君を見て、個性把握テストの時の話を覚えてたんだなとちょっと嬉しくなる(でも多分炎は極力使わないんだろうなって思っている)。
ちらりと周囲を見回せば、もう一年生が全員集まって整列を終わらせた所だった。
「選手宣誓!」
スパァン、と壇上で右手の鞭を鳴らした先生———ミッドナイト先生が大きな声で言った。
「今年の主審は18禁ヒーロー「ミッドナイト」か!」「校長は?」「校長は例年三年ステージだよ」「18禁なのに高校にいて良いのか」「いい」
「静かにしなさい!選手代表!!」
その言葉にA組全員が爆豪君の方を向き———
「1-A、渡我反瑠!!」
「「「「えっ!?!?」」」」
ぐりんっと私の方に目が集まった。
そんな視線を意に介さず、ぽてぽてと壇上へ向かう。
周囲からは「ちっちゃいな」「あの子が入試一位なの?」「どうせヒーロー科の、だろ」「絆創膏とかいっぱいだけど大丈夫なん?」「ちんまくて可愛い」などとざわついており、観客にもそれが伝播していた。
「コホン……えーと、選手宣せ———」
ちっちゃいちっちゃいうるさいな、と思いながらも前を向いて———そして、
———私の視線の向こう、少し右側の観客席の1番前の席。
丁度一般観客席であるそこに、私の姉が居るのを。
「おねーーちゃーーん!!来てくれてありがとー!!」
「わはー!ハルちゃん気付いたー!」
もうなんか選手宣誓とかいいや、お姉ちゃん居るんだし本人に向かって言ってあげよう。
「お姉ちゃんの為に優勝するから待っててねーー!!」
「やったー!待ってますねー!」
手をパタパタ振り、ぴょんぴょん跳ねながら満面の笑顔でお姉ちゃんにエールを送れば、お姉ちゃんも大きく両手を振ってニコニコ笑ってくれた。
よし!かーえろっと!
「渡我さん、宣誓はもう良いの?」
「え?———あー」
周囲を見れば生徒も観客もほっこり、というよりもほんわか〜みたいな目で私の事を見ていた。
「まぁ、
そしてほっこりしていた雰囲気に、盛大にヒビが入った。
瞬間、怒号と愚痴がちらほらを湧き出る。
「俺達は眼中にないってか?」「驕ってんなぁ…たかが敵を退けただけで」「お前らばっか良い顔してんじゃねー!」「とんだ自意識過剰だな」
「オイコラチビ女ァ!勝った気でいんじゃねぇ殺すぞ!!」
爆豪君ここ全国放送ですよ??普通に今の流れてますよ??
「負け犬達が何か言ってるですねー」
煮え立った油のような空間に更に燃料を零せば、まぁ暴言の増えること増えること。
「———オイオイ、今年の
そんな怒号の切れ目を縫って、普通科の中から一際目立つ気怠そうな声が響く。
その声に含まれていた筆記満点という語に、会場が凪を打ったように静まった。
———心操君だ。
「実際事実ですし?先生にも確認を取って皆さんが
「よく言うよ……そんな負けなしのアンタじゃ、負けた時……それも、
「お、おい心操!?」
近くの友人の言葉に反応もせず、私の事を煽り続ける彼。
その目が楽しそうにしていて、私も思わず興が乗る。
「えぇー?
他学科からの睨みが増す。
「そりゃ、見抜けなかった試験官が悪いだろ」
遠くでマイク先生の『ぐふっ』という声が聞こえたような気がした。
「つか、知ってたか?成績と意欲と結果……これらが揃えば、お前みたいな高慢ちきを引き摺り下ろして俺が上に立つことだって出来るんだぞ?」
その言葉にヒーロー科の生徒は動揺し、その他の学科生徒は目を見開く。
「おやおや、それは宣戦布告って事で良いんですかね?」
「いいや、
バッサリ言い切った心操君を最後に、私達の応酬が少しの間途切れる。
そんな中でも穏やかな顔を崩さない私は、ふふっと小さく笑って言った。
「———じゃあ、もしも追い付けられたなら覚えますね」
「寧ろ追い抜いてやるよ」
その言葉を最後に、私達の会話は終わる。
心操君は薄い笑みを絶やさず、私は微笑のままで。
周囲は動揺も動揺、観客だって何が何だかわからないままだ。
「えっちょ渡我?筆記満点ってどゆこと?」
「そのまんまの意味ですよ、ほら種目始まりますよ?」
そわそわする響香ちゃんを軽くあしらって、刺々しい視線を周囲が刺してくる中ミッドナイト先生が鞭を鳴らす。
「さーて!それじゃあ早速第一種目行きましょう!」
「この空気のまま始めるんか」*1
「第一種目は……これ!障害物競走!」
ダララララララ、ダン!という効果音と共にモニターに種目が点灯。
それと同時に向かい側の門がガシャガシャと開く。
スタジアム外周を回って戻ってくるこの種目で最初の
そうして多くの生徒がざわざわと門に集まる中、私だけはその場から一歩も動く事なくお姉ちゃんに向かってピースしたりと遊んでいた。
「ハルちゃん、そろそろ始まりますよ?」
「んー?あぁ……じゃあ、名残惜しいけど行ってくるです」
そうしてその場で軽いストレッチを繰り返して、ぐいーっと体を伸ばす。
…………座標指定完了、起動待機———
「さて———掻き乱していきましょうか」
『スターーーート!!!!』
爆音で鳴らされた開始のゴングと同時に、私の姿はスタジアムから消えた。
心操君と悪い顔をするハルちゃん
選手宣誓そっちのけでお姉ちゃんとイチャつくハルちゃん
第一種目そっちのけでお姉ちゃんとイチャつくハルちゃん
今回はこの三本でお送りいたしました
原作との違いとして
・轟君が冷静に体育祭を迎えている(憎悪マシマシだった原作よりもなりたいものについて考えるタイミングが早かった為自分の立場について客観視できている)
・心操君とヒーロー科とのお話が宣誓時にある(原作では体育祭前に教室前でやりとりしてるがその前にハルちゃんと協力関係になったので悪巧みの一環として煽り合った)
があります
なおハルちゃんの身体の傷跡は健在です(当日朝にも吸われた)