真超サイヤ人から続投の方、よろしくお願いします。
この外伝は賛否両論ありましたがいろんな意見が聞けるのは非常にありがたかったのです。
この物語を終わらせるのも一つの義務になると思っております。
悟空を好きな方には心が痛くなるシーンもあると思いますが、楽しめる方は楽しんで下さい(´ー`* ))))
真・超サイヤ人とは?
伝説の超サイヤ人そのもの
無限に気を上昇させる力と己の中の限界を超えたセンスを引き出す。
ただし、精神力と体力を使い切ると問答無用で戦闘不能になる。
朝10時に帰宅。
会社の夜勤が終わり、ようやく一寝入りできる時間。
また夕方の5時になれば出勤の時間だ。
日付もよく分からない。昼間は寝るし、夜勤中はテレビが無いから何の情報もない。
安月給で夜勤手当もなく、ボーナスや昇給もない中小企業に就職して10年。ルーチンワークをこなしてミス無く過ごせば、取り敢えず日銭は稼げる。
先を考えると、何の希望もないが。
24時間営業の牛丼屋で朝食セットを持ち帰りで頼むのが、唯一の楽しみになって来ていた。
座卓の上に飯を置き、レンジで温めてから並べる。
牛丼の大盛り汁だく、味噌汁、お新香セット。
胃袋もすっからかんの状態だから、一口食べたら後は一気に平らげる。
テレビを付けると、子どもの頃に夢中になったアニメ。
ドラゴンボールが流れていた。
「今日って、日曜だったんだなぁ」
思わず、そんな声が出てしまう。しばらく眺めていたが、正直に言って今のドラゴンボールの歌や声が、俺には合わない。
もう子どもの頃に洗脳されているから。
アニメの悟空は未来の世界を救う為に戦っているらしく、不死身の敵を相手に仙豆を椀子そばのように食い続けて闘うと述べていた。
「悟空って、こんなバカだったか?」
確かに日常では色々と空気読めなかったりするが、闘いの中ではクールかつ合理的なイメージがあった。
これじゃ10年前にネットで流行っていたクズロットじゃないか。今も流行ってるのかは、知らないが。
食事を終えつつ、コレも時代の流れかぁ、とテレビを変えて朝の情報番組なんかを眺めた後、シャワーを浴びて床につく。
今日も夜勤だぁ、なぁんも起こりませんように。
そう思いながら、俺は意識を闇に沈めていった。
ーーーーーー
目が覚めたら、だだっ広い荒野に居た。
晴れた空、そよぐ風。
此処は何処?
冷静になろうと自分に言い聞かせ、深呼吸した後もっかい周りを見る。
おかしい、俺は今日も仕事だと布団に入って寝たはずだったのに。
というか、明らかに日本じゃねーよな、此処。
現状を認識しようと四苦八苦している俺の耳に、ジェット機が飛んでくるような派手な音が聞こえ、目の前に山吹色の道着を着た左右非対称に飛んだ黒髪カニ頭の男が空から降り立った。
って!?
あ、あれ?
この人、見覚えがあるってゆーか。
見たことあるなんてモンじゃねーよ!!
ドラゴンボールの主人公・孫悟空じゃん!!
地球育ちのサイヤ人にして、本名カカロットの!!
ニートネタが最近は定着してるけど、国民的ヒーローの代名詞!!
え?
なんでカカロットが目の前にいるんだ?
もしかして、俺、夢を見てるのか!?
これでもリアルは30回る年齢なんだけど。
今更、ドラゴンボールの夢なんて、恥ずかしいなぁ。
頭が空っぽだから夢が詰め込まれたんかねー?
夢と分かれば、こっちのもんだ。
まず、挨拶をしようかな。
あ、なんか、緊張するなぁ。
夢だろうに、ガキの頃からの憧れに会ったからだなぁ。
「へへっ、やっぱオラと似た気を持ってっから見つけやすいな! クローンっちゅうんだろ、オメエ!!」
が、俺が口を開く前に、悟空が左手を顔の横の高さに置いて前に突き出し、右拳を腰に付けて構えを取ってきた。
え?
明るい笑顔で何を言ってるんすか?
つーか、待て待て、何で構えてるんだよ!?
え、何でヒーローが一般人の俺を狙ってんの!?
「ん? なんかオメエ、他のクローンと違うみてえだな」
キョトンとしながら、問いかけてくる悟空。
いやいやいや、クローンてなんだよ?
ドラゴンボールの話にクローンなんか無かっただろ?
ゲームには度々、クローンネタがあった気もするけど。
俺が一番新しい記憶で覚えてるのは、超武道伝2に出たクローン戦士。
たしか、ボージャックの部下のザンギャが従えていたんだよなぁ。
「? オメエ、何を言ってんだ? ドラゴンボールを知ってんのは分かっけど。なんか、ドラゴンボールとは違うこと言ってるような気がすっぞ?」
何を言ってるんだ、悟空。
ドラゴンボールは、鳥山明が描いた漫画で。
アンタは、その主人公じゃないか。
俺の夢だからって、そこまでリアルな反応しなくていいから。
「? オメエ、ホントにオラを知ってんか? レッドリボン軍は、オラの漫画なんか描いてんか? それ使って、何しようとしてんだ?」
話が噛み合わない・・・
夢の登場人物なんだから、もう少し俺に合わせてくれても良いだろうに。
と、そこで俺は自分の身体を見下ろした。
だいたい、俺は鍛えてもないただの中年だ。
悟空みたいにカニ頭でもカッコいいハンサムでもないし、筋肉質でもないっての。
クローンなんて、なぁにをバカな。
笑い飛ばしながら、自分の腕やら身体を見る。
ーー見事な逆三角形を描いた、彫刻のような筋肉質の身体になっていた。
さすが、夢だな。
こんな身体にリアルでなれたら、格闘大会も総ナメだろうなぁ。
見れば、俺は寝間着ではなく、黒を基調とした道着に赤の帯とアンダーを着ている。
亀仙流の悟空の道着のデザインだが、色違いだな。
最近テレビで見た、ドラゴンボール超のゴクウブラックとか言う偽物に色合い的には似てるかなぁ。
「オメエ、鏡持ってっか?」
言われて懐などを探してみるが、無い。
なんだよ、夢だって言うのになんだか自分の思い通りに行かない夢だなぁ。
あれ?
肌の色がやけに白いなぁ。
こんな病的な肌の色、孫悟空は勿論、俺だってしてなかったはずなんだけどな。
「…オメエ、ちょっとオラと戦わねえか?」
考え事してたら、いきなり目の前の戦闘民族から勧誘がありました。
無理無理、いくら夢でも孫悟空に勝てっこねーし。
下手したら、一撃であの世だって!
「まぁ、そう言うなよ。戦ってみりゃ、オメエがなんでオラのクローンになってっか、思い出すかもしんねえぞ」
いやいやいや、だから何の話をーー
「ーー行くぞ!!」
カニ頭だった悟空の髪型が天に逆立って金色に変化し、目つきは鋭くなって翡翠色の神秘的な瞳に変わった。
伝説の、超、サイヤ人・・・?
ち、ちくしょぉおおっ!!
悪夢だ!!
この俺が!
一般人の代表格な、この
よりにもよって伝説の超サイヤ人と戦わせられるなんて…!!
「はは! やっぱりオメエ、変わってんな!」
明るく笑って来たと思えば、いきなり不敵な笑みを見せる悟空。
あ、こいつ、殴ってくる!
そう直感した時には、俺は無意識に悟空の拳を掴んでいた。
スンゲェ音を立てて、衝撃が肩を突き抜けるーーが、俺自身の身体はなんともない。
映画で爆弾が落ちたみたいな音と、感じたことないレベルの衝撃であったにも、関わらず。
「やっぱな、思ったとおりだ! オメエ、オラと同じ動きが出来んだなぁ!」
明るく笑いかけてくる悟空に俺は思わず言った。
シャレになってねぇよ!
なんだよ、超とか言うアニメのせいかよ!?
それともネットに数あるクズロットとか言うふざけたMADのせいか!?
ヒーローが一般人に何してんだよ、ホントに!!
自分が国民的英雄だって自覚しろよ、孫悟空!!!
「オメエ、ホントに何言ってんだか。全然分かんねぇぞ」
何でだよ、俺の夢だから!?
夢の中なら簡単に分かってくれるだろ!!
ドラゴンボールの孫悟空のパンチなんか、日本人の俺に止めれる訳ねえよ!!
夢だから止めれたけどね。
「…なるほどなぁ。オメエ、夢を見てるっちゅうつもりなんだな? けんどよ、オラのパンチ止めた時に夢なら覚めると思わねえか?」
そう言いながら、悟空は繰り出した拳を引っ込めて会話してくる。
立ち絵が様になるよな、超サイヤ人の悟空は。
なぁんて、アホな事を思いながら告げる。
悟空、何を言ってるんだ?
パンチを止めれた時点で夢じゃないか。
言いたかないけど、俺は別に動体視力が優れてたり、並外れた反射神経があったり、鍛えてる訳じゃないよ。
「しょうがねえな。よし、ちょっと掴まれ!」
そう言うと悟空は超サイヤ人から黒髪黒目に戻り、俺に左手を差し伸べながら、額に指を二本当てて目を閉じる。
瞬間移動か。
生で見れるなんて、なんかスゲーな。
夢なら覚めるなよ!!
そう思いながら手を掴むと、悟空の手は温かく柔らかい感触だった。
パンチを止めた時は余裕が無かったから気付かなかったけど、ヤケにリアルな感触だな。
俺が、そんな事を考えていると。
いきなり目の前の光景が変わる。
そこは、何かの部屋と言うか講堂みたいな開けた屋内スペースで。
でかい柱の周りには円形のソファがある。
周りを見れば360度全部に嵌め込み式の窓が入っていた。
どっかのデパートの屋内休憩所か?
なぁんて思っていたが、違和感にすぐに気づく。
窓から見える景色が、流れている。
青い空と白い雲が、流れていく。
俺が移動してるのか?
「あら、孫くん。早かったわね、って!? ギャァアア!?」
呆然と窓を見ている俺を見て、傍から一人の女性が叫んでいる。
あー、この声だあ。
懐かしいなぁ。
ガキの頃、何度も聞いたよな、この叫び声。
アニメがZになって、ナメック星が終わったあたりからは聞けなくなったよなぁ。
やっぱり母親になっちゃったからなぁ。
悟空が明るく笑いながら、自分の傍らに向かって言う。
「よ、ブルマ! 悪りいんだけど鏡ぃ、持ってっか?」
叫び声の主は、綺麗な青い髪を短髪にした美女。
表情で台無しだけど、黙ってたらメチャクチャ綺麗で上品な熟女だ。
健康的で若々しい肌。
出るところは出て引っ込むところは引っ込んだ、メリハリのある体型。
赤いスカーフを首に巻き、白い半袖シャツに青いジーンズという活動的な服装。
ドラゴンボールのヒロインーーブルマだ。
「な、何を考えてんのよ、孫くん!? そいつ、孫くんのクローンじゃない!?」
「そうなんだけどよ、コイツは他のヤツとは違うみてえなんだ」
言いながら悟空は、窓に映る自分を指差して言った。
「ほれ、見えんだろ? コレが今のオメエだ」
言われた俺は、乾いた笑みを浮かべていただろう。
夢じゃねーよ、コレ。
だってよ、DBマニアとかオタクってレベルの俺が見た事無いんだもん、こんな飛行機!!
アレか、映画「神と神」の時の飛行機って、中がこんなになってるの?
その光景を頭の隅に記憶してたから夢でも見れてる?
ーーな、訳ねえ!!
え、じゃあ、現実なんかよ?
俺が、孫悟空のクローンになってる、だと!?
「…なんか、ショック受けてんな?」
「ホントね。確かに、他のクローンとは違うみたい」
愕然とした表情でガラスに映る、薄い金髪に赤い瞳の、超サイヤ人悟空のパチモン。
俺の姿らしい。
赤目の超サイヤ人なんて、クウラが出てくる映画のポスターくらいしか見たことないよ。
「クウラ? オメエ、クウラを知ってんのか?」
「え? 何なの? どう言うことなのよ?」
悟空とブルマに俺は両手を出して言った。
オーケー、取り敢えず言わせてくれ。
俺、孫悟空のクローンになったんだよな?
「? ああ。そうみてえだな」
「間違いなく、そうみたいね」
会社はどーする、とか。
やっべ、日本の俺の身体は、どーなった、とか。
何で悟空のクローンになってんだ、とか。
言いたいこたぁ、山ほどある!!
ああ、だが!!
だが、ドラゴンボールの世界に来ているのなら!!
孫悟空のクローンになってるなら!!
誰もが必ずやったであろう、この技を出すしかない!!
飛行機内であることなど、すっかり忘れた俺は窓に映る自分に向かって構える。
「おいおい! いきなり、かめはめ波の構えなんかして。いってえ、どうしたんだ?」
悟空。俺、かめはめ波を撃ってみたいんです。
「ん? かめはめ波か? 他のクローンも撃てるみてえだから、きっと出せっだろうけど。急にどうしたんだ?」
夢じゃないんだって分かったからさ。
正直、やりたいことなんかイッパイあるけどね。
空飛んだり、瞬間移動したり、かめはめ波を撃ったり、超サイヤ人になったり。
「オメエ、変わってんなぁ。超サイヤ人になら、もう成ってんぞ?」
言われて俺は、鏡に映る自分の姿に目を見開く。
確かに色は薄いが、逆立った金髪と鋭い目つきの自分は黒髪黒目のサイヤ人とは似ても似つかない。
瞳が赤いことを除けば、間違いなく超サイヤ人だ。
その事実にーー俺は、四つん這いになってうなだれた。
何故だ?
「ど、どうした、オメエ?」
なんで、こんな簡単に超サイヤ人になってるんだ?
フリーザにクリリン殺された悟空とか、セルに16号を破壊された悟飯とかでなく。
最初から超サイヤ人、だと?
ドラマもクソもない。
いきなりポッと出で、超サイヤ人になれるなんて。そんなバカな。
超サイヤ人は、千年とか千人に一人とか言う天才戦士だっただろうが。
悟天やトランクスは簡単に変身してたけどさ。
「オメエ、ホントに詳しいんだなぁ!?」
明るく笑う悟空に対し、ブルマが不審そうな顔で静かに俺の前に立っていた。
「ちょっとアンタ! アンタは、何で孫くんや悟飯くんのことを知ってんのよ?」
正直に言うべきか、悩むな。
だってさ。
俺にとっちゃ、ドラゴンボールなんて漫画やアニメの世界なんだけど。
悟空達にとっては、こっちが現実なんだもんなぁ。
「どした? オラ達の話を漫画で見たって言ってたろ?」
「は? 漫画?」
キョトンとするブルマに俺は、正直に話してみた。
漫画家・鳥山明が描いた傑作。
国民的英雄を生み出した冒険譚を。
「……不思議ね。その話がホントなら、アンタはアタシ達とは次元の違う世界から来た存在ってことよね。アタシ達が認識できない次元ーー、おそらくアンタからしたらアタシ達は二次元の存在ってことよね?」
フッ、まったく分からん(笑)
頭良すぎる人の話は難しいぜ(笑)
「要は、アンタの世界ではアタシ達は漫画の中の登場人物って訳よね?」
あ、はい。
「無数の並行世界があるんだから、おかしくはないわ。私たちの世界によく似た出来事を漫画にして書いてある世界があってもね。たぶん、その漫画家の頭に私たちの世界が見えたーーそう言うことなのかもしれない」
特に驚くに値しないと言いたげなブルマにビックリしながらも、簡単に受け入れてくれたみたいだし、これ以上余計なことを言うのも悪いかと黙っておく。
それにしても、ブルマの格好から察するに、映画「復活のF」の後みたいだけど。
いったい、どのタイミングの話なんだろ?
悟空のクローンとか言ってたけど、どんな物語になるんだろうか?
この時の俺は、そんなことをボンヤリと考えていた。
そんな俺の前に悟空が明るく笑いながら言ってきた。
「けんど、オラ達のこと知ってるちゅうオメエも今回みたいなんは初めてなんだなぁ」
え? ああ、確かに。
ドラゴンボールって漫画以外にも、色んな映画やアニメエピソードがあるから忘れがちだけど。
アレ、全部パラレルなんだよなぁ。
バーダックやターレスの話とか。
「お? 驚れぇた! オメエ、父ちゃんやターレスを知ってんだなぁ!!」
そうそう、悟空の父ちゃんのバーダックに。
悟空ソックリだけど赤の他人のターレス。
「だな! オラ達は下級戦士だから同じ顔が多いんだってなぁ」
ちょっと待って?
「ん? どした?」
ブロリー、スラッグ、ヒルデガーン。
唐突な俺の言葉にブルマは首を傾げている。
「ブロリーが、どうかした?」
あっるぇえええ!?
ちょっと待って!?
ブルマさん、アンタ、ブロリーに会ったことないよね?
「ブロリーって、孫くんやベジータと同じサイヤ人にしては上品で大人しくて良識ある、あのブロリーでしょ?」
あれ? 俺は悪魔だぁ、じゃない?
「ブロリーはブルマん家で居候してんだ」
にこやかに言う悟空に俺は目を見開く。
今度はブルマが俺に声をかけてきた。
「ヒルデガーンとかスラッグというのは知らないけれどね。なんかの名前?」
ああ、えっとーー。
「オラ達が倒したヤツらさ。別次元の、な」
鋭い黒の瞳で不敵に笑って言った後、俺に向かって悟空はウインクしてきた。
「だろ?」
茫然とする俺に対し、悟空は明るく言ってきた。
「ホントにオメエ、色んなオラ達のこと知ってんだなぁ。オメエ以外にもオラ達を知ってる人間が生きてる世界があるんかぁ。じゃあさ、オメエ達の世界にはさ、強ぇヤツ居るんか!?」
全力で否定する。
さっきも言ったけどね。
どんだけ鍛えても生身で空は飛べないし、手から光は出せません。
「そっかぁ、残念だなぁ」
「それはそうとアンタ。色んな世界の孫くんを知ってるのに、今回の事件は知らないって言うの? 勉強不足なんじゃない?」
ブルマはホントにキツイなぁ。
そ、そんなこと言われても。
俺が見たドラゴンボールは20年前くらいで、30にもなって今更、子どもが見るアニメのドラゴンボールにハマるのはちょっと・・・
「うるさいわね! アニメアニメって、そんな風に漫画やアニメを軽く見てるから、今とんでもない状況に巻き込まれてんじゃない!!」
そんなこと言われても。
だいたい、ブルマさんだってトランクスがゲームや漫画に熱中してたら怒るでしょ。
俺たちの世界でも同じなんですよ。
俺たちの世界では漫画やゲームに熱中する人は外に出て人間と交流しないーーオタクって言われちゃうんです。
「ふぅん? まあ、アンタの世界の人はそうかもしれないけれど。オタクって悪い事なわけ?」
あまり好まれないですね。
最近は芸能人やアイドルがオタクをカミングアウトしたり、オフ会とかで集まったりするみたいだから。
オタクって言うよりマニアの色が強いかなぁ。
「そりゃ、四六時中ゲームばかりしてれば叱りたくもなるけど。趣味の範囲で自制できれば良いじゃない。サイヤ人みたいに四六時中戦ってばかりならバトルオタクでしょうし、昔の私みたいに研究ばかりなら科学オタクでしょ。はまり込むのはダメだけど、気分転換って言うのは大事よ」
そういや、あなた10代から天才で世界一の富豪令嬢でしたもんね。
「何よ? たしかに私は天才だし、お金持ちの家に生まれたけどさ。自分の願いを叶えるのに妥協はしないわよ?」
それは才能があって、そう出来るだけのお金があるからですよ。
パンピーは、そんな事できません。
安月給でも、給料が上がらなくても、ボーナスが無くて労働時間が長くても。
生きる為には働くしかないんです。
俺は、あなたみたいに賢くないし、悟空みたいに強くないから。
アニメなんか見てる暇なくて。
あ、やっべ。なんか落ち込んできた。
そんな俺に向かってブルマは目を吊り上がらせている。
「気に入らないわね。そうやって言い訳して、自分に甘えてるだけじゃないの? あんた、自分の可能性を自分で潰してない?」
甘えてるってなんだよ!?
初対面で、いきなり。
俺のこと何にも知らないくせに。
俺がどれだけ仕事とか人間関係とか我慢して、どれだけ頑張って生きてるかも知らないくせに!
なんで、そこまで言われなきゃならないんだよ!!
ブルマが口を開こうとするのを、割って入るように悟空が両手を上げて遮ってきた。
「ま、いいじゃねえか。取り敢えず、今回の件、オメエもオラに協力してくれ」
言いながら悟空はブルマに向かって語る。
「ブルマ、悪いけど説明してやってくれ」
「…まったく仕方ないわね。確かに、説教なら後でも出来るし、何より今は一人でも味方が欲しいからね」
そう言ってブルマは俺に目を合わせた。
彼女の説明は、簡潔だった。
世界中に散らばるレッドリボン軍の研究施設。
そこから俺のような大量のクローンが出て来て街を襲っているらしい。
また、奇妙な波動により地球にいる主だった戦士達は無力化されているとのこと。
「現在、地球にいるのはサイヤ人と悟飯くんとピッコロを除いたみんな、なのよね」
悟飯やピッコロは分かるとして、サイヤ人ってベジータ?
「そだ! 後は父ちゃんとブロリーだな」
なんで、バーダックとブロリーが悟空たちの仲間にいるのか分からないけど。
一番問題なのは、悟空を除いたZ戦士がほとんど地球人ってことだよ。
あ、悟天とトランクスもいるか。
「ビルス様に今回はオラだけで事件を解決してこいって言われてよ! ベジータや父ちゃん達は全ちゃんトコで試合してるんだってよ。オラも出てぇんだけんどなぁ」
「いつでも出来るでしょ! 今は、事件解決に全力を尽くしなさい!!」
残念そうな悟空に火を吐かんばかりに怒鳴りつけるブルマを見ながら、俺はドラゴンボールの世界に来れたことに喜んでると同時に。
ブルマに言われた事が胸の奥につっかえていた。
ーーーー
悟空に瞬間移動で連れて来られた先には、俺と同じ色合いの悟空の偽物ーークローンが立っていた。
見た目は悟空にソックリだけど猫背で、表情も一切変わらない。血色の悪い肌と瞬きすらしない紅い瞳、燻んだ金色の逆立った髪。
緩慢な動きで、ユラユラと歩いていたのに、俺たちを見ると獲物を見つけた獣みたいに寄って来る。
ホラー映画みたい。
「あ、あの悟空さん? どうして、俺も連れて来られたんでしょうか?」
さっき窓ガラスに映った自分と同じ姿のヤツが、ゾンビウォークで近付いてくる。
漫画ならシュールな場面なのかもしれないが、目の前でやられたら怖いなんてもんじゃない。何考えてるのか全く分からないし。目が普通じゃないんだよ、コイツ!
「? 何で敬語なんだ? さっきまでみてぇに普通に話してくれよ。同じ顔の人間にかしこまられっと、妙な気分になっちまう」
いや、夢だと思ってたし、物語の登場人物だからタメ語だっただけで、実在の人物と話をするなら普通に敬語を使うよ。腐っても、社会人なんだから。
俺の態度の変化に嫌そうな顔をする悟空に思わずへの字口になってから、気を取り直す。
「いや、初対面の人に礼を欠くのは如何なものかと」
こちらに近づいてくるクローン悟空に、悟空は全く興味がないようだ。
「礼を欠く? ああ、無礼ってヤツか。オラよくビルス様や界王様にソレで叱られちまったなぁ。けんどオラにゃ、ああいう堅っ苦しいのは無理だ。オメエが、どうしても敬語がいいなら構わねえけど。無理してんならオラに合わしてくんねぇかな? オラもさっきまでのオメエの方が話し易いからよ」
「そ、そういうことならーー。というか、悟空って本当に漫画と変わらないんだなぁ。あ、ブルマさんもか」
細かいことは気にしないし、堅苦しいのを嫌ってるくせに絶妙な気遣いもできちゃうーー孫悟空は不思議な人だ。
ブルマは気が強いというか、我が強いというかーー。
そんな話をしていた俺たちに、俺と同じ見た目のゾンビ姿勢の野郎ーークローンが光を放つ右手を突き出してきた。
「ーーげ!?」
びっくりする俺に悟空は淡々と告げる。
「大丈夫。オメエは、オラを真似したアイツと同じ肉体を持ってる。元の世界は知らねえが、此処なら負けねえ」
「いや、つっても素人なんだけど!? 俺!! 修行なら悟空がつけてよ!! というか、やっつけてよ!!」
俺の抗議に悟空は頭を掻いて、すまなさそうに笑う。
「悪りい。オラ、ちょっと強くなり過ぎちまってよ。妙な波動の影響もあって、超サイヤ人になっと昔みてえな加減できねぇんだ。地球に余計な被害を与えたくねえ」
そ、そんな殺生なぁああああっ!!!
絶叫する俺に向かって、光が放たれた。
思わず両腕を顔の前でクロスさせてガード、気弾がまともに当たって爆発する。
この野郎。一応、俺と同じ見た目かつ色合いなんだから、仲間だろうに!
躊躇なく俺を撃ちやがった。
身体を今まで味わったことがない衝撃が襲う。ガス爆発の現場にいた人間は、こんな熱風や衝撃を味わうのかもしれない。
緊張が走る。
鼻の奥と舌の根から苦い味がする。恐怖。
味わったことがない無機質な殺意と敵意。
社会人になってから殴り合いなんか経験がない、事実。
脚が震えて何も出来ない自分がいる。逃げたくて逃げたくて、たまらない自分が。
動けなくなった俺をクローンは何度も何度も、気弾で攻撃してくる。
痛い、苦しい、腕が痺れてきた。息をすると肺が焼けるような熱い光。焼かれる腕。
殺される。コイツを倒さなければ、殺される。
いつの間にか、俺の頭の中は隣にいた悟空の(頼れる)存在を消していた。
いつだって、そうだ。
助けて欲しいと叫んだところで、自分が立ち向かって克服しなければ、永遠に何も変わらない。
助けて貰えたからって、次も助けてくれる人がいるとは限らない。
仕事も生活も。
そう思い浮かんだら、震えが止まった。
絶えず気弾を放ってくるクローン。
その構えが、俺の知ってる漫画の悟空と同じ構図ーー。そこに気付いたら、俺の頭の中で何かがキレた。
「ーーーーっ!!」
無表情なマネキンみたいな顔と肌色。
こんなヤツに負けて、たまるか。
悟空の姿をしただけの人形なんぞに、負けてたまるか。
自分は碌な人生を送ってきてない、それでも。
こんな訳の分からない状況で、訳も分からずに死んでたまるか。
俺の胸の奥ーー腹の底から湧き上がる不思議な力が、俺に拳を握らせた。
「うぉあああああっ!!!」
自分の何処から、こんな声が出てるのか。
悲鳴なのか、怒号なのかーー理解できない。
自分の中に流れる血が焼けるように熱い。
視界暗転ーー。
次に真っ白な思考と色のない世界が、視界に入る。俺の咆哮にクローンは動きを止めていた。
なんだ、その間が抜けたツラは?
何をーー惚けてやがる。
ただの人形如きが、イラつかせる。その惚けた面、取り敢えず、一発殴る。そう決めた。
すると身体が軽くなった。視界がクリアになって、グチャグチャだった頭の中が、一気に冴え渡る。
人形は性懲りもなく、気弾を連続で放ってきた。
左右に高速ステップしてジグザグに、隙間を縫うようにすり抜ける。
正面にヤツの顔。
右の拳を振りかぶっているのが見えた。
首を左に傾けると、一瞬後に顔があった場所を人形の拳が打ち貫いていく。
今度は左、逆方向に首を傾けて避ける。
顔を狙っても外されると悟ったのか、右の拳をボディに向かって打ち込んできた。
右の膝を拳に蹴り込むようにして止めると間髪入れずに右のハイキックを人形が放ってくる。
ーー見えてんだよ。
イラっとしながら、上体を後ろに反らすと鼻先を人形の靴底が過ぎていく。
「…やっぱな。アイツ、只者じゃねぇ」
悟空の声を耳が拾うが、それも意味までは頭が考えない。ただ、目の前のクローン(人形)を殴り倒すことだけ。
クローンはバックステップすると、俺に向かって右手をかざして、掌に気弾を練り始める。
瞬間、隙だらけのヤツの懐に踏み込んだ。
「!?」
色んなイメージが頭に浮かんでくる。
イメージ通りに身体が動くーー。
「痛ぇだろうがぁっ! この野郎ぉおおあああっ!!」
左フックを身体ごと顔面へ叩きつける。
腕の振り(スウィング)、踏み込み、腰の回転が打突点(インパクト)の瞬間に、全て重なるイメージ。
俺と鏡写しの姿のクローンは、思い切り身体を仰け反らせて背中から地面にひび割れを起こしながら倒れた。
身体から吹き上がる力は波が引くように消えて行き、元の色に世界が戻る。
「ーーえ? あ、あれ?」
改めて見ると、クローンは白目を向いて倒れていた。アレだけ傷めつけられたのに、俺の身体は平気なようだ。
「同じ肉体でもよ、使うもん次第で強くも弱くもなんだ」
悟空がクールな瞳で俺を見つめ、不敵に笑ってる。
「やっぱ、オメエはオラが思ったとおりだ。オメエなら、もしかすっとーー!」
そういう悟空の笑みは、俺には碌でもないもののように映りました。
豆知識。
ファイターズでは、地球全体を妙な波動が覆っています。
その波動の能力は、一定以上の戦闘力の人間を無力化するもの。
波動の範囲内では、たとえ無力化されなくても出せる力は一定に制限されています。
例・超サイヤ人とナッパの戦闘力が同じくらいに調整されてます。超3でもフルパワーのナッパくらい?
更に無力化した人間の肉体をコンピュータの精神によって操る為に開発されたのが、リンクシステム。
本来の精神を波動で弱体化させ、別の精神に乗っ取らせるもの。
簡単な概要ですが、参考までに。
本編でも、その内説明させまする(´ー`* ))))
ではでは(´ー`* ))))