ドラゴンボールFZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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さぁ、本話が紅朗くんの厄日の始まりです。

みなさん、紅朗くんを応援してあげてください(>_<)


第11話 悟空、頼む! 行かないで~!!

 拝啓、日本に居る父さん。母さん。

 

 私は今、ドラゴンボールという異世界で孫悟空という人間のクローン体になって破壊神とかいう偉い神様に殴られています。

 

 ええ、そりゃもう。気が遠くなるなんてものじゃなく。

 

 衝撃で気が遠くなっては痛みで戻され、戻って来ては遠くに飛ぶというーーシャトルランのように意識の往復を繰り返してます。

 

 もうね、フルボッコにも程があんだろ、ってくらいです。

 

 殴りに行っては「真面目にやれ」と頭吹き飛ぶんじゃねって威力のデコピン食らわされ、立ち上がるのが遅ければ「寝るんじゃない」と指先からデスビームを撃たれーー。

 

 俺の正気は、いつの間にか消し飛ぶ寸前になっています。

 

 ああ、この猫神。

 

 ブチ殺してやる。

 

 そのような事を考えていられたのも束の間です。

 

ーーなんて言ってる場合じゃねえ、な。

 

「…くそ、がぁあああっ!!!」

 

 怒りが俺の思考を消した時、更に自分の身体からパワーが漲るのを感じる。

 

「…ん? ほう、超サイヤ人2ってヤツか」

 

 感心したようなビルスの声にもイラつくが、青白いスパークが散る金色のオーラを身に纏うことができている自分にもイラつく。

 

「…簡単に目覚めんじゃねぇよ。超サイヤ人は伝説の戦士。その壁を超えるには、相当な修行がいるはずだろうが」

 

「ふ、そのとおりだ。もっとも、お前が今なっている超サイヤ人2とやらは僕から言わせれば邪道。真に至ることが出来なかった連中の姑息な(=その場凌ぎの)変身だ。紛い物のお前には似合いだけどな」

 

 ニヤリと笑いかけてくる破壊神に考える前に身体が動いていたーー。

 

「…む?」

 

 目の前まで踏み込んで殴る。

 

 それだけだ、それ以上はーーいらない。

 

 にやけヅラした、この猫神の横顔を殴り飛ばしてやる。

 

 右ストレートは、ビルスの顔の前に出された左手に軽く払い除けられる。

 

 勢いそのままにビルスの後ろに着地する俺を猫神はバカにしたような目で見下ろしてくる。

 

「…せっかく超サイヤ人2になっても、猪のように突っ込んでくるだけなのか? 孫悟空のセンスと身体の動きに頼ってばかりじゃ、この僕を殴るなんて一万年かかっても無理だ」

 

「…うるせぇよ!!」

 

 更にギアを上げる。

 

 まだまだ、この体は上がる。

 

 なんてーーとんでもない身体だよ。

 

 頭の中で驚く俺とは別に、肉体は次々と拳と蹴りを何度も何度も繰り出す。

 

 まるっきり当たらない、当たる気がしない、でもーー。

 

 まだ打てる、まだ蹴れる。

 

 なら、もっと速く打て。

 

 まだまだ速くーー。

 

 右拳から左拳を放つも仁王立ちで突き出しただけの破壊神の左手に弾かれる。

 

 かまわねぇ、今の俺は見えてる。

 

 なら、追撃するだけだ。

 

 弾かれた勢いそのままにして擦れ違い様に左膝蹴りを顔面に放つ。

 

 これも左手に簡単に止められた。

 

 だから、なんだ?

 

 一瞬で後ろに回って右の回し蹴りで頭を蹴り飛ばす。

 

 しかし、前にあった左手は後頭部にいつのまにかあり、虫でも払うような仕草で俺の回し蹴りは止められる。

 

 だけでなく払われただけで後方へ弾き飛ばされ、身体で地面に溝を掘りながら引き下がる。

 

 なんつう強さだ。

 

 たった数秒で、分からされたよ。

 

 フリーザ達のパチモンとはレベルが違う。

 

 止まった身体をゆっくり両手で地面を支えて、両足を地面に押し付け立ち上がる。

 

「…でもよ、だからなんだってんだぁああ!!!」

 

 気柱を吹き立たせる。

 

 俺の髪は膝裏まで伸びる感覚、パワーが更に引き上がる。

 

「…超サイヤ人3、か。紛い物の姑息な変身とは言え、それになれるとはな。取り敢えず悟空の身体に眠るパワーを使いこなすことはできるようだ」

 

 超サイヤ人3のスピードとパワーは凄まじく、一撃一撃は変わらずに払われるが、ビルスの背後の空間に衝撃が目に見えて発生している。

 

 が、それでもビルスの動作は何も変わらない。

 

「…クッソォ!!」

 

 身体が一気に重くなり、みなぎっていたパワーが消えて肩で息をしだす。

 

 拳が重い、脚が棒みたいにだるい。

 

 拳に下半身が振り回される。

 

 構うな、打ち込め!

 

 諦めんな、最後まで!!

 

 そんな事を何回も繰り返した先に、ようやく破壊神ビルスが声を上げた。

 

「フン。ようやく、マシな動きをするようになってきたかな? 戦闘力に関しては超サイヤ人を鍛えていけば成れるだろうし、スピードもパワーも悟空の身体を模してるだけあって中々のもんだ。何よりお前の戦いのセンスは悪くない」

 

 精も根も尽きるとは、正しく今の俺のようなもんなんだろうーーと意味を理解する。

 

 理解なんてもんじゃないな、実感してる。

 

「さて、そろそろ本気で抵抗してみろ。で、なければこのまま叩き潰すぞ」

 

 あ、これマジな奴だ。

 

 おいおい、今までの俺の動きはマジじゃないって?

 

「当たり前じゃないか。悟空の代わりになるなら良いが。ならないなら、中途半端な力を持った存在だ。お前のような奴は、道を誤る前に破壊するに限るーー」

 

 チラっと俺の後ろの転生者3人を見つめてから。

 

「そこに居る奴等のように、この世界で好き放題出来るなんて勘違いしてる連中は、お仕置きするに限るからね」

 

「……俺は」

 

「知ってるさ。「今は」違うんだろ?だが、この先は分からない。お前の意思が弱ければ、力に飲み込まれて破壊を撒き散らすだけだ。お前が目覚めた力は、本来なら拳を磨いて磨いて磨き抜いた先にある境地だ。神の域はおろか、天使にすら迫る程のーーね」

 

 あ、だから素人の俺が、真・超サイヤ人になったのが気に入らないのか!

 

 お、大人気ないのは誰だよ!?

 

 と、コホンと一つ息を吐いた後、ビルスは続けた。

 

「それもある。だが、何より大きいのは。お前の意識と記憶が飛んでることだ。いいか?超サイヤ人は血と破壊を好む悪魔のような存在だと言われてる。悟空達程に鍛えていれば力に飲まれるなんて醜態は晒さないだろうが、君は違う。拳の握り、踏み込み、判断力、全てが足りない。悟空の戦闘データに身を任せることも、君は自我が強過ぎて出来ない」

 

 自我が強過ぎる?そうなんだろうか?

 

「思うに、お前は怒りに身を任せなければ他人を殴れないようだね?」

 

「…元の世界では、人間殴るのは基本的にダメですから」

 

「その倫理観は悪くない。なるほど、それで殴る時や蹴る時に迷いがあるのか。…お前が悟空の代わりになるなら、拳を握る意味を持たないと闘えないだろうね」

 

 拳を握る意味ーー?

 

「悟空は自らを鍛えて強さを求める武道家であると共に磨いた拳で地球を守る戦士でもある。悟空が悪人と闘う理由だ。対してお前は、闘う意味を見出せてないから感情に任せなければ本来の力を出せない」

 

 ジッと見られる。

 

 心の奥まで覗きこまれてるような感覚だ。

 

 ビルスは右手を俺に向けて打って来いとジェスチャーしている。

 

「その理由を見つけるのは、お前次第だろう。本題を見せてもらうぞーー!お前の真の超サイヤ人を!!」

 

 言うと同時にビルスの身体が紫色の光を纏い始めた。

 

 それを見た俺の身体が恐怖に竦み、震え上がる。

 

 半端じゃない、この重圧。

 

 向かい合ってるだけで虫のように潰されてしまいそうだ。

 

 命の危機すら感じる圧力に、咄嗟に超サイヤ人の気を開放して反発ーー抵抗を試みるも、アッサリとねじ伏せられていく。

 

「ーー普通の超サイヤ人では、僕の力に耐えられないよ。さぁ、どうする?そのまま、死ぬか?」

 

 破壊神の気の圧力に呼吸が止まり始める。

 

 マジかよ、息が吸えない。

 

 目に見えない巨大な塊にゆっくりと押し込まれていくような感覚だ。

 

 なのに俺の身体は動かない。動けないーー。このままだと、死ぬ。

 

 死ぬ?訳も分からずに、なんで死にかけてる?

 

 なんで、死ななければならない?俺が、何をした?

 

「…そうだ!このままだと、死ぬぞ!!見せてみろ、超サイヤ人の真の姿を!!」

 

 ビルスの声が聞こえてーー。

 

 コメカミ辺りで何かがプチンッとキレた。

 

ーー天津視点

 

 悟空クローンの肉体を持ったオッサンーーいや紅朗さんは、本物の超サイヤ人になって古井と瀬留間を吹き飛ばした。

 

 理屈は分からないけど、見ただけで分かる。

 

 あの時、ゴルフリやPセルを訳もなく倒して見せたあの姿ーーアレは超サイヤ人だ。

 

 とんでもない殺気と恐怖は、伝説の戦士だと思った。

 

 元通りの悟空クローンの姿に戻っても、紅朗さんの本性がーーさっきまでの超サイヤ人の姿が思い起こされてーー震えてくる。

 

 そんな紅朗さんの力を目の当たりにしたのに、本物のクリリン達は笑顔で紅朗さんと話をしていた。

 

 俺や飲伏、栗林は震えて動けないのに。

 

 技も力も俺達とまったく同じ実力のはずなのに、クリリン達は俺達のように怯えていない。

 

 栗林達とそのことで驚いていると、第7宇宙の破壊神ビルスが現れた。

 

 悟空に怒鳴ってる、あのとんでもない超サイヤ人に変身して30分以内でカタを付けて来いって言ってる。

 

 さっきの紅朗さんのような変身を悟空もできるっていうのか?

 

 黒髪状態で古井と瀬留間を一方的に押していた悟空が、あの恐ろしい超サイヤ人になったらーー。

 

ーーそんなもん、無敵に決まってる。

 

 事実、変身した紅朗さんは古井のゴルフリを簡単に吹き飛ばしたんだから。

 

 ビルスは焦りながら事情を説明していたーー。

 

 どうやら、全覧試合の最中のようだ。

 

 アニメだと、悟空と悟飯とブウしか出てなかったはずだけど。

 

 この世界ではベジータと悟飯、ピッコロにブロリーとバーダックが加わっているらしい。

 

 代わりに悟空は出ていないようだ。

 

 試合形式は一対一だったと思うが、バトルロワイアル(本戦)形式に変わっているのか。

 

 やはり俺の知ってるドラゴンボール超とは違うみたいだ。

 

 途中にターニッブという知らないサイヤ人の名前も出ていた。

 

 悟空とターニッブを抜いた状態でも優勝できるーーと言ってしまい、選手が一人でも負けたら土下座してやるって言ったらしい。

 

 バトルロワイアル形式になっているため、全宇宙から狙われた挙句にさっきの超サイヤ人に誰も変身しないからピンチになっているとか。

 

 だから悟空を連れて途中参加させて一気に戦局を巻き返すつもりみたいだった。

 

 当然、ブルマと悟空本人に拒否されるも、ビルスは紅朗さんをジッと見る。

 

「其処に居るじゃない。悟空の代わりなら、ね?」

 

 そして急遽、悟空の代わりをするために強制的に超サイヤ人にならされ、紅朗さんは破壊神ビルスに打ち込んでいた。

 

 最初の頃こそ、話にならないとばかりに指先でピンボールのように弾かれていたが、体力に余裕が無くなるにつれて悟空の動きを紅朗さんはできるようになっていく。

 

 左右の拳を顔に数発放った後に、右の上段廻し蹴りを放つ動きなんて漫画の悟空の動き、そのものだ。

 

 ビルスは、自分の顎とボディに放たれた左拳を前に出した右手で簡単に弾いて防ぎ、顔に向けて放ってきた右のストレートを首を横に倒すだけで避ける。

 

 紅朗さんの右上段回し蹴りが、倒れた顔に向かって放たれるも顔の前に置いた右手で受け止め、指先を弾かせるだけで吹き飛ばした。

 

 物凄い音と衝撃波と共に地面に背中から叩きつけられ、肩で息をしながら立ち上がってくる紅朗さん。

 

 俺だったら、とっくに心が折れてる。

 

 ラッシュの動きやコンビネーションが長くなり、打撃音が響く中、その度に吹き飛ばされる紅朗さん。

 

 ボロボロだ。

 

 そんな紅朗さんにビルスは俺達を見た後、中途半端な力を持ったヤツは破壊するに限るって言ってきた。

 

「そこに居る奴等のように、この世界で好き放題出来るなんて勘違いしてる連中は、お仕置きするに限るからね」

 

 思わず、俺たちは一歩後ろに下がる。

 

 あの目に、殺されると思った。

 

 口調こそ軽いけれど、ゴミを掃除するくらいの感覚でこの猫は俺たちを消すつもりだ。

 

 それを知ってか、紅朗さんは俺たちを庇うように前に出て口を開いた。

 

「……俺は」

 

「知ってるさ。「今は」違うんだろ?だが、この先は分からない。お前の意思が弱ければ、力に飲み込まれて破壊を撒き散らすだけだ。お前が目覚めた力は、本来なら拳を磨いて磨いて磨き抜いた先にある境地だ。神の域はおろか、天使にすら迫る程のーーね」

 

 さっきの超サイヤ人はブルーとか、もしかしたら身勝手の極意にも匹敵しているのかもしれない。

 

 でもビルスの反応もおかしい。

 

 アニメではビルスは悟空が身勝手の極意に目覚めたとき、不本意そうだった。

 

 なのに、このビルスは自分と同じくらいの力を持った存在を許しているようだーー。

 

「思うに、お前は怒りに身を任せなければ他人を殴れないようだね?」

 

「…元の世界では、人間殴るのは基本的にダメですから」

 

「その倫理観は悪くない。なるほど、それで殴る時や蹴る時に迷いがあるのか。…お前が悟空の代わりになるなら、拳を握る意味を持たないと闘えないだろうね」

 

 現代日本で怒りを持たないで人を殴れる人間なんているのかーー?

 

 もし、居たとしてもソレってどんなサイコパスだよと思ってしまう。

 

 そんな俺に応えるようにビルスはつづけた。

 

「悟空は自らを鍛えて強さを求める武道家であると共に磨いた拳で地球を守る戦士でもある。悟空が悪人と闘う理由だ。対してお前は、闘う意味を見出せてないから感情に任せなければ本来の力を出せない」

 

 ジッと紅朗さんを見る。

 

「その理由を見つけるのは、お前次第だろう。本題を見せてもらうぞーー!お前の真の超サイヤ人を!!」

 

 言うと同時にビルスの身体が紫色の光を纏い始めた。

 

 神と神の時に見せた本気でキレた時に生まれた紫のオーラだ。

 

 それがビルスの全身を光らせている。

 

 指先から何一つ、動かせない。

 

 俺達は神の気を感じることはできないはずだ。

 

 なのに、指一本動かせない。本能で悟ってしまう。

 

 何もできないし、何一つ通じない。

 

 このまま消されて終わりだってーー。

 

 クリリン達も怯えた顔をしていることから、彼らも動けないって分かって少しだけ安心した。

 

 でもーー平然と立っている人間が「二人」いる。

 

 一人は、孫悟空。

 

 そして、もう一人はーー黄金の炎のようなオーラを全身に纏った紅朗さんだった。

 

 彼は肩で息をしていたはずなのに、荒かった呼吸は整いクローンのように感情が消えた無表情でーー瞳は冷徹な殺意に満ち々ちている。

 

 これにビルスが不快そうな顔をしていた。

 

「ーーまあ、見た目だけは本物だがパワーが、ねぇ。せめて身体の動きは真似てくれるんだろうな?」

 

 これに応えるように紅朗さんが姿を消す。

 

 高速移動の踏み込み、ビルスの目の前に現れると跳び上がって左の膝を顔に向けて放つ。

 

 さっきまでと同じように簡単に顔の前に掲げた右手で止めるビルスだけど、物凄い衝撃がビルスを中心に放たれて彼の足元がひび割れてクレーターが出来る。

 

「な!?」

 

「す、すげぇ」

 

 栗林と飲伏も思わず声を上げてる。

 

 そらそうだ、次元が違う。

 

 膝蹴りを放ったまま宙で止まった紅朗さんは、止められたことなど気にもしていないとばかりに消える。

 

 次に現れたのはビルスの背後。

 

 ビルスの後頭部に向けて右拳を打ち下ろした。

 

 雷すら発生する空気と空気の摩擦を起こしながらも、紅朗さんの拳は右手の甲を虫を払うように後ろに向けたビルスの手によって防がれている。

 

 だけど、ビルスの顔が先ほど迄と違って明らかに真剣味を帯びている。

 

 鋭い目で睨み合う破壊神の瞳と瞳孔が現れた翡翠眼。

 

 今度はビルスが手を右側に振って、受け止めた拳を自分の脇に流し、自分の正面に紅朗さんを移動させる。

 

 紅朗さんは流された勢いに逆らわずに地面が近づくと着地して、距離を取りながらクルリとビルスに向き直る。

 

 悟空と同じ構えーー左手を顔の前に右拳を腰に置いて中腰に構えを取っている。

 

 その姿にビルスは凶悪な笑顔を向けると右人差し指を出してデスビームのような光線を放った。

 

「チョイ」

 

 紅朗さんはそれを紙一重で体を脇に躱して避けている。その動きは、本物の悟空と見間違えるほどだ。

 

 次々と光線を放つビルス。その光の隙間を縫うように紅朗さんは簡単に避けていく。

 

「す、凄いな。紅朗のヤツ、まるで悟空だ」

 

「ああ。あの動きの鋭さと正確な判断力、相手の破壊力に動じぬ冷静な思考。本当に悟空そのものだ」

 

「どうなってるんだ? 明らかに真・超サイヤ人になる前までとは別人だ。フリーザの偽者を倒した時も、そうだったな」

 

 クリリンとヤムチャ、天津飯の声を聞いて思わず頷く。

 

 あの恐ろしい超サイヤ人に変わると、紅朗さんは別人のようになっている。

 

「あの、あの変身って危険なんじゃないですか?」

 

 栗林が思わずといった感じで悟空に問いかけた。

 

 すると悟空は真剣な表情で紅朗さんとビルスを見比べた後、言ってきた。

 

「ああ。未熟な心だと、破壊衝動に捉われちまって暴走を始めちまう」

 

 目を見開く俺達だが、悟空は冷静な表情で続けた。

 

「だけどーー、紅朗の場合はちょっと違うみてぇだな。オラの見立てで良いんなら破壊衝動に捉われちまうようなことは、無さそうだ」

 

 笑いながら、そう言った。周りを見てみろ、と言わんばかりに悟空は俺たちに顔を向けながら視線を周囲にやる。

 

 そこで俺たちも、ようやく理解する。

 

 紅朗さんとビルスの戦いは、見た目こそ派手だけれど建物や人間ーー俺たちを巻き込まないように動いている。

 

「で、でも紅朗さんは意識がないようでしたよ?」

 

「ああ。そこがオラも疑問なんだーー。なんで、真・超サイヤ人に意識を完全に持ってかれちまってんのに紅朗が紅朗のまんまーーなんかがな」

 

 真剣な表情で声で、悟空は紅朗さんを見てる。

 

 紅朗さんの変化を見逃さないようにしているように見えた。

 

 いや、多分そうだ。

 

 悟空は、此処にいる俺達の中では本当に次元が違う。

 

 紅朗さんが限界に来た時に、間髪入れずに助けるつもりだ。

 

 そんな俺をジッとウイスが見ていることに気付くと、向こうはニコリと笑って手を振って来た。

 

 見られてた?

 

「あっ!!」

 

 誰かの声で俺は、紅朗さんの方に目をやる。

 

 彼の右手からゴクウブラックのような青い光の剣が出来ていた。

 

 それを正眼に構えると背後に半透明のクローントランクスの姿が現れて消えた。

 

「ひゃぁああああ!!」

 

 紅朗さんが叫びながら、一気に駆ける。

 

 すれ違いざまに光剣が縦に一閃されて、空間に線が刻まれた。

 

 ビルスは自分の鋭い爪で弾いたようだ。

 

 駆け抜けながら後ろに回ってビルスに振り返った紅朗さんの傍らに今度は、クローンベジータの幻影が現れて消える。

 

「だだだだだだだだだぁっ!!!」

 

 両手を大きく振りかぶり、左右交互に突き出して黄金の気弾を連続で放ち始めた。

 

 ビルスは顔の前に構えた右手で次々と弾いていく。

 

 しばらくの間、映像の焼き増しのように同じことをくり返すと、ふと紅朗さんが動きを止めて棒立ちになる。

 

「ーー? なんだい、もうバテたのか?」

 

 ビルスが問いかけるも、紅朗さんの口元には不敵な笑みが浮かんでいる。

 

 ビルスが鋭く周囲を見渡すと、無数に弾いた気弾が全て宙で止まっている。

 

 あ、あれだけの気弾を一つ一つ、繰気弾のように操っているのか?

 

 両手を大きく斜め上に広げた紅朗さんの傍らには、クローンピッコロの幻影が浮かんで消えた。

 

「そうか、アレはーー魔空包囲弾!!」

 

「マジかよ、ベジータのグミ撃ちからの魔空包囲弾って何だよ!?」

 

 栗林と飲伏の言葉に頷きながら、紅朗さんを見る。

 

 彼が両手を胸の前で交差させると無数の気弾が全方位からビルスに襲い掛かった。

 

 巨大な爆発を起こして一つの光の球になって消えて行く。

 

 紅朗さんは、そのまま両手を腰に置いてかめはめ波の構えを取っていた。

 

 蒼い光の球が紅朗さんの上下に組んだ両手の中に生まれている。

 

 あ、アレだけ気弾を撃ってるのに全然、気が落ちてない。むしろ気が上がってるーー?

 

 なんだよ、この変身は?

 

 無敵じゃないのか?

 

「そろそろ、限界みてぇだな」

 

 悟空の静かな言葉に思わず紅朗さんを見ると、彼の全身から凄い勢いで汗が噴き出ている。

 

 どういうことだと悟空を見上げると、彼は冷静に応えてくれた。

 

「あの変身は、なってる間は無限の気を使うことが出来る代わりに体力と精神力が尽きたら強制的に変身が切れちまう。限界を超えた動きで闘ってから当然だ。その上ーーさっき、オラの技じゃなくて他人の技ーーベジータ達の技を使ったせいで身体に無理が来てる。オラの身体で他のヤツの技を使うってなぁ、相当ムリするみてぇだな」

 

 悟空は続けた。

 

 確かに紅朗さんは、暴走はしていない。

 

 冷静に状況を分析して必要な技を合理的に組み立てて攻撃している。

 

 だけど、意識がないせいで自分の状態を省みることが出来ていない。

 

 真・超サイヤ人に変身すると昂奮して、身体が限界を訴えていても気付かずに闘って精神が疲弊し、気付いた時には指一本動かせなくなるらしい。

 

 それが副作用だって悟空は言った。

 

「じゃ、じゃあ、紅朗さんはーー!」

 

「ああ、意識がねェから自分が限界だって自覚がねえ。そうすっと自分の残りの体力と相談して気を倍化させるかどうするかって駆け引きも出来ねぇ」

 

 淡々とした声で続ける悟空の前でビルスが光を吹き飛ばして、現れる。

 

 同時に紅朗さんが両手を突き出した。

 

「かめはめぇええええっ!! 波ぁあああああっ!!!」

 

 強大で野太い青い光線がビルスに向かって放たれる。

 

 ビルスは淡々と鋭い目で目の前に迫る光を睨みつけるとゆっくりと指先を向けた。

 

「ーー創造の前に」

 

 指先が光線に触れた瞬間ーー光は巨大な渦を巻いて光の粒子となり、螺旋を描いて消えて行った。 

 

「破壊ありーー」

 

 それだけを告げるビルスの前に、拳を振りかぶって紅朗さんが目の前に飛び込んでいる。

 

 強烈な右ストレートを放つ紅朗さんだけど、あっさりと乾いた音と共にビルスの右掌に掴み止められている。

 

「はぁああああああっ!!!」

 

 着地して足を踏ん張りながら紅朗さんは、ビルスに拳を押し込もうと炎のような気を高めてーー黄金の炎が火の粉になって霧散した。

 

 瞬間、黄金の髪が燻んだ金色にーー瞳孔が現れた翡翠の瞳は単なる紅い瞳に戻った。

 

 前のめりになって足から崩れる紅朗さんの身体を破壊神ビルスが、今まで使わなかった左手で掴み止めた。

 

 殺されるーー咄嗟に、そう思ったが。

 

「……なるほどね。面白いじゃない」

 

 ニヤリと笑ってビルスは気を失った紅朗さんの顔を覗き込んでいるだけだった。

 

 あれだけ凄い闘いを繰り広げたのに破壊神ビルスは、その場から一歩も動かずに紅朗さんを黙らせたーー。

 

ーー紅朗視点

 

 目を覚ますと石造りの庭園に設置されたサマーベッドに俺は寝かされていた。

 

「お、起きたみてぇだな!」

 

 悟空の明るい声に、顔を脇に向けると破壊神ビルスと悟空が並び立っている。

 

 後ろには転生者たちやクリリン達にブルマが居た。

 

 身体を起こそうとしてみるが、まったく力が入らない。

 

 というか、疲労感とダルさが半端ないーー!

 

「悟空。俺、どうなったんだ?」

 

 ビルス様の本気の気に当てられたまでは、覚えてるんだが記憶がない。

 

 すると、悟空の代わりにビルスが前に出て来た。

 

「…フン。真・超サイヤ人になった記憶が無いのが難点だが、この僕を相手にアレだけ打ち込めるんだ。何とかなるだろう」

 

 と隣のウイスに向かって告げると、ウイスもニコリと頷いた。

 

「そうですねぇ。タイミングさえ合えば、戦士として登録も考えてよかったのですが。いかんせん記憶と意識が飛ぶようでは悟空さん達の域には立てないでしょうねェ」

 

 などと言い合いながら、ウイスは悟空を見た。

 

「分かったーー。ちょっとだけ、そっちに行くぞ」

 

「助かります~! 何かあればブルマさんがいつもどおり、私に連絡をくだされば向かいますので~」

 

「ああ」

 

 ブルマがやれやれ、と首を横に振っているのを見てどゆこと?と俺は首を傾げる。

 

 え?なんで、悟空が全王の方に行くことになってるの?クリリン達も、何を納得してるの?

 

「ど、どゆことだよ?」

 

 問いかける俺に悟空がニッと笑いかけて来た。

 

「紅朗、地球のこたぁオメエにちょっとだけ任せっぞ」

 

 な、何を真面目な顔でほざいてんだ、この野郎!!

 

「…むしろ、悟空の力抜きで解決してもらいたいもんだ。元をただせばお前らの世界の人間が暴走しているんだからな。僕の悟空達に手を煩わせるんじゃない」

 

 それを言われると、何も言えないーーー!

 

 でも、俺のせいじゃないのにぃ。

 

「で、でも。俺なんかの力で何とかなるんですか?」

 

「破壊神である僕にアレだけ打ち込めるんだ、充分だろう。なぁ、お前ら?」

 

 振り返って問いかけるビルスに何故か誰一人として否定の声を上げなかった。

 

 え?ブルマさんまで?

 

 と、いうか日本から来た転生者の子ども達まで困惑気味に俺を見て頷いている……だと?   

 

 俺、そんな何かしたの?

 

 記憶も何もないから、何をしたのかさっぱり分からん。

 

「と、言っても。真・超サイヤ人に頼っているようでは話になりません。貴方には、まず超サイヤ人の状態で悟空さんの動きだけでも完璧に再現できるようになっていただかないとーー」

 

 ウイスがそう言いながらクリリンとヤムチャ、天津飯達を見つめる。

 

 これに彼らが頷いた。

 

「悟空と同じ能力を持った肉体って言うのが、さっきのでよく分かりました。確かにコイツが、あの動きを完全に再現出来たら強力な戦力になりますよ!」

 

「任せてくれ!これも世のため人のため、教師役を買って出るぜ!」

 

「紅朗は、まず武の心得を学ぶべきだな。拳を握ることーーその意味を伝えられたら、と思っている」

 

 ノリノリ、だと!?

 

 どうして、こうなった!?

 

 目を見開く俺の前に悟空が笑顔で言ってくる。

 

「紅朗!動けるようになったらブルマにあるものを渡してあっから、それ使ってくれ!」

 

「フフ、孫君のことが好きなんだったら。たぶん喜ぶと思うわよ!」

 

 明るく笑うブルマの前で悟空も嬉しそうに笑った後、青空の下に移動したウイスの肩に手を置いて真剣な顔になる。

 

「紅朗! オメエならやれると思うが、無理すんな。オラも、向こうが片付いたらこっちに戻っからよ」

 

 光に包まれ始める悟空を見て、俺はだるくて動かない体とろくに働かない口をパクパクさせて必死に声をあげたつもりだった。

 

 無理だって、俺に悟空の代わりとか、ホントに無理だって!!

 

 そんな俺の言葉を、どう受け取ったのか悟空はニッと笑って言ってきた。

 

「頑張れ、紅朗!」

 

 それだけを告げて、悟空はウイスとビルスに連れていかれた。

 

 宇宙最強の戦士が、地球から居なくなっちまったーー。

 

 ど、どうすんだよ、この先ぃいいい!!!?

 

 俺の心の絶叫を、誰か、くんでくれぇええええ!!!

 

 

 




次回も、お楽しみに( *´艸`)
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