楽しんでやってください(笑)
ーー天津視点。
セルの指先から放たれた強烈な光が俺たちのすぐ横の地面を撃ち抜いたと思ったら、爆発。
目の前には地面が迫り、凄い勢いで顔から叩き落とされていた。
視界が真っ暗になってしばらくしてから目を開けると、紅朗さんが黄金の炎のようなオーラを纏った、あの恐ろしい超サイヤ人になっていた。
「栗林、大丈夫か!?」
「う、うん。天津、アレーー!」
「ああ、紅朗さん。変身してるーー!」
あのおかしなオーラを纏った瀬留間と古井を一方的に叩き潰した、あの姿なら勝てる。
この時の俺は、そう思っていた。
だけど、違った。セルは、俺のーー俺たちの知ってるセルとは強さの次元が違ったんだ!!
「嘘、だろ?な、なんで、セルがーー!こんなに強いんだよ!?」
「な、なんで俺たち。こんな怖い所に来ちまったんだよ」
思わずヒステリックに叫ぶ飲伏に、栗林も震えている。
古井や瀬留間に見せてやりたい。本物のセルと成り代わるって、どんだけ身の程知らずなことなのか。
さっきまでの俺たちは、本物の大バカだ。
こんな悪魔みたいなヤツなのかよ。
紅朗さんの言ってた通りだ。此処は、漫画やゲームの世界じゃない。現実でーー何一つ思い通りに行かない。
魔人ブウと対峙してるクリリン達を見ても、思う。
力の差が、明らかにある。
ブウは、あの凄い3人の攻撃を前に、完全に遊んでるんだ。
ヤムチャの狼牙風風拳と天津飯の四妖拳と蹴りの連打が正面からブウとぶつかる。
「その温い攻めはどうした、ヤムチャ! 天津飯!もっと必死になるがいい!!」
魔人ブウは左右の腕だけで、2人の猛攻を軽々と防いでる。そのまま、背後に回ってるクリリンに叫ぶ。
「クリリン!先程から気を溜めているが、いつまで狙っているつもりだ!さっさと撃って来い!!」
「ーーち、ちくしょう!!」
クリリンは、ブウに見切られてるのを承知で特大の気円斬を放った。ブウは首だけを伸ばして梟のように首を180度回すと目からビームを放って気円斬を消してしまう。
「そんな攻めや技では、私に一撃当てることすら出来んぞ。貴様ら!!」
ヤムチャの左貫手と天津飯の背中から伸びた第三の腕の右正拳を選んでブウはストレートをカウンターで顔面と腹に叩き込む。
顔を打ち抜かれたヤムチャは後ろにのけ反り、天津飯は前向きに屈み込む。
更に後頭部から伸びた触覚を鞭のようにしならせて薙ぎ払うだけで、ヤムチャと天津飯が後方へ吹き飛ばされた。
背中から地面に叩きつけられたヤムチャと天津飯。ブウは彼らを見ることなく振り返ると、そこにクリリンが踏み込んでいる。
「でやぁああ!!」
右ストレートを顔に放つクリリンだが、ブウの右手にアッサリ掴み止められた。
「…ぐ!」
「フン、そんなものかね。クリリン」
左裏拳を軽く鼻先に当てるだけでクリリンは地面に叩きつけられる。
確かにブウは波動の上限までしか気を上げてないけど、あの攻撃力はおかしい。
こいつ、攻撃の際のパワーを下げてない。何が、手加減だよ。
「フフ、さてと。こちらは終わりのようだがーー!」
ブウは俺達を初めから居ないものと無視して、紅朗さんとセルに顔を向けた。
空をキャンパスのように2人の放つオーラが幾筋も線を引いて行く。
光の波紋が次々と発生し、衝撃波が生まれる。
「す、スゲェ…!?」
思わず栗林の口から出た言葉に頷いていた。
紅朗さんは、あの悪魔みたいな強さのセルを相手に戦えているんだ。
激しい拳と蹴りの応酬を繰り広げてから、セルの長い中段蹴りを左腕でガードした後、両腕で挟んでハンマー投げのように自分の頭上へ投げ飛ばした。
「アレはーー!」
「トランクスの、ヒートドームアタックだ!!」
クローントランクスの幻影が一瞬、紅朗さんの隣に立って動きをトレースして消えた。
黄金の炎が光に変わり、ドームの形を形成して強烈な光線が天頂から放たれる。
未来世界のセルを完全に仕留めた技だ。
「ほう? 中々の技だな」
魔人ブウが興味深そうに紅朗さんの技を見てる。一方でセルは不敵な笑みを浮かべて緑色の気を顔の横に構えた右手に纏わせると真横に薙ぎ払った。
「アレはーーオールクリア!」
「軍隊を壊滅させた技だ!!」
栗林と飲伏の言うとおり。あの薙ぎ払う光は、辺り一面を消しとばす最悪の技だ。
「ーーはっ!!」
セルの放った薙ぎ払う光は、紅朗さんの一撃の側面に当たると狙いが外れてセルの脇を撃ち抜いた。
セルは右手を人差し指と中指を立てて左肩の上に構えると、手裏剣のように手を伸ばして光を指の先端に凝縮して放ってくる。
あの強烈な光弾は、悟飯の左腕を潰した技だ。
対する紅朗さんは、右手を伸ばしたセルの左側に瞬間移動している。
「ーーなっ!?」
振り返ったセルの顔を強烈な右のハイキックで蹴り飛ばす紅朗さん。
あのセルが、ロケットのように遥か上空に吹き飛んでる。
上空に飛んだセルに、紅朗さんは両手を大きく広げて左右の掌に金色の光を生み出すと胸の前で手首を左右に合わせて前方に突き出す。
当然、紅朗さんの傍らにはクローンベジータの幻影が現れて動きをトレースして消える。
「ファイナルフラッシュだぁ!!!」
俺が叫ぶ中、黄金の光線が空を撃ち抜いた。
あんなの食らって無事なわけない。
そう確信させるくらいに凄い一撃だ。
だけど、セルの姿が紅朗さんの背後に現れる。
「マジかよ、瞬間移動!?」
栗林が叫ぶ中、ファイナルフラッシュを放って無防備な紅朗さんに背後から拳を打ち下ろすセル。
鈍い音が響き、目を見開くと互いに腕を交差させて拳を顔の前で止めている紅朗さんとセルの姿があった。
「中々、楽しめるじゃないか」
笑みを浮かべるセルに対し、紅朗さんは全くの無表情。
拳と蹴りを数度応酬して防ぎ切る両者だが、紅朗さんはセルのサイドキックを脇に受け流して懐に踏み込むと両手を胸の前で抱えるようにして紫がかったスパークの走る金色の光を生み出した。
「アレってーー!?」
神の気と魔の力が融合した一撃。背後にクローンピッコロの幻影が浮かび、トレースしてるから間違いない。
「ピッコロの、激烈光弾だぁああ!!」
俺達、3人の声が重なると同時に目を見開いたセルの腹にゼロ距離で放たれた大技。
上空に撃ち抜かれてるけど、地上であんなもの撃たれたら間違いなく街は壊滅してる。
セルは上空に吹き飛ばされ、全身から煙を上げながらもかすり傷しか負っていない。その顔は笑顔を浮かべてる。
「やるじゃないか、紅朗。この私に、ダメージを与えるとは。ここまでやれるとは、正直思っていなかったぞ」
目を爛々と見開いて、セルは紅朗さんを睨みつけてる。
「いい表情だな、紅朗。そうだ、強敵との闘いは楽しめなくてはならん。自分の強さが、圧倒的であると証明する為にも、な」
セルの言葉に何故か不安を感じた俺は、紅朗さんの様子を窺った。
冷徹なーー瞳孔が浮かんだ翡翠眼は、セルと似て炯々と輝き、口許が裂けるのではないかと言う程に歯を見せて笑っている。
その迫力は、まるっきりーー鬼だ。
人間じゃない。どっちも。
「ーーいつまで上から話してやがる?」
地獄の鬼のような声で、顔で、迫力で。笑ってる。ドラゴンボールの鬼なんかじゃない。
悪人を地獄の釜で茹でて食らう、鬼だ。
「…当然だろう、私と貴様ではそれほどに差がある」
セルが余裕の笑みで返すが、紅朗さんは不気味に肩を揺らして笑いながらーーゆっくりと冷徹な翡翠眼を向けて歩いていく。
セルも応えるように地面に両脚を下ろして構えた。
「…言ってくれるじゃねえか、テメェが。ガキの頃の悟飯を散々馬鹿にして真の姿を見せられただけで怯えて震えてやがったテメェが、俺を相手に楽しむだと? 笑わせやがる…!!」
アレは、笑ってるのか?怒ってるのか?どっちなんだか分からない。分からないけど。怖い。
怖くて、怖くてたまらない。
「テメェ、いつまで大物ぶってやがる? 自分より弱い奴にしか偉そうに出来ねぇクズの分際で。散々、街の人達を殺し回って。挙げ句の果てがガキに怯えて負けを認めるくらいなら自爆だ? なぁ!?」
「フン、吠えるじゃないか。ならばーー遠慮はせんぞ?」
瞬間、セルのオーラが神の気と同じ緑がかった金色に輝きはじめる。
冗談じゃない。
やっぱりこいつ、古井達を超えてるじゃないかよ!?
ビルス様から感じた重圧に近いものを感じる。
なのにーー紅朗さん。
「ようやくか? トウシロに挑発されて、ようやく本気か? だったら最初から本気で殺しにくりゃいいのに、遊んでやられてりゃ世話ねえぜ」
挑発してるんだ、あのセルを相手に。
「弱い犬ほど、よく吠えるな!!」
セルが凄い勢いで踏み込み続けた、拳が紅朗さんの腹を打ち抜いた。
間髪入れずに目を見開いて牙をむき出しにしたセルが、コメカミへ左拳を打ち、紅朗さんの膝が揺らいだところを長い足で蹴り抜いた。
たまらず、紅朗さんは片膝をついてる。
「どうだ? 私の本気の打撃はーー?」
笑うセルに対して、ゆっくりと紅朗さんは立ち上がってきた。
あの人が纏う黄金の炎の勢いが一気に爆発した。
「…チ、今ので死なないとはな」
今の、殺す気だったのか。
思わず目を見開く俺に反して紅朗さんが笑ってる。
「ようやく本気か。ようやく怒るか。ようやく殺しに来るか。のろいのろいのろい!!」
不意打ちのような紅朗さんのボディへの一撃は、凄い音と衝撃波を放ちながらセルの右手に止められてる。
瞬間だった。それまでの洗練された動きじゃない。
荒々しく、何もかもを踏み躙る暴風のような勢いで、紅朗さんは拳を繰り出す。
フォームも何もない。
ただ、ただ全身の筋肉で殴るだけ。
それだけの一撃。
ただし、めちゃくちゃ速い。
振りかぶった上半身の残像が見える程に速い。
セルの表情が、変わった。両腕を交差させて受ける。
後方へ吹き飛ぶセルを獣のような俊敏さと動きで追いかける紅朗さん。
紅朗さんが拳を振る度に、風圧で大地が裂けて溝が出来てる。拳や蹴りが地面に突き刺さると、強大なクレバスの出来上がりだ。
星が、壊れちまう。
「調子に乗るなよーー!!」
押され始めたセルも、緑がかった金色のオーラを激しく燃え上がらせた。
同時に消える2人。
凄まじい打撃音が響き渡り、空を大地を所狭しと駆け回る2人の戦士。
物凄い動きで飛び回る2人に、俺たちは全くついていけない。紅朗さんは、瞬く間に血塗れになっていく。
セルの攻撃は紅朗さんの急所を的確に射抜いているけど紅朗さんの攻撃はかわされてる。
それでも紅朗さんは退かないで、殴りつけて行く。セルに当てる時は、相打ちの時かガードの上だけだが。
「なるほど、アレが紅朗とやらの本性か。脅威的なタフさに力の差に怯えぬ怒り。まるで野に放たれた獣だな」
魔人ブウが紅朗さんの様子を見てニヤリと笑う。
なんで笑ってるんだ?
セルが余裕の表情を崩してるのに、なんで?
「素晴らしい能力だ。あのセルを本気にさせ、まだ気が上がっている…」
慌てていない。なんで?
するとブウは俺を見て来た。
「すぐに分かるさーー!」
互いに同時に仰け反りあう。また、相打ちーー。
「どうしたよ、ハンサムな顔から鼻血が出てるぜ?」
「…そんなに死にたいか?」
炯々と光る瞳で笑いながら紅朗さんは告げ、対するセルは爛々と輝く瞳で笑みをつり上がらせてる。
「死にたいか、だと? ヌケ作が、俺とテメェがしてんのは遊戯かよ? 死ぬか生きるかの時に、寝言なんぞやめろや」
「…フン。だからこそ、楽しめると思うのだが?まして私が貴様に殺されるなど、あり得ない」
紅朗さん、さっきからセルの攻撃を食らうと同時に当ててる。フットワークが使えなくなったのか?
「セルのヤツ、なんで相打ち狙いと分かってるのに紅朗さんに付き合ってるんだ?」
「何か、企んでるのかな?」
遠距離から気功波で攻めれば、脚の動かない紅朗さんは避けられない。
疑問に思ってると、ブウが応えた。
「あの変身。真・超サイヤ人は相手の戦闘力に合わせて無限に気が増大する。気功波で攻めれば、パワーを上げるだけだ。肉弾戦の方が都合が良い。もっとも、理由はもう一つの方だろうがな」
俺たちが見開くと同時に、轟音。セルと紅朗さんが相打ちしてる。
「悔しいだろう、セル。いくら真・超サイヤ人とはいえ中身は単なる素人。それだけ本気で拳を打ち込んでるのに倒れないなど、自分の攻撃を安くされてるのと同義だ。まして、自分の拳が先に当たっているのだからなーー」
ブウが、真剣な表情でセルに話しかけてる。
「特に、時間切れなどとはーーな」
その言葉が出ると同時に、紅朗さんの纏う黄金の炎がかき消えた。
瞬間、つっかえ棒が外れたようにパタリと紅朗さんは前のめりに倒れた。
「く、紅朗さぁあああんっ!!?」
俺が絶叫する中、セルはジッと倒れた紅朗さんを睨みつけている。
「ーーふざけるな。ふざけるなよ、貴様!!?」
倒れた紅朗さんを掴み上げ、セルが怒りの形相に変わってる。
「なんだ、そのザマは? アレだけ私に大口を叩いて、私の拳を安くしておいて、時間切れだと!? ふざけるのも、いい加減にしろ!!!」
だが、紅朗さんはピクリともしない。ま、マジかよ。
紅朗さんーー死んで?
セルが舌打ちと共に紅朗さんを投げ捨てる。
「ブウ! 今すぐにコイツを起こせ! 傷でも体力でも治してやれ!! 続きだ!!」
叫ぶセルにブウが肩を竦めて応えた。
「もういいだろう。お前の勝ちだ、セル」
「勝ち? 勝ちだと? こんなつまらん勝ち方が、あると言うのか!? 散々、攻撃を耐えられた挙句に、時間切れで倒れるまで倒せなかったという、この私が!!?」
「そうだ、お前の勝ちだ。素人如きに、お前が負ける訳があるまい」
「ーーブウ!!」
怒るセルにブウが肩を抑え、ゆっくり気を沈めるように告げた。
「こんな雑魚に、お前が拘る事の方が。私は我慢ならん」
今までどこかふざけてたブウが、真剣な表情で。その言葉にセルは一瞬だけ目を見開くと息を吐いて冷静な表情に変わる。
「…すまなかった」
「構わないさ。孫悟空に拘るお前らしい」
「………」
ブウは俺たちを見た後、ブルマと彼女を庇っていた16号を見つめた。
「其処の雑魚に言っておいてくれ。身の程を知れ、とな」
それだけを告げて、ブウとセルが去ろうとする。その目の前にクローン悟空ーー壱悟が立っていた。
「辞めなさい、壱悟! 殺されちゃうわよ!!」
ブルマの声に壱悟が首を横に振って構える。
「なんだ? 紛い物が、まだ用か?」
壱悟はセルではなく、ブウを睨みつけてる。ブウは瞳を鋭く細めた。
「ーー雑魚と言ったことを取り消せ、だと?」
「……」
無言で頷く壱悟に、ブウが肩を竦める。
「雑魚は雑魚だ。どれだけ力を持とうが、振り回されて垂れ流すだけの弱者を訂正する気はない」
壱悟の赤い目が鋭く細まる。ま、まさか。紅朗さんのために、アイツーー。
栗林が叫んだ。
「バカ、よせ!! 勝てっこない!! そのまま去っていってくれた方がいいって!!!」
当たり前だろ、いくらバカにされたからって。
勝ち目も無いのに挑んだら殺されちまうぞ。
「ーー何処へ行くんだ?」
その低い鬼の声が、紅朗さんから聞こえた。
かき消えたはずの黄金の炎が、再び燃え上がってる。どうなってんだよ。
「ーーコレが、真・超サイヤ人か」
「この男ーー限界は、どこだ?」
セルとブウが、立ち上がってきた紅朗さんに目を細めている。
だけど。
こっちは、もっととんでもない。
黄金の炎を纏う超サイヤ人が、鏡合わせのように紅朗さんの向かいに居るんだ!!
「ーー壱悟、アンタ!」
黄金に燃える髪、瞳孔が開いた翡翠色の瞳。コイツは、単なるクローンのはずなのに。
な、なんでーー!?
「なるほど。紅朗の気に当てられて覚醒したか。元々、妙な繋がりがあるようだからな。感覚を共有するのも容易かろう」
淡々と呟くセルに、俺たちは信じられないものを見た気になる。
コイツ、本当にさっきまで熱くなってた奴なのか?
「クローンに精神がある、というのか? 不思議な現象だなぁ」
ブウが肩を揺らして応える中、紅朗さんが前に一歩踏み出る。
「さあ、続きだーー。続きをやろうぜーー!!」
今、さっきまで倒れてた人間の眼じゃない。その紅朗さんに応えるように、ジリッと壱悟も構えてる。
コレにセルが紅朗さんに向き直ろうとして、ブウが肩を抑えて止めた。
「生憎だが、レベルの低い闘いを続けるつもりはない。コレで終わりだ」
「ーー尻尾を巻いて逃げんのかよ?」
「調子に乗るな。セルが、簡単に勝てるところをわざわざ貴様に合わせて戦っていたのも分からんのか?」
冷たい無表情になるブウに紅朗さんはニィッと笑う。
「レベルの低いヤツに合わせて戦って、不利だから逃げんのかよ?」
「ーー雑魚が!完膚なきまでに叩き潰さなければ、分からんらしいな!!」
紅朗さんの煽りにブウが怒りの表情に変わるが、セルが止めた。
「ーー私に頭を冷やせ、と言っておいてソレはないだろ。ブウ」
「…フン、セル。この男、ムカつくな」
「その点に関しては、同意する」
それだけを告げて、セルは瞬間移動でブウごと消えていった。
セル達が居なくなってから、紅朗さんはぐらっと揺れて倒れるーーところを壱悟が抱き止めていた。
「……」
「悪いな、壱悟。不出来な主人でよ」
それだけをつぶやいて、紅朗さんは完全に意識を失っていた。
「紅朗。お前の力はーーいったい?」
16号の声が、この場に居る全員の気持ちを言い表していた。
ーーーー
薄暗い研究施設のモニターで、彼はコンソールパネルに拳を叩きつけた。
「なんでだ?」
歯を食いしばり、牙を剥き出しにして凶相を浮かべている。
「なんで、クローンが至れる?僕の研究が、間違っているとでも言うのか!?魂と肉体と技があれば、至れるんじゃないのか!!?」
あの黄金の炎が、遠く感じる。
瞳孔の開いた翡翠眼が、自分を嘲笑いながら見つめているようだ。
「なんでだ。なんでーー!?ちくしょう!!」
データを打ち込み、研究を進める。
諦めはしない。あの力を手にするまではーー!!
クローン悟空が至れるならば、研究材料は沢山あるはずだ。自分が見つけられなかっただけで、きっとーー。
コンソールパネルを入力する音が、響いていた。
次回も、お楽しみに(´ー`* ))))