飛ばして頂いても支障はありませんが、16号と主人公しか出て来ませんので悪しからず(´ー`* ))))
ああ、嫌な夢だ。
最近、見なくなって久しい夢ーー。
ガキの頃、願えば叶うと信じていた。努力したら報われると思っていた。
才能って言葉があると知ったのは、いつからだろう?
自分には才能がないと知ったのは、いつからだろう?
例えば裁縫。
努力して出来るようになっても、クラスの大半は自分よりも早く終わっていて。
教師には、また君か、と呆れられた。
大人は万能じゃないと知ったのは、いつからだろ?
先生は平等じゃないって気付いたのは、いつからだ?
他の奴は知らないが、俺は多分、小学生の頃だ。
努力よりも結果を優先する教師が居た。逆に、努力してる自分を認めてくれる教師がいた。
でも、後者の方は課題が普通に出来てる大半の子どもの親にエコヒイキだと言われて飛ばされた。
人数が全てだと、知ったのはいつからだろう?
ケンカで理不尽な事をされて、口で言っても分かってもらえなくて。嫌がっても、泣いても、面白がってるヤツが居て。
そいつを殴ったら、今度は数で来られて負けて。
大半の男子が、俺が悪いと言ってくるが。見ていた女子達が味方してくれて助けられて。
そんでまた、男子からいじめられて。
小さなガキの俺は女子より男子と仲良くなりたくて、必死で仲良くなりに行っては、バカにされてやられて。
授業でも、友達でも努力しても良い結果が出ないと報われないって分かってしまったーー。
才能ーー。
多分ーー単語としては知っていた。
幼過ぎて漫画は読まなかったけど、アニメで散々描かれていた。
当時は友達よりも、何よりも大好きなドラゴンボール。
テレビではベジータが地球に攻めて来てて、悟空に落ちこぼれって言ってた。
Z戦士が皆殺しにされていて、悟空が来るまで滅茶苦茶にやられた時で、俺は当時のベジータが大嫌いだった。
だけど悟空が、言ってたんだ。
「そのおかげで、オラは地球に来ることが出来たんだ。感謝しねぇとな。それによーー」
落ちこぼれって言われて、感謝って言ってた。それだけでも、俺には衝撃だった。
「ーー落ちこぼれだって、必死に努力すりゃ。エリートを超えることがあっかもよ?」
目つきが鋭くて口許に笑みを浮かべて、孫悟空(ヒーロー)は俺に言ってくれたように思えたんだ。
ーー頑張れって。
それが一つのキッカケになって、俺はイジメに耐えられた。教師のエコヒイキも、この人はこういう人だと何処かで冷めていた。
努力だけは諦めずにしようって、耐えて来た。
でもある時だ。俺は爆発した。小学生から中学に上がる前くらいだった。
いつの間にか身体がデカくなって、クラスの中でも一番後ろにいた。
なんでキレたんだかは、覚えてない。ただ、いつもどおりにクラスの半分くらいの男子から珍獣扱いされて枝で追い回されてキレた。
もう我慢するな、って誰かに言われた気がする。
そっから、淡々と俺は泣き喚いたり、怒鳴ったりしてくる小さな同級生達を全員殴り倒した。
殴られる前に泣きながら何かを言ってたと思うけど、何も聞こえてこない。手に温かい感触があって、温い液体が付いて。
血相変えて教師が止めに来た時は、終わってた。
悟空みたいに強くなったら、俺は英雄になれるって信じてたんだよなーー。
でも、勝っても虚しいだけだった。
長年、我慢して来たのに、こんなアッサリと終われた事に喜びよりも虚しさを感じてた。
全員、木の枝を持ってて数も6人から8人くらい居たからか何も言われなかった。普段、大人しい俺がキレた事にエコヒイキ教師も、イジメてた奴らを叱っていた。
まぁ、教師の指導には何の効果もないってのは低学年で悟ったな。
幾らでもやりようがあった。幾らでもーー。例えば、他の少数の男子と仲良くする、とか。女子達と仲良くしてれば良かったんだ。
まぁ、男子はだいたい仲良くなれそうなヤツの友達か、友達の友達にイジメグループが居たんで、人付き合いが苦手の極みだった当時の俺には無理なんだが。
そんな夢をダラダラと見せられた俺は、酷く最悪の気分だった。
ーーーー
目の前には、緑のアーマージャケットを着たモヒカンマッチョのハンサムが居る。
「紅朗ーー?考え事をしていたようだが、大丈夫か?」
「へ? あ、ああ」
周りを見渡すと都を出た先の街道だった。荒野の中を真っ直ぐに通る道路には俺と16号しか歩いていない。
あのセルやブウとの戦い(ろくに覚えてないが)の後、クリリンさん達は俺より先に目覚めて、自分を鍛えがてら自分達のクローンである天津達と2人一組で行動しているとブルマさんから説明された。
意外なことに、あいつら自分からクリリンさん達に同行するって言ったらしい。
壱悟は、セル達が去ってすぐに俺の右手の球に光になって吸収されたようだ。
で、最後に目覚めた俺が波動の影響下で動ける16号とチームを組んでいるって訳だ。
「何か気がかりなことが?」
「いんや、ちょっとガキの頃のいやぁな思い出を夢に見ちまってよ。最近は、忘れてたんだが見返すと嫌な気になるもんだなぁ」
ちなみに、同窓会とかはイジメられてた奴等に普通に誘われるし前の職場の頃は時間も余裕があったから行けたんだけどねーー。
最近は職場の都合で行けないんだよなぁ。
ガキの頃は顔も合わせるのが嫌だったのに社会人になりゃ、皆さんそれなりに苦労されてるようで。ま、当時の俺は怖がられてたから、今の俺を見てみんな、意外そうにしてたよなぁ。
「…良ければ、話してくれないか?お前の話を知りたい」
「俺の?何も面白くないと思うぞ?」
16号は俺の目を見て静かに頷いた。
「知りたいのだ、お前のことを」
真面目な顔で言うなよ。茶化しづらいじゃないか。ったく、嫌じゃないがーーやりづらいなぁ。
「大した話じゃないよ、ホントに。ガキのコンプレックスっつーか。トラウマが発動しただけだよ」
イジメにあった事は、トラウマか?
教師に認められなかった事が、トラウマか?
「俺さ、ガキの頃はケンカ強くてさ。小学校の高学年から中学卒業くらいまで本気で負けた事なかったんだよ。高校では、大人しくなろうってケンカは辞めて。大学で楽しんでーー」
就職したけど職場でトラブル起こして辞職して、でも親の知り合いのコネで何とか就職できてーー。
そんでーー今みたいな超ロングな勤務をしてんだが。
「トラウマとは、なんだ?」
16号の言葉に俺は、引きつった笑みを返した。
「ガキの頃さ、孫悟空になりたかった。なれっこないのは分かってるけど、孫悟空みたいに強くて優しくて、カッコいい奴になりたかった。この世界じゃ悟空が居るのは当たり前だろうけどさ、俺の世界なら悟空は英雄さ」
「ーーーー」
16号は何も言わずに俺を見てきた。
「学校の奴等も悟空が好きで。休み時間は超サイヤ人ごっことか、普通にやってたよ」
人を助けるって、感謝されるって、凄くカッコいいと思ってた。
「そういうのを、ヒーローって呼んでた。正義の味方、とも言ってたかな。悟空は完全な正義の味方じゃないけど、ヒーローだった」
ヒーローになりたいって思っていた。ケンカは強くなったよ。だけどなぁんにも環境は変わらないし、人も変えられなかったんだよ。
「イジメられてる子を見て助けた事がある。知ってるか、16号?イジメってよ、自分より強いヤツがイジメられっ子を庇ったら、スゲー陰湿になるんだぜ?」
俺にバレないように、俺が休んだ日に、イジメをずっとソイツは受けていたんだよ。
俺がその事を知ったのは、泣きながら転校することになったイジメられっ子に告白された時だ。
「バカだよな?感謝されるって思ってた。助けてくれてありがとうって言われるってさ。だけどーー」
言われたのはありがとう、なんかじゃない。
ーー 久住くんが居たから。あの時、頼んでもないのに〇〇君を殴ったから。僕はもっと酷い目に遭わされたんだ。最後まで助けてくれないなら、最初から余計なことしないでよ。
「ーーそんな話、初めて聞いた。そらそうだ、助けてその気になってた脳天気な俺は、何も気づけなかった。気付いてやれなかった。言ってくれたら、助けられたって言ったらよ。言ったら余計に後で酷いことされるって、さ」
エコヒイキ教師の叱りなんてなんも意味ねえが、俺の腕っぷしも、なんも意味ねえんだよ。
強いヤツには弱いヤツの気持ちなんか、分かんないって言われたよな。
「ーー転校したその子とは?」
「死んだーー。他の学校でもイジメにあって、自殺したらしい。葬式で親御さんから聞いた」
そいつは、何も変わらなかった。学校を変えても、何も変わらなかったんだ。
「悟空に、なれる訳なかったんだよ。何もーー変わらないんだからよ。強くなってみても、無理なんだ。仲良くしようとしてくるヤツが皆、気持ち悪くなって。俺は結局、高校を卒業するまで友達を作らなかった」
そんな腐った夢を何で今頃、見なきゃならなかったんだかなぁ。
あの頃の自分なんざ、気に入らない事があればイキがったガキを締めてるバカだった。
髪を染めるとか、タバコを吸うなんてことはしない。
仲間と仲良くつるむことも、一切せずに。授業は真面目に受けて、真面目そうな見た目の俺にたかりに来たバカとか、ケンカを売られたら買って返り討ちにして。
仲良くなれそうなヤツも居たのかも知れないが、自分から離れていった。碌なことにならないって思ったから。
「今、思えば。あの頃の俺はカスだな。自分より弱いヤツにしかイキがれない最低のカスだ。わざと真面目な格好してケンカを売られたら買って返り討ちにして。そうやって俺は下らない時間を過ごしてたーー」
ナイフを使うヤツも居た。パイプ持ってたヤツもいた。全員に地獄を見せてやった。多分、殺す気だった。よく殺さなかったもんだ。
運が良かったんだろうな。
「紅朗、お前は自分がしてきた事を後悔してるのか?」
16号の声に上を見上げる。後悔かぁ。後悔と愚行しかしてない人生だからなぁ。
「してるさ。でもよ、んな事言っても始まらないんだよ。何もな」
「ーーフ。そうか」
「ああ、そうさ」
16号に話をして、少しだけ鬱陶しい気分が晴れた。
「ーーありがとな、聞いてくれてよ。今更、ガキの頃の話なんざ、いい大人が出来ないからさ」
「いいや、紅朗。俺は今確信した。お前ならば21号を助けてくれるーーそして、守ってくれると」
力強く言い切る16号だけど、さっきの俺の話の何処に信用できる箇所があった?
混乱と疑問に目を見開く俺に、16号は淡々と告げる。
「いずれ分かる。必ず、お前の強さを理解するものが現れる。俺のようにーー」
「ーーーー泣かすなよ、16号」
思わず鼻の奥が痛くて、熱いものが目から溢れそうになり、俺は必死で上を向いていた。
いいヤツ過ぎんだろ、テメェ。
青空は、何処までも高く澄んでいたーー。
次回もお楽しみに(´ー`* ))))