ついてこれる方、付いて来てください(´ー`* ))))
この話については感想を頂ければ、泣いて喜びます(´ー`* ))))
荒野で倒したクローン悟空は、胸の辺りから光を出すと掌に収まる緑色の硝子玉のようなものに変化して、俺の足元に転がった。
「な、なんだってんだよ…!」
光を放っている球が無性に気になり、止せばいいのに俺は球を拾い上げてしまった。
すると緑の球は俺の右掌の真ん中に嵌り込んだ。なんていうか、エネルギー吸収式の人造人間ーー19号や20号のように。
「? …な、な、なんじゃこりゃあああっ!!?」
手から抜き出そうにも、ガラス玉は力づくで取れそうにない。下手をすれば肉ごと持っていきそうだ。
「ん? オメエ、その手はどした? さっきのクローンが変わった球か」
「わ、分かんないけど。拾ってみたら掌に嵌り込んだんだ。コレって普通じゃないよな?」
悟空は真剣な表情で俺の掌を見た後、顔を覗いてきた。
「ん〜、確かになぁ。けんど、身体に何か悪いことがある訳でもねんだろ?」
「へ? それは、まあ」
体調は至って良好だ。体調はね。
「じゃ、気にすんな! 何とかなるって、多分!」
「ならないよぉおおっ! 額からドラゴンボール(四星球)生やしても「ま、いっか」で済ませちゃうアンタみたいになれるかぁあああ!!!」
未来(GT)の話だけど。
絶叫する俺を明るい笑顔で軽く笑い飛ばす悟空。
他人事だけど。このヒト人生、楽しそうだなぁ。
悟空は気を取り直すように一度瞬きをすると、目つきを少しだけ鋭くして言ってきた。
「今の地球は妙な波動で覆われてる。強い戦闘力を持った殆どのヤツは弱くされちまった上に、気を失って身体が動かなくなっちまってんだ」
「え? 気を失う?」
「ああ。オメエは知ってるだろうけど、オラにゃ地球人の仲間が居る。クリリン、ヤムチャ、天津飯にチャオズ」
その四人は、俺にはなじみ深い。
悟空の子どものころからの仲間だ。
「そんで、クリリンと天津飯が意識を失っちまってて。ヤムチャは辛うじて体が動くくれぇ。チャオズは、どういう訳だか平気みてぇだが…!」
カプセルコーポレーションの研究室で横になっているらしい。
「なんだよ。じゃ、地球には今、悟空以外に戦えるヤツがいないのか?」
「そう言うこと。悟飯やピッコロ、ベジータにブロリー、父ちゃん達は全ちゃん所で試合してっし。ビルス様やウイスさんも、その付き添いしてっからな。オメエが居てくれて助かったぞ!」
あっけらかんとした雰囲気で言うが、楽観的過ぎじゃないのか?
Z戦士が誰も闘えなくて、他のサイヤ人達も全王ってヤツのご機嫌取りしてるのなら、ホントに地球には悟空しかいない。
ブルマの話だと、クローンは全世界に居るらしい。
しかもクローンは悟空タイプだけじゃなくてフリーザ、ギニュー特戦隊、ナッパとかの敵側の奴らも居れば味方側のベジータやピッコロ、クリリンタイプもあるとか。
さっきの悟空タイプで実感したけど、それぞれのタイプが複数体存在しているようだ。
何故なら、俺も悟空タイプのクローンの肉体だしな。
「悟空。アンタがいくら強くても、一人で全世界の人を救うのは無理だろ」
同時に複数の場所を狙われたら、悟空でも一般人を守り切れるとは思えない。
神さまからの指示だか何だか知らないが、ゲームじゃないんだぞ。
「そうだな。だから、オメエが居てくれて助かってる。これはホントだ」
「…ドラゴンボールがあるからか? ブウの時にブルマに言ったみたいに犠牲者が出ても、ドラゴンボールで蘇らせて解決だっていうのか?」
急に頭の中が冷えた怒りに満ちて、胸にとごった何かが生まれた。
嬉しそうに肩を叩いてくる悟空の言葉を無視して俺は続ける。
「ブウの時、アンタに聞きたかった。なんで、あんな薄情な真似をしたんだよ? アンタの超サイヤ人3ならデブのブウに勝てたんだろ?」
俺が長年、引っかかっていたことを聞いてみる。
「人造人間の時も、ブルマの言うことを聞いてトランクスが来た時点でゲロを倒しておけばよかった。そうすればドクターゲロに17号や18号が改造されることもなかった…!」
漫画だからって言われたら、それまでだよ。
でも俺の中の孫悟空のイメージが大きく変わったのは、魔人ブウの頃からなんだ。
人造人間の時は、17号と18号が改造された存在だなんて知らなかった。だから悟空が「ゲロはまだ、何も悪いことをしていない」って言っても仕方ないと思う。
正直、自分の命を狙っているのは間違いないんだから先に倒しておけばと思ったのは事実だけど、そういう甘いと言うか優しいところが、悟空の魅力だと思ってる。
でもブウの時は違う。
地球人を皆殺しにされるって分かっていて、自分にはなんとかできる力があるのに悟空は見殺しにした。
あのとき、俺は裏切られたような気になった。
悟空が弱い人間を見殺しにするなんて、思わなかったから。思いたくなかったから。
「なぁ、悟空。今更、こんなこと聞くのは変なのかもしれないけどさ。なんで地球人を見殺しにしたんだ? 震えて逃げ惑う人たちを面白いって笑いながら殺すヤツを、なんで見逃したんだ?」
結果論から言えば、ドラゴンボールで皆蘇った。
あのまま超サイヤ人3でデブブウを倒したら、悟空もベジータも蘇らず、ブウも味方にならない。
ブウとサタンの友情の話もなかった。
「そこまで知ってんなら、オラがピッコロに何て言ったかも知ってんだろ?」
話の都合で悟空が薄情になったって言うのなら分かる。
「いつも、そうだ。アンタは悟飯とか、悟天とトランクスに任せようとする度に事態が悪化する。結果的には正しいことが多いけど、それは結果論であって。実際は出たとこ勝負ーー」
社会人になって色んなものを見て来た、知って来た。
親の期待、子どもの夢。
上司と部下の関係。
会社と社員の関係。
結果が良ければ、それで良い。
でもよ、結果が悪かったら誰が責任を取るんだ?
「親が子どもに期待するのは良いけどさ、子どもは親の道具じゃない。勝てばいいけど最悪の事態を考えてリスクを排除しないのは違う」
「………」
「セルゲームの時だってさ、悟飯がアンタを超えたのは分かったけど。悟飯の性格を考えなかったから事態が悪化したよな? 悟飯なら絶対に勝てるって確信してたのは分かるけど、結局16号を犠牲にしなければ…!」
なんだろう?
こんな話を悟空としたかった訳じゃない。
今は、世界中にいるクローンを手分けして倒すんだ。
そうしないと、手遅れになる。
冷静な頭がそう俺に言ってくるのに、口は別の事を言ってる。
「悟空!! なんでだ!? なんで、アンタは犠牲を前提に解決しようとするんだ!?」
俺の問いに真っ直ぐに俺の目を、あのクールな黒い目で見つめて悟空は応えた。
「…他に手が無かったからだ」
「!! 俺が言ったこと聞いてたのか…!?」
怒鳴ろうとする俺の前に弱ったような笑みを浮かべて悟空は告げる。
「オラの頭じゃ、それ以上の解決案が思い浮かばなかった…! ピッコロに叱られるまで、オラは悟飯ならセルに勝てるとしか思ってなかった。悟飯が闘いが嫌れぇなんは前から知ってたはずなんに…!」
悔しいのだろうか、悟空の声は僅かに震えていた。
「あん時、どう足掻いてもオラじゃセルには勝てなかった。どんだけ修行しても、無理だったと思う」
「…! じゃあ、ブウの時は? 界王神にさんざん言われてたよな? とても危険な存在だって。あの時はベジータや悟飯にも責任あるし、アンタを責めても仕方ないのかもしれないけどさ、でもーー!」
俺の言葉に悟空は空を見上げて言った。
「あん時、オラは死んだ人間だった。今みてぇにまた蘇れるなんて思ってねえ。確かに、オメエの言うとおりにオラが魔人ブウを倒しておけば犠牲は少なかったと思う。でも、どうしても若い奴らに何とかしてもらいたかった」
静かな笑みで黒い瞳で、俺をジッと見つめてくる。
俺の中の怒りやわだかまりが、それだけで消えるような不思議な感覚。
「悟飯。悟天とトランクス。オラよりも才能のあるアイツ等に、オラが居なくても地球を守れるって所を見せてほしかった。オラは本来なら、生きてる人間たちに関われねぇ。死んだ人間であるオラが生きてる人間たちのーーこの世の問題を解決しちゃダメだって思ったんだ」
「死んだ人間はドラゴンボールで蘇れるって言ったくせに自分は死んでて、二度と蘇れないから生きてる人の生活には関われないって言うのか?」
それは、おかしいだろ?
だって悟空、アンタの言い分は命は蘇らないって前提じゃないか。
死んだ人間は生きてる人間たちに関われないって、それはドラゴンボールがあったらーー。
「ホントはよ、オラは生き返るってのはよくねえと思ってんだ。勿論、悪い奴の犠牲になって死んだ人たちを蘇らせるのを反対してるわけじゃねえ。でもよ、自分が生き返るのは、なんてえか反則だろ? 難しいこたぁ分かんねぇし、上手く言えねぇけど。オラは死んじまったら、余程のことがない限り蘇ろうとは思えねえ」
そう言うと悟空は、俺の顔を真剣に見つめてきた。
「悪いけど、今はこれで納得してくれ。今回の件が解決すりゃ、幾らでも話すっからさ!」
真剣に俺を見つめてすまなそうに話しかけてくる。
この人は、どうしてこんなに欲が無いんだ?
この人は、どうして会ったばかりの俺の話を真剣に考えてくれるんだ?
この人は、俺なんかに何で謝るんだ?
ああ、でも、そうだよ。孫悟空は優しいんだ。
どんな奴にも平等に情けをかけてしまう、初対面の人も簡単に信じてしまう。お人好しで、細かいこと考えるのが苦手で、戦いが大好きで、でもーー勝つために合理的。
「? お、オメエ、どうしたんだ?」
「…え?」
鼻の奥が痛くて胸が熱い、なんだろう?
なんだか、久しぶりにこんな気分になった気がする。
成人してから、10年くらい経つけれど。こんな気持ちをずっと抑え付けて来た。
さっきの苛立ちも、今の胸の痛みも。感じ無いようにしてきた。
社会人としてみっともないから。
泣き喚いても良い歳じゃないから。
「ズルイなぁ、悟空は…!」
「…え?」
目を見開く悟空をボヤけてきた目で見て、俺は言った。
「そんな顔されたら、なんも言えねぇよ。ホント、ズリィよなぁ」
頬を伝う熱い液体を気付かないフリして、俺は悟空に笑いかける。
この人を疑っちゃいけない。
この人が間違ったとしても、この人なりに真剣に考えて出した答えなんだ。
ほかに方法があった、とか。もっと上手いやり方があった、とか。モラルが無い、とか。言うのは簡単だけど。
少なくとも、俺は悟空を。この人を信用できる。いや、信用したい。本気で、そう思った。
ーーーー
話がひと段落したところで、悟空は俺の掌を見つめる。
「それにしても、いってえ何なんだろうなぁ? その掌の球は」
「分からないけど、何かあるのかもな。よし、試しになんかやってみよう!」
考えられるのは、人造人間20号の必殺技ーー!
俺は右掌を大きく振りかぶって天に向けて突き出した。
「今だぁあああっ!!」
当然だが、何も起こらない。
違うようだな。
「あ、それじゃ、かめはめ波は撃てるのかな。まだ、試してなかったや」
思い立ったが吉日、俺は両掌を手首を合わせた状態で前方に突き出した後、腰だめにたわめて気を練る。
イメージだ、悟空のかめはめ波のイメージ。
掌に力を溜めるイメージ、小さなスパークが走り、徐々に光が集まるイメージ。
かめはめ波をずうっと見てきたこの俺が、イメージ出来ぬと思うのか!!
「…はは。オメエは、やっぱスゲえな」
悟空の声に目を開けると、掌に青白い光の球が力の渦を巻いて生まれていた。
コレがーーかめはめ波。
そういえば悟空も亀仙人のかめはめ波見て、いきなり出していたよな。
この世界の法則だと、ある程度の力があれば出来ちゃうのだろうか。
「ーーよく覚えとくといい。そいつが、超かめはめ波だ。普通のかめはめ波よりも強力な分、隙もデッケエから使える時を見極めてくれよな」
「え? あ、あれ? いきなり基本すっ飛ばして奥義出してる!?」
目を見開く俺を悟空は軽く笑って見ている。
「今のオメエのパワーなら、そうそう負けたりしねえ。よし、東の都へ行くぞ!!」
「え! ま、また実戦!? もう少しトレーニングしてからでもーー!!」
「大丈夫。オメエなら、やれるはずだ!」
悟空は、明るく笑いながら肩を掴むと瞬間移動の姿勢になる。
「そ、そんな殺生なぁあああっ!!?」
いくら身体は悟空のクローンでも、中身は単なる日本人だってこと、いい加減に分かってくれよぉ!!!
俺の絶叫は、荒野に虚しく響いて消えた。
では、次回もお楽しみに(´ー`* ))))
以下 本作のオリジナル設定
孫悟空が、多次元の自分を知っているわけ。
前作の話で悟空は様々な次元の交わる特異点という場所にある惑星で闘いました。
その際の修行で彼は、様々な歴史の自分の記憶を体感したり、未来(GT)の自分と修行しています。
本作の悟空は、メタ視点を持つと言っても過言ではないかもしれない(笑)