ドラゴンボールFZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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ではでは、お楽しみください(*´ω`*)


第20話 悟空、俺はアンタの偽者なんかに負けない

 黒に近い紫色のオーラを身に纏い、金色の粒子を弾かせている目の前の孫悟空ーーゴクウブラックの姿に俺はゾッとする。

 

 こいつはやばい。

 

 一撃で決めないとーー死ぬ!!

 

 金色のオーラを身に纏い、俺は超サイヤ人のフルパワーを引き出す。

 気を高め、両手を腰だめに構えて両手を相手に突き出した。

 

「超ーーかめはめ波ぁああ!!」

 

 俺は、超かめはめ波を全力で放った。

 

 肌で感じるのは、あの時のセルとの対峙。

 

 コイツと俺では正直言って力の差があり過ぎる。

 

 セル曰く、俺のパワーだけは本物なら超かめはめ波だって本物だ。

 

 通じてくれよ!!

 

 そんな俺の心の叫びが込められた青い光は、ブラックの目の前に現れた巨大な漆黒の空間ーー穴に吞みこまれていった。

 

「ジャネンバと同じ、空間を操る技かよ」

 

 映画で出て来た超サイヤ人3を一方的に叩き潰した邪悪な魂の塊が具現化した化け物。

 

 あれと同じ力を目の前の男は持ってるみたいだ。

 

 悟空の身体能力にジャネンバの空間操作能力。

 

 素直に化け物じゃないかと思うが、ゴクウブラックは造作もないと言わんばかりに淡々と俺達との距離を詰めてくる。

 

 俺の隣で壱悟、16号が構える。

 

「……先ほどのかめはめ波。異世界の人間。貴様から感じる孫悟空の気配は私が倒した人形どもとは質そのものが違う。貴様、何者だ? 何故本物の孫悟空の気に近い?」

 

「そんなん俺が知るかよ。本物の悟空が、超かめはめ波のことを教えてくれたからかもしれないけど」

 

「? 本物の孫悟空? 貴様、孫悟空を知っているだけでなく話したことがあるのか? ならば貴様やそっちの孫悟空のクローンが着ている山吹色の道着はヤツの差し金か」

 

 訝しげにしながらゴクウブラックは、足を止めて俺に話せと言わぬばかりに目を向けてくる。

 

「他の異世界人どものように孫悟空達の誰かに成り代わろうとしている訳ではないようだな。いいだろう、今の現状を教えてもらうぞ? 人間」

 

 そこはかとなく上から目線にイラっとくるが、まあ話すだけ話してみるか。

 

 少なくとも、コイツはその気になれば俺達三人くらいなら一瞬で殺せる。

 

 それくらいの実力差はあるだろう。

 

 21号の話、異世界から何故か集められた魂たち。

 

 生み出されたZ戦士やフリーザ軍のクローンたちの身体に詰め込まれて。

 

「……なるほど。つまり、人造人間21号とやらが此度の騒ぎを引き起こした元凶で。異世界から理由は分からぬが呼び集められたものどもは、元凶の話を真に受けてこの世界で好き放題に暴れていたというわけか」

 

 悟空と同じ顔をしているのに、佇まいが上品なせいか。

 

 なんだか、動作の一つ一つに気品を感じる。

 

 なんだ、コイツ?

 

 セルやブウみたいな取り繕った表面的な感じじゃない。

 

 動きや話し方や所作の一つ一つが、自然にこちらも背筋を正さねばと思わせるようなーー。

 

「そしてお前達は、悪の人格とやらが芽生えた人造人間や暴れている異世界の連中を止め、正気に戻すために動いているというわけか」

 

「あ、ああ。破壊神ビルス様の命令でもあるし、な」

 

「ビルス? そうか。あの破壊神ビルスが孫悟空の代わりにお前を解決役にした、か」

 

 そう言いながら俺を足先から頭の上まで見た後、ブラックは訝しげな表情を更にゆがめた。

 

「確かに精神は奴らに比べてまともなようだが、孫悟空の代わりがお前程度にできると? ビルスめ、何を考えている」

 

「そんなんこっちが聞きたいわ!!」

 

 思わず叫んだ俺に向かって黒い瞳をジッと見据えた後、ブラックは拳を握った。

 

「気に入らんな」

 

「……は?」

 

 思わず何を言われたか分からずに問い返すとゴクウブラックは淡々とした表情と口調で孫悟空の構えを取りながら言った。

 

「孫悟空ーー。ヤツは、私のこの手で打ち負かすべき相手。ヤツに勝つことこそが我が夢! その男の代わりを貴様程度の人間が一時的なものとはいえやるなど……!」

 

 漆黒の縁に紫色のオーラを身に纏い、ゴクウブラックは俺を睨みつけている。

 

「気に入らん……!」

 

「! ……ならアンタが、悟空の代わりをしてくれるのか?」

 

 瞳を鋭く細めるブラックに俺は声を上げる。

 

 こいつは悟空に拘っている、その気持ちは俺にも分かる。

 

 俺だって、悟空の代わりなんてできっこないって思ってるんだ。

 

 でも、16号や人造人間21号。

 

 彼女の本来の人格を助けられるならって。

 

「アンタが誰かは知らないし、どんな奴なのかもわからない。でも、アンタは悟空の敵じゃないんだろ? 昔はどうか知らないが、今のアンタは。なら、協力してーー!!」

 

 瞬間、俺の頬に強烈な衝撃が叩き込まれ後方へ弾き飛ばされた。

 

 たまらず尻もちをついて見上げた先には、ブラックが俺を冷ややかに見下している。

 

「っつ、何しやがる……!」

 

 殴られたことが分かった時点で、俺も戦闘態勢に入った。

 

 こいつ、言葉が通じない。

 

 いや、話し合いで終わらせるつもりがない、と言った方が正しいな。

 

「協力? 今程度の動きに反応できないものが、協力と言ったか? フン」

 

 こちらを完全に見下し侮蔑した者の眼。

 

 その眼を見ただけで、俺の中の何かが噴き立っていく。

 

ーー見下してんじゃねぇ。

 

 ああ、知っている。

 

 こういう目をした奴を俺はよく知っている。

 

 ガキの頃の俺が今までぶちのめしてきた阿呆であり、俺自身だ。

 

「貴様にとって、孫悟空の代わりという役割は何処の誰かも分からんものに縋る程度に軽いものか。そのザマでよく孫悟空の代わりなどとほざいたものだ……!」

 

 ああ、俺には重すぎるんだよ。

 

「そんな心構えでは何一つ満足に解決などできるはずもない。その道着を脱ぎ捨て尻尾を巻いて消え失せろ、半端者」

 

 言うとおりだ。

 

 英雄のーー孫悟空の代わりなんてできるわけないよな。

 

 でもよーー!!

 

「半端? テメェに、俺の何が分かる?」

 

「……フン、図星を突かれて怒ったか。半端ではあるが臆病な腑抜けではないようだな。もっとも、おまえのような人間は早死にするのが関の山だがな」

 

 上等だよ。

 

「喧嘩売ってんのか。なら、買ってやらぁ。その代わりーー後悔するなよ」

 

 咄嗟に壱悟と16号に目配せする。

 

「……!」

 

「…紅朗」

 

 コイツは、タイマンだ。

 

 手出しするんじゃねぇ。

 

 俺の心に応えるように気が力が身体に満ちていく。

 

 今の俺ならできる、怒りが無限に気を高めていくようだ。

 

 目の前の男は俺よりも遥かに強い。

 

 でも、それがどうした?

 

 相手が誰だろうが関係ないーー喧嘩を売られたなら殴り倒すだけだ……!

 

「はぁ!!」

 

 超サイヤ人2に変身する。

 

「……ほう? 超サイヤ人2に変身できるのか。なるほど」

 

 あの笑み。

 

 あの声を、この拳で消してやる……!

 

「うおらぁああああ!!」

 

 俺は怒りに吞まれたままに一気に突っ込んだ。

 

ーーーー

 

 気が膨れ上がる。

 

 それを見ながら、ゴクウブラックーーザマスは胸の内でつぶやいた。

 

(なるほど、怒りを力に変える……。破壊神ビルスが言うだけのことはあるようだ。だがーー)

 

 目の前に迫る超サイヤ人2の紅朗に向かってブラックは告げた。

 

「その程度で孫悟空の代わりが務まると思うのか?」

 

 確かにダッシュのスピード、拳の振りかぶり方、攻撃のタイミング、全て孫悟空と同じ。

 

 ガードして拳の威力も確かめるが、確かにクローン連中よりは鋭くパワーもある。

 

 だが、それでは単なる孫悟空の劣化コピーに過ぎない。

 

 駆け引きも何もない単に突っ込んで拳と蹴りをいたずらに体力の続くかぎり繰り出すだけの存在。

 

 ブラックは淡々と繰り出される連撃から右ストレートを選んで右フックでカウンターを取った。

 

 跳ね上がる顔に身体が仰け反る。

 

 血が飛び散る中、ブラックは拳を握り左ストレート、右ストレートを左右の腹に叩き込む。

 

 腹に打撃を受けたことで前のめりになった顎を強烈な右足で蹴り上げた。

 

 空中で三回転ほど縦にしてからうつ伏せに地面に叩きつけられる紅朗、それを見下しながらブラックは告げる。

 

「その程度か、人間」

 

 クローンに比べれば超サイヤ人の純粋なパワーとスピードだけで大抵はねじ伏せることができるだろう。

 

 今回程度の敵であれば超サイヤ人3程度のパワーを出せれば解決には持ち込めるであろうというのがブラックの見立てではある。

 

 だが、同時にブラックは目の前のクローンの肉体を持った異世界の人間に何かを感じ取っていた。

 

 案の定、紅朗はすぐさまに立ち上がって拳を握って構える。

 

 理性の殻ーー久住史朗という人間の奥に隠されたソレは、怒りを持って殻の奥から覗き込んで来ている。

 

 ブラックをして認められない事実であった。

 

 何故なら、その姿に至るためにブラックは自分自身のありとあらゆるものを否定せねばならなかったのだから。

 

 穢れだと信じていた非力な存在達から心の力を別けられ初めて己一人だけの力で目覚めた姿。

 

 孫悟空や自分の弟子である未来世界の孫悟飯、その他のアレに至った者たちを見てみればそれがどれだけ特別な事なのか分かるだろう。

 

 その黄金の炎を、何故こんな半端な精神と力の持ち主が秘めている?

 

 強烈な嫉妬と不快感。

 

 それが、ゴクウブラックが紅朗を言葉だけで受け入れることが出来なかった最大の要因であった。

 

 鈍い音が響き渡り、その度に紅朗は一方的にのけ反らされる。

 

 紅朗が拳を振れば振るほど、蹴りを放てば放つほどにブラックはサイドステップしながら避けて攻撃の届かない安全地帯から的確な打撃を叩き込んでくる。

 

 孫悟空に匹敵する技量、孫悟空に勝るとも劣らないセンス、孫悟空を超えようとする動き。

 

 積み重ねられた研鑽、他人を見下す態度をとりながらもその実は、誰よりも己に厳しく鍛練を積んでいる動き。

 

 その拳を食らう度に紅朗は……笑っていた。

 

 どれだけ拳を叩き込められ、脚が震えようと少し経てば拳は握れる。

 

 蹴りを放てる。

 

 目の前の男の強さは、自分よりも遥か高みにある。

 

 その男の強さに引き上げられていくのが、分かる。

 

 もう少しで、目の前の男の顔に拳を叩き込める。

 

 その確信が、紅朗の表情を鬼のようなものに変えていた。

 

「……心の力を、最初から使えるということか。ふざけた男だ」

 

 瞬間、ブラックの動きが変わった。

 

「その、鬱陶しい笑いを……!」

 

 右の廻し蹴りに左前蹴りのカウンターを腹に決めて引き下がった瞬間に追撃でブラックは踏み込むと左右の拳で顔を打ち貫き、右の上段回し蹴りで後方へ弾き飛ばす。

 

 その背後に高速移動で現れ、吹き飛ばされる紅朗の顔に向けて両腕を頭上から振り下ろして地面に叩きつけた。

 

「止めろ!!」

 

 衝撃で土煙が爆発し、空まで高く舞い上がる。

 

 瓦礫が舞う中で空から静かにブラックが見下ろす。

 

 瞬間、土煙の中心が爆発して光が舞い上がり、超サイヤ人3が目の前に現れていた。

 

「……笑いを止めろ? テメェが言うか? 人を見下したクソ野郎が」

 

 ギラついた翡翠に黒の瞳孔が浮かんだ瞳でこちらを覗く超サイヤ人3は、圧倒的なパワーを纏って口の端を吊り上げている。

 

 パワーを更に引き出すと、一気に突っ込んでくる。

 

 対するブラックも自分の身に漆黒のオーラを纏い、真っ向から迎え撃った。

 

 再びぶつかり合う拳と拳、蹴りと蹴り。

 

 先ほどまでの乱打戦よりも更に速く、そこかしこで光の波紋が世界に生まれていく。

 

 凄まじいパワーとパワーのぶつかり合いは空間に裂け目を作り、稲妻が走っていく。

 

 だが紅朗の眼は世界よりも目の前の相手を優先する。

 

 世界がどれだけ壊れようと目の前の男が平然としている限り、それは自分の力が足りない証拠。

 

 どれほどの力も、強さも、目の前の敵を倒せなければ何の意味もない。

 

 だから力を引き上げる。

 

 目の前で自分を嗤った男を叩きのめす為だけに。

 

「……紅朗。凄まじい強さだ、だがブラックと言う男は紅朗の力を更に大きく上回っている。このままでは紅朗が勝つことはできない」

 

 16号が淡々と事実を告げるように呟くと、壱悟が超サイヤ人へと変身して二人の戦いに割って入ろうと構える。

 

 しかし、16号が止めた。

 

「止せ。他ならない紅朗自身が俺たちの手助けを拒んでいる。それに……!」

 

 16号には見えていた。

 

 本物の孫悟空が見せた真の超サイヤ人、その波動が紅朗自身から漏れていることに。

 

「紅朗、お前の戦闘力はどこまで上がる?」

 

 データへと換算すればすぐに分かる。

 

 今の紅朗は、つい先ほどまで自分達と話していた紅朗の戦闘力を大きく上回っている。

 

 真の超サイヤ人ではない今の状態でも紅朗は、戦闘力の上昇を見せているのだ。

 

(紅朗、お前はいったい……!)

 

 対峙するゴクウブラックもまた、それを肌で感じている。

 

 当たり前だ、戦闘力の上昇だけではない。

 

 自分の動きに対応してきている。

 

 最初は孫悟空の動きを真似るだけで短絡的な行動しかなかった男の拳が、キレを増してパワーとスピードを上げて自分の身に迫ってきている。

 

 ハッキリと分かる。

 

 それを理解しているからこそ、ブラックは怒りの形相に変わっていた。

 

「貴様、どこまでもふざけた男だ! 貴様如きが孫悟空の代わりなどできんと言っているだろうが!!」

 

 止めた拳の威力で頬が裂ける。

 

 それを認識した瞬間にブラックは、強烈な右掌底で紅朗の顎をかち上げ、左の上段回し蹴りで後方へ吹き飛ばした。

 

 距離を置いて止まる両者。

 

 ボロボロの肉体の超サイヤ人3の紅朗と右頬から血が少し流れているブラック。

 

 両者のダメージの差は、一目瞭然。

 

「…ぶちのめす!!」

 

 それでも紅朗は、そう叫ぶと両手を腰だめに置いて強烈な青い光を練り上げる。

 

 ブラックは、それを淡々とした表情で睨みつけると身に纏う漆黒のオーラを更に激しく燃やした。

 

「うおらぁああああ!!!」

 

 両手を突き出しながら全てを飲み込む巨大な青い光線がブラックに向けて放たれる。

 

 それは、世界そのものを飲み込むほどに強烈で強大な力の奔流。

 

 超サイヤ人3フルパワーの超かめはめ波だった。

 

「……フン」

 

 ブラックの前方に自身が纏うオーラと同じ色の空間の裂け目が現れ、超サイヤ人の時と同じように超かめはめ波はブラックが生み出した穴に飲み込まれていく。

 

 完全に全てを飲み込む寸前に気配を感じてブラックが振り向くと同時、瞬間移動の構えで紅朗が現れる。

 

 強烈な中段右回し蹴りを放つ紅朗だが、その蹴りは空を切る。

 

「なにぃ!!?」

 

 叫ぶ紅朗の背後にブラックは瞬間移動で現れると左手から強烈な金と黒の色が混ざったエネルギー波を放ってきた。

 

 咄嗟に振り向いて両腕を胸の前でクロスさせて受け止める。

 

「ぬ、ぐくくく!」

 

 押し込まれる光を押しのけようと力を込める紅朗。

 

 それをゆっくりと押し返しながらブラックの黒髪が天に向かって逆立ち、瞳が灰色の光を放ち始めた。

 

「……!!?」

 

 金の混じった黒色の光線は徐々に薄紅金色の光線に変わる。

 

 同時、ブラックの身に纏うオーラも薄紅金へと変わっていた。

 

 それだけで一気に紅朗の身は地面に押し付けられていく。

 

「な、なんだと……!!」

 

 目を見開く超サイヤ人3に向かって、神の気を纏う超サイヤ人となったブラックが告げた。

 

「どうだ、美しい色だろ? これこそが人の身では至れぬ姿。神のみが辿り着くことが許された超サイヤ人。超サイヤ人ロゼだ」

 

 必死に押し返そうとする紅朗を淡々と見下して超サイヤ人ロゼと化したブラックは告げた。

 

「これが器の違いだ。思い知れ、下郎……!」

 

 更に強烈な光がダメ押しとばかりに紅朗に向かって放たれ、一気に光に飲み込まれる。

 

 瞬間、紅朗の身に纏うオーラが爆発した。

 

 黄金の炎は、超サイヤ人ロゼのエネルギー波を飲み込むように猛り狂いながら完全に消していく。

 

「神? 神がどれほどのものだ? 今の俺は超サイヤ人……! その神々さえも驚かせる最強の戦士だ……!!」

 

 一気に紅朗のパワーが引き上がった。

 

ーー そのものは千年に1人現れる伝説の戦士。

 

ーー 黄金に燃える逆立った髪に冷徹な翡翠に黒の瞳孔が浮かんだ瞳を持った超戦士。

 

 薄紅色の光を纏うブラックの前に、ニヤリと不敵に笑った黄金の炎を身に纏う鬼が居る。

 

「…意識的に真・超サイヤ人になれるというのか? 気に入らんな」

 

 黄金の髪を天に逆立て靡かせて、冷徹な瞳と不敵な笑みで紅朗が告げた。

 

「……行くぜ、神さま!!」

 

 孫悟空の踏み込みで、孫悟空の鋭さで、紅朗がブラックの前に踏み込んで来る。

 

 左ストレートを初撃に、右の上段回し蹴り、右ストレートの打ち下ろしをコンビネーションで放つ。

 

 名を超神撃拳という、孫悟空の数あるラッシュの一つ。

 

「ーー超神撃拳か。神を撃つなど、礼を弁えぬ拳の名よ」

 

 左ストレートを右手で捌いて逸らし、右のハイキックは後方へバックステップして対応。

 

 ブラックが、着地する瞬間に紅朗が右ストレートを打ち下ろしで放ってきた。

 

 接近戦。

 

 右の打ち下ろしを躱された紅朗は着々と同時に左拳を数発、ブラックの顔面に散らしてから、踏み込んでから右ストレートを放つ。

 

 紙一重で避けるブラックの瞳は鋭く細まっていた。

 

(速い!なるほど。真・超サイヤ人に成った事でセンスを磨かれ、孫悟空の動きを完璧に使えるようだな)

 

 それは新たな紅朗の境地。

 

 憧れの存在をずっと目で追って来たからこそ、孫悟空の動きをイメージできる。

 

 真・超サイヤ人ならばできる。

 

 次々と放たれる拳と蹴りの連撃を、ブラックは全て捌いていく。

 

(違う!こんなもんじゃない!! 孫悟空は、俺の英雄はーーこんな程度であるもんか!!)

 

 捌かれれば、捌かれる程に動きは更に鋭く速くなる。

 

「…ほう? なるほど。なかなか、孫悟空を知っているようだな」

 

 ブラックは鋭く目を細めながら、避けていく。

 

 右のフックを左手で捌き、次に放たれた左のショートアッパーを上体を背後に反らして顎先で見切り、伸びた顔に向けて左の上段回し蹴りを放たれるも、紅朗の背後に高速移動で回る。

 

 紅朗は蹴りを放った左回し蹴りの勢いを利用したまま、コマのように回転して自分の背面へ右の裏拳を放った。

 

 乾いた音と共に拳がブラックの左手に掴み止められた。

 

 即座に左拳をボディに放つ紅朗。

 

 右手を腹の前で構えて、拳を掴み止めるブラック。

 

 瞬間、紅朗が気を高める。

 

「ーーはぁああ!!」

 

「ぬ?」

 

 掴み止めた左拳が光り出し、力を溜めている。

 

 紅朗の背後にはベジータの紛い物が半透明で現れ、紅朗の動きをトレースして消える。

 

 瞬間、拳に溜まった光は前方に爆発し、ブラックを飲み込もうとする。

 

ーー 手応えはない。

 

 紅朗の目が、そのまま自分の左側にスライドする。

 

 高速ステップで残像を散らしながら、ブラックが移動している。

 

(今の技は、ベジータの技か? 一瞬見えた紛い物の姿は取り込んだ可能性を引き出したのだろうがーー)

 

 ブラックの高速移動に追いすがるように、紅朗もステップを激しくして追いかける。

 

 ブラックの超スピードに、紅朗はステップの際の体重移動を正確に、地面を蹴る足を巧みに交互に動かす事で食らいつき始めている。

 

(ーーこの脚捌き、孫悟空よりもスピードを重視した動きはピッコロか?)

 

 疑問に応えるようにブラックの目には一瞬だけ、紅朗の背後にクローンのピッコロが現れた。

 

「パワーもスピードも劣る貴様が。孫悟空の仲間の戦闘技術を利用して食い付いてくる、か」

 

 目の前に迫る紅朗の目を睨み返し拳を振るも、カウンターの跳び上段回し蹴りを叩き込まれてブラックは後方へ吹き飛ぶ。

 

 瞬間、左手を突き出しトランクスの幻影を一瞬背負って紅朗が叫んだ。

 

「くたばれぇええっ!!」

 

 ブラックが蹴り込まれた地面に接触すると同時に黄金の光が爆発し、天に光柱を突き立てた。

 

 柱が消えると炎と煙が舞い上がり始める。

 

 その向こうから、ゆっくりとブラックは現れた。

 

「なるほど。中々、素晴らしい動きにセンスだ。素人にしては、よく孫悟空とその仲間を研究している。おまけに、他の紛い物の力でそいつらの技まで使えるとはなーー!」

 

 かすり傷一つ、付いていない。

 

「…なるほど。コイツが神の力を持った超サイヤ人。超サイヤ人ロゼってわけか」

 

 黒の瞳孔が現れた翡翠眼を細めて紅朗が呟くと、ブラックはニヤリと冷酷な笑みを返して来た。

 

「微温いなーー紅朗とやら。紛い物なりに孫悟空の代わりを務めると騙るならば、せめてーー」

 

 一瞬で、懐に入られる。眼を見開く紅朗にブラックは灰色の瞳を歪めて笑いかける。

 

 咄嗟に右のフックを放つ紅朗の拳を紙一重で避け、強烈な右のボディを叩き込んできた。

 

「カハッ!?」

 

「ーーこのくらいは、やってみよ」

 

 前のめりになった紅朗の顎を右のハイキックで蹴り上げ、高速移動で吹き飛んだ紅朗に追い付くと右ストレートの打ち下ろしを左頬に決めて地面に叩きつけた。

 

「ーークッ!!」

 

 勢いよく叩きつけられてバウンドした紅朗は、空中て体勢を整えて二度目に迫る地面に手をつき、バク転して着地するとブラックに構えを取った。

 

 その表情は、眼を見開いて驚いていた。

 

「どうした、紅朗? 今更、俺と貴様の実力差に気付いても遅いぞ」

 

「…テメェ、今の動きは悟空。なんで、偽者が悟空の拳を使える?」

 

 それも真・超サイヤ人になって、イメージだけで悟空の動きが再現出来る自分よりも数段上のーー。

 

 壱悟の真・超サイヤ人の動きを見ていないから分からないが紅朗の感覚で言えば、明らかにブラックは悟空そのものの動きをした。

 

 本物の孫悟空そのもののような、動きを。

 

(……有り得ねぇ。偽者が悟空の拳をそのまま使えるっていうのか? 俺や、壱悟よりも悟空をーー孫悟空を知っているっていうのか?)

 

 許せない。

 

 この世界で孫悟空のことを一番知ってるのは、自分だ。

 

 其処だけは譲れない。譲ってなるものか。

 

 たとえ紛い物の肉体でも、成り行きでも。悟空から任されたのだ。

 

 信頼の証に道着を貰ったんだと、彼は自負していた。

 

 それこそがーー否、それだけが一般人であった紅朗がセルやブラックと闘う唯一の理由であった。

 

「……孫悟空は俺の中の英雄だ。たとえ俺が紛い物でも、偽者に負けてたまるかよ」

 

ーー何が足りない?

 

 戦闘力か、気か、技か、力か。

 

 真の超サイヤ人ならば出来る。その程度の差など何にもならない。圧倒的な能力で、ねじ伏せられる。

 

 黄金の炎が無限に気を上昇させる。其処に限界はない。

 

 技が足りないなら、予測対応できない程、多彩な技で攻めればどうだ?

 

ーー組み立てろ。怒りや感情に染まったり、反応に身を任せて無意識に行動して勝てるような相手じゃない。無い頭をフル回転させろ。

 

 この時、紅朗は分かっていた。相手が自分よりも遥かに上の存在であることを。

 

 このまま闘えば、確実に負けることを。

 

「なら、自分の可能性とやらに。賭けてみる、か」

 

 気を高めていく。2倍、3倍、4倍、それ以上に。

 

「ーー敵わぬと知り、身の丈に合わぬ力を超サイヤ人に求める、か。愚かだなぁ」

 

「だな。正直に言うけど、俺も気にいらねぇよ。こんな一か八かの勝負は。だけどよーー!」

 

 紅朗の不敵な笑みにブラックの目が鋭く細まる。脳裏に浮かぶのは、地球襲来時のベジータ戦。

 

 あの時、界王拳がありながらも悟空はベジータに全てにおいて負けていた。その時の悟空が何をしたか、俺は今でも鮮明に思い出せる。

 

「孫悟空なら、諦めないぜ」

 

 その言葉にブラックは一瞬だけ、微かに口許を歪めて戻すと静かに構えた。

 

 傍目には、微かに口許が引きつっただけで彼が笑みをこらえようとした事など分からないだろう。

 

「ーーよかろう。この俺の前で、その姿で孫悟空の名を語り真の超サイヤ人となるならば、それぐらいの意地は見せて貰わねば困る」

 

 薄紅色のオーラが一気に吹き上がり、ブラックの戦闘力を高める。

 

 紅朗のような倍率を段階を追って上げるようなやり方ではない。一瞬で気を桁違いに爆発させたのだ。

 

「孫悟空の代理をしたいならば、このくらいの気の増加は、やってみせるのだな」

 

「ーー自分が出来るからって、出来ない奴を見下してんじゃねぇ!!」

 

 瞬間、2人は同時に大地を蹴って接近、互いに右腕と右腕を刀のようにぶつけ合い、鍔迫り合いのような姿勢で押し合う。

 

「今の俺は、千年に1人現れるとかいう伝説の戦士だ。セルみたいに余裕ぶって油断して、本気出さなかったから負けましたーーなんて聞かねえぞ?」

 

「安心しろ、「紅朗」。手加減はもうせん。捻り潰してやろうーー真の超サイヤ人。その力ごと、な」

 

 高速移動で相手の死角を取り、文字通り隙を突くように拳や蹴りを放つ。

 

 鋭く速い高速ステップから、無数の打撃の応酬。ブラックの右ストレートに合わせて右脚を伸ばして槍のように紅朗は突き出す。

 

 左腕を腹の前で曲げてガードするブラックの背後に紅朗が移動し、逆側の脚を伸ばして突き出してきた。

 

 16号の目が見開かれる。

 

「アレは、ピッコロのソニックキックか!!」

 

「フン。取り込んだクローンの技を孫悟空の肉体で使えるのが、お前の強みか。だがなぁーー」

 

 紅朗の蹴りに合わせて、ブラックも蹴りを放ってくる。

 

「ーーっ!?」

 

 眼を見開いてガードする紅朗の腕を蹴りつけ、すれ違いざまに背後に回ると、逆側の脚を伸ばして蹴りつけてくる。

 

「その程度の技、孫悟空ならば可能性など無くとも使いこなせるわ!!」

 

 顔に放たれる蹴りを紅朗はギリギリまで引きつけた後、片脚でサイドステップを行い、身体ごと避けつつ右手を突き出す。

 

 先程まで紅朗がいた右側の空間をブラックの脚が突き抜ける。自分の右手側で隙を晒すブラックに光が放たれた。

 

「ベジータの、ビックバンアタックか!」

 

 放たれた光弾は、ブラックの肉体を飲み込む。

 

 完璧なタイミングで放たれたカウンターだが、紅朗は即座に自分の背後に振り返ると左手で黄色の光を放つ。

 

 ピッコロの幻影が重なったのが見えたことから、ピッコロの技なのだろう。

 

 放たれた光の先には、瞬間移動でビックバンアタックを回避したブラックの姿がある。

 

 彼も左手を突き出し、薄紅色の光を放ってきた。

 

 相殺して爆発する両者の光。

 

 煙が晴れた向こうには、ブラックが無数の残像を空中に作って浮かんでいる。

 

 瞬間、ベジータの可能性を引き出して紅朗が連続気弾を放つ。

 

「だだだだだだだぁ!!」

 

 無数の光弾で残像全てを消そうとする紅朗。

 

 多重残像拳を瞬く間に消して行くが、最後の1人まで不発だった事に眼を見開く。

 

「いつまで、そんな無駄な力を使っている」

 

 背後からの声に振り返ると、ブラックは淡々とした表情で立っていた。

 

「他人の技ばかり使いおって。それで本来の孫悟空の実力など引き出せると思っているのか?」

 

「……本物には、どうやっても勝てないからな。自分に出来る能力ってヤツを限界まで使いこなすしか、ないのさ」

 

 苦笑い気味に語る紅朗にブラックは瞳を微かに細めた。

 

「今のお前は、真の超サイヤ人に頼り過ぎだ。確かに超サイヤ人ロゼとなった俺に挑むならば、真の力で引き上げるという選択肢は悪くない。だが、そこからが問題だ」

 

「……え?」

 

 眼を見開く紅朗。今のセリフ、どう聞いても紅朗へのアドバイスにしか聞こえなかったからだ。

 

「構えるがいい、まずは貴様の限界を見てやる」

 

「……何処までも上から話しやがって。気にいらねぇ野郎だな、テメェは!!」

 

「安心しろ。俺も貴様が気に入らん」

 

 そう言って笑うブラックの表情は、冷酷にして邪悪なものだが。何処か最初の頃と違っている。

 

 だが、紅朗は敢えてソレを無視する。

 

 今、しなければならないのは、コイツを叩き潰すことだ。

 

 あれだけ余裕かましてるなら、一発顔に入れても文句はあるまいと、構える。

 

 頭の中に、ブラックが見せた気の解放をイメージする。

 

 何故かは分からないが、ブラックの動作一つ一つが見ただけで正解だと紅朗は知れたのだ。

 

 孫悟空の肉体で強くなるには、ブラックを真似ろと誰かに言われている気がするのだ。

 

ーー 我に至るならば強く在れ、と。

 

 気の爆発を感じ、ブラックの目が鋭く細まる。

 

「やはりな、クローンの連中と戦って分かってはいたが。異界人は、クローンの肉体がもともと出来る事を頭が認識しなければ使えない、か」

 

 気の量は一気に神を超える域だ。

 

 まだ、ロゼやブルー程ではないが、それでも神の気を吸収できた孫悟空の超サイヤ人程度の力を放っている。

 

 破壊神ビルスを相手に最後まで戦った頃の孫悟空と。

 

「気の量は、な。技も経験も、まるで足りん」

 

「…これが、真の超サイヤ人? なんだ、これ? なんで、こんなデタラメな気が、パワーが出る?」

 

 しかも、まだまだ高められると頭が認識して眼を見開いて驚く紅朗だが、同時に頭の隅に警告が感じられる。

 

 レベルを超えた力をフルパワーで使えるのは、今の紅朗では短時間がやっとだーーと。

 

(フルパワー?今の俺のパワーのことか?だけど、なんでこんなデタラメな事が出来るのに、頭は冷静なんだ?)

 

 自分の驚き、混乱する感情さえも冷徹な意思が冷ましていく。

 

 一気に駆ける紅朗の前に、ブラックも踏み込んでくる。

 

 三度、ぶつかり合うが、先までとは明らかにレベルの違う動きを両者は見せている。

 

 ハッキリ言って別人のように鋭く、速く、重く、強い。

 

 そんな打ち合いを演じながら、拳と拳、蹴りと蹴りを打ち合わせて、紅朗の中の孫悟空が完成されていく。

 

「ブラックから一打受ける度に紅朗の動きが鋭く速くなっていく。コレは、いったい?」

 

 驚く16号の隣で静かな表情で壱悟が紅朗を見ている。

 

 久住史朗の思考と孫悟空の動き超サイヤ人のセンスが、一致していく。

 

 だが、ブラックは気に入らないようだった。

 

「紅朗よ、孫悟空の動きと自分の思考がようやく馴染んで来たようだな。だが、その程度では足りんぞ!!」

 

 言うや否や、左手を突き出して薄紅の光を放つ。

 

 咄嗟に紅朗は、ビックバンアタックを放つ。

 

 ベジータの必殺技なだけはあり、光弾はブラックの放った光よりも数倍は巨大だ。

 

 だが紅朗の放った青い光弾は、ブラックの放った掌サイズの光にアッサリと撃ち抜かれて砕かれる。

 

 そのまま光は、紅朗を襲った。爆発する。

 

「な、んて弾の硬さだ…!」

 

 ガードしたはいいが、腕が痺れている。

 

 まるで鋼鉄を叩き込まれたかのような気の練度だ。

 

 痺れる腕を振りながら自分の放ったビックバンアタックがアッサリ破られたのが、紅朗にはショックだった。

 

「今のは、単なる気弾だ。技ですらない。単に気を練って高めただけだ。俺は、この気弾を通常弾として撃てる」

 

「……!!」

 

 洒落にならん威力の気弾が通常弾と変わらない感覚で撃てる、だと?

 

「如何にベジータやピッコロ、トランクスの技を使えても肝心の練度が低ければ勝てん。無駄に気を消費し、威力を高めようと真の超サイヤ人に頼って力押しするだけなら、一瞬で燃料切れだろう」

 

 そのとおりだ、と思う。今の気弾は、決して強力な訳じゃない。ただ、気の練度を高めて硬化しただけだ。

 

 その硬化された気をポイントを見極めて叩きつければ、ビックバンアタック程の強力な技も粉砕できる。

 

 効率よく実践的な技の使い方だった。

 

(一か八か、クローン取り込んでないけど。ヤムチャさんや天津飯さん達の技を使ってみるか? ブラックの野郎が言うとおり、悟空のラーニングは相当凄い。中身は俺だけど、身体はクローン悟空なんだ。やってやれないこたぁ無いはず)

 

 指導は直接受けている。だから、使えないわけではないはずだ。

 

 試したいのは、繰気弾と気功砲だ。

 

 気の硬さなら繰気弾が。技の強さなら気功砲が、斬撃なら気円斬、貫通力なら魔貫光殺砲が優れている。

 

 かめはめ波は、使い勝手や気の消費、破壊力など総合力で優るものの、コレらの技に比べて決め手に欠ける。

 

 ピッコロのクローンは取り込んであるから魔貫光殺砲も使えるはずだが、チャージに時間がかかり過ぎる。

 

 右腕をその間、全く使えない。

 

 ブラックに当てられる保証もないし、溜め切るまでに片手で戦ってやられる可能性の方が高い。

 

 気円斬は、スピードが通常弾よりも遅い。まず当たらないだろう。

 

 ならば技の出が速くて、隙の少ない繰気弾か。体力を消費するリスクはあるが強力な気功砲か。

 

「…つまらん真似はするなよ。孫悟空の代わりならばな」

 

「るせえ。んなこたぁ、テメェなんぞに言われんでも、分かってらぁ…!!」

 

「ーーそうか」

 

 ブラックがニヤリと笑った瞬間、アゴに強烈な衝撃をもらい、後方へ吹き飛ばされる。

 

ーーダッシュエルボー。

 

 ダッシュで距離を詰めながら勢いを利用して強烈な肘鉄をアゴに見舞う技。

 

 そのまま吹き飛ばされていると追撃が来る。

 

 紅朗は目眩がする眼を見開き、無理やりに気合いを入れて空中で止まる。思ったとおり、目の前にはブラックが舞空術で迫っていた。

 

「ーーんの野郎!!」

 

 拳を放とうとする俺の腹に強烈な左拳のカウンターが入れられている。

 

「ーーグ、ァアッ!?」

 

「孫悟空はたしかに負けず嫌いだ。だが、相手が眼前に迫っているからと言って行動も読まず迂闊に腕をブンブン振り回すとは。頭を使っているか、貴様?」

 

「るせえ。つってんだろがぁ!!」

 

 右ストレートを放つ紅朗だが、アッサリと首を捻って躱され右のカウンターを顔に叩き込まれる。

 

「ち、くしょう!!」

 

 凄まじい精神力で耐え、左拳を振り回して追撃を防ごうとする。

 

「その負けん気を活かせ! 相手がどんな攻撃をしてくるからを見極めろ!! その上で手数を増やして圧倒するのだ!!」

 

 攻撃を捌くブラックの表情が、徐々に余裕の無いものへと変わっている。当の紅朗は拳や蹴りを打ち返すのに必死過ぎて分かっていないが、彼の攻撃はブラックに通じ始めている。

 

「フットワークはどうした、貴様ぁ!!」

 

 攻撃を食らいながら足を踏ん張って左右の拳を返してくる紅朗に、ボディカウンターを叩き込んで前のめりになったアゴを蹴り抜く。

 

「拳を振り回すだけではない! 孫悟空の鋭い蹴り技はどうした? 軸足はフットワークで死角を狙え! 左右の脚を別々に動かすのだ!! そんな相打ち狙いのノーガードに付き合ってくれる親切な奴など、そうは居ないぞ!!」

 

 ブラックの叫びに応えるように紅朗が前に踏み込む。

 

「うるせえよ、偽者野郎がぁああ!!」

 

 瞬間、強烈な膝蹴りが腹に入り紅朗が眼を見開く。

 

「足を使えと言ってるだろうが!!手数も足りんぞ!!」

 

 後方へ首を吹き飛ばし仰け反りながら、距離が開くと紅朗は眼を見開いた。

 

「今だぁああ! 繰気弾!!」

 

 右手に集中した気を練り上げて球を作り出し、放つ。練り上げた気弾は、高速でブラックに放たれる。

 

「馬鹿者め!!」

 

 瞬間、ブラックの気弾がアッサリと紅朗の繰気弾を相殺するも、衝撃波が紅朗に届く。

 

「その技を馬鹿正直に使って何になるか!! 貴様、考えているか!?」

 

「ーーいいや、今のでいい」

 

 そう、衝撃は紅朗側に一方的に届くがブラックの気弾も消えたのだ。

 

「何ーー?」

 

 ニヤリと笑いながら紅朗はブラックに続ける。

 

「繰気弾なら、テメェの気弾を消せた。ビックバンアタックじゃ撃ち抜かれるだけだったがなぁ」

 

「…なるほど。硬い気を練り上げる実感を得る為の練習として繰気弾を選んだ、か」

 

「そういうことだ、そして……コイツがぁ!!」

 

 両手に金色の光を練り上げ、手を重ねて親指と人差し指で四角形を作り、その間からブラックを狙い撃つ。

 

「強力な気を練り上げる技ーー気功砲だぁああ!!」

 

 ブラックの背後ーー遠方に街が見えたが遅い。気弾は既に放たれた。

 

「し、しまーーっ!?」

 

「ーーフン」

 

 ブラックは自分の背後に一瞬、目をやると右手刀を構え光の剣を手から作り出し、頭上に構えてから紅朗の気弾を袈裟懸けに斬り捨てた。

 

 真っ二つに切り裂かれた気弾は、ブラックの背後に通り過ぎる際に薄れるように消えていった。

 

「ーー!」

 

「街などを気にして、神たる俺に勝てると思うか?」

 

 紅朗の全身から凄まじい汗が吹き出ている。

 

 彼自身は自覚していないようだが、息も乱れ始めた。

 

 体力と精神力が限界に来ている。視界が狭くなっているのも、それが影響しているのだ。

 

「とりあえず街を守ってくれてありがとうよ。礼を言っておくぜ。神さま」

 

「ーーフン。敵に礼を言うとは、馬鹿も休み休み言え」

 

「……せっかく礼を言ってんのに。なんてクソ野郎だ」

 

 苦虫を噛み潰したような顔の紅朗にゆっくりと、ブラックは構えを取る。

 

「お前が真・超サイヤ人になっていられるのも限界だ。紅朗よ、このまま負けるつもりか?」

 

「ーー冗談。ようやく希望が見えて来たんだ。付き合ってもらうぜ、ブラックさんよ!!」

 

 言いながら、紅朗が踏み込む。それまでの動きとは、まったくの別物だ。

 

 鋭く速い踏み込みは、壱悟さえも超えている。

 

 ブラックは鋭い紅朗の動きにアッサリと対応し腕をぶつけ合う。

 

 そこから凄まじい高速移動の位置取りと拳と蹴りの打ち合いが始まった。

 

 相手の死角に回り込んだり、懐に踏み込んで火を噴くような勢いで拳を叩きつける。5撃打ち合えば、一方的に紅朗の首が後方へ仰け反る。

 

 紅朗の拳は、ブラックにかすりもしない。

 

 完全に紙一重で躱されている。ただし、ブラックの表情は先までの笑みはなく、真剣な目で紅朗を見つめている。

 

(悪くはない。見違えるように素晴らしい攻撃だ。真の力を意識的に使えるならば。このままでも充分、だが)

 

 仰け反り、距離が開くと紅朗に向かってブラックは練り上げた薄紅色の気弾を左手から放つ。

 

 対する紅朗も両手を上下に合わせて突き出し、青い気弾を放った。

 

 今度は、完全に相殺する。

 

(ーー進化している。俺の動きと技に対応し、他人の技を吸収することで自らの動きと技を進化させている)

 

 ジッとブラックは灰色の瞳を紅朗の瞳孔が開いた翡翠眼に結びつける。

 

(コイツの限界は、何処だ? 真・超サイヤ人よ、貴様は何処まで強くなる?)

 

 不敵な笑みを浮かべて、紅朗は拳を握っている。

 

「どうだよ、神様? 少しは見直したかよ?」

 

「…取り敢えずは、合格と言っておこう」

 

「ああ?」

 

 澄まし顔で応えるブラックに紅朗の表情が歪む。

 

 瞬間、ブラックの気が膨れ上がった。

 

「ーー強くなければ、わざわざ俺が潰す価値もない」

 

「上等。泣かしてやるよ、ブラックさんよ!!」

 

 更に気を高めて拳を振りかぶる紅朗に、ブラックも構えた。

 





決着、つけらんなかったんで。次回をお楽しみに!Σ(゚д゚lll)

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