ドラゴンボールFZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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さあ、続編です。

いよいよ紅朗とブラック、紛い物と偽者の孫悟空の決着がつきます( *´艸`)

楽しんでください!(^^)!


第21話 悟空、俺はコイツに勝つぜ!

 

 世界を汚す罪深い人間どもを裁くのは、神である私の仕事だ。

 

 そして、そんな人間どもを見逃す神々もまた、罪深い。

 

 故にーー愚かな神々をまず滅ぼした。

 

 人間どもを滅ぼすという我が使命の邪魔をするならば、遠慮も容赦もない。

 

 その為の力を持つ者として、高位の神の気を持った人間の身体を自らの魂の器にした。

 

 その者の名は、孫悟空。

 

 罪深い人間の中でも、特に許されざる人間。

 

 人の身でありながら、神々をも凌駕する可能性を持つサイヤ人。

 

 界王や界王神を含めて最強であった己を真っ向からねじ伏せた、忌むべき存在。

 

 立場を弁えない幼い精神と神々の中でも最強とされる破壊神に匹敵する強大な力を持つ人間。

 

 人間の分際で神たる私を負かした唯一の存在。

 

 奴の肉体を使い、私は界王神と破壊神を皆殺しにする。

 

 その為の布石として奪った孫悟空の肉体を使いこなすために現代より未来の並列世界に渡る時の指輪を使い、そこに居た私を仲間にする事で計画を進めた。

 

 破壊神ビルスーー破壊神の中でも最も厄介な存在が、その世界には居なかったのだ。

 

 ビルスさえ居ないのならば、焦る事はない。まず界王神を皆殺しにして破壊神も葬った後、ゆっくりと孫悟空の肉体を我が魂に馴染ませるとしよう。

 

 たった一人、地球に残されたトランクスというサイヤ人の生き残りを利用して。

 

ーーーー

 

 この肉体は、素晴らしい。

 

 未だ超サイヤ人にすら変身するのは困難だが、そんな必要がない程に力が高まり、溢れている。

 

 第6宇宙の殺し屋も、第11宇宙の戦士も、この肉体ならば恐れるに足りぬ。

 

 これが、孫悟空ーー。否、まだだ。

 

 孫悟空ならば、まだまだ上がある。トランクスよ。

 

 サイヤ人の生き残りたる貴様から、じっくりと学ばせてもらうぞ。超サイヤ人をな。

 

 こうして、私は超サイヤ人を手に入れた。

 

 用が済んだトランクスやブルマという孫悟空を知る者は皆殺しにしてやろうとした。

 

 それを止めたのは、私と同じく孫悟空の肉体を持った別の世界の私だった。

 

 奴は、孫悟空の肉体を手に入れるだけでなく、罪深い人間の魂と気高い神の魂を融合させていた。

 

 しかも、トランクスの世界の孫悟空は強くなる前に病で倒れて死んでいる。

 

 その頃の孫悟空の肉体を手に入れたとて本来の私の肉体にすら力は劣るというのに。

 

 理解できぬ私に、別の世界の私は言った。

 

「孫悟空を貴様が汚すなら、私が孫悟空の名と魂を守る」

 

 孫悟空は蹂躙されていく世界を見守るだけだった神に代わり、様々な悪から人々や世界を救った英雄だと。

 

 其奴は、弱かったが私と闘う度に別人のように圧倒的な強さへと成長していった。

 

 今、思えば孫悟空の肉体だけでなく、記憶や魂を共有したが故の成長だったのであろう。

 

 更に私の計画は狂った。

 

 惑星の意思ーー否、世界の意思、だったか。全王様に消された命や世界、私が滅ぼした人間ども。そんな滅ぼされた魂が一つになり、様々な可能性を取り込む能力と意思を持ったのがヤツだ。

 

 そんな訳の分からない存在に私が仲間に引き入れた私は取り込まれ、全王様を倒すと言い出した。

 

 孫悟空の肉体を持つ私と仲間にした不死身となった私が合体した姿とやらを見せつけて来た挙句に、神たる肉体を捨ててサイヤ人の肉体をベースにした変身まで。

 

 その強さも能力も、全てにおいて私を上回っていた。

 

 結局、私は人間どもを皆殺しにすることもできず、人間の子ども達の情けで生き長らえた。

 

 皮肉を込めて笑ってやった。愚かで醜い本質をさらけ出せ、という思いを込めて。

 

 だが、子どもは言った。

 

 私のように弱くはない、と。

 

 非力で小さな人間の子どもが、神たる私に震えながら告げたのだ。

 

 傷付いている者に攻撃するほど、弱くはない、と。

 

ーー嘲笑えなかった。

 

 あの目の輝きに、神でありながら私は非力な子どもに何も言い返せなかったのだ。

 

 別の世界の私と敵対し、敗北。

 

 世界の意思に取り込まれた私の裏切り。

 

 我が計画を狂わせたのは奴らだ。だがーー。

 

 思えば、あの子どもが私を決定的に狂わせた。

 

 あの時、両親を殺された怨嗟の声を上げて憎しみで顔を歪めていれば、私はここまで狂わなかっただろう。

 

 あの時に、私ーーザマスはーーブラックは死んだのだ。

 

 あの無力で幼い、小さな子どもの手でーー。

 

ーーーー紅朗視点

 

 ようやく、まともな殴り合いが出来てきたが、一瞬でも手を緩めたら、一気に持ってかれる。

 

 さて、どうするよ。

 

 一息ついて、相手の技を見極めようと睨みつけたそん時だった。

 

「ーーっ!?」

 

 膝から力が抜けたんだ。

 

 オマケに胸の動悸が激しくなり、息がゼェゼェ、言ってやがる。

 

 咄嗟に近づいてきた地面に手を突くが、汗がポタポタと吹き出る。

 

「どうした。日も高いと言うのに、もう休みの時間か?」

 

 ブラックが悠然とした表情で言ってきやがる。この野郎、俺がこうなるのを知ってやがったな。

 

 超サイヤ人ロゼ、マジで半端ねぇが。

 

それ以上に、この野郎の戦闘スキルはどうなってんだ?

 

悟空に本当に匹敵してるんじゃないだろうな?

 

「ーーくそぉ!!」

 

 拳を握れ、勝負はまだ着いていねぇ。

 

 震える腕に、脚に叱咤して、俺は立ち上がる。

 

 孫悟空の身体だ、孫悟空の道着だ、超サイヤ人だ。それで負けるなんざ「俺」以外の理由はない。

 

 中身が悟空なら勝ってるって話だろうが。

 

「ダメだ、紅朗! 今のお前のパワーでは、ブラックには勝てない!!」

 

 勝てる勝てないじゃないんだよ。16号。退けねぇんだよ。

 

 言われてんだよ、別れ際ーー悟空に。頑張れってよ。

 

 それ以外に俺が立ち上がる理由なんざねえよ。

 

「フンーー。ならば、行くぞ」

 

 俺の目の前に現れ、拳を振りかぶってくるブラック。

 

 俺は首を左に倒して躱しながら、拳を握って打ち返す。

 

 俺の右ストレートに強烈な右の蹴り上げが、カウンターで入り俺の顎を跳ね上げた。

 

 強烈な一撃に意識が飛びそうになる。だけど、飛びそうになるだけだ。飛んじゃいない。なら、やれる。拳を握れ、打ち返せ。

 

 ヤツの動きを見ろ。

 

 ご丁寧に悟空の動きを逐一、教えてくれたんだ。期待には応えてやるよ。

 

 俺と同世代の、いや。ドラゴンボールを好きなヤツに悟空を知らない奴は居ない。

 

 教えてやんぜ、漫画やゲームに恵まれた日本人の意地と想像力をな。

 

 左の拳を放とうと振りかぶった瞬間に目の前にヤツの左拳があった。当然ガラ空きの顔面にまともにくらって仰け反る俺を、更に右のミドルキックが脇腹を襲い、うずくまる。瞬間、同じ右脚でハイキックを打たれて後方へふっ飛ばされる。

 

 ちくしょう、とんでもねぇ。

 

 俺よりも速く動いてんのに、あの野郎ーー息切れ一つ起こさない、だと?

 

「フーッ、フーッ! の、野郎ぉ!!」

 

 肩で息をするのを歯を食いしばって耐えるのが精一杯の俺を、ジッと冷徹な灰色の瞳が見据えてくる。

 

「ーーここまでが限界か? 貴様を買い被っていたようだ」

 

 淡々とした声に俺の口許に笑みが浮かび上がる。

 

 買い被りーー? テメェ、どこまで俺を見下しやがる?

 

 ダメだ。ナメられたまんま、終われるか。

 

「ーーーー!」

 

 叫ぶだけの余裕もない、んなことしてる暇があるなら呼吸する。それよりも、ヤツを見ろ、拳を見ろ、動きを見ろ、予測して対応しろ。

 

 このまま、ナメられたまんま、終わってなるものか。

 

 孫悟空に、託されてんだからな。

 

 コイツの対応は、フットワークと足技だ。

 

 拳の交換は、ほとんど同じくらいなら、ヤツのポジショニングと蹴りを放つ間合い。

 

 それをこんだけやられて見切れない?

 

 んなわけねぇ。孫悟空なら、とっくに見切ってる。

 

 俺は今、久住史朗じゃないーー孫悟空だ。

 

 出来ると信じろ、信じなきゃできやしない。

 

 ヤツのフットワークからの位置取りと、蹴りのフォームを見極めろ。

 

「ーー時間の無駄だ」

 

 そう言いながら、左右自由に変化する軸足でフットワークを刻みながら蹴りを叩き込んでくるブラック。

 

 拳にこの蹴りを入れられたら、俺には防ぎ切れないし、打ち合えない。

 

 軸足でのフットワークなんて、左右の足を違う動きをさせるなんて、頭で出来るもんじゃねえ。

 

 だけど、理解したことがある。

 

 つまりよぉーー。

 

「!? 紅朗、前に!?」

 

 16号の悲痛な声を背に受けるが、まあ見てろよ。

 

 ブラックの野郎の足技を封じるなら、コレだ。

 

 フットワークを刻もうとしていたブラックの脚が止まり、瞳が鋭く細まった。

 

「狙い通りーーだ」

 

 自分の攻撃を確実に当てるポイントに足を運び、攻撃を繰り出してくるのなら、そこへ足を運ぶ瞬間に懐に踏み込めばブラックは蹴りを放てない。

 

 拳と拳の勝負。

 

 左右の拳を放つ俺に、ブラックも左右の拳を返してくる。

 

 よし、これで五分に戻せーー。

 

「甘い!」

 

 瞬間、俺の顎がヤツのほとんど垂直に伸びた左足に蹴り上げられる。

 

 嘘だろ? こんな腕を畳んで殴り合う接近戦で蹴りを入れて来れる?

 

 のけ反る俺の首、脇腹、右足ふくらはぎに向かって連続で右の回し蹴りが放たれる。

 

 コマのように回転しながら後ろに下がる俺の前にブラックが踏み込んできた。

 

「その程度の踏み込みで、俺のーー孫悟空の動きを破れると? 笑わせるな、愚か者」

 

 腹に左ボディを叩き込まれ、右のフックで頬を打ち貫かれて首を吹き飛ばす俺の首を更に左後ろ回し蹴りがぶち込まれる。

 

「強い……! 孫悟空の動きを模倣しているのではない、あの動きと状況判断能力は正に孫悟空そのもの。今の紅朗の踏み込みも間違ってはいない。ただ、ブラックがそれを上回っているだけだ」

 

 岩に叩き込まれて頭を振りながら16号の言葉を聞き流して立ち上がると、ブラックは淡々とした表情で俺を見下ろしている。

 

「そろそろ、終わりにするか? 紅朗」

 

 浮かべていた笑みは消え、ただ失望したという無表情がそこにある。

 

ーーナメやがって。

 

 何度だって、立ち上がってやる。俺の意識が、立ち消えるその時まで。

 

ーーーー

 

 紅朗の全身を覆う黄金の炎が、消えて通常の超サイヤ人のものに変わる。

 

 上がっていた戦闘力が固定され、傍目から見ても一気に体力がなくなっている。

 

 瞳孔が消えた翡翠眼、金色に戻った逆立った髪。

 

 そのまま戦えば、間違いなく紅朗は負ける。

 

 それでも彼は退かない。

 

「ーーぶつかるのが速すぎた。真・超サイヤ人を完全に使いこなすまで、この男とは闘ってはならなかった。このまま続けることに意味はない」

 

 16号は、そう言うと戦いを終わらせようと前に出ようとして制止される。他でもない、紅朗と瓜二つの姿となっている超サイヤ人壱悟によって。

 

「ーーー」

 

「いいのか? このまま続ければ紅朗の心が折られるぞ。そうなれば、紅朗はーー」

 

 壱悟は首を横に振る。

 

 これに16号は目を見開く。強い意思を宿した翡翠の瞳に思わず息を飲み込んでいた。

 

 壱悟は、右手を上げて紅朗を指さす。

 

 紅朗の口元に笑みが刻まれているのを16号は驚愕の表情で見ていた。

 

「ーーなんという男だ。笑っていると言うのか、この状況で」

 

 それがたとえ、強がりだとしても。ハッタリだとしても、ここまで力の差があればそんなものを浮かばせる余裕などあるはずもない。

 

 あの笑みこそは、意地である。

 

 セルを本気にさせ、最後まで折れなかった紅朗の意地が、そこにある。

 

 金色のオーラが全身から噴き立ち、神(ゴッド)の域に至る。汗を掻きながらも、笑みは消えない。翡翠の瞳は爛々と輝き、拳を握っている。

 

「紅朗のパワーが、上がった?」

 

 目を見開く16号に、ブラックの表情は変わらない。

 

「フン、あきらめの悪いことだ。心をへし折らねば、分からんか」

 

 紅朗の笑みはそのままに、人差し指をブラックに指差しいった。

 

「ーーそろそろ、破ってやるよ。超サイヤ人ロゼ!!」

 

「無礼なーー。その発言、出来なかった時は覚悟していような?」

 

 互いに構える。

 

 左手を顔の前に出して、右拳を腰に置き、両足をつま先立ちにして中腰に構える。向かい合う金色と薄紅色のオーラ。気の大きさは、やはり超サイヤ人ロゼの方が一枚上手だ。

 

 だが、紅朗はそんなことに興味を示さずに構えている。

 

 互いに高速移動で踏み込む。三度始まる、火の出るような打ち合い。

 

 拳と拳、蹴りと蹴りがぶつかり合い、光の波紋がそこかしこに生み出される。

 

 空も大地も構わずに駆ける両者。

 

「破れるものなら、破ってみよ! 紅朗!!」

 

 叫びながらブラックがフットワークと共に左右の足を蹴り込んでくる。

 

 これに紅朗は自ら、ブラックの蹴りの間合いに踏み込む。

 

「無謀だ! 紅朗!!」

 

 16号が叫ぶ中、強烈な炸裂音と共にブラックの右上段回し蹴りが炸裂する。後方へ吹き飛ぶ紅朗だが、彼の顔は跳ねあがらない。

 

 逆に、顔が跳ね上がったのはブラック。

 

 壱悟と16号が共に目を見開いている中、ブラックは忌々し気に己の口許から流れ出る赤い血を拭った。

 

「……貴様っ!」

 

「へっ、どうよ?」

 

 尻もちをついた紅朗は、ゆっくりと立ち上がりながら笑いかける。

 

 瞬間、ブラックが猛烈な勢いで踏み込んできた。何が起こったのか、今度こそ見極めようと凝視する16号と壱悟の二人の前で、再び紅朗がブラックの蹴りの間合いに入る。

 

(孫悟空でもない、只の人間如きにこの俺の技が! 孫悟空の動きが破られるだと!? 孫悟空の技で!!!)

 

「ふざけるなぁああっ!!」

 

 今度は左足を振り上げ、閃光のような速度で上段回し蹴りが放たれる。16号の眼が見開かれた。

 

(紅朗の脚が、片足で自ら後方にバックステップしている?)

 

 蹴りが突き刺さると同時に右腕のガードを顔の前に上げて受け、威力を殺している。

 

 そしてーー軸と逆側の脚でブラックと全く同じフォームの上段回し蹴りを放った。その速度はブラックに見劣りしない。

 

 まともに顔に浴び、首を後方へのけ反らせるブラック。尻もちをつく紅朗。

 

 先ほどと、全く同じやり取りだった。

 

(ーー紅朗、お前はブラックの動きが孫悟空の動きだと悟った時点で吸収することを前提に動いていたのか。これでブラックは迂闊に技を出せなくなる。高度な技を打てば打つほど、紅朗に動きを吸収されてしまうからだ)

 

 16号の眼が見開かれるも、紅朗の顔には余裕の笑みはない。

 

 彼には分かっている。

 

 孫悟空の動きを一つ上回り、相手の切り札を封じてなお、攻撃の手を緩めれば負けることを。

 

「決めたぜブラック、テメェを倒して。俺は、この世界で誰よりも孫悟空を知るものとなる!!」

 

 そこからの紅朗の動きは、別物だった。

 

 文字通り全力で、紅朗はブラックを攻め立てる。一切、息継ぎを与えない程に。

 

「紅朗、いったい何処にこれほどの力を?」

 

 16号が呟くのも無理はない。

 

 真・超サイヤ人を使った反動で紅朗の肉体は限界だったはずだ。事実、真・超サイヤ人ではなく通常の超サイヤ人に問答無用で戻っている。

 

(コイツーー! 先程からこれだけ飛ばしている癖にペースが落ち無い、だと? それどころか、受ける打撃が重さを増している…!!)

 

 だが、今の紅朗は真・超サイヤ人の状態とスピードもパワーも変わらない。

 

 動きは疲れが表に出ているため、多少鈍くなってはいるが、それでも鋭さは健在だった。

 

(クローンの肉体は、積み重ねた経験までも模倣できるものではない。真・超サイヤ人が切れた時点で、コイツの基本戦闘力は通常の超サイヤ人に戻るはずだった)

 

 灰色の瞳を細めてブラックは冷静に紅朗の状態を見極めている。

 

(真・超サイヤ人の世界を吸収しているというのか? 何故だ? どうしてコイツに、そのイメージができる? 確かに真・超サイヤ人には己のイメージを具現化する心の力が要だ。だが、コイツはその理屈を知らない。知っていたとしてもできるものか。心の底から最強の姿を思い浮かべ、信じ抜くことなど。頭で考えてできることではない。コイツーー知っているのか?)

 

 最強の姿を思い浮かべられているのだ。自分にとって最強の姿を。

 

 紅朗が思い描く最強の姿。それは、当然だが久住史朗という一般人ではない。誰だ?

 

 ブラックの眼に浮かぶのは、紅朗の隣に半透明で浮かぶ「悟」マークを左胸に付けた黄金の炎を纏う黒の瞳孔が開いた翡翠の瞳の超サイヤ人。

 

(孫悟空ーーか)

 

 灰色の瞳が鋭く細まる。

 

「そうか。紅朗よ、貴様が思い描く最強の姿は孫悟空か」

 

「……当たり前だろ」

 

 聞くまでもない、と言わんばかりの紅朗にブラックの眼が細まる。

 

(いいだろう。叩き潰す!)

 

 更にオーラを纏い、突っ込んでくるブラックに紅朗も金色のオーラを纏って突っ込む。

 

 右ストレートを相殺し、続けざまに左の上段蹴りがぶつかり、ブラックの右ストレートが紅朗の顏目掛けて放たれる。上体を下げてかいくぐり、紅朗も右ストレートを返す。ブラックは顔の前に左掌を置いて掴み止めた。

 

 そこから互いに放たれる拳と蹴りの応酬。

 

 だが、徐々にブラックが押され始めている。

 

(心の力を拳に宿すーー。まさか、コイツ……!!)

 

 その境地は、孫悟空が極めたものだ。真・超サイヤ人の基本戦闘力を超サイヤ人の状態で引き出す。

 

 それはブルーや4と言った変身とは違い、神の気もサイヤパワーも関係ない。

 

 純粋な己の心の力を拳に宿すことで引き出せる可能性だ。

 

 その拳の重さは、戦闘力に関わらず相手に重さを与える。その重さは、ガードしても精神力を削るのだ。

 

「うぉおお、喰らえェ!!」

 

 大猿のように咆哮しながら、前に踏み込んで紅朗が拳を放つ。

 

 対峙するブラックは紅朗の渾身の右ストレートを紙一重で左手で捌いて避ける。

 

(ナメるなよ、この俺を勢いだけで倒せると思ったか?)

 

 同時に踏み込んで右のボディを叩きこもうとするも。

 

「ーー!?」

 

 痛烈とは言い難いが、軽く硬い左拳がブラックの顎をかちあげた。

 

(全力の右ストレートを囮にして俺に踏み込ませると同時に、左のショートアッパーでカウンターを取った?)

 

 咄嗟にバックステップして距離を置くブラックの前に肩で息をしながらも睨みつけてくる翡翠の眼がある。

 

「へへ」

 

(コイツーー! 冷静だ)

 

 真・超サイヤ人が切れて尚、紅朗の底力が発揮されている。

 

 自分が勢いに乗っているときに冷静に相手の動きと対処を見れると言うのは、才能だろう。

 

(ーー認めようではないか。この男、強いーーとな)

 

 ブラックは静かに構える。

 

 瞬間、紅朗の金色のオーラが黄金に変化する。

 

「何という奴だ…! 真・超サイヤ人を、更に引き出すと言うのか!?」

 

 冷静な16号が叫ぶ中、壱悟も歯を食いしばり、汗を頬に浮かばせ拳を振るわせながら握っている。

 

 かつてーー孫悟空の前に立った白い道着のサイヤ人は、己の限界を超えて尚ーー真・超サイヤ人へと至った。

 

 紅朗もまた、その境地へと昇りつつある。

 

「さぁ、追い詰めたぜ? 神さま」

 

 不敵な笑みを浮かべる紅朗にブラックは冷徹な灰色の瞳で見返した後、静かに瞳を閉じた。

 

「真・超サイヤ人ーー己の極限を超えた力を引き出し、最強の姿を常に浮かび上がらせる戦闘民族の真の姿。孫悟空やベジータ、ブロリーと言った名立たる戦士達が至った究極の戦士が、それだ」

 

 紅朗の冷徹な黒の瞳孔が現れた翡翠の眼が大きく見開かれる。

 

 ブラックの全身から黄金の炎が生み出されている。灰色の瞳には黒の瞳孔が拓き、翡翠眼へと変わっていく。

 

「ーーまさか、テメェ?」

 

「人間如きが至れた場所に、神たる俺が至れぬはずがあるまい?」

 

 髪は黄金に燃え上がり、ブラックは真・超サイヤ人へと至る。

 

 これに壱悟、16号が驚愕した。

 

「信じられん……! あのブラックと言う男も真・超サイヤ人に、なれるというのか? だが、何故今まで出さなかった?」

 

 自分の発言に16号は思い返す。

 

(いや、出す必要もなかったということか)

 

 冷酷な笑みを浮かべる黄金の炎を纏うブラックに紅朗も不敵な笑みを返す。

 

「面白れぇ……! 決着、つけてやらぁ!!」

 

 一気に気を爆発させ、紅朗がブラックの懐に入り込む。

 

 ブラックも真っ向から応えた。

 

 滾る黄金の炎、火を吹く鉄拳、空を裂く蹴撃、そしてーー男と男の意地。

 

「俺はぁーー! テメェに!! 真っ向から勝ってやるぅううう!!!」

 

「フン、愚かな。徒花と散れ、紅朗!!!」

 

 正拳突き同士がぶつかり合い、ブラックが後方へ下がる。

 

(拳威に押されたというのか、この俺が?)

 

 微かに目を細めるブラックの前に紅朗が黄金の龍を拳に宿して攻め込んで来ている。

 

 退くことはない。

 

 一歩でも退けば勢いに飲み込まれる。

 

 それを悟るとブラックもまた前に出る。

 

 後方へはじけ飛ぶ両者の顔。

 

 相手を上回らんとするフットワークと蹴り技、手数。

 

「何という、凄まじい勝負だ。どちらも一歩も退く気はないということか」

 

 16号が呟く中、ブラックの眼には目の前の超サイヤ人が自分が勝ちたい男そのものに見えてきている。

 

 頭のどこかで紅朗と悟空は違うと知っている。

 

 それでも、この拳の鋭さと心の強さはブラックが勝ちたい男そのものと言っても過言ではなかった。

 

 互いに拳と蹴りで間合いを弾き、強烈な肘打ちを打ち合う。

 

 互いの中央でぶつかり合うが、瞬間ブラックの反対の拳が紅朗の顔を捕らえる。

 

 後方にのけ反る紅朗に炸裂弾のような音を立ててブラックの右拳と左蹴りが顔と腹を捕らえた。

 

 ラッシュの拮抗が破れ、紅朗が後方に下がる。

 

 そこを狙ってブラックが前に突き進もうとしたその時、紅朗の身に纏う黄金の炎が激しく燃え上がった。

 

「ーー龍拳!!」

 

 気が爆発し、黄金の長い体の龍がとぐろを巻いてブラックに牙を剥いて襲い掛かる。

 

「調子にーー乗るな!!」

 

 薄紅色の炎を右拳から噴出させ、ブラックも迎え撃った。

 

 同時に互いに向かって放たれる右拳が合わさる。

 

 互いに向かって押し合う両者の全力の右ストレート。

 

 拳が合わさった瞬間に、ブラックの眼には紅朗がーー孫悟空そのものに見えた。

 

 自分を全力で孫悟空が倒しに来ているーー、そうブラックには見えたのだ。

 

「孫悟空よ……! 俺は、貴様にーー」

 

 静かに呟くブラックの黄金の炎には白銀の光が入り混じり、幻想的な輝きを放っていた。

 

「ーー貴様に勝つ!!」

 

 瞬間、ブラックの拳が押し合っていた紅朗の拳を一方的に打ち抜き、体ごと後方へ吹き飛ばした。

 

「ぐぁあああっ!?」

 

 悲鳴を上げて頭から地面に叩きつけられ、うつ伏せに倒れる紅朗。

 

「紅朗!?」

 

 16号の悲鳴が響く中、紅朗の身体に纏っていた黄金の炎が散って消え、燻んだ金色の髪と死人の肌色となって動かない。

 

「ーーはっ?」

 

 同時に拳を振り切った姿勢でブラックの黒い瞳孔が浮かんだ翡翠の瞳が見開かれる。

 

 紅朗はうつ伏せに倒れたまま、動かない。

 

 その姿を見て、ブラックは真・超サイヤ人から黒髪黒目の状態に戻る。

 

 自分の拳を見下ろし、ブラックは不快気に顔を歪める。

 

「……おい、どうしたよ?」

 

 声が聞こえ、黒目を見開いてブラックが向き直った先には、両足で立ち上がり前髪で目元が隠れた状態の紅朗が居る。

 

「貴様、まだ……!?」

 

 思わず、そんな声を上げたブラックの前にニヤリと口許だけ笑って紅朗は叫んだ。

 

「まだ? そうだよ。まだ、これからだろうがぁあああ!!」

 

 黄金の炎が再びブラックの前で弾けて舞い上がってーー消える。

 

 その叫びを最後に、紅朗は今度こそ前のめりに倒れて動かなくなった。

 

 その顔をジッと見据えてブラックは静かにつぶやいた。

 

「……フン。異界人にしてはマシな人間だ」

 

 そう言ったあと、自分の拳を見下して悔しそうに歯噛みする。

 

 この勝利に、ブラックは納得していないようだった。 

 

 そんな二人の孫悟空の姿をした存在を16号はジッと見据えて呟いた。

 

「孫悟空ーー。お前は、これほどの男達の心を捉えて離さないのだな」

 

 





次回も、お楽しみに( *´艸`)
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