楽しんでーーください(´ー`* ))))
俺の目の前で。
黄金の炎に身を包んだ超サイヤ人壱悟と、緑がかった金色の炎を纏う完全体セルの激闘が繰り広げられていた。
長い脚から放たれるセルの右の上段回し蹴りを壱悟は左腕を顔の横に置いて受ける。
衝撃波が、壱悟の肉体を突き抜けて反対側の空間に光の波紋を生み出し、雲を消し地面を掘り起こした。
「セルの野郎。なんて蹴りをしてやがる。それをーー」
思わず洩れる声。
壱悟はセルのとんでもない蹴りを真正面から軽々と受け止めたんだ。
即座に返しの右ストレートを放つ壱悟。
セルは蹴り脚を素早く元の地面に戻し、左手を顔の前で構えて拳を掴み止める。
セルの両足が衝撃で地面に食い込み、クレーターを生み出しながら鋭い瞳を細めている。
「壱悟、お前。いつの間にセルとも渡り合えるくらいになっちまったんだよ?」
声を上げながらも気付いている。
セルと最初に出会った時、壱悟は気の量が足らなかっただけで動き自体はついていっていた。
真・超サイヤ人に変身すれば敵の気に合わせて力が増していく。
一気にセルと同レベルの気を纏えるようになった壱悟なら、セルと対等に打ち合えることは不思議じゃない。
だけどーー。
これほどか!!
「本物の悟空は、もっと強いのか? この、今の壱悟より?」
とんでもねえぜ、悟空。
とんでもねえよ、壱悟。
同じ身体をもらってんのに、お前らのカッコよさは何だよ?
あのセルを相手に、一歩も引けを取らないじゃねえか。
こんな、こんなにスゲェのかよ、真・超サイヤ人!!
同時に拳をぶつけて相殺し、着地するセルと壱悟。するとーー。
「ク、クク! ハハハハハ!! 面白いぞ、壱悟!!」
セルが突然目を閉じて、大きく高笑い始めた。
これに壱悟はクールに拳を構え叫びながら突っ込む!
「……その笑い声も、聞き飽きたぜ!!」
「ならば、貴様の拳で止めてみろ!!」
迎え撃つセル。
何処までも、何処までも真っ向勝負。
凄まじい連撃を互いに向かって放ちながら、声を上げる二人。
俺の心が熱くなっちまうくらい、すげえバトルだ。見てる俺の方が、二人の勝負の熱さに参っちまうくらいに。
まったくとんでもねえ。
物凄い打撃音と共にセルの顔が後方へ吹っ飛ぶ。
壱悟の右肘ーーダッシュエルボーがセルの顎を捉えた、即座に左のアッパーカットを追撃で叩き込み空へ巻き上げる。
上空へ吹き飛ばされるセルの背後を壱悟が高速移動で取る。
いや、ダメだ! あの動きは覚えがある!!
初めてセルとやり合った時、映像が頭の中で再生される。
俺が真・超サイヤ人に変身した時、ヤツは俺に吹き飛ばされて高速移動で背後を取られて尚ーー!!
俺が声を上げるよりも速く、壱悟が右の廻し蹴りをセルの背中に向けて放った。
思ったとおり、壱語の蹴りはセルの背中をすり抜けていくーー残像拳だ。
本体は、壱悟の左側面!!
強烈な右拳を壱悟の左顔に振り下ろすセル。
「ーー惜しかったな!!」
凄まじい打撃音が再び響き渡る中、俺は目を見開いて壱悟を見ていた。
拳は壱悟の顔の左の空間を突き抜けているーー空振り? あの距離で、セルが外した? あの体勢で壱悟が躱したのか?
どちらでもない。
セルの顔が苦悶に歪んでいる。
「……ぐぅ!」
セルの拳が逸れたのは、壱悟の右の回し蹴りがセルの腹を捉えていたからだ。
壱悟は、セルが残像拳を使うことを想定していた。想定していて、動きの癖を読んで右の廻し蹴りを勢いよく空振りさせながら一回転させて自分の左側面から打ち込んでくるセルに向けて叩き込んだんだ!!
孫悟空の廻し蹴りのテクニックそのものだ!!
「……言われたとおりに止めてやったぜ」
「壱悟、貴様ーーっ!!」
動きが止まったセルに左の後ろ回し蹴りが連続で叩き込まれる。
後方へのけ反るセル。更に回転して勢いを増す壱悟。
「ぬ、ぐ、がぁ!!」
右の上段回し蹴り、左の中段後ろ回し蹴りを、次々と繰り出し先ほどまで一進一退だったセルを瞬く間に打ちのめしていく。
間違いない、アレは悟空のーー激烈連脚!!
身体をコマのように回転させながら前に突き進み、高速で左右の脚から連続廻し蹴りを放つ悟空の技だ!!
「ハァアアアアッ!!」
拳を握って感動する俺を尻目に壱悟は、一際痛烈な右の上段回し蹴りを二連続で決めて、セルを後方へ吹き飛ばした。
残像拳からのカウンターにカウンターを合わせ、一気に流れを自分のモノにしたんだ!!
「すげえ。ホントに、悟空みたいじゃないか!!」
だが、空中でカタパルトから射出されたように吹き飛ばされているセルも只者じゃない。
「舐めるなよ、壱悟!」
両手両足を大きく広げて大の字になると、見えない気を放って空で静止した。
動きが止まったセルに向かって壱悟は両手を腰だめにたわめながら青い光を練り上げている。
「ーーくたばれ、セル!!」
両手をセルに突き出しながら壱悟は、超かめはめ波を放った。
暴力的な野太い光の奔流が、セルに向かって一気に流れていく。瞬間、セルも両手を腰だめにたわめていた。
「どうかなーー?」
セルも壱悟に向かって練り上げた青い光ーー超かめはめ波を放ってくる。
二人の野太い青い光線は互いの中央でぶつかり合い、互いの光を押し返そうとせめぎ合う。
今の壱悟とセルの放ったかめはめ波は多分、俺がこの世界に来て見た中で一番強い技だ。
「…くっくくっ!!」
「ぬぅうううう!!」
互いのこめかみに皺がより、光をより太く増大させながら押し合う。
二つの押し合う光は、どんどん大きくなり一つの光の球を作り出していく。
その球を押し込んだ方が、勝利者なのだが二つの光は譲ることなく、片方が力を増大させればもう片方も増大させていく。
二人のかめはめ波の打ち合いは、根比べの様相を呈している。
「いける! いけるぞ、壱悟!! そのまま押し切れぇえええ!!!」
俺の声に応えるように壱悟の纏う黄金のオーラが、燃え上がった。
「終わりだぁああああ!!!」
一気に気を爆発させて、超かめはめ波の光が倍増する。瞬間、セルも目を見開いて笑った。
「壱悟、そして紅朗。真の恐怖をーー教えてやろう! 地球ごとーー消えてなくなれぃっ!!!」
あ、あの野郎! 地球なんて簡単に消し飛ばしちまうくらいのかめはめ波を、とんでもない位置と角度で撃ちやがった!!
仮に壱悟のかめはめ波がセルに押し負け、脇にでも避ければ地球が吹っ飛ぶ!!
だがーー壱悟も笑っていた。
「……俺を舐めるなよ!!」
二つの光線が、一気に高まって押し合う光の球が膨れ上がっていく。どっちも譲らないため、張り詰めた風船のようにどんどんと膨張していく。
おいおいおい、爆発する寸前じゃねえか!!
冷や汗を頬にかいてる二人を見るに、アレが爆発したらどっちも無事じゃ済まない!!
だが、どっちも退く気が無いのは目を見れば分かる!!
程なくして、巨大な光の塊が壱悟とセルの中央で爆発! まともにその衝撃は二人を襲った。
「ぐ、あぁああああ!!」
「ぬぅううああああ!!」
悲鳴を上げながら吹き飛ばされる二人。
上空での撃ち合いでなければ、見ている俺はおろか周囲の景色が変わったはずだ。
吹き飛ばされた二人は地面に同時に右手と両脚をついて着地した。
「……しぶとい男だ、セル」
「楽しい男だ、壱悟!」
同時に構えを取りながら二人は立ち上がる。
どちらも肩で息をしているが、壱悟の方が消耗が激しい。
真の超サイヤ人が、切れかかっている。
全身からおびただしい汗を掻き、肩を上下に激しく揺らす壱悟を見て俺は何故か確信していた。
多分、自分自身が味わってきたからだ。壱悟、時間が無いぞ。気付いてるか?
俺の心の問いかけに応えるように、セルと向き合う壱悟はコクリと俺にだけ見えるように小さく頷いた。
(紅朗さま。後は、頼みます)
俺の頭に直接話しかけて来たのは、壱悟の声。
コイツ、最初からフルパワーでやったのは俺に繋ぐためにーー!!
念話などなくても分かる、俺を奮い立たせるために壱悟。お前はーー!!
「……次で終わりにするぞ!!」
「いいだろう。来い、壱悟! 貴様の最後の一撃で私を倒してみろ!!」
両者の身体に纏うオーラが、三度燃え上がる!
壱悟の右拳に黄金の炎が宿り、セルも同じようにオーラを右拳に集中させている。
あの一撃が決まれば、倒れる!!
「……わざわざ付き合ってくれるとはな」
静かな壱悟の言葉は、自分の状態を理解しているからこそだ。
セルの野郎、壱悟が時間切れになることを知った上で真っ向勝負を選んでる。
壱悟の一撃を外すことを優先すれば、余計なダメージを負うことなく壱悟に勝てるだろう。俺と連戦することも考えているはずだ。
それなのに、後先考えてないように真っ向勝負を優先してる。
俺の疑問に応えるようにセルは笑った。
「当然だ。この私が、お前から逃げる必要が無い」
「上等……っ!!」
「フフ……っ!!」
互いに真っ向から右拳を振りかぶって相手に向かって襲い掛かる。
あふれるパワーとパワー、一気に縮まる距離。
迷いない動きとスピードに、自分の眼が大きく見開かれるのを感じる。
スローモーションに見える世界の中、二人の拳が交差すると同時白い光が視界を全て覆っていく。
鈍い打撃音が俺の耳に届く。
(ーー紅朗さま。必ず、コイツに…!!)
同時に、俺の心に声が響いた。
光が晴れていくと交差するように振り切られた拳と、同時に後方へのけ反る首と首。
セルが身に纏うオーラを解除して、膝を揺らした後で元の位置に顔を戻しながら構える。
壱悟は全身に纏う黄金の炎が消えて、燻んだ金髪と瞳孔が消えた赤い瞳。死人のような肌色の顔に戻りながら構えを取る。
それも一瞬だけだ。目にはあれほど強くあった意志の光が消えてる。
壱悟は、そのまま前のめりに倒れていった……!
「ーー壱悟ぉおおおお!!!」
うつ伏せに倒れた姿勢で、ピクリとも動かない壱悟を俺は現実ではないような感覚で見ていた。
ーーーー
「壱悟さん!!」
21号の悲鳴が響く。
セルの眼前でうつ伏せに気絶した壱悟には、彼女の声が届いていない。
「……助けなければ」
「ダメよ、16号! 貴方も傷ついてる。……私が!!」
16号が傷ついた身体を動かそうとするも21号が必死の形相で止め、覚悟を決めた顔でセルを見つめている。
そんな中、魔人ブウを相手に拳と蹴りをぶつけ合うゴクウブラックが声を張り上げた。
「16号、21号! 手を出すな!!」
「! ブラック?」
訝し気に自分を見る16号達に顔を向けず、ブラックは彼らに背を向けたまま続ける。
「セルは紅朗に任せるのだ。いいな」
「で、でも!」
それだけを言うブラックに21号が思わず声を上げようとするのを16号が止めた。
こちらを見る21号の目に向かって16号は頷く。
「ブラックの言葉に従おう。何か考えがあるようだ」
「でも、それじゃ紅朗さんが……!」
必死に抗議する21号に力強い目で16号が言った。
「紅朗を信じろ、21号。アイツは強い。あの孫悟空やブラック、セル達が認めた男だ」
16号の真剣な瞳に21号は目を見開いた後、セルと対峙する紅朗を見た。
「紅朗さんが……?」
少なくとも、今の彼には16号が言うほどの"何か"は見出せない。
何か、きっかけが要るのだろうか?
セルがジッと倒れて動かなくなった壱悟を見下ろして告げた。
「……今の戦いは、中々だった。次は、もっと素晴らしいものになるだろう」
ゆっくりと倒れた壱悟に語りかけた後、セルは紅朗に顔を向けて歩いてくる。
「ところで、紅朗。貴様は私と孫悟空達のことを知っているようだがーー」
紅朗に正対しながら、自分の前で倒れている壱語の頭を右脚で踏みつけた。
「な!?」
「……!」
21号が驚愕に、16号が憤怒に表情を歪める中、セルは16号に向けて意味深に笑いかけた後、静かに続ける。
「これは、知っているかな?」
セルは小馬鹿にした表情で超サイヤ人のまま棒立ちしている紅朗を見つめて語りかけて来た。
「ーーあの時の孫悟飯のように。腹の底から怒ってみろ、紅朗」
瞬間、セルの言葉に応えるかのように紅朗の全身から黄金の気が狼煙のようにゆっくりと吹き上がり始めた。
「く、クククク……!」
肩を揺らして引きつったような笑い声をあげる紅朗。
その笑い声に呼応するように狼煙は徐々に激しく燃え盛り、炎へと変化していく。
「紅朗……さん!」
翡翠の瞳には黒い瞳孔が現れ、金色の髪は黄金へと燃え上がる。その口が、開かれる。
「その薄汚い足どけろやーー! ムシケラが!!」
ーー低いドスの効いた声。
腹の底から響く声は、雷鳴のような唸り声。
その瞳は、何よりも冷たく恐ろしい炎を宿している。
「…ようやくか、紅朗」
嬉し気な笑みを返してセルは壱悟から足を退けると紅朗に向かって構えを取る。
21号はふと、自分の腕が揺れているのを気付く。
支えている16号に何かあったかと目を向けるも、彼の方には何の変化もない。
自分の身体が震えていることに、彼女は気付いた。
(腕がーー身体が震えてる? 紅朗さんの今の姿に?)
先ほど、壱悟が見せた圧倒的な力を誇る超サイヤ人に変身した。それは分かる。
だが、壱悟とは明らかに違う。
(何なの、この力はーー? 違う? さっきの壱悟さんと同じ姿なのにーー、どうして震えてくるの?)
壱悟との違い。その正体はーー殺気。
壱悟から放たれていたのは冷たく光る刃のような殺気と闘気。
だが、今の紅朗から放たれるのはドス黒い憎悪を織り交ぜた殺意そのものだった。
21号を震え上がらせるほどの殺意に、紅朗のその変化に満足げに笑い、セルは肩で息をしながらも気を高める。
(セル、何を考えている? 壱悟との激闘の後では、完全に回復した今の紅朗を相手にはーー!!)
16号が思わずセルを見つめる。
セルの負った傷は、決して軽いものではない。それでもセルは、傷ついた身体を再生して回復することなく、そのままに挑もうとしている。
対してーー一紅朗は、両の拳を握りしめて腰を落として構える。
「覚悟はできてるか? 俺はできてるぜ、セル」
「……」
セルも、ゆっくりと胸の高さで左手を突き出して右手を添えるように出す。
左脚を前に右脚を後ろにして体重を後方へかける。
「ーー何の覚悟かな? 紅朗」
「テメェを叩き潰す覚悟さ」
それだけを応えると、一気に紅朗はセルの目の前に現れる。
強烈なダッシュから跳び膝蹴りを顔に向けて放つ。前に出した左手で受け止めるセル。
底光りする真の超サイヤ人の瞳をジッと冷酷な光を灯した人造人間の眼が見返してくる。
瞬間、二人は同時に高速移動で姿を消して空へと移動した。
幾筋の光の線を空と言う青いキャンバスに描きながら、光の波紋と衝撃波を幾つも生み出していく。
「凄いーー! さっきのブラックさんとブウのように、スピードで相手を攪乱した上で更に打ち合ってる!!」
高速移動でも、手数でもパワーでも、紅朗はセルと互角に渡り合っている。
先ほどのような脚を止めての真っ向からの打ち合いではない、相手の急所に向けて死角から打ち込む殺意そのものの動きを紅朗はしている。
情けや容赦、迷いなど一切ない。
セルが完全に動きを止めるまで、紅朗は拳と蹴りを振るい続ける。捌かれようが、打たれようが一切関係ない。
「うぉらぁあああ!!」
鬼のような咆哮を上げながら、紅朗が拳と蹴りを放ってくる。
冷静に拳と蹴りを返しながらセルの瞳が細められる。
(コレだ。ガードをしても精神力が削られる、この感覚。間違いないーー! この男、心の力を拳に宿せる。それも誰かに教わったものではない。自分の拳を生まれながらにして持っている……!!)
壱悟の拳は、孫悟空のモノを真似て生み出した拳だ。アレも確かに強力ではあるが、ノーガードで打ち合いができるレベルだ。
だが、紅朗の拳は違う。
仮に先の紅朗と真っ向から殴り合いをしていたなら、セルに連戦する体力と精神力は無かっただろう。
体力がどれだけ削られても、痛みを超える精神力があればセルは十二分に身体を動かせる。
神の次元にまで身体能力が来たセルにとって精神力を鍛えることは必須だった。
自分の防御力に関係なくダメージを刻んでくる真の一撃ーー心の力を込めた拳は、それほどまでに厄介だった。
だがーー。
「それでいい。それでこそ、だーー。なぁ、紅朗よ」
目の前で激しく打ち合いながら、セルは旧友に語りかけるように笑った。
それから、どれだけの拳と蹴りを交換しただろう。
気の遠くなるような競合いと打ち合いの果て、紅朗とセルは脚を止めて左右に広げるスタンスを取りながら、真っ向から拳と蹴りをぶつけ合い始めた。
「ーーピョンピョン飛び回るのは辞めかよ?」
「そろそろ、決着をつけた方が良いと思ってな。時間切れなのだろう?」
あくまで余裕の笑みを崩さないセルに紅朗の目が怒りに見開かれる。
「そのいけ好かない笑い、何処まで続くかな?」
「試してみるか?」
「ーー潰す!!」
更に拳を繰り出しながら踏み込む紅朗の顔が、一瞬後には後方へ仰け反っている。
拳を左腕で捌かれた上でのアッパーカット。
ボディに左右の拳が連続で叩き込まれ、前のめりになる身体。下がった顎を長い右脚で蹴り抜かれる。
「紅朗!?」
16号の悲鳴が響く中、紅朗は上空へと吹っ飛ぶ。天頂に達する際、目の前にセルが高速移動で姿を現した。
親指、人差し指、中指を揃えて立てた左手を顔の横に持って来ると緑色の光を指先に生み出し、無防備な紅朗に放つ。
指先から放たれた光弾は一瞬で紅朗の身体を飲み込む程に巨大になり、紅朗を身体ごと地面に叩きつけ、強大な爆発を引き起こした。
「紅朗さんーーーーっ!!」
21号の絶叫が響く中で、きのこ雲が天に昇り、アッサリと地形が強大なクレーターを中心に荒野へと変わる。
「……フン」
セルは爆発の中心地を見下ろしながら、ゆっくりと地面に着地した。
呆然とする21号と16号をよそに、セルは右手と左手の付け根を顔の前で上下に合わせると腰だめにたわめる。
強烈な青い光が組まれた掌から生み出される。
先程、壱悟と撃ち合い相殺した太陽系をも消し飛ばす威力の必殺技ーーかめはめ波である。
「ーーセル。アレだけのダメージを負った体で、まだコレだけの気を練り上げられるのか」
「信じられない…! コレが、本気のセルなの?」
ダメージを負えば負う程に、セルのパワーが引き上げられている。壱悟しかり、紅朗しかり。
真の超サイヤ人と闘い、ダメージを負う。
体力や精神力が削られる代わりに、潜在能力が引き出されている。
16号には、そう見えた。
「紅朗さんーーっ!」
21号の声に思考を中断して前を見ると、きのこ雲を吹き飛ばしながら青い光が上下に組まれた紅朗の掌の中で輝きを放っている。
「かぁー、めぇー、はぁー、めぇー……っ!!」
紅朗もまた、体力はとっくに限界。唯一、身体を支えている精神力も意識が遠のき始めているのを感じる。
(保って全力のかめはめ波1発分、か)
生み出した光を練り上げながら、紅朗は自分の状態を理解した上でセルに顔を向ける。
下手にスカしたり、躱したりすれば地球が消えるほどのパワーを放つセルに、真っ向から打ち負かす以外に選択肢はない。
確実に勝たなければならない場面だが、精も根も尽き果てるギリギリ手前だ。
壱悟の頑張りの後で情けないが、今の紅朗ではここまでが精一杯だった。
だからーー。
「…なるほど。紅朗よ、貴様は確かに恐ろしい男だ」
練り上げられた青い光に、赤いモノが混じり始める。赤は徐々に徐々に青を塗り替えて行き、やがて真紅へと変わっていった。
限界でも、構わない。
彼の中にはいつだって、最強のサイヤ人が居る。そのサイヤ人が使う最強の技が、コレだ。
「10倍ーーっ!!」
この技こそ、紅朗が知る最強の中の最強の技。長い黒髪に赤い体毛の生えた剥き出しの上半身になった悟空が使う最強の技。
「なるほど、10倍かめはめ波か。ーーだが、紅朗よ。その技を撃てるのか?」
静かなセルの言葉に紅朗の瞳孔が開いた翡翠眼が細められる。
赤い光は安定せずに、紅朗の両手から力を溢れさせ彼を飲み込もうとしているように見える。
力が安定せずに暴走している。
紅朗は知らない。
この世界の悟空も、その技を使いこなすのには未来時空の自分とシンクロしなければならなかった。
それほどの、技なのだ。
「…どうやら、無理なようだな。拍子抜けさせてくれる」
失望したようなセルの言葉に紅朗の頬から汗が一雫流れていく。このままでは、本当に紅朗は生み出した10倍かめはめ波のエネルギーを暴発させて自爆してしまう。
(参った、セルはともかく。このままじゃ、皆を巻き込んじまう。まさか一回こっきりのメガンテになるとはな)
皮肉に笑いながら、紅朗はセルを見る。
せめてセルだけでも倒さねば、ならない。今の自分の命をくれてやるのだ、それぐらいはできるはずだ。
(出来なかったら、悪いな。16号、21号。生き延びろよ)
鋭く眼差しを細め、笑みを浮かべる紅朗。静かにセルが瞳を細めた後、両手を紅朗に突き出した。
「波ぁあああっ!!!」
強烈な青い光が赤い光を放つ紅朗を飲み込もうと迫る。
コレをブラックと打ち合いを続けるブウがニヤリと横目に見て笑った。
「決める気か、セル」
「ーー紅朗!!」
同時、ブラックの目が見開かれて紅朗を振り返る。
抱えた赤い光を練り上げながら、紅朗はセルの放った光に一瞬で飲み込まれた。
ブウが勝ち誇ったように笑みを強くしてブラックに語りかける。
「所詮、あの程度だ。セルを相手によくやった方だろう。もっとも、最後が自爆とは情けないがな」
ブラックは何も言わずに光に飲まれた紅朗を見つめる。
否、光は紅朗の立っていた場所から動かない。
赤い光の球が、押し流そうとする青い光線をーー光の奔流を堰き止めている。
セルの顔がニヤリと歪む。
「押し切れん、か。流石だな、真・超サイヤ人。流石10倍かめはめ波ーー。だが、時間切れまで粘ったところで結果は同じだ。暴発するだけの10倍かめはめ波など、凝縮された技に敵うはずもない」
黄金の炎を吸収しながら赤く赤く紅く輝く光の球に向けて、ゆっくりと青い気を押し込みながら、セルは続けた。
「お前一人で、その技を使いこなせると思った。その思い上がりをあの世で悔いるがいい」
あまりの力と力のぶつけ合いに、21号や16号では止められない。ブラックも、自分と互角のブウを振り切って紅朗を助けることは無理だろう。
絶望感が一気に高まる中で、紅朗が笑う。
「く、ククク。セル、テメェなんか勘違いしてねぇか?」
「ーー何?」
見開かれたセルの目には、紅朗の背後でゆっくりと立ち上がる燻んだ金髪に赤い目をした山吹色の道着を纏うクローン悟空が居た。
「壱悟、だとーー!? まさか、貴様ら!?」
驚愕に表情を歪めるセルを置いて、壱悟が黄金の炎を身に纏う。
透き通るような美しい肌、黄金に燃える髪、翡翠に黒の瞳孔が現れた瞳へと変化する。
紅朗の隣にゆっくりと歩み寄り、立つ。
壱悟は10倍かめはめ波を構える紅朗の両手を包み込むように反対側から鏡写しに上下に手を合わせて構える。
二人の真・超サイヤ人の呼吸が一つに、二つの黄金のオーラが一つになり、膨張するだけだった赤い光の球が一気に凝縮されて安定する。
「二人でなら、抑えられると? そこまで考えた上で、貴様!?」
「買い被んなよ。俺に、んな頭はねぇ。だがよ?」
即座に否定する紅朗の後を壱悟が引き継ぐ。
「紅朗さまが足りないならば、俺が補う。それだけだ」
「つーわけだ。残念だったな、セル」
目を見開くセルに向かって、二人の真・超サイヤ人が同時にシンクロして両手を突き出した。
瞬間、赤いかめはめ波が、セルの放ったかめはめ波を消し飛ばしてセルの眼前に迫る。
「ーーっ!?」
「「10倍ーーかめはめ波ぁあああっ!!!」」
二人の真・超サイヤ人孫悟空の一撃が、一気に世界を撃ち抜いていった。
「…そ、そんな?」
「今の一撃は、紅朗と壱悟の二人の限界を明らかに大きく超えていた」
驚愕に染まる二人の人造人間の前で、セルの放ったかめはめ波を消し飛ばした二人の超サイヤ人は、今度こそ力尽きて前のめりに倒れ気絶した。
ブラックがニヤリと笑みを浮かべて、紅朗と壱悟を見つめる。
「そうだ。それでこそ、俺の隣に立つ資格がある」
「……まさか、セルのかめはめ波を正面から返すとはな。しかも、一人では到底使いきれぬ10倍かめはめ波を使った上で、か」
ブラックの隣でブウもまた、唸るように倒れ伏した二人の超サイヤ人を見つめる。
視線をそのままに、ブウは呟いた。
「それで、何点だった?」
その言葉が誰に向けられたものか、21号と16号には分からずに首をかしげる中、ブラックは静かに視線をブウに戻すと、彼の後ろに立っている異形を睨みつけた。
彼の視線を追って21号と16号も笑みを浮かべる端正な顔立ちの異形を見つけた。
「…ま、まさか。あのタイミングで、避けた?」
「間違いない。方法は分からないがセルは紅朗と壱悟のかめはめ波から、逃れた」
あんなタイミングで、アレだけの技を完璧に避けるなどあり得ない。だが、セルはソレを難なくこなしたのだ。
「80点、と言ったところだ。まずまず、楽しめた」
「…甘い採点だな? 二人がかりなんだ、もう少し下げたらどうだ?」
「いや、充分だ。私は贔屓はしない、良くも悪くもな」
肩を竦めてブウに返しながら、セルはブラックを見つめる。
「ブウ、私は満足したが。貴様はまだか?」
「…いや。コイツとの勝負より、異世界の奴等の方が気になる」
ブラックから背を向けてブウはセルに向き直った。
コレにブラックが灰色の瞳を細める。
「貴様ら、転生者の居場所を知っているのか?」
その言葉にセルと並んだブウが振り返りながら肩を竦めてみせる。
「さあ? テキトーに探すさ。お前らと組むのだけは嫌だからな」
「…フン」
腕を組むブラックにブウが笑いかけた後、セルが告げてきた。
「では、また会おう。孫悟空に連なる者どもよ」
それだけを告げ、セルとブウは瞬間移動で場を去ろうとしたーーその時。
「……!」
セルに向かって強烈な赤黒い気弾が放たれる。
瞬間、セルはそれを片手で弾き飛ばした。
鋭く目を細めるセルとブウ、気弾を放った主を睨みつけるゴクウブラックと16号。
21号は目を見開いて、空に浮かぶ邪悪な笑みを浮かべた悟空クローンの肉体の持ち主・折戸修二を向く。
「折戸…さん」
その背後には自分とそっくりの姿をした白衣の女性が控えている。
21号と瓜二つの女性を従えて折戸は嗤った。
「この間は、よくもコケにしてくれたよな? 餌の分際で……! 叩き潰してやるよ、虫けらども!!」
セルがこれにニヤリと邪悪で冷酷な笑みを返した。
「……フ。いい加減、孫悟空の劣等コピーを見るのもうんざりだ。ここで消しておくとしよう」
セルの言葉にブウもまた邪悪な笑みを浮かべていた。
次回も、お楽しみに(´ー`* ))))