ドラゴンボールFZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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大変長らくお待たせいたしました。

では少々、おつきあいください!(^^)!


第30話 悟空、俺の知らない間に話が進んでます

 荒野の中。

 

 向かい合う複数の人影。

 

 死人のような肌色に燻んだ金髪、赤目の男は赤いインナーに灰色の道着を着ている孫悟空のクローン。

 

 その笑みは邪悪に歪み、目は凶悪に見開かれている。

 

「…この俺を倒すだって? アニメに出てくる一キャラクターのお前が?」

 

 対峙する緑の異形は端正な顔を冷酷に歪めて構えを取る。

 

「貴様の口上は聞き飽きた。この世界が貴様の世界ではアニメだとしても、貴様が今いるのはこの世界だ。貴様もまたアニメの一登場人物に過ぎなくなった。つまりこの世界でなら私が貴様を殺すことは何も不可能ではない。分かるかな?」

 

「試してみろよ? メタ視点を持つものとアニメのキャラとの違いを教えてやる。原作知識とゲーム知識さえあれば、どんな強敵でも攻略できるってことをな」

 

 そう言いながらクローン悟空の肉体を持った転生者ーー折戸修二は構えを取った。

 

 神のオーラに似ているが禍々しい形をした金と黒の二色を放つ光を全身に纏う。

 

「フン。超サイヤ人…か。分かってはいたが、孫悟飯のような変身や禍々しいオーラに、神の力など様々な可能性があるようだ」

 

 セルが笑みを強めて腰を落とす。

 

 そんな対峙する二人をブラック、16号、21号が見つめている。

 

「あの力、次元の狭間で会ったカンバーとかいうサイヤ人と同じか? クローン戦士とはいえ中々に強大な力を持っているようだな」

 

「…21号。折戸は、いつの間にあんな力を?」

 

「ごめんなさい、私にはわからないの」

 

 申し訳なさそうな21号の言葉に16号が目を見開く。

 

 ゴクウブラックが腕を組んだまま21号を見据える。

 

「私は、折戸さんがどこからか連れて来たフューと言う人に斬りつけられて。その後の記憶は薄暗い研究室で磔にされていて。目の前に折戸さんと悪の私が居るところだった。その時には折戸さんはあの力を手に入れていたんです」

 

「折戸は本来のお前を取り除いたのか。いったい、何故?」

 

「分からないわ、16号。ただ…」

 

 思い返すのは折戸が居ない研究室で、自分の拘束を解いたフューという青年の声。

 

「あのフューという人は、悪い人ではないと思います」

 

 そう言いながら自信なさげにゴクウブラックを見つめる。

 

 21号を見るゴクウブラックは超サイヤ人ロゼの灰色の瞳を微かに細めた。

 

「フュー? 確かその名は、時の界王神たちが言っていた……!」

 

 そこまで話し合っていた3人だが、強烈な音と衝撃波に振り返る。

 

 見れば青いスパークと金色のオーラを纏うセルと邪悪で禍々しい金のオーラを纏う超サイヤ人へと変身した折戸が闘っている。

 

 燻んだ金の髪は超サイヤ人の輝く金髪へ、血のように紅い目は宝石のように煌く翡翠の瞳へ、死人のような肌は透き通る様に美しい肌に。

 

 セルが右拳を打ちつけるのを右手で払う折戸。

 

 返す左拳でボディを狙うもセルの長い右脚が脇腹の前に畳まれて受け止める。

 

 そこから目にも止まらない打ち合いが始まった。

 

 脚を止めてその場で拳と蹴りを交換しながら、クリーンヒットは両者ない。

 

 その戦いを見据えてブラックが口を開く。

 

「…孫悟空の動き。なるほど、紅朗よりは孫悟空の動きを再現できるようだな。だが、あの程度ならば今のセルには勝てまい」

 

 これにブウが気をよくしたように笑みを浮かべた。

 

「分かるか? まあ当然だが、セルの力は折戸などでは到底相手にならんだろうからな」

 

 その言葉に黙ってうなずきながらブラックは折戸を見据える。

 

(そのくらいの差はヤツも感じているはずだ。その程度には強い。だが……ヤツに焦りも諦めもないのは何故だ? 何を企んでいる?)

 

 両者の打ち合いの中、一際強烈な右ストレートが互いの中央でぶつかり離れる。

 

 瞬間、折戸はかめはめ波の構えを取った。

 

 セルも同時に両手を腰だめにたわめて青い光を練る。

 

 両者は間髪入れずに互いに向かって青い光を両手を前方に突き出して放った。

 

 一瞬の拮抗の後、相殺して爆発する。

 

 少し距離を置いてセルは折戸を淡々とした表情で見据えていた。

 

 その瞳は真剣そのものである。

 

「おいおい、セル。いつまで互角を演出するんだ? お前の力でさっさとその勘違いした愚か者を叩き潰してしまえ!!」

 

 ブウが笑いながら告げる中、セルは静かに構える。

 

(確かに、今の状況は私がヤツに合わせることで互角を演出してはいる。しかし……! それを感じ取りながらヤツには焦りが一切ない。何故だ)

 

 セルの中では、紅朗や壱悟ほどの底力ーー真・超サイヤ人が折戸からは感じられない時点でさっさと終わらせて良い勝負であった。

 

 だがセルの勘が告げている。

 

 コイツの正体がわからない内に決めることはできない、と。

 

「……セル?」

 

 ニコリともせずに構えを静かに取るセルの姿にブウもまた、違和感を覚え始めた。

 

 折戸の方は相変わらず下品かつ凡俗で粗悪な笑みを浮かべている。

 

「セル。お前はやはり頭がいいな? 悟空がわざわざ頭が良いと言うだけのことはある」

 

「……」

 

「だが、それならそれで。こちらには好都合だ!!」

 

 両手を腰に置いて更に気を高める折戸。

 

 爆発した気は倍以上に膨れ上がり、超サイヤ人の髪の量が更に天に向かって逆立った。

 

「悪の気を纏う超サイヤ人2ってなぁ」

 

 大地を蹴り、一瞬でセルの背後に回る。

 

「もらったぁ!!」

 

 セルの剥き出しの後頭部に向けて拳を打ちおろす。

 

 乾いた音を立ててセルの右手の甲に止められる拳。

 

 強烈な赤い稲光が周囲に吹き荒れ、衝撃波が発生するもセルは微動だにしない。

 

 瞬間、セルが振り返りながら拳を握る。

 

 邪悪な笑みを浮かべる折戸に向かって右拳を振り切る。

 

 凄まじい打ち合いが再び始まり、今度は足を止めてではなく高速移動で周囲を飛び回りながら相手の死角を狙って攻撃を繰り出している。

 

 激しい高速移動での乱打戦を続けていると強烈な音を立ててセルの顎が跳ね上がった。

 

 折戸の膝がセルの顎を跳ね上げたのだ。

 

 続けざまに拳を振りかぶり前に出る折戸の腹をセルの右拳が貫く。

 

「ぐぅ!」

 

 目を見開く折戸の顎を左の掌底が跳ね上げて、身体ごと浮かせると右後ろ回し蹴りで後方へ蹴り飛ばすセル。

 

 後方の地面へ背中から叩き込まれ、地面を槍衾のように起こしながら折戸は倒れる。

 

 ゆっくりと脚を下ろしてセルは土煙を上げて蹴り込まれた折戸を見据える。

 

 セルの勘は更に警戒しろ、と言って来ている。

 

 強大な気柱が土煙を吹き飛ばし、超サイヤ人2の髪は更に後方へと伸びて眉が縮毛ーー眼窩上隆起を起こし瞳は翡翠に黒の瞳孔が浮かんだものに変化している。

 

「紅朗が変身した超サイヤ人2の更に上の姿ーー確か、超サイヤ人3だったな」

 

 その変化を淡々と見据えて呟くセル。

 

 凶悪な貌となり、邪悪な笑みが更に迫力を増した折戸は一気に周囲のモノを吹き飛ばしながら突っ込んでくる。

 

 強烈な右ストレートを右手で受け止めるとその衝撃に後方へ脚が引きさがっていく。

 

 だが紅朗の時に経験したセルは、一瞬で気を引き上げると踏ん張ってみせた。

 

 踏ん張った地面は槍衾のように隆起するもセルはそれ以上押されない。

 

 これに満足したように折戸は頷いた。

 

「へぇ……! 悪の気で強化された超サイヤ人3でも力で押し切れないほどの気を持っている。やはり俺が知っているセルとはケタが違うんだな」

 

 折戸は理解したと呟くと超サイヤ人3から超サイヤ人へと変身形態を戻す。

 

「……どうした? 超サイヤ人3で来ないのか? その力ならば運が良ければ私を倒せるかもしれんぞ?」

 

 強烈なパワーを放っていた先ほどの変身だが、当然それには代償がある。

 

 基礎戦闘力がそれほど高くない者が無理やり超サイヤ人の倍率を高めることで力を手にするための変身。

 

 身体に絶大な負担を与えることが前提になる無理なパワーアップ。

 

 紅朗の姿からそれを察していたセルは、敢えて挑発してみせる。

 

「お前、ホントに頭いいな? 分かるんだろ? 超サイヤ人3は短期決戦にしか使えない欠陥だって」

 

 淡々とそう評しながら折戸は首を鳴らす。

 

「使い方さえ間違えなければ局面を押し切れるけど、力が拮抗しているような相手やそれ以上の相手には全く無意味な変身だ。体力と気のほとんどを失ってしまうからな。使い方としてはセルゲームの時のお前みたいに遊んで油断してるヤツの隙を突いて変身して気を引き上げる暇もなく殺す、が正解だろう」

 

 セルはしばらく間を置いてから、笑みを浮かべた。

 

「フン……! 孫悟空ならばそのような使い方はしないだろうがな。それで? 私の力が超サイヤ人3以上で無意味な変身だと分かった。その上で貴様は何が出来る?」

 

「まあ、色々できるな。この身体のスペックが本当の孫悟空と変わらないようになったことも再認識できたしね」

 

「そうか。この恐ろしいセルの真の力を前にしても、まだそのような戯言を述べられるのかな?」

 

 瞬間、セルは目を見開くと一気にフルパワーを開放した。

 

 神の気と同じ形をした緑と金色のオーラを纏い、折戸を嘲笑する。

 

 その力は、この世界の孫悟空達が真の超サイヤ人を開放してようやく渡り合えるレベルだった。

 

 ゴクウブラックが頬に汗を掻いて目を細め、16号や21号にあっては言葉も発せられない。

 

 16号は改めて横になっている二人の悟空クローンを見つめる。

 

 紅朗と壱悟ーー彼らは、アレを相手にして生き残ったのだ、と。

 

「”この世界のセルは、俺が知っているセルとはレベルが違う”か、フューの言うとおりだったな。原作の超サイヤ人ブルーより上の次元とは恐れ入ったよ」

 

 それでも、それでも折戸の表情は余裕がある。

 

 瞬間、折戸の足元から青い光が放たれて超サイヤ人の髪が青く染まった。

 

 青と白と黒色、形は神のオーラーーを纏い、超サイヤ人ブルーと化す折戸を静かにセルは見つめる。

 

「……マスター」

 

 その時、対峙する折戸の背後から白衣を着た21号が淡々と告げる。

 

「そのままの対決はマスターに不利です。セルの戦闘力はマスターを……」

 

「ちょ、ちょっと、ホントなの? 修二さま?」

 

 それに青い髪を三つ編みにしたピンク色のシャツを着た美少女も不安そうに折戸を見る。

 

「シャノア、ブルマ。心配してくれてありがとう。だけど、コイツを倒さないと俺たちだけの新しい生活ができなくなっちまう。せっかく地球から離れて宇宙に行っても、こんな奴に追いかけて来られちゃ迷惑だからな」

 

 その折戸の顔は凶悪なものではなく、世捨て人のように何もかもを諦めたような表情だった。

 

 これにブルマと呼ばれた少女とシャノアと呼ばれた白衣を着た21号の表情が曇る。

 

「さ、始めようぜ? セル」

 

「……フン。貴様にそこまでの興味はない。なにせ、貴様はここで死ぬのだからな」

 

 構えを取りセルは告げる。

 

「貴様からは紅朗や壱悟のような真の超サイヤ人に目覚める可能性も感じられない。波動を感じれば変身するかもしれんが、そこまで貴様に興味がわかない。このセルを楽しませてくれる相手は、貴様ではない」

 

 笑みを深めてセルは言う。

 

「貴様が死ぬ理由は、それだけだ」

 

「……はは、俺からも言わせてもらうなら。俺の素晴らしい人生を壊そうとした。お前が苦しんで死ぬのはそれが理由さ!!」

 

 憤怒の形相に変わった折戸はセルに向かって襲いかかかった。

 

 再びぶつかり合う拳と拳。

 

 足元が二人を中心にクレーターを創っていく。

 

 凄まじい轟音と共に後方に吹き飛ぶのは折戸の方だった。

 

「なんだとぉ!?」

 

 目を見開いて空で後方へ吹き飛ぶ折戸の前にセルが物凄いスピードで接近すると左拳を打ちこんでくる。

 

 咄嗟に左手を顔の前に構えて止めるも衝撃で手がしびれる。

 

「ふざけるなぁあああ!!!」

 

 牙を剥き出しにして拳を打ち返す折戸。

 

 超サイヤ人ゴッドを超えた超サイヤ人でもパワーが、スピードが負けている。

 

(カンバーの悪の気を食らって力を上げてるんだぞ? なんで負ける!?)

 

 必死に拳と蹴りを繰り出すもセルの動きが違う。

 

 先ほどまでとは動きの鋭さが全く異なる。

 

 完全に自分を仕留めることに重きを置いた動きをしているーーそこに遊びが無い。

 

 拳を繰り出せば、拳の下をくぐられて左右から拳を両頬に叩き込まれ、仰け反ったならば強烈な蹴りが顎を蹴り抜いてくる。

 

 一つ打てば三つ返され、躱されればあっとういう間に追い込まれる。

 

 咄嗟に折戸は両腕を畳んでガードを選択、暴風雨のように暴れ狂う拳と蹴りの乱打をやり過ごそうとするーーが。

 

 セルは一向に構わない、ガードの上から拳と蹴りを叩き込んで折り畳んでいる腕の骨を折るつもりのようだった。

 

「フン、ガードなど固めたところで無駄なこと。自分が倒されるのが、ほんの少し伸びただけということが分からないとはな」

 

 ブウが折戸を嘲笑う中、ブラックが静かに目を細める。

 

「……ここが限界ならば問題はない。時の界王神が俺をわざわざ寄越す必要もなかった、か」

 

 ガードの上を左のフック気味の拳が叩き込まれ、脇腹を返す刀で打ち込まれる折戸。

 

 更にガードしている両腕の下から真上に向かって右拳を振り上げると、ガードが弾き飛ばされる。

 

 剥き出しになった顔をセルの右ストレートが打ち抜いた。

 

 後ろにのけ反る折戸に留めだとばかりに、セルの右人差し指が緑の光を放ち始めた。

 

「消えてろ、不快な転生者!!」

 

 指先から放たれた強烈な光弾は折戸の胸にぶち当たり、後方へと運んで爆発した。

 

 キノコ雲を起こしながら折戸は爆発に飲み込まれていく。

 

 これにニヤリとブウも笑みを浮かべるーーが、次の瞬間にはブウの眼が見開かれていた。

 

 いや、ブウだけではない。

 

 この場に居る全てのモノが目を見開いてセルを見ている。

 

 正しくは、セルの腹を打ち貫いた拳の持ち主を。

 

「……なんだと? ベジータ……!?」

 

 セルが口の端から血を流しながら自分の腹を打ち貫いたベジータのクローンを睨みつけると、ベジータのクローンは先の折戸と全く同じ悪の気を纏って超サイヤ人ブルーに変身する。

 

「これが、リンクシステムだ。分かったか? セル……!!」

 

 その口からは折戸修二そのものの声が聞こえて来た。

 

 これにセルが目を見開く。

 

「これが、貴様の奥の手、か!!」

 

 強烈な黄金の光がベジータクローンーー折戸の拳から放たれる。

 

 後方に弾き飛んだセルは、着地してダメージを確認しながらベジータクローンの身体に移った折戸を睨みつけた。

 

「ギニューのボディチェンジの上位互換といったところか。魂だか精神だか知らんが意識を別の肉体に移動できるとはな」

 

 ブウが初めて興味を持ったように折戸を見る。

 

 だがブラックは倒された悟空クローンの方を見ていた。

 

「……そういう単純な話ではないようだぞ、魔人ブウ」

 

「なに?」

 

 ブラックの言葉にブウも倒された悟空クローンを見れば、大ダメージを負った状態で悟空クローンは立ち上がってきている。

 

 超サイヤ人ブルーのまま、折戸修二そのものの気と表情で。

 

「フフフ、クローンの身体を強化した甲斐があったよ。いくら俺(プレイヤー)自身にダメージが入らないとは言え肉体(キャラ)が動けなくなってしまったら元も子もないからな」

 

 不敵な笑みで前髪をかき上げる折戸にブラックが目を細めて問いかける。

 

「貴様、魂を分裂させられるというのか?」

 

「……違う。俺は、クローン戦士の肉体をアバター(分身)として使えるんだ。俺は元の世界で死んでから魂だけの状態でフューと出会い、この能力を得たんだよ」

 

 悟空とベジータのクローンが肩を並べ、二人の口から折戸の声がステレオのように響く。

 

「この世界に人造人間21号が居たことで一つの壁がクリアできた。ソイツが生み出した悟空達のクローン。そのクローンの肉体に憑依することが次の壁だった。リンクシステムという肉体を別の精神のものが入り込んで操るというのが俺には正にうってつけだった。だから時の狭間でフューと出会えたのは俺にとっては奇跡だった。アイツは知識欲の塊だからな。俺が知っている原作知識を教えてやるといえば簡単に俺に協力してくれた。アイツのおかげで、悪の21号が生み出したクローンは魔人ブウの細胞が元で造られているのも理解したよ」

 

 ブウが目を細める。

 

「私の細胞を基に生み出すだと? そんなことをすれば私ではない私が増えるだけだ。孫悟空の形をとることもなくな」

 

「魔人ブウのクローンを生み出すのが一番最初。これは簡単に成功した。純粋ブウのクローンは元々自我も何もない。生み出すのは簡単だったが、制御することはできなかった」

 

 そこでーーと折戸は緑色に輝くビー玉のような光球を懐から取り出す。

 

 それは紅朗の右手に埋まったものと全く同じモノであった。

 

「クローン魔人の細胞を制御するために孫悟空やクリリンたちの姿形をプログラミングしたデータを生み出した。コイツを魔人の核に入れれば魔人の細胞は入力されたデータのとおりに変身する。そうやって増やしていったんだよ。孫悟空達のクローンをね」

 

 光球を道着の帯に入れると折戸は立ち上がって来たセルを見据える。

 

 セルは淡々と口の端から流れた血を拭うと、腹に空いた穴を拳を握りしめて力を込めるだけで塞いで再生した。

 

「フン、下らん。別の世界まで来て、そこまで根回しをした挙句にやることが静かに暮らしたいだけ、とはな。もっとも、それだけの下準備をしても私には勝てんのだが、な」

 

 傷を再生したセルはダメージすらも回復している。

 

 確かに折戸の精神が入った悟空とベジータのクローンは超サイヤ人ブルーに悪の気を注入した姿となり強大な力を持っている。

 

 それでもセルを相手にするには足りていない。

 

 だからこそ、魔人ブウは淡々とした表情で二人の超サイヤ人ブルーと化した折戸修二を見つめる。

 

「孫悟空とベジータのクローン体で神の気を纏うだけでなく、魔人と一緒に居たサイヤ人が放っていた力と同じモノを持っているようだ。だが、私の友を相手にするには力不足にも程があるぞ!!」

 

 その言葉を聞いてもニヤリと笑いながら悟空(折戸)とベジータ(折戸)は超サイヤ人ブルーと悪の気を融合させた炎を全身に漲らせて拳を握る。

 

 二人の折戸修二は、同時に左右から仕掛けた。

 

 セルも表情を真剣なモノに変えると左右から来る攻撃に備えて腰を落として構える。

 

 悟空(折戸)の右拳とベジータ(折戸)の右踵落としを両腕でそれぞれ受け止め、強烈なラッシュを繰り出す二人の折戸の攻撃を後ろに下がりながら捌いていく。

 

 その攻撃の鋭さと手数を前に完璧に捌いていくセルを前にブウをして、静かに目を鋭く細めた後ニヤリと笑う。

 

「フフ、セル。お前は、最高だ……!」

 

 異世界から魂だけ転移して来たという転生者。

 

 それらが入ったクローン戦士の中でも、折戸の使う悟空とベジータのクローンは神の気を纏える。

 

 更にブウは直接面識はないが、サイヤ人カンバーの悪の気をも吸収した姿なのだ。

 

 折戸修二自身に戦闘経験が無いだけで、クローン戦士のセンスや肉体の動きも悟空とベジータそのものである。

 

 スピードとパワーに手数など、見た目や攻撃の動きだけならば孫悟空とベジータを同時に相手しているのと同じだ。

 

 それを簡単に捌くセルにブウは心から敬意を持って頷く。

 

 これにセルはニヤリと笑みを返すと悟空(折戸)とベジータ(折戸)の二人を見つめ、悟空(折戸)の右ストレートを左に見切って躱し、腹に右ストレートを叩き込む。

 

「ぐぅ!?」

 

 動きが止まった悟空(折戸)には目をくれず、即座に左から右ストレートを打ち込んでくるベジータ(折戸)を右に避けると右ひざでボディを打ち貫いた。

 

「ガハァッ」

 

 悲鳴を上げて固まる二人の折戸にすかさず、セルが踏み込んで両拳と蹴りを使って一気に連打を叩き込んでいく。

 

 右ストレートと左前蹴りで二人を吹き飛ばし、両手を上下に合わせて腰だめに構えると青い光の球を練り上げる。

 

「消えてなくなれ……!」

 

 吹き飛ばされた二人の折戸修二が、背中から地面に叩きつけられた時にはセルの両手には強烈な光球が練り上がっていた。

 

 土煙を立ち昇らせるほどの衝撃を全身で受ける二人の折戸修二に向かってセルは両手に満ちた光を真っ直ぐに前に向かって放つ。

 

「いいぞ! 決めてしまえ、セル!!」

 

 ブウが興奮を隠そうともしない笑みを浮かべて叫ぶと同時、野太い青光線が世界の全てを打ち貫いた。

 

「……終わりか。あっけないモノだな」

 

 思わずブラックが呟くほどに、それほどの威力を放つセルの全力のかめはめ波だった。

 

 誰もがセルの勝利を確信した、その瞬間。

 

 強烈な蒼い光は金の刃に斬り裂かれた。

 

「……! なんだと!?」

 

 強烈な光の剣は、土煙を上げながら地面に叩きつけられた二人の折戸修二の技だ。

 

 セルは目を見開く。

 

 ベジータと悟空のクローンが一つになり、気を倍化以上にしていることに。

 

「…合体、だと?」

 

 悪の気を纏う蒼き神の炎を全身から放ち、悟空とベジータの服を足して割ったようなデザインのモノを着た二人によく似たサイヤ人が居た。

 

「…ベジット、だと!?」

 

 驚く魔人ブウをよそに、両耳に神の宝具ポタラを付けた戦士はニヤリとセルに笑いかけた。

 

「「…どうだ? これが俺の切り札さ。この身体ならば誰にも負けることはない。俺が最強だ!!」」

 

 圧倒的なパワーを放つベジットブルーを前にセルもフルパワーの気を纏う。

 

「……なるほど。その肉体は力も気も私を大きく凌駕しているようだ。驚きだぞ」

 

 ニヤリと邪悪に笑うセルに折戸も笑い返す。

 

 ブラックの瞳が怒りに見開かれる。

 

「転生者……! 貴様、孫悟空達の肉体を模倣するだけに飽き足らず……!!」

 

 怒りに拳を振るわせ、薄紅金の炎のように激しいオーラをブラックは纏う。

 

「……何のつもりだ? ゴクウブラック」

 

 セルが自分よりも前に出ようとするブラックを見つめて目を鋭く細める。

 

「決まっている……! この俺の手で、この無礼者を排除する。これ以上、こんな出来損ないの紛い物どもに俺が認めた人間たちを侮辱されてたまるか!!!」

 

 ハッキリと怒気を露わにしてブラックはベジットクローンと化した折戸修二を灰色の瞳で睨みつける。

 

「……! 俺が認めた人間ねぇ? 人間ゼロ計画なんてものを考えて人間の肉体を乗っ取った神さまは言うことが違うな!!」

 

 瞬間、ゴクウブラックが地面を蹴ると一瞬でベジット(折戸)の前に現れる。

 

 強烈な右ストレートを打ち込むブラックだが、まるで虫を払うように簡単に片手で掴み止められる。

 

「貴様……!」

 

 目を細めるゴクウブラックに余裕の笑みを浮かべた折戸の左中段回し蹴りが迫る。

 

 高速移動で後方へ避けるブラックの目の前に折戸は左手の5本指先にそれぞれ光る球を生み出すとオーバースローで投げつけてくる。

 

 両腕をクロスさせて光弾を受けて爆発するブラック。

 

「ぬぅ……! 貴様!!」

 

 煙を上げ、口の端から血を流しながらブラックは鋭く目を細めるとオーラを激しく燃やして自分の身体から立ち昇る煙を吹き飛ばす。

 

 セルとブウもまた、ベジットクローンの肉体を得た折戸修二の力に鋭く目を細めていた。

 

「……」

 

 やがてセルが舞空術で空に舞うとブラックの前を横切って折戸修二に殴りかかった。

 

「どうしたよ? 言葉を話す余裕もなくなっちまったのか!?」

 

 軽く鼻先で見切られるセルの拳。

 

 挑発と共に折戸の拳がセルの腹を打ち貫いた。

 

「……!」

 

 身体をくの字に曲げられ、下がった顎を容赦なく左ストレートで打ち貫かれ、後方へ顔が仰け反ったところを強烈な右上段回し蹴りで刈り取られる。

 

 一気に遥か後方へ吹き飛びながらセルは両手両足を大きく広げて大の字になると止まった。

 

 端正な鼻から紫色の血を一筋流し、それを指先で拭いながら鋭い目をして折戸を睨みつける。

 

 両手を見下ろして折戸修二は興奮した笑みを浮かべていた。

 

「すげぇ、すげぇよベジット!! カッコいい!! あのセルやゴクウブラックが、この俺相手に手も足も出ないなんて!! これだよこれ!! これがやりたかったんだよぉ!!!」

 

 強烈な青と黒のオーラを燃やして折戸修二はセルとゴクウブラックを睨み返した。

 

「ああ、もっとだ! もっと、俺に無双させろ!! 俺の思い通りにさせろよ!! この世界は、俺が俺だけの人生を歩むための最高の舞台なんだからよぉ!!!」

 

 これにブラックが静かに告げた。

 

「……なんと醜い顔だ。これが本当に俺が認めた人間と同じ姿をしたモノだというのか……!?」

 

「フン、姿や形などどうでも良い。この私を相手にするならば、このくらいはやってもらわねばな」

 

 セルが首を鳴らしながら強大な神の気を纏うベジット(折戸)を見つめる。

 

 だがブラックは急に興味を失くして告げた。

 

「……そうか、ならばあの紛い物の相手は貴様に任せよう」

 

「? どうした? あの男が許せないのではないのか?」

 

 あまりにブラックの態度が急変したため驚いた表情で見るセルをブラックは静かに見つめ返す。

 

「俺が認めた人間たちと比べるべくもなかった、それだけのことだ。むしろ、奴らとあんなモノを比べた我が目の無さに失望した……! 力も心も、孫悟空達と比べるべくもない……!!」

 

 これにセルが驚いた表情に変わった。

 

「……! 本物の孫悟空達は、アレよりも強いというのか?」

 

 自分の本気の力よりも上の次元に至るベジットクローンーー折戸修二。

 

 それさえも比べるべくもない、とブラックは言った。

 

 だからこそ、セルは問いかけた。

 

「当たり前だ」

 

 瞬間、セルはーー笑った。

 

「ククク、ハハハハハ! ハァーハッハハハハ!!」

 

 高らかに笑うセルの表情は純粋に楽しんでいる。

 

 自分よりも遥か上の高みに居るであろう孫悟空達の力と片鱗に。

 

「……何をふざけたことを言ってやがる……! 今の俺の力は、お前らを大きく上回ってるってのに!!」

 

「フン……!」

 

 瞬間、ブラックは己の身に溢れる超サイヤ人ロゼのオーラを消して黒髪黒目の状態に戻るとセルに向かって告げた。

 

「せいぜい、あの勘違いした愚か者に負けぬことだ」

 

 その言葉にセルは高笑いを抑えるとニヤリと笑みを返した。

 

 その表情に満足そうにブラックは頷くと21号と16号、気を失った二人の孫悟空クローンの傍に降り立った。

 

 代わりにブウがセルの横に並び立つ。

 

「……ブウ?」

 

「ベジットのクローンとはな、中々に笑わせてくれる。……ハァッ!!」

 

 長い触覚の生えた頭を鳴らしながら、ブウが拳を腰に置くと同時強烈な薄紅金のオーラを身に纏ってフルパワーを燃え上がらせた。

 

「かつて、私のプライドと自信の全てを打ち砕いた男が偽物とはいえ目の前に居るのだ。本物の孫悟空達へのリベンジ前の予行演習にしては上出来だろう!!」

 

 セルは静かにブウを見つめた後、折戸を見つめる。

 

「ブウ、これではつまらん。私と貴様が組めば勝って当たり前の相手だ……!」

 

「……なら、私に譲ってくれ。ベジットの姿をした男をこの手でボロボロにできるなど、譲れん!!」

 

 どうしたものか、とセルが呆れた表情に変わった時にゴクウブラックが紅朗と壱悟の二人に気を注入しながら片手間に告げた。

 

「もう一体、研究所の方から強烈な気を放つクローンが来る。どちらかがソイツの相手をしてやれば良いだろう」

 

 淡々とした声とその内容に16号が目を見開いた。

 

「まさか、まだクローン戦士が居たのか!!」

 

「そんな……! 彼女が創ったクローンは全て紅朗さんが……!」

 

 21号が否定しようとして目の前の空を一筋の赤みがかった金色のオーラを纏った無地の山吹色の道着と青いインナーシャツを着た戦士が横切る。

 

 超サイヤ人へと変身した孫悟空クローン。

 

 だが、その尻から茶色の尻尾が生えている。

 

「……! 紅朗のような転生者でも、壱悟のようなクローンでもない。なんだ、コイツは……!」

 

 セルは独り言とも感想とも付かない言葉を告げると同時に邪悪な笑みを浮かべて超サイヤ人孫悟空そのものの姿をした男は嗤った。

 

「……俺は戦闘民族サイヤ人……! カカロットだ……!!」




次回もお楽しみに!!
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