意外に難産でした(;^ω^)
楽しんでください(;^ω^)
人造人間21号。
かつてドクターゲロによって造られた最後の人造人間。
彼女は今、三人へと別れている。
ディーベ、ローフ、メントという名をそれぞれ名乗りだした彼女達は、周囲をジッと見渡して状況の整理を始めていた。
倒れた二人の悟空クローンの傷は既に完治している。
三人の中で最もオリジナルと言える人格を持ったディーベは、倒れ伏した紅朗の頭を自分の膝を枕にさせて眠らせている。
(この状況で最も有利なのは孫悟空とベジータのクローンを手に入れて合体した折戸修二。間違いなくヤツは、魔人ブウやセル、ゴクウブラックよりも強い。たとえ紅朗が目を覚ましたとしても、このレベルの戦いについていけるか……)
もう一人のクローン悟空ーー壱悟を岩の壁にもたれかけさせて人造人間16号は考える。
「たしかに、この状況では私たちに力が足りないわね」
「それならそれで、片っ端から吸収すれば良い話ね」
不敵な笑みを浮かべる21号の邪悪な二人の分身は、静かにベジットクローンの折戸修二を睨みつけた後に自分と同じ姿をした白衣の人造人間を見つめる。
「ちょ、ちょっとシャノア! あんたにそっくりな化け物が二人、こっちを見てるんだけど!?」
青い三つ編みの髪をした少女の声にシャノアと呼ばれた21号はジッと冷徹な眼差しを分身二人に向ける。
「ちょうどいいですね。彼女たちを吸収して、私の地力を上げればマスターの手助けができるでしょう」
冷たい目を光らせるシャノアにローフとメントも構えを取る。
「言ってくれるじゃない、たかだか修二に作られただけの人形風情が」
ローフが鋭い牙を剥き出しにして笑みを浮かべる。
「…だけど、何故変身しないのかしら?」
その横でメントは瞳を鋭く細めてシャノアを睨み付けた。
対峙するシャノアは瞳を静かに閉じてから見開く。
アイスブルーに黒の瞳孔が浮かんだ瞳が、翡翠色に変化して瞳孔が消える。
赤みがかった茶髪は金色に輝き、後ろ髪が炎のように逆立っている。
金色に輝く髪に翡翠の瞳、透き通るように輝く白い肌に変わった人造人間21号。
その身に纏うオーラは金色で青いスパークが走るものだ。
そして他の21号と同じ魔人の服を身に纏いながら、その尻からは金色に輝く猿の尻尾のようなものが生えている。
「…超サイヤ人だと?」
腕を組んで様子を見ていたザマスが瞳を細めながら、その変身を睨み付ける。
魔人に変身した3人の21号とは違い、シャノアは超サイヤ人へと変身したのだ。
(だが、ただの超サイヤ人ではない。こやつの気は、セルや他の21号と同様。あらゆる戦士の細胞ーーそれらが混ざりあった気だ)
瞳を細めながら、観察するザマスに対してディーベもシャノアを見つめる。
「まさか、魔人の細胞を基にしてサイヤ人の因子を強く顕現させている? そんなことがーー!?」
ディーベの言葉に、上から答えが降ってきた。
「そのとおりさ、21号。彼女は、お前とフューが作り出したクローン戦士のデータを基に生み出された俺だけの人造人間21号ーーシャノアさ」
全員が空にいる声の主ーーベジットクローンを見つめる。
彼は静かに語り出した。
「…俺は、元の世界で酷い目に遭った。だから、こっちの世界に来た時。絶対に負けないために策を練ったのさ。人造人間21号ーーお前の生み出したクローンを利用してな」
全員が折戸を見つめると、彼は続ける。
「…魂だけになって世界を彷徨っていた俺は、フューに出会った。俺のドラゴンボールの原作知識やゲームやアニメの知識を少し話しただけで、アイツは俺に協力してくれたよ」
ザマスは静かに問いかける。
「貴様は、この世界で何をするつもりだ? 異世界の人間の魂をこちらに喚んでクローンの肉体へと移す。そして悪の波動で倫理観を崩壊させて21号の尖兵にした。手駒を増やすためだと聞いたが、随分と回りくどい」
「…ひとつは、異世界の魂がクローンの肉体に定着するのかを確認した。そして、悪の波動や洗脳がクローン戦士をどこまで強力にするかの確認。後は、魂を入れられたクローン戦士が死んだ場合はどうなるのか、を確認したのさ」
折戸はニヤリと笑って応える。
「一つ目は、簡単だった。問題は二つ目の悪の気や魔力による洗脳の強化率とリスクだ。上がったパワーもスピードも敵を倒す前に死んでしまえば意味はない。というか、死んじまったら話にもならない」
セルとブウを前に折戸はベジットブルーの肉体で拳を握る。
「そこで俺は自分の魂をーーその本体を次元の狭間に置いて、魂を分離させた端末をクローンの肉体に入れられるかをフューに問いかけた。実験は上手くいってね、こんな風に」
折戸が指を鳴らすと同時に、孫悟空とベジータのクローンが光の粒子となって折戸の前に現れる。
クローンの二人にベジットクローンの胸から金色の光の球が出てくると、悟空クローンとベジータクローンの肉体に吸い込まれ、感情が生まれると同時に悪の気を纏った超サイヤ人ブルーへと変身する。
「「「俺は、俺の意思と魂を無限に分離させて無限にクローン戦士を生み出せるように変えたんだ。俺より強い奴が現れようが、肉体が滅びようが、永遠と別の肉体に移ってそいつを殺せるように、ね」」」
「……なるほど、一つの真理ではあるな。自分よりも強い者が居ようとも、そいつを殺すまで自分の肉体を強化し、勝てなければ永遠に新しい肉体を生み出して挑戦し続けることができるというわけか」
セルが感心したように言葉を告げるも、クローン戦士の肉体を生み出すのに自分の細胞が使われているブウは嫌悪感を丸出しにした表情で唾を吐き捨てる。
クローン戦士の肉体をキャラクターと言い切った折戸修二の言葉の真意であろう。
勝てないのならば、自分の肉体を鍛えて挑み、滅びれば新しい肉体に変える。
「……お前達が知っているかは知らんが、これはドラゴンボールの映画が元でね。メタルクウラというフリーザの兄貴が生み出したキャラクターが元なんだよ。コアが殺されるまで永遠に生み出され、強くなっていく。もっとも、メタルクウラの場合は他のキャラの肉体を使えないからクローン戦士ほどには面白くないんだけどね」
孫悟空とベジータのクローンの折戸修二がベジットクローンの折戸修二の後に口を開く。
「孫悟空クローンの肉体を持った俺とーー」
「ベジータクローンの肉体を持った俺が、お前達レベルに強化されればーー」
ベジットクローンの折戸が笑みを更に強くする。
「お前らなんて比較にならない強さのベジットが誕生するのさ。いや、折戸修二がな」
三人の超サイヤ人ブルーが同時に激しい炎のような青黒い気を纏う。
同時に悟空とベジータのクローンが一定の距離を離して鏡に写ったかのように両手を左右対称に水平に構える。
「「フュージョン!! はっ!!」」
瞬間、悟空とベジータのクローンが一つの光へと交わり一人の戦士が生まれた。
「……なんだと? ベジットじゃないのか!?」
魔人ブウが目を見開く中、現れた折戸修二はニヤリとブウとセルに笑いかける。
「そう、これはゴジータ。さあ、いよいよお前らが死ぬ時が来た……!!」
笑うゴジータクローンの肉体を持った折戸修二にベジットクローンもニヤリと笑い、魔人ブウを見る。
「まずは、ひとり死んでもらおうか」
「笑わせるなよ、異世界人が!!」
薄紅金色のオーラを激しく燃やしてブウが構える。
二人の折戸修二が同時に襲い掛かった。
ーーーー
超サイヤ人に変身した人造人間21号ーーシャノアに対して、ピンクがかった白髪を揺らして赤黒い気を纏いローフが構える。
同時に紫の肌に斑点が浮かんでいるメントも同じ色の気を纏った。
「調子に乗らないでよね、たかが人形の分際で!!」
「……とっとと、お菓子にして食べてあげるわ。不愉快なクローン」
左右から襲い掛かるローフとメントに対してシャノアは冷たい瞳で左手を顔の横に置くと、申し合わせたかのようにローフの右拳が吸い込まれるように掌へ掴まれる。
右脚を膝を曲げて上げるとメントの強烈な左中段回し蹴りが叩き込まれた。
だが、強烈な衝撃波が地面にひび割れを起こす中でシャノアは淡々とした表情で受け切っている。
「生意気なぁああああ!!」
「この……っ!!」
続けざまに拳と蹴りを左右から放つローフとメントだが、紙一重で全て避けられる。
「あの21号のクローン、超サイヤ人に変身する前でも充分な気を持っていた。あの二人では勝ち目はあるまい」
淡々としたザマスの言葉に16号が立ち上がる。
「ならば、手を貸さねば」
「! 16号!?」
紅朗の膝枕をしているディーベが思わず目を見開く。
その横でザマスが淡々と言った。
「……やめておけ。あの二人は、どのみち悪でしかない。生かしておいても何の得にもならん」
「そうかもしれない。だが、俺はアイツ等に救われたーー」
ザマスは静かに16号の眼を見る。
「……救われた、だと?」
「ああ。ローフにはディーベと別れる前に生み出してもらった。そしてーーメントには肉体を修復してもらった」
「言っておくが、あのシャノアとか言うクローンは貴様では勝てんぞ」
「ああ、分かっている」
そのまま白い気を纏って16号は、三人の女魔人が戦う場に向かった。
「16号!!」
紅朗をそっと地面に横たえるとディーベも白い気を纏って構えシャノアに向かって駆けだした。
横たえられた紅朗を見下ろしてザマスは静かに、4対1となったシャノアというクローン戦士と若い頃のブルマを見据える。
「……折戸修二。貴様が、どういう人間かを見定めさせてもらうぞ」
4人がかりで4方向から拳と蹴りを繰り出すも、まるで影に打ち込んでいるように実体が捉えられない。
瞬間、高速移動で消えるシャノアに4人は動きを止める。
ザマスは、すかさずに叫んだ。
「上だ、貴様ら!!」
瞬間、右手の人差し指を紫色に光らせて細いレーザーのような光線を横薙ぎで払うように放ってくるシャノアに4人が同時に地面を離れる。
ーー ローフ、後ろから来るぞ!
ザマスがテレパシーで叫ぶと同時にローフの背後に廻るシャノアだが、その時にはローフはふり返って反応している。
「!」
「やるじゃない、神さま!!」
拳と蹴りをぶつけ合い、相殺するも手数が圧倒的に違う。
瞬く間にローフは押され始める。
「こいつ、なんて手数をーー!!」
「終わりですーー」
まともにボディに左の拳を叩き込まれ、動きが止まるローフにシャノアは右拳を振りかぶって顎を殴り飛ばした。
後方へ吹き飛ぶローフを追いかけようとシャノアが見た瞬間に左手を伸ばし右手で手首を掴んで光を生み出しているディーベとメント、両腕の肘から先を脇に抱えて光を生み出した人造人間16号が構えて居る。
「許してください……!!」
「さようなら、お人形さん!」
「ヘルズーーフラァアアッシュ!!」
三方向からの光を背後から叩き込まれるシャノア。
強烈な爆発が起こり、煙が辺りを包み込む。
ディーベ達三人が、構えた状態で様子を窺っているとザマスの心の声が頭に響いた。
ーー 16号!
呼ばれた16号が振り返ると、シャノアが現れる。
「ーーな!?」
「感謝する、ザマス」
右ストレートを左に完全に避けられたシャノアに、16号は素早く腕を肘に付けるとシャノアの右手首と右太ももを掴んで上空へと放り投げる。
「だぁあああ!!」
天空高く投げられたシャノアの前に三人の21号が現れて三方向から拳と蹴りを連続で叩き込んだ。
「このっ!!」
「さっさと……!!」
「ーーくたばれ!!」
同時に左手に光を生み出してフルパワーエネルギー波を放ち、地面に叩きつける。
しかし、地面に叩きつけられたはずのシャノアは爆発を吹き飛ばして平然と金色のオーラを纏って立っていた。
「戦闘力が違いすぎる……!」
「……どうなってるのよ、あの人形!」
「ふ、ふざけるな。この私が、こんな奴に……!」
まともにダメージが入っていない。
その事実に三人の21号が絶望的な表情に変わっている。
「……っ」
16号が覚悟を決めたような顔をしてシャノアを睨みつけた。
「無駄な抵抗は終わりですか?」
淡々と言うとシャノアは気を更に引き上げる。
金色のオーラに青いスパークが走り始めた。
「……姿を変身をせずに超サイヤ人2の力を引き出したか」
淡々とザマスが呟く中、高速移動でディーベの正面に行くシャノア。
ーー ディーベ、左に避けろ
考えるよりも先にディーベは左へと半歩身を躱すと、先まで己の顔があった空間に拳が貫いていた。
ーー 両腕で顔をガードしろ
ザマスの声に反応して両腕をクロスさせて顔の前に構えると強烈な左の裏拳が叩きつけられる。
「ーーぐっ、きゃああああっ!!」
受け切れずに背後へと吹き飛ばされるディーベを16号が受け止める。
それを見ながらシャノアは力を引き上げた自分の拳とディーベ達を見比べる。
「何故、反応される? スピードもパワーも、彼女達の戦闘力では反応できないはずなのに」
そしてザマスを見る。
「……そうか。この中で私よりも戦闘力が上なのは、貴方ですね。貴方の仕業ですか」
ザマスはそれに何も言わない。
淡々と表情も変えず、超然と佇んでいる。
「ですが、彼女達の戦闘力自体は変化していない。私の動きが分かっているーーそれだけです」
気が更に引き上がる。
金色がより明るく濃い色に変化し、纏う青いスパークがよりハッキリと浮かび上がる。
「ば、ばかな。たかが私を模しただけのクローンのはずなのに……! どういうことなの!?」
「こ、こんなことが……! この私の力が、負けているなんて……!!」
ローフがハッキリと恐怖を露わにし、メントが牙を剥き出しにして苛立つ。
「これが折戸修二さんの知識なの? それともフューさんの力?」
「……これほどの気を隠していたと言うのか」
ディーベと人造人間16号が呟くと、ザマスが静かにため息をついた。
「やれやれ。もはや貴様らでは相手にならん。下がれ」
そう言って自分が前に出る。
「孫悟空の肉体に戻らないのですか? ゴクウブラックーーでしたね。マスターから聞いています」
「フン、貴様程度ならばザマスの状態でも勝てる。あまり私を舐めるなーー、人間(ヒト)擬きよ」
気を纏うことすらしないザマスに、高速移動で姿を消したシャノアが襲い掛かる。
ザマスは青紫色の気を右手刀に纏わせると顔の前に構える。
強烈な拳が手刀に構えたザマスの掌に打ち込まれる。
凄まじい衝撃波は、しかしザマスの掌に吸収されるように無効化されていった。
「……っ!?」
目を見開くシャノアにザマスの強烈な右廻し蹴りが叩き込まれ、後方に弾き飛ばされる。
巨大な岩に背中から叩きつけられたシャノアを見つめ、ザマスの銀色の眼が輝く。
「!!?」
青紫色の光がシャノアの全身を縛り付け、身動きが取れないようになる。
もっとも、強烈な蹴りはシャノアを一撃で行動不能にするほどの力が込められていたのだが。
「……そこでジッとしていろ」
界王ザマスの一撃と金縛りを受けて動けないシャノアは、静かに目を閉じーー気を集中していく。
「……貴方は、マスターの最大の障害になる。ここでーー死んでもらいます」
心臓の辺りに光が集中していくシャノアを見据えて瞳を細めるザマス。
「貴様一人の命を差し出した程度で、私を倒せると思うのか?」
「……少しでも貴方の戦闘力を削れれば、それでいい。それだけです」
覚悟を決めた表情のシャノアにザマスも表情を真剣なものに変える。
「だめよ、シャノア!!」
叫ぶ少女ーーブルマに目を向けるとシャノアは金縛りの状態のままで言った。
「ブルマーー、貴方は逃げてください。マスターをお願いします」
「やめてよ、シャノア!! 私、アンタの事全く知らないけどさ! でも、アンタとは仲良くなれると思ったのよ!!」
そう叫ぶブルマに目を見開くとシャノアは言った。
「……歴史のかけらから、この時代に連れてこられたのに。貴女はーー」
「修二さまと一緒に行くって言ったのは、私だもん! それに、アンタも修二さまが好きなんでしょ!! だったら、簡単に死のうとするんじゃないわよ!!」
力強いブルマの言葉にシャノアは微笑むと、ザマスを睨みつけた。
「ブルマ、お願いしますね?」
「! シャノア……! ダメよ、止めて!! お願い! 誰か、助けて……!!」
空を見れば、青黒い炎のようなオーラを纏った二人の折戸修二が二人の異形を相手に優勢に闘いを進めている。
「修二さま、助けてぇええ!!」
涙を目に浮かべて必死に叫ぶブルマ。
ザマスは右手に手刀を構える。
「フン、意識を断ち切れば自爆も出来まい。手間をかけさせてくれる……。ぐっ!?」
そう言って構えたザマスの横顔が、何者かに殴りつけられる。
顔を仰け反らせながら両足を地面に擦りつけながら後方へ下がる。
目の前には、赤いインナーシャツに灰色の道着を着た孫悟空クローンが立っている。
「俺の女にーー触るな!!」
その周囲に金色の光の球が4つ浮かび上がり、それらは孫悟空クローンに変わった。
5人の悟空クローンは青黒い炎のような激しいオーラを纏って超サイヤ人ブルーへと変身する。
そのオーラには紫色のスパークが走っていた。
これにザマスは軽く首を鳴らしながら5人の超サイヤ人ブルー悟空クローンを見据える。
「……フン。21号が作り出した元々のクローン戦士は全て紅朗が取り込んだが、こんな風に生み出されればどうしようもないな」
呆れたような表情になるザマスに、5人の折戸修二(クローン悟空)は笑った。
「どうする、ザマス? 今の俺たち5人を相手にゴクウブラックにならないと勝ち目無いんじゃない?」
言いながら、もう一つ金色の光の球がシャノアの前に現れてクローン悟空の形になると彼女を連れて瞬間移動でブルマの前に移動する。
「しゅ、修二さまなの……!?」
「ああ、もう大丈夫だよ。ブルマ、ごめんね。怖かったろ。思ったより手こずった時点で、君たちをこんなところに居させるべきじゃなかった」
そう言うと瞬間移動で姿を消す折戸修二。
ザマスは淡々と、それを見送ると目の前でニヤリと笑みを浮かべている5人の折戸修二を見据える。
「貴様に聞きたいことが一つある。貴様と同じ異世界から連れてこられた転生者たちーー奴らを波動で操り、強化したクローンの肉体のデータを手に入れたのは分かった。それでーー肉体が滅びた連中はどうなったのだ?」
ニヤリとしていた5人の折戸がキョトンと拍子抜けしたような表情に変わった後ーー語る。
「……元の世界に帰ったさ。今頃は、自分の家のベッドの上で記憶を失くしてるか、変な夢を見ていたと思って目を覚ましているはずだ。あっちでーー俺みたいに死んでなけりゃね」
「なんで、そんなことを聞く?」
「俺たちの世界の人間を皆殺しにでもするつもりなのかよ?」
次々と聞いてくる折戸にザマスは淡々と目を伏せて呟いた。
「そうか。この世界での肉体が滅びれば、魂は元の世界へと還るーーか。安心したぞ」
「ーーえ?」
「この世界を荒らしたとはいえ、貴様に操られたうえでのことであったのならば。私が紅朗と会う前に殺した転生者どもをドラゴンボールで蘇らせねばならんかと考えていた。だが、要らぬ世話だったようだ」
微かに表情が柔らかくなったザマスに折戸は目を見開く。
「……なんでだ? お前は、トランクスの世界を滅ぼした真正のクズのはずなのに。なんで人間を?」
「フン、間違ってはいない。私は人間こそが悪と思っていた。それはーー孫悟空達や別の世界の私に負けた今も変わらん」
言いながらザマスは不敵な表情に笑みを変える。
「だがーー。滅ぼすべき悪かはーー見極めているところだ」
「……闘う必要は、ないんじゃないか? 俺はーー静かに暮らしたい。ホントにそれだけなんだ、悟空達に成り代わるつもりもない……!」
一番前に居た一人の折戸修二(クローン悟空)の言葉を他の4人も見守っている。
ザマスは、淡々とした表情に変えると告げた。
「その言葉は嘘ではないと分かった……。だが、貴様のしでかしたことに、どれだけ多くの人が巻き込まれたと思っている? 孫悟空達も地球人たちも、お前の世界に居た連中もだ。それに何の責任も取らずに、この場から逃げて静かに暮らしたいなどと思っているのならば」
銀色に輝く光のオーラを身に纏い、白髪を銀色に輝かせてザマスは銀色の目を見開く。
「私が貴様の性根を叩きなおしてやろう……!」
一瞬、5人の折戸は目を見開いて後ろに下がるも一番後ろに居た折戸が叫んだ。
「え、偉そうに説教しやがって! お前だって、世界を滅ぼして人間を殺し尽しただろうが!!」
だがザマスは真剣な目で折戸を見据えて言った。
「ああ……。だから、私は私のやったことの責任を取る。我が生涯をかけて……。それだけのことだ」
真っ直ぐなその瞳に折戸は思わず目を逸らしていた。
「な、なんでだ……。お前は、あんたは、人間を殺すことしか頭にない界王のはずなのに……。ドラゴンボールヒーローズにも、あんたは居ない。あんたは、誰なんだ……」
「……さあな。かつて界王ザマスであり、ゴクウブラックであった誰かだろうさ……。今は時の番人の一人となってタイムパトローラーどもを鍛えている身ではあるがな」
そう言うとザマスは構えを取る。
だが5人の折戸は構えを取れなかった。
俯いた状態で一人が口を開く。
「……逃げて、悪いのかよ? 逃げたら、ダメなのかよ?」
そう一人が口にした瞬間、他の折戸も声を上げた。
「俺は、これまで親の言うとおりにしたよ!!」
「父さんに言われるままに、母さんの期待に応える為に!!」
「ずっと、ずっとがんばって来たんだよ!!」
「本当に限界までーー頑張ったんだよ!!」
「「「「「誰も認めてくれなかったのに!!!」」」」」
血反吐を吐くような折戸の言葉にザマスは、目を細める。
自分の中にある神の力で瞳を見開いて折戸の記憶を読んでいった。
その上で、折戸に向かってザマスは言った。
「……誰も、か? ホントにそうか?」
そう問いかけるザマスの声は、どこかーー自分(折戸)が好きなキャラクターの声に聞こえた。
「どういう意味だよ、ザマス……」
「貴様の言うとおり、誰も貴様を認めてくれなかったというのならば理由は二つ考えられる。一つ、貴様がやっていたことが認めるに値しないことだった」
「な……!?」
「そして、もう一つは貴様自身が認めてほしかった人間に認められなかっただけーーということだ」
絶句する折戸に向かって淡々とした表情で、言葉でザマスは言う。
「貴様の記憶は読んだーー。だが、貴様が思っているよりも周りの評価は悪くはなかった。貴様を認めるものは多くいたーー。貴様に聞く耳と見る目がなかっただけだ」
自分を責めるでもなく、淡々と事実を述べるだけのようなザマスの言い方に折戸は何も言い返せない。
言い返せなかった。
頭が真っ白になっていたーー。
ただ、何故か言葉は耳によく届いている。
「貴様は努力したーー。それは事実だ。だが貴様は根底からはき違えている。貴様が努力する理由は、親に認めてもらう為だけだ。ならば親の言いなりになるだけではなく、何を求められているのかを考え自分なりに動くべきだった。そう、話し合うということをなーー」
「……無理だよ。何を言っても、俺の言うことなんて聞いてくれないんだ。好きなものは全部取り上げられたんだ。勉強しろ、勉強しろって言うばかりで。俺の家系は医者だった、医者になるのが当たり前だって言わんばかりに勉強しろってーー」
「…それでも孫悟空のカードを貴様は捨てなかったのだろ? 本当に好きなものは、誰かに言われたくらいで捨てはしない。貴様には意志があるのだからな」
そう言いながらザマスは自嘲気味に笑った。
「誰にも認められていないーーそう言いながら、貴様は耳を塞いでいたのだ。貴様を認めていたもの、感謝するものが多くいる中でーーな」
すがりつくような幼子のような目で折戸が目を上げる。
「でもーーその人たちは俺の、両親じゃない。俺の人生を変えてくれるヒトじゃない」
「凝り固まった頭では、誰に何を言われようとも自分の価値観こそが正しいと思うーー、私がそうだった」
そう言い切るザマスに、思わず言葉を止める折戸。
そしてザマスは言った。
「だがーー私を変えたのは、孫悟空を含めた多くの人間と別の世界の私だ。私の正義を間違っていると言った孫悟空。私を弱いと言ったハルという子ども、そして私を否定した別の世界の二人の私」
言いながらザマスは纏っていた銀色の光を納めて言った。
「もっとも、私は言葉だけで止まれはしなかった。貴様もそうだろう、私に何を言われても腹の底からは納得できまい」
そう言うとザマスは、自分の後ろに立っている人物を見ずに左に一歩退くと告げた。
「後は、同じ世界の貴様に任せるぞ。久住史朗よ」
現れた人物は悟空よりも身長が低く、がっしりとはしているが筋肉質というわけでもない。
黒髪の黄色人種ーー日本人だと、すぐに分かった。
皆が誰だと訝しむ中で、ジャージ姿の冴えない男は左腕に巻いたカプセルコーポレーションマークのベルトに右手に持った孫悟空のカードをかざす。
「ーー変身!!」
瞬間、光の粒子に変わったカードは男の全身を包み込む。
光が晴れたときーー紅と左胸に書かれた山吹色の道着を着た黒髪を左右非対称に跳ねさせた髪型の男ーーそう、孫悟空そのものへと変身した。
「……な、な!?」
5人の折戸修二に向かって不敵に笑う黒髪の孫悟空。
「よう、折戸。決着を付けようぜ……!!」
その声は、久住史郎ーー紅朗そのものだった。
そんな彼らの姿を腕を組んだ姿勢で茶色い尾を生やした山吹色の道着を着た超サイヤ人が、ニヤリと笑みを浮かべて見ていた。
次回もお楽しみに!(;^ω^)