ドラゴンボールFZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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第35話 悟空、やっぱアンタはヒーローだ

 俺は、ついに一連の事件の犯人を倒した。

 

 だが、倒れ伏した犯人ーー折戸修二を見ても俺の胸はスカッとしない。

 

 今の俺の姿は日本人、久住史郎そのものだ。

 

 だけど、コイツは自分の元の姿に戻れてない。

 

 クローン悟空の姿のまま、だ。

 

「どうすれば、コイツを助けられるんだ? コイツは確かに許されないことをしたかもしれないが、コイツが歪んだ原因はどうしようもない親のせいなんだ。俺は、コイツをーー」

 

 助けてやりたい。

 

 もしかしたら、コイツのように俺はなっていたのかもしれないんだ。

 

 あの時ーー、ダチを助けられなかった俺。

 

 関係ない不良までぶちのめした、自分の弱い心。

 

 コイツは現実の世界では暴れなかった。最期まで他人を傷つけることはしなかった。

 

 漫画ドラゴンボールによく似た世界に来てしまって、現実じゃなくて漫画の中だと思って、夢見心地に人を巻き込んで世界を混乱に貶めた。

 

 この世界の人たちにとっては、コイツはド外道だ。

 

 でもよ、コイツを責めるにはコイツと同じ世界から来た俺には無理だ。

 

 俺はーーコイツを知り過ぎてしまった。

 

 どうしようもないことがあるんだよ。

 

 どんなに思っても、どんなに抗っても、必死になってやっても自分の思うとおりには行かないことがあんだよ。

 

 コイツに比べて俺は親がまともだ。

 

 俺みたいな馬鹿を生み出してしまった親父やお袋には悪いが、俺にとって親はまともだ。

 

 コイツのように、自分の子を道具にしようとするような奴じゃない。

 

「ーーおっと。それくらいにしておこうか、紅朗くん」

 

「! お前は、フュー!!」

 

 俺の目の前には、いつの間にか銀色の髪をオールバックにした紫色の肌の青年が立っている。

 

「君は、彼らを直接は知らない。あくまで折戸君の眼を通して視ただけだ。だからーー彼らのことを軽々しく思うのはやめよう。それじゃあ、君も『君が嫌っている彼ら』と変わらないよ」

 

 その眼鏡の奥にある金色の瞳はジッと俺を見つめている。

 

「……そうだな。それに折戸にとっては、親だものな」

 

「そういうことさ」

 

 微笑みかけるフューの周りにセル、ブウ、ザマスが取り囲んだ。

 

「さてーー今回の混乱を引き起こした貴様は、このまま帰られるとは思っていまい?」

 

 ザマスの言葉にフューはニコリと笑って言った。

 

「もちろんだよ。だけどーー君に捕まってあげるわけにはいかないかな。真・超サイヤ人の原理もようやく解明できそうなときに、ね」

 

 これにザマスは姿を漆黒の道着を着た黒髪の悟空ーーゴクウブラックへ変身すると同時に薄紅と紫のオーラを纏う超サイヤ人ロゼになる。

 

「フン、科学者如きに俺たちサイヤ人の力を解明されてたまるか……」

 

「フフフ、君もすっかりサイヤ人だね。ザマスーーいや、ゴクウブラック」

 

 これにセルが緑色と金色のオーラを、ブウが超サイヤ人ロゼと同じ色のオーラを身に纏う。

 

「やれやれ、私達のことは眼中にないようだな?」

 

「すぐに思い知らせてやろう。私たちの恐ろしさをな!!」

 

 その時だった。

 

 空間に穴を無理やりあけて3メートルを越える巨体に長い黒髪、鉄製のマスクをした赤目のサイヤ人がフューと戦士達の間に割って入るように現れた。

 

 その尻には黒に近い猿に似た尾が生えている。

 

 な、なんだ、コイツ!?

 

 伝説の超サイヤ人のブロリーと同じくらいの体格に、ラディッツに似た髪型の赤目のサイヤ人!?

 

「ガハハハッ、見つけたぞ! 時の狭間では、貴様に負けたが今度は俺が勝つ!!」

 

「貴様、あの時の……!! まだ生きていたか」

 

 目を見開いて驚くもすぐに構えを取るブラックに赤目で巨漢のサイヤ人が笑みを向ける。知り合いーーなのか?

 

「来てくれたんだね、カンバーちゃん。助かるよ」

 

「貴様の為ではないぞ。俺はーー俺を倒した強者と死合うために来たのだ」

 

 カンバーと呼ばれた赤目のサイヤ人は、フューにそう告げると赤と黒のオーラを身に纏う。

 

 凄い気だ……!

 

 これにセル、ブウもまたフューからカンバーというサイヤ人に対して構えを取り直した。

 

「フフ、私たちを置き去りにして勝手に話を進めおって……」

 

「まあ、いい。全員薙ぎ倒せばよいだけのことだ!!」

 

 セルとブウは、自分の身に纏うオーラを激しい炎のように燃え上がらせる。

 

 同時にブラックも超サイヤ人ロゼのオーラを激しく燃やした。

 

「ククク、どうやら役者が揃ったようだな」

 

 すると、これまで黙っていた一人の男が動き出す。

 

 その男は、超サイヤ人孫悟空と全く同じ姿をしている。

 

 その尻から茶色の猿に似た尾が生えていることと、人造人間編からブウ編までの悟空の道着と同じく山吹色の道着は文字が無く無地であることを除けば、この世界の孫悟空と何ら変わりがない。

 

「造られた人形無勢が、俺の邪魔をするな!!」

 

 これにカンバーが苛立ちを隠そうともせずに吼える。

 

「そういうことだ。どうせ姿形を孫悟空に似せただけのクローン戦士だろう?」

 

 セルもつまらなそうに告げる。

 

 孫悟空のクローンは、静かに金色と黒のオーラを纏うと言った。

 

「俺は戦闘民族サイヤ人ーーカカロット! 貴様らを倒し、この俺こそが唯一無二のサイヤ人の戦士であることを証明してやろう!!」

 

 おいおい、戦闘民族サイヤ人カカロット?

 

『ドラゴンボール真』って漫画と同じ展開ーーって!?

 

「昔見た、二次創作の漫画じゃねえかぁああああっ!!!」

 

 俺の絶叫が荒野に響いていた。

 

ーーーー

 

 漆黒の闇。

 

 上も下も右も左もない。

 

 ただただ黒い空間に僕は浮かんでいた。

 

「ここは……?」

 

 そうかーー、ドラゴンボールの世界だから蛇の道に行くのかと思ってたけど。僕は、この世界の人間じゃないから蛇の道には呼ばれないのか。

 

 じゃあーーこのまま、この漆黒の闇の中で消えるんだろうかな。

 

 それもーー仕方ないのかもしれない。

 

 僕は、何も為せなかった。この世界でも、元の世界でも、何者にもなれなかった。ただただ、大きいことをしようとして、皆に見てほしくて、でもーー誰も僕を見ていなかった。

 

 興味なんて誰ももってくれなかった。

 

 ああーー僕は、何のために生まれてきたんだ。

 

「でも……やっと、消えれるのか。僕はーー僕でなくなるのなら」

 

 涙が出てくる。

 

 安堵感もあるけど、胸に何も満たされない感覚もある。消えたい気持ちと消えたくない気持ち。どちらも強くて頭の中がうるさくて、仕方ない。

 

「ーーよ! オメエ、こんな所で何してんだ?」

 

 耳に聞こえてきたのは、僕が大好きだった漫画の主人公だ。

 

 こんな真っ暗な世界でも、彼の姿は眩しくて声が明るくて、笑顔が輝いて見えた。

 

「なんでーー悟空が、居るんだよ?」

 

「へへっ、なんでだと思う?」

 

「ーー知らないよ。僕はーーもう消えるんだ。放っておいてくれよ」

 

 そう言うと能天気な悟空はどうせ「そっか。オメエがそう言うなら仕方ねえな」って言って消えるはずだ。

 

 そう思ってた。

 

「……」

 

 だけどーー目の前の人は違った。

 

 ジッと立ち止まって、温かい笑顔を向けて僕を見てくる。

 

 まるで僕が何かを話すのをジッと待っているかのように。

 

「ーーなんだよ、悟空?」

 

「何もねえさ。ただ、オメエと話がしたかったんだ」

 

「ーー僕の話なんか、何も面白くないよ。貴方とは違うんだ、貴方みたいに英雄じゃないんだから」

 

「そうか? オラはオメエの話、興味あんだけどなぁ。なんせ、ここまでオラ達の世界をめちゃくちゃにかき乱してくれたんだ。どんな悪りぃヤツなんかと思ったら、オメエは全然悪りぃヤツじゃねぇ。こうやってオラと話もしてくれっしさ」

 

 その真剣な瞳は、ジッと僕を見ていた。

 

 ドラゴンボールの主人公で、破壊神にさえも実力を認められた男がーー僕のような、どうしようもない人間を真っ直ぐに見てくれていた。

 

 他の誰もが、僕を見てくれなかったのにーーこのひとだけは、僕を真っ直ぐに見てくれた。

 

 いや、違う。僕を真っ直ぐに見てくれたのは、もう一人。

 

「久住史朗さんの差し金ーーか? じゃなきゃ、僕の所に悟空が来るわけがない」

 

「オメエも中々頑固なヤツだなぁ。確かにオラは史朗とリンクしてたけどよ、ここに来たんはオラの意思だ」

 

「ーーなんでだよ?」

 

「言ったろ? オメエと話がしてえんだ。教えてくれよ、なんでこんな滅茶苦茶なことしたんか。元の世界で何があったんか。オラにも教えてくれ」

 

 真剣に根気よく僕を待ってくれる悟空に、気付いたら口を開いていた。

 

 この人なら、分かってくれるかもしれない。

 

 この人なら、俺を嗤わないでいてくれるかもしれない。

 

 この人なら、僕を認めてくれるかもしれないーーと。

 

 全てを話し終えるまで悟空は何も言わずに僕をジッと見ていた。

 

「そっか。オメエ、頑張ったんだなぁ」

 

「………っ」

 

 その言葉を聞いて涙があふれていた。

 

 どうしようもなく、止めることができなかった。

 

 声が、自然と洩れて、どうしようもなく俺はーー泣いていた。

 

「誰もーー誰もっ、父さんも母さんも、俺を褒めてくれなかった……」

 

「そうか」

 

 言いながら温かくて大きな手が、俺の頭の上に置かれる。

 

 いつの間にか逞しい男の腕が俺を抱きしめていた。

 

「ごめんなさい……、父さんと母さんの期待に応えられなくて。ごめんなさい、この世界の人々を巻き込んで。ごめんなさい……。僕は、ただただ、誰かにーー」

 

「褒められたかったんだなぁ、オメエ」

 

「……っ!!」

 

「無理もねぇや。何をしても褒めてくれねぇんじゃ、どうやって行きゃいいのかも分かんねぇ。それでも、オメエはオメエなりに頑張った。必死んなって、歯ぁ食いしばって。よく頑張ったなぁ、オメエはすげえよ」

 

「うわぁぁああああああああああ……っ!!!」

 

 世界が真っ暗な空間がーー明るい虹色に覆われていく。

 

 孫悟空ーーこのひとの光が、存在がーー全てを変えていく。

 

 ああ、これが悟空なのか。

 

 理屈じゃないーー、ただそこにいるだけで僕はーーこのひとに救われると分かる。

 

 このひとこそがーー本物の英雄なんだって僕は誰よりも知っているから。

 

「ーー落ち着いたか?」

 

 泣き止み、静かになった僕を離して悟空が二歩後ろに下がって聞いてきた。

 

 僕は頷く。

 

「ええ。なんとかーー、ありがとうございます。孫悟空さん」

 

「気にすんな。それより、そろそろ目ぇ覚まそうぜ。オメエの帰りを待っているヤツらも居るしな」

 

 空を見上げて言う悟空の声に導かれるように僕の耳にも届いた。

 

「修二さま、目を開けて!!」

 

「……マスター」

 

 僕が時の狭間から連れてきたブルマとーー僕が生み出した21号のクローンであるシャノア。二人の声が僕に届いている。

 

 彼女たちが泣いているのが僕の目に映る。僕なんかの為に彼女達はーー。

 

「オメエ、さっき消えてぇって言ってたよな」

 

 空を見上げていた悟空は僕をジッと見ると不敵な笑顔で言ってきた。

 

「オメエは消えられねぇよ。だってオメエは、自分で作っちまったかんな。消えられねぇ理由をーーよ」

 

「……はいっ」

 

「よし、行くぞ! 修二!! この戦いを終わらせんだ!!」

 

 その声と言葉に励まされながら僕はーー俺は目を覚ました。

 

ーーーー

 

 厄介な状況が続くぜ。

 

 俺の知らないカンバーとかいうサイヤ人に、俺が知ってるけど誕生の経緯は大きく異なるカカロット。

 

 おまけにゴクウブラックだの、セルとブウなんて連中まで居やがる。

 

 21号の悪の分身だって居るし、マジでどうすんだコレ状態だ。

 

「ハチャメチャが押し寄せてくるにしても、限度ってもんがあんだろが!」

 

 言いながら俺は自分の左腕に付けている腕時計型変身ベルトを構えて光の輪に身を包まれる。

 

 リンクしている悟空が俺の内に居ないからか、俺の姿は山吹色の道着を着たクローン悟空の姿になった。

 

「まぁ、だんだんこの姿にも愛着湧いてんだけどな」

 

 言うと同時に俺は更に右手にカードを5枚取り出すとベルトのディスプレイに擦り付けるように払う。

 

 5枚のカードは光の球に変化すると俺の前に5人の山吹色の道着を着たクローン悟空に変化した。

 

 胸と背中の〇にそれぞれ「壱」「弐」「参」「肆」「伍」「陸」の文字が入っている。

 

「壱悟、やってやろうぜ!!」

 

「すべては、紅朗さまの勝利のために!!」

 

 俺たち6人のクローン悟空は互いにリンクシステムでシンクロすることで一気に戦闘力を高めて金色のオーラを身に纏った。

 

 金色の髪に翡翠の瞳、透き通る様に白い肌をした超サイヤ人が6人。

 

「フン、紛い物どもを従えた程度で。俺たちの戦いに入れると思っているのか? 雑魚め!!」

 

「るせぇよ、デカブツ。これ以上ーー悟空の偽者が出てくるのは勘弁ならねぇってだけだ!!」

 

 そう言ってやるとゴクウブラックが微妙な顔で俺を見てきた。

 

「私が言うのもどうかとは思うが。お前が言うか?」

 

「ーー良いんだよ、俺は! 悟空から許可貰ってんだもん!!」

 

「……やれやれ。まぁ、いい。これが最終決戦だ。気合いを入れろ」

 

「分かってらぁ!!」

 

 孫悟空の姿をした俺達を仕切るようにゴクウブラックが右手を払う。

 

 と同時に、俺は気を高めてカンバーとフュー、セルとブウ、そしてカカロットに向かって言ってやった。

 

「覚悟はいいか、テメエら!! 俺は伝説の超サイヤ人ーー孫悟空の意思を継ぐものだ!!!」

 

 俺の宣言と共にセルとブウが気を纏って叫ぶ。

 

「させると思うか、紅朗!!」

 

「この闘いを制するのはーー私たちだ!!」

 

 強烈な気を更に引き上げる二人の異形に対峙するのは、銀髪の青年フューも紫色のオーラを身に纏って青年悟飯の超サイヤ人みたいな髪型に変わる。

 

「僕もやらせてもらうよ。意地の見せ所ーーみたいだしね」

 

「フンーーいいのか? そんな細身で俺たちの戦いに参加しても」

 

 言うと同時、カンバーの気が爆発的に上がって赤黒いオーラを纏う超サイヤ人3に変身する。

 

 これを不敵に見ながら刀を抜いて構えるフュー。

 

 全員が己のフルパワーを引き出しながら燃え上がる中で、カカロットは嗤った。

 

「一度倒した死にぞこない共に異界から魂だけを送られた者ーー神に魔族に過去のサイヤ人、どいつもこいつも俺の邪魔をするな!!」

 

 通常の超サイヤ人でありながら、青色のスパークを放ってカカロットは俺たちに向かってきた。

 

 これにセルが動いた。

 

「まずはーー貴様の力を見せてもらおうか!!」

 

 拳と拳をぶつけ合うカカロットとパーフェクトセル。

 

 強烈な拳と蹴りをぶつけ合い、両者は同時に腰だめに両手をたわめて至近距離で両手を突き出して青い光の球を互いに向けてぶつけ合う。

 

 かめはめ波のぶつかり合いーーだ。

 

「ーーフン」

 

「ぬぅ!?」

 

 気が爆発してセルが後方へと下がりながらカカロットに構える。

 

「この程度か、死にぞこないの化け物」

 

「言ってくれるな。孫悟空の紛い物がぁああ!!」

 

 瞬間、殴りかかるセルの拳を左に見切って懐に右掌を突き出しーー金と黒の光弾をぶつける。

 

「はぁあああああ!!!」

 

 光弾に飲み込まれてセルが後方へ吹き飛び、背中から地面へと叩きつけられて爆発した。

 

「セル! 貴様ァアアアア!!」

 

「邪魔だ、化け物その2」

 

 アルティメットブウがオーラを激しく燃やして突っ込むも、不敵な笑みと共にカカロットは金と黒のオーラを身に纏って超サイヤ人を超えた超サイヤ人に変身する。

 

 拳をぶつけ合うとセルの時とは違ってブウの表情が歪んだ。

 

「なに!? なんだ、この力は!?」

 

「ククク、こんもんか。魔人ブウ」

 

 弾き飛ばされる魔人ブウよりも更に速くカカロットは気を纏って突っ込むとゼロ距離でかめはめ波を放つ。

 

「波ぁああああ!!」

 

「貴様ーー!!」

 

 セルと同じように光の球に飲み込まれて更に後方へ吹き飛び、爆発するブウ。

 

 その爆発を見据えてカカロットは言った。

 

「ケ、ちんけな花火だ」

 

 つまらなそうに吐き捨てると即座に次の獲物を求めて空を走る。

 

 どこかーー悟空の父であるバーダックを思い起こさせるな、アイツ。

 

「紅朗さま、先に誰を狙いますか?」

 

「誰ーーつうか、どの勢力かって話だな」

 

 セルとブウはダメージを負ってはいるが、致命傷じゃないから追い討ちをかけるにしても危険だ。となると、他の勢力を見比べてみた方が早いか。

 

 カンバーとフューのタッグは実力がハッキリと分からない。

 

 カカロットをぶつけて、どちらも共倒れしてくれると有難いんだが。

 

「さぁ、今度は加減はしないよ。史朗くん!!」

 

 フューがいい笑顔でこっちに斬りこんできた。

 

「お前が、こっちに来るんかい!!」

 

 ツッコミを返しながら刀に拳を叩き込んで止める。

 

「ごめんねぇ、君も強いからさ。放っておいたら負けそうなんだよね」

 

「それはそれはーー! 高く評価していただけて何よりですーーわい!!」

 

 左から壱悟が右ストレートを打ち込み、フューは咄嗟に宙返りして避けるのを俺が右上段回し蹴りで捕らえようと放つ。

 

 瞬間、ヤツは宙で光を乱反射するかのように身体が揺らいで消えた。

 

「残像ーーいや、何か違う!?」

 

「魔術って言うんだよ、紅朗くん」

 

 光弾を三つ放ってくるが、何かおかしい。光弾は空間に留まった状態で消えずに光続けている。

 

 設置型の光弾ーーそんなこと、できんのかよ!?

 

 これに弐悟と参悟、肆悟が青い光弾をそれぞれ放って設置されている光球にぶつける。しかし、光弾は煙となって消えるも設置型の方は残っていた。

 

「なんだ、この技は?」

 

「こういうことさーー!」

 

 すると紫色のオーラがフューの恰好を象って影となり、弐悟たちに斬りかかった。

 

 嘘だろ、魔術!?

 

「何でもありかよ!?」

 

「超サイヤ人孫悟空を複数体呼び出せる君に言われたくはないかな。僕が与えたものではあるけど、そこそこ君もバランスブレイカーだよ」

 

「言ってろよ」

 

 んなもん、大して役に立つかよ。

 

 それよりも俺には最高の相棒が居るってのを忘れてもらっちゃ困るってんだ。

 

「壱悟、コンビネーションで決めるぞ!!」

 

「了解しました」

 

 左右から右と左の拳をストレートで放つ俺と壱悟。

 

 咄嗟に刀で受けるも同じ場所に叩き込まれてフューの表情が苦悶に歪んだ。

 

 いける。

 

 そう判断したので俺は一気に逆の手で左フック、右膝蹴り、左ハイキックを連携で放つ。俺の反対側では鏡写しのように全く同じタイミングで右フック、左膝蹴り、右ハイキックを放つ壱悟がいる。

 

(本当にビタで同時攻撃してくるって!? それは話が違うよ!!)

 

 俺たちの同時連携攻撃は、超サイヤ人の状態でも充分にフューの頬に冷汗をかかせることに成功させていた。

 

 当然だろ、超サイヤ人孫悟空の攻撃はヤワじゃない。

 

 その同時連携攻撃なら、良いところに当たったら一発で持っていける。

 

 そんな俺たちを興味深そうに笑いながらカンバーって超サイヤ人3は言った。

 

「フュー! そいつらも中々面白そうだな!!」

 

「ちょっと、面白いで済ませて良いレベルじゃないかな!」

 

「ガハハハッ、貴様がそこまで焦るとは! 良い気味だと思う反面ーー楽しませてくれそうだな」

 

 だがカンバーは俺たちに向けてくることはなく、俺と壱悟の後方で腕組みをしている超サイヤ人ロゼゴクウブラックを睨みつける。

 

「貴様を倒してから、挑ませてもらうとしようか」

 

「ーーできるといいがな。時の狭間で負けた貴様に」

 

「ククク、雪辱を果たすのみだ!!」

 

 巨大な超サイヤ人3が拳を大きく振りかぶって超サイヤ人ロゼに殴りかかる。

 

 これを片手で止めながらブラックは背後の21号と16号を見て言った。

 

「おい、安全な場所へ移動しろ! 此処は危険だ!!」

 

 殴り返し、凄まじい打撃の応酬を繰り広げながらブラックは自分から場を移そうと高速移動をしてカンバーに追ってこさせている。

 

「ーーす、すまない。ゴクウブラック」「あ、ありがとうございます」

 

 16号の言葉に21号ーーディーベも続きながらブルマやシャノア、折戸を連れて離れる。

 

 ローフとメントという邪悪な21号の分身たちは、こちらを忌々し気に見るだけで何もしてはこない。

 

「ち、ちくしょう……っ!」「私たちを大きく上回る戦闘力が、こんなに……!」

 

 既に彼女たちが挑めるレベルではないことは明らかだ。

 

 これなら、俺は目の前のフューに神経を注げばいい。

 

 周りで何かしてこようとも、壱悟たちが何とかしてくれんだろ。

 

 フューの前に俺と壱悟と4人の悟空クローンが構えを取る。

 

「やれやれ、まったく。厄介極まりないな」

 

 不敵な笑みを浮かべるフューに俺も笑みを返す。

 

「降参するなら許してやんぜ? どうするよ」

 

「それをしたいのは山々なんだけどね。君の後ろに居るゴクウブラックくんが僕を許してはくれないさ」

 

「……お前、そうとう悪いことしてないか?」

 

「そこはホラ。僕って魔王ダ―ブラの甥だからさ」

 

 こいつ、こんな時だけ便利に自分の出生を利用しやがってーーって、魔王ダ―ブラの甥?

 

「うっそ、お前! あのバビディに洗脳された魔王の甥!? そんなキャラまで居るのかよ……!!」

 

「フフ、君の世界でも僕は認知されてるみたいだよ。折戸くんが言うにはね」

 

「……恐ろしい。時代の流れは恐ろしいぜ……」

 

 そう言う俺に向かってニコリと笑みを返すフュー。

 

 その後ろでは激しい激戦を繰り広げるゴクウブラックとカンバーが居た。

 

「ガハハハッ、更に強くなったようだな!! 面白いぞ!!」

 

「ちぃ、調子に乗るなよ。戦闘狂めが!!」

 

 ブラックの全身から薄紅色の炎とは違う銀色の光が混ざっている。瞳が黒の瞳孔が現れた銀色に輝いているのが見えた。

 

 あれーーああ、あれは折戸が変身した銀色の髪になるやつだ。

 

 アレって超サイヤ人と併用できるのかよ。ずるくね?

 

 多分だけどーーこの場で一番強いのは、あの二人。ゴクウブラックとカンバーだ。ブラックがまだ真・超サイヤ人になってないから、本気の本気は多分ブラックが一番強いんだろう。

 

 ってことはーーだ。

 

 俺たちが倒さなきゃならないのはフューと、カカロットにセルとブウってことか。

 

「人数的には勝っているんだけど、いかんせん戦力差がやばいな」

 

「超サイヤ人孫悟空をそれだけ手に入れているのに、戦力差がやばいって? ちょっと感覚がおかしくなってないかな?」

 

「ばぁか、仮に悟空本人を4体召喚できるのなら強ぇよ。それこそ界王拳までしか使えない悟空でも釣りが来る。だけど今の俺は超サイヤ人孫悟空の能力を持ったアバター(意思のない分身)を動かせるだけに過ぎない。これじゃ悟空の戦闘センスや勘を反映できない。宝の持ち腐れってやつだ」

 

「フフ、真超サイヤ人になったころもそんなことを言っていたね。その肉体を完全に使いこなせるようになった次の段階は、召喚する分身達の能力向上ってところかな」

 

「まったくーー果てが無いぜ。この力も能力も、流石ーー孫悟空だ」

 

 とことんまで強くなってもなお、更なる高みを見せられちまう。真超サイヤ人になっても、悟空とリンクしても悟空の感覚や勘までは手に入れられない。

 

 そう考えるとゴクウブラックーーいや、ザマスは凄い。

 

 孫悟空ではないのに孫悟空に匹敵ーーあるいは凌駕するほどに悟空の身体を使いこなし、感覚や勘も勝るとも劣らない。

 

 正直、俺のレベルではまだまだ、そこまではいけない。

 

「ああ、使いこなせない。ーー真・超サイヤ人じゃないと、なぁ!!」

 

 言うと同時に俺は俺の中にある力を見つめる。

 

 その黄金の炎が俺の全身を包み込むと、俺は目覚めるんだーー真の超サイヤ人に。

 

「紅朗さまーー!!」

 

 俺が真の力を開放したことで、隣の壱悟も黄金の炎のような激しい気を身に纏う。

 

 俺たちの瞳には黒い瞳孔が現れ、圧倒的なパワーが一気に満ち溢れる。

 

「……本当に凄いよ、きみは。その力はね、僕がなれなかったものだ。サイヤ人の細胞を持っている僕でも、その力には至れなかった。その姿にはなれなかった。きみはーーきみたちは成れるんだね。本当に羨ましいよ」

 

 フューが悲しそうな瞳でそう言ってきた。

 

 だから俺は言ってやった。

 

「成れるさ、テメェも。自分はできるーーやれる。そう思って信じて信じて信じ抜いたその先にーー俺の真・超サイヤ人孫悟空は居たんだからよ」

 

 まあ、俺の場合は最初から『超サイヤ人孫悟空は最強だって知ってた』からーーなんだけどな

 

「簡単に言ってくれるね。自分の姿に一切の疑問を持たず、やることにも努力の先にも迷いがなく、信じ抜くなんて普通は無理なんだけどね。きみはーーきみたちは成れた。それが答えなんだろうね」

 

 微笑みながらもフューは気を取り直すように気を高めて刀を構える。

 

 一瞬で片を付ける。

 

「「いくぞ、フューゥウウウウウ!!!」

 

「来い、異世界から来た人間!! 僕にだって、意地があるんだぁあああ!!!」

 

 俺と壱悟の声が同時に発せられ、フューの声にも覇気が載せられる。

 

 まったくーー楽しいじゃないか。

 

 殴るのが怖いとか、傷つけるのが恐ろしいとか、そんなもんの先にあるじゃないか。すべてを絞り尽くしてなお足りない。ぶつけ合わなきゃ分かり合えない。そんな大事なもんがよ。

 

 俺と壱悟が螺旋を描くように舞空術で跳びながらフューに迫る。

 

 フューも真っ向から真っ直ぐに気を纏って突っ込んできた。俺たちは勢いを落とすことなくまともにぶつかり合う。

 

 俺と壱悟が普通の超サイヤ人でのコンビネーションでも冷や汗をかいていたのに、この野郎。真っ向からぶつかって来やがった。どんだけの意地だ? 面白いじゃねぇか。熱くさせてくれるじゃねぇか。

 

「ならーーとことんやろうぜ、フュー!!」

 

「付き合ってやるよ、久住史朗くん!!」

 

 俺と壱悟の拳と蹴りのコンビネーションに最初は互角に殴り返していたフューも、次第に巻き込まれていく。攻撃を繰り出せば繰り出すほど、俺と壱悟のコンビネーションは鋭く速くなっていく。

 

 相手のレベルが上だろうと、それを更に上回ればいい。

 

 闘えば闘うほどにーー俺は強くなれる。相手が自分を上回るのならば戦いの中で成長して上回れば良いだけ。それができてしまう。それがーー超サイヤ人の真の姿なんだから。

 

「グハァッ!」

 

 ついに、壱悟の右拳がフューの腹を捕らえた。くの字になり、前のめりにくず折れるフューの顎を俺の左拳がフック気味のアッパーで根っこが引き抜かれたように上へ吹き飛ばす。

 

「ガハァッ」

 

 悲鳴を上げるフューの身体の真ん中に向けて俺と壱悟は左右から後ろ中段蹴りを槍のように放って後方へ吹き飛ばす。

 

 フューが何かに激突する前に俺と壱悟は背中合わせで腰だめに両手をたわめて光を練り上げる。

 

「これで終わりだ、ーーかめはめ波ぁあああああっ!!」

 

「波ぁああああ!!!」

 

 同時に突き出し、螺旋を描いて俺たちの極太のかめはめ波がフューに迫る。

 

「ーーっ!!」

 

 両腕を交差し、フューは受ける姿勢になった。

 

 直撃は避けられないーー俺たちの、勝ちだ。

 

「ホント、馬鹿なコね」

 

 その時だったーー、俺たちの螺旋かめはめ波を空間に巨大な赤黒い穴が開いて吸い込んだのだ。

 

「なんだと……!?」

 

 まるでーージャネンバみたいな技だ。それを杖を持った青い肌の女がやったってのか。それにこの気は、似てるぞ。フューに。

 

「ーーか、母さん」

 

 目を見開いてポカンとするフューの前には、銀髪の青い肌の美女が居る。そしてーーその横には、ざんばら銀髪頭の青い肌の逞しい肉体の男。

 

「よくもーーフューに、ここまでのことをしてくれたな。人間……!!」

 

 圧倒的な赤黒い気を纏う男。コイツはーー相当な強さだ。下手をすればカンバーや今のブラックに匹敵してるかもしれない。

 

「……ほう。俺の力を目の当たりにして笑うーーか。さすがは真の超サイヤ人。息子がこだわるわけだ」

 

「息子? なるほど、テメェはフューの親父か」

 

 俺と壱悟は真超サイヤ人をいったん解いて通常の超サイヤ人に戻る。

 

 下手に真超サイヤ人を継続すればパワー切れになって動けなくなるからだ。だけど、流石にコイツを相手にするには真超サイヤ人じゃないとヤバイだろうな。

 

「父さん! これはーー僕の戦いなんだ!!」

 

「……いい顔になったな、フュー。ならばーーここは退け。この闘いはお前の負けだ」

 

「……っ!!」

 

「嫌だと言うのなら、俺がお前のこだわっている者を全て薙ぎ払うだけだぞ?」

 

 こともなげに言ってくれるぜ。テメエだけで俺と壱悟を倒せるだと……?

 

 もう一度、真超サイヤ人になる覚悟が決まったーーそう思っていた俺を止めたのはフューだった。

 

「ーー分かったよ、父さん。ここは父さんと母さんの顔を立てるよ」

 

「そう。聞き分けが良くなったわね、フュー」

 

 言うと同時に空間の裂け目が現れて女と共にフューは去っていった。それを見送った後ーー男は俺をふり返って睨みつけてくる。

 

「命拾いしたな、異世界の住人。フューが退かなければ、貴様の命を貰っていたところだ」

 

「……なめた口叩いてくれるな。言っとくが、俺もただでやられやしねぇぞ」

 

 しばらく睨み合うと男は言ってきた。

 

「いい度胸だ。だがーー貴様とは、もう会うことはないだろう。せいぜい、元の世界で生きるがいい」

 

 言うと同時に男も空間の裂け目へと消えていった。

 

 その時ーー超サイヤ人ロゼの一撃が超サイヤ人3のカンバーの胸を打ち貫いていた。

 

「グォオオオ、これほどとは。見事だーー同族よ」

 

「何を言う。貴様こそ、神の気を纏わず。真の力を引き出さずして、この強さ。見事だ」

 

 片膝を付いて巨漢のサイヤ人は黒髪へと戻る。

 

 それを見下ろしながらゴクウブラックも黒髪へと戻った。

 

「さあ、行くがいい。更に腕を上げてな。せいぜい、己を高めておくことだ。私は、貴様の強さを更に一つ超えてやろう」

 

「ーーククク、ぬかせ。楽しみにしているぞ!!」

 

 そう言ってカンバーもまた現れた空間の裂け目へと入りーー消えていった。

 

「よぉ、流石だな。神さま」

 

「ーー貴様もな。よくぞ、あのフューに打ち勝った」

 

 互いに笑い合い、俺とブラックは右手を合わせて叩いた。

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