ドラゴンボールFZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

5 / 34
さ! 今回は真・超サイヤ人の登場回です。

21号の作り出した波動が、何故悟空には効いていないのか。

解説をさせて頂きました。

ではでは、楽しんでください( *´艸`)



第5話 悟空、その変身は何?

 

 視界が戻った。

 

 あの時、折戸から攻撃された時に聞こえた、あの声は?

 

 俺が記憶を取り戻した副作用で頭痛に苦しむ中、目の前では悟空と16号が睨み合っている。結構、長い時間思い出してたと思うが、実際にはあっという間だったってことか。

 

「…16号。どうしても、やるんか?」

 

 真剣な声で、悟空は16号に問いかけた。

 

 闘いが大好きなサイヤ人としての一面が強調されがちだが、この人は本来こういう人だ。

 

 ちゃんと時と場合と相手を見て判断してる。

 

 魔人ブウ編の時、ベジータとの戦いよりも最初はバビディ達を倒すことを優先していた。

 

 老界王神へのエネルギー弾がキチガイと呼ばれるが、その前に界王神は初登場時に「界王神なら誰もが片手でフリーザを倒せる」と述べていた。

 

 軽いエネルギー弾くらい、フリーザを捻れる実力者ならどうとでも出来るはずだったから撃ったのだ。おまけにいきなり後から現れて、やたら偉そうだったしな。あのジジイ。

 

 って言う事までいちいち説明しないと悟空はガイジだ、なんだって五月蝿えのなんの。

 

 と、ネットの批判関係の方面に意識をやると頭痛がマシになる不思議。

 

 俺も単純ってことか。

 

「オメエ、闘うのが好きじゃねぇだろ? それに、そんな辛そうな顔で構えられても、やりづれえ。話してくんねぇか? オメエのこった、何か理由があんだろ?」

 

 そんな俺のバカな内心とは無関係に、悟空は真剣な表情で16号を見ている。

 

「…孫悟空。今回はお前を殺せとは命ぜられていない。だが、お前に従えとも言われていない」

 

「そう言うなよ。コレでもオラ、セルん時から相当強くなってんだ。紅朗と一緒にオメエの力になれると思うぞ?」

 

 明るい表情で告げた後、黒目を鋭く細めて悟空は続ける。

 

「オメエにゃ、ホントに世話んなったからな。セルん時、悟飯を助けてくれてーーあんがとな。その礼をずっと言いたかった。あの世でもオメエは居なかったかんな」

 

「…せっかくだが、その礼は俺には要らない。俺は無から新しく作り出された」

 

「ホントに、そうか? オメエ”今回は”って言ったよな」

 

 そうだよな、気付いちゃうよな。

 

 俺だって気付いたもの。16号嘘、下手だよなぁ。

 

「……」

 

 黙り込んだ16号に対し、ニヤリと不敵に笑って悟空は続ける。

 

「悪いヤツの言う事を聞く必要はねぇ。まして、そんな顔するまで無理して闘う理由もねぇ。だろ?」

 

「…お前には無くとも、俺にはある。紅朗ーーとお前が呼ぶ、その男を連れて帰る。アイツの為にーー!」

 

「だから、その理由を説明してくれって!」

 

 一歩踏み出して問いかける悟空に16号は静かに白いオーラを纏い構える。

 

「…孫悟空。今、俺がしなければならないのは、何よりもその男を確保することだ」

 

「アイツの為にって言ったな? オメエ、誰かを人質に取られてんのか?」

 

「…」

 

 何も語らない16号だが、明らかに表情が翳る。

 

 人質ーー。思い当たるのは一人だが、人質と言ってよいのか。

 

 記憶が戻った今、俺も悟空に説明してやりたいが。

 

 上手く説明できる気がしない。

 

 側から見たら21号のアレは単なる自作自演だ。

 

 そんな事を考えていると、16号が動いた。巨体に似合わぬ速度で風を巻いて悟空の眼前に踏み込んでる。

 

 その頃には悟空の顔に鋭さが宿っていた。

 

「だぁあああっ!!」

 

 悟空の顔程もある巨大な右拳を打ち込んでくる16号に対し、顔の前に上げた左手で掴みとめる。

 

「……なぜ、超サイヤ人にならない?」

 

「今じゃ、変身しなくてもある程度の力を引き出せるようになってんだ。こんな風に、な」

 

 悟空の纏う白い気に金色の光が交わると、拳を掴んでいた左手を突き離し、16号を後方へ吹き飛ばす。

 

 16号は即座に地面に足を叩きつけると、前に踏み込んで来ている悟空を睨み付けた。

 

 拳を振りかぶる両者。

 

 中央でぶつかり合う拳と拳ーー炸裂弾のように弾ける。

 

 同時、地面を蹴った両者は目にも映らぬ高速移動で、空も地も構いなしに駆け抜け、そこかしこで衝撃波を生み出し合う。

 

「…やるじゃねえか。今のオメエなら、あの頃のーー完全体のセルとも戦えそうだな」

 

「孫悟空ーー。いつの間に、コレほどの戦闘力を」

 

 あんだけ、とんでもない動きで走り回って殴り合っておいて、信じられないことに悟空にはまだまだ余裕が感じられる。

 

 16号が驚くのも無理はないぜ。

 

「強いーー。だが、この強さ。波動の影響下に無い。波動に包まれた地球で、上限を大きく上回る戦闘力。何故だ、孫悟空?」

 

「波動を無効化してっからさ。オラの中にある超サイヤ人の波動でな」

 

「! 超サイヤ人の波動ーー?」

 

 ニヤリと不敵に笑い、悟空は続ける。

 

「コイツは、オラの中に眠っていたサイヤ人の破壊衝動と超サイヤ人の興奮状態を合わせたような力だ。オラにコイツを教えたヤツと名付けたベジータから名前を借りたら、真・超サイヤ人ってんだがな」

 

 ん? 真・超サイヤ人?

 

 それって、『その後のドラゴンボール』とか言うのであった超サイヤ人4と超サイヤ人3と超サイヤ人1を足して大猿で割ったような姿のアレか?

 

 二次創作のーー。

 

「それはーー超サイヤ人ではないのか?」

 

「いや、超サイヤ人そのもの、さ。通常の超サイヤ人や他の超サイヤ人を極めて極めて極め抜いた先にあるサイヤ人の可能性の究極。オラの中にある最強のオラの姿さ。オラ自身が超えなきゃならねえーーな」

 

 超サイヤ人1の状態をとことんまで極めたってことか?

 

 それってセルゲームでやった超サイヤ人第4段階と何が違うんだってばよ?

 

「コイツは、普通の状態でも力をある程度引き出せんだ。便利なもんだろ? そんでなくても、今のオラは素の戦闘力で充分に完全体のセルくれえなら倒せっけどな」

 

 ハッタリに見えない。

 

 どうゆうことだ。悟空の強さがGT時空並みに見えるんだが?黒髪だよね、今。アルティメットじゃないよね?

 

 素の戦闘力って、それでPセル倒せたら無敵じゃね?

 

 あ、神の気ってヤツのせいか?

 

「……複数の気を同時に生み出して波動エネルギーを己の体内で発生させ、21号が作り出したマイナス波動を無効化するとは。最早、俺では相手にならないようだな」

 

「だな。納得してくれて助かるぜ。下手に超サイヤ人になると、今のオラは真・超サイヤ人に変身しちまいかねねぇかんなぁ」

 

 なんだろう?

 

 悟空って、普段からあんまり自分の力をひけらかしたりしないんだけど。この真・超サイヤ人にだけは、あまり変身したくなさそうだ。

 

 もしかして悟空が悪のサイヤ人になったりするんだろうか?

 

「…真・超サイヤ人のデータを取らせてもらいたい」

 

 それだけを言い、構える16号に悟空も目を鋭くする。

 

「真・超サイヤ人の波動が、オメエの助けてぇヤツに関わんのか?」

 

「………ああ」

 

 ハッキリと16号は応えた。

 

 俺も思わず16号を見つめていた。21号を助けるのに、波動を無効化する必要があるのか?

 

「分かった」

 

 そんな短いやり取りの後、両手を腰に置いて拳を握った悟空の足下から黄金の炎のような激しいオーラが噴き出し、天に向かって昇り始めた。

 

 黒髪が逆立ち、目が輪郭線のあるものとなり目付きが鋭くなる。

 

 また、黒い瞳は虹彩の部分が翡翠に変わり、瞳孔は黒のまま浮かび上がっている。

 

 悟空は超サイヤ人そのものって言っていたが、確かに。

 

 見た目は俺(悟空クローン)とほとんど変わらない。超サイヤ人ブルーみたいに青くなる訳でも、超サイヤ人3みたいに髪が伸びる訳でも、超サイヤ4のように赤い体毛と尻尾が生える訳でもない。

 

 ただ、金色よりも濃い燃えるような黄金の髪と、超サイヤ人3のように瞳孔が開いた翡翠眼をしている。超サイヤ人からすれば、それだけの変化だ。

 

 ああ、見た目はーーそれだけ。

 

 だが、中身はーー!! 感じられる重圧の方は、どういうこったよ?

 

「…このエネルギーは。想定を遥かに超えている!」

 

 あのポーカーフェイスの16号でさえ、表情を崩して驚愕の色を隠せない。圧倒的な迫力が、問答無用の力が今の悟空には、ある。

 

「…コレが俺のーー超サイヤ人孫悟空のフルパワーだ。悪りいが、まだまだ気は上がんぜ」

 

「う、嘘だろ。今の状態でも桁が違うのに、まだ上がんのかよ?」

 

 低い声は、ナメック星で変身した頃の超サイヤ人を思い起こさせるがーー話し方は、どちらかと言うと超サイヤ人4。

 

「どうだ、16号。俺の力。なんか、参考になりそうか?」

 

 険しく冷徹な表情が、鋭さを保ちながら穏やかに笑っている。やべぇ、マジでイケメンだ。

 

 男の俺が見惚れちまうくらいだ、女なら瞬殺だ。

 

 何がどう瞬殺かは、分からんが。

 

「…そのエネルギーならば、もしかしたら止められるかもしれん。彼女の暴走を」

 

「…やっと、話をしてくれる気になったみてぇだな」

 

 16号の静かな言葉に黄金の炎が霧散し、通常の黒髪黒目の何処か幼く無邪気な雰囲気の青年に悟空は戻る。

 

 コレが、ギャップ萌えってヤツか?……凄まじい。

 

 あまりの悟空の格好良さに痺れてまともな思考を取り戻すのに、大分苦労した。

 

「なあ、悟空? 超サイヤ人に変身できないって言ってたのって。さっきの真・超サイヤ人になっちゃうからか?」

 

「ああ。あの力は、ホントにとんでもなくてよ。オラだけどオラじゃねえ力なんだ。オラの中に眠ってる力を変身してる間は無限に引き出してくれっけど、代わりに細かい手加減とかが出来ねぇ。体力と精神力も消耗しちまうしな」

 

 非常に丁寧な説明をしてくださる孫悟空さん。

 

 さて、16号が話を始める前に、さっさと俺の本題を話そうじゃあないか。

 

「俺と初めて会った時。超サイヤ人に変身して攻撃してきたよな? 手加減できないって分かってた上で?」

 

「……えっと、オメエならさ。なんとか出来ちまうって思ったんだ。一応、あん時は超サイヤ人のまんまだったし。手加減もちゃんと出来たし。何よりオラ、これでも勘だきゃあ良い方だからさ。オメエも、ちゃんとオラの拳を止めてたろ?」

 

「俺の事、やたらと買いかぶってると思ったら。そんな事情かい」

 

 この戦闘民族め。

 

 焦りまくってる悟空を尻目に俺は16号へと顔を向けた。

 

「なぁ、16号? そっちの研究所は、どうなってる? あの時、反乱を起こした折戸ーー俺と同じ悟空タイプのクローンの躰を持った転生者は、どうなった?」

 

「…どうもしていない。あの反乱は1体の悟空クローンの暴走が原因であると処理された。オリトと言ったか?お前と同じ孫悟空のクローンの男は、今回の反乱の首謀者を止めた功績で21号に取り入っていた。21号も転生者たちがクローンとして、この世界で暴れること自体は止めていない」

 

「…お前が助けたい方の21号もか?」

 

 俺たちの会話を聞いて、悟空が手を挙げて来た。

 

「質問だけんど、その21号ってのは名前からして人造人間なんだろ? でもよ、オメエ達の言ってる21号って2人居るみてえに聞こえんだけんど? アレか? 別の世界からやって来た同一人物って奴か?」

 

「ーーパラレルワールドのことか? いや違う。彼女は二つの人格を持っている。実はーー」

 

 16号が説明を始めようとした、その時だ。

 

 悟空の腰に巻いてる青い帯からアラームのような音と共に声が聞こえて来た。

 

『孫君! クローンのアンタ! 聞こえてる!? 返事して!!』

 

 ブルマの声だと俺が気付くと、悟空は帯から小さな通信機を取り出して掌の上に載せた。

 

「どうした、ブルマ?」

 

『どうしたもこうしたもないのよ! 今すぐ西の都にーーウチに来て!! クリリン君たちのクローンが、本物のクリリン君たちを狙って来てるの!!』

 

「! なんだって?」

 

 目を見開く悟空の声を聴いて、俺も思い出す。

 

 オリジナルに成り代わるのも自由ってけしかけてたが、それに載せられたバカが動いてるのか!?

 

『急いでよ、孫君! フリーザとセルのクローンも居るんだから!!』

 

「…分かった。紅朗! 16号! オラの肩に掴まれ。瞬間移動すっぞ!!」

 

 悟空の指示に従って、俺と16号は彼の肩に手を置く。

 

 漫画の世界だから、登場人物に成り代わるだの。

 

 ちょっと、あのクソガキどもを絞めないといけないようだ…!

 

 悟空に連れられて瞬間移動で消える寸前に、俺は固くそう決心した。 

 

 

 




超サイヤ人の興奮状態と大猿の破壊衝動を合わせたら、それもう何て殺意の波動って感じで説明をさせて頂いてます(≧▽≦)

次回も、お楽しみに( *´艸`)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。