ドラゴンボールFZ 真・超サイヤ人   作:カンナム

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さ、行ってみよう!Σ(゚д゚lll)
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第6話 悟空、転生者って助けなきゃいけないか?

 瞬間移動の先にあったのは。

 

 公園のような石造りのアーチのある中庭。

 

 目の前には、半球体のクリーム色の建物ーーカプセルコーポレーションがある。

 

「…!」

 

 現実で見たカプセルコーポレーションは、やはり何かのテーマパークのようにデカイ。

 

 平時であればじっくりと見学したい気持ちが湧いただろうが、今は家のあちこちから黒い煙が吹き上っている。そんな暇はない。

 

「ぎぃやぁああああ!」

 

 目の前には、蒼い髪の女性が紅い瞳のスキンヘッドの巨漢サイヤ人に襲われている。

 

 逃げようとしているブルマと、襲っているのはナッパのクローン。

 

 人形のような、無表情でクローンナッパが拳を振り上げるのを悟空が一気に距離を詰めて後方から頭に飛び回し蹴りをくらわし、ふっ飛ばす。

 

「! 孫君!! って、16号? 何でアンタまでーー!」

 

 ブルマが悟空を見て表情を明るくする中、悟空は気絶したクローンナッパに目もくれず、カプセルコーポレーションに顔を向ける。 

 

「……何処のどいつだ。こんなフザケた真似しやがって…!」

 

 今までのクローンのような無計画な破壊ではない。明らかに作為的なやり方に悟空の眼が鋭くなっている。

 

「ブルマ、16号の説明は後だ! クリリン達は!?」

 

 怒りを露わに静かに呟く悟空だが、そんな場合じゃないとブルマに問いかける。

 

 そうだ、一刻も早くクリリン達に合流しないと。

 

「クリリン達は、医療用施設の19号館よ! 急いで!」

 

 今回のクローンの動きは、今まで聞いてた無差別なものじゃない。

 

 多分、プレイヤー気取りの連中が動いてるはずだ。

 

「クローンが、組織的に動いている…? まさか、クローンとリンクした者たちが動いているのか」

 

 16号も驚いているようだ。そりゃそうだろ。

 

 相手はレッドリボン軍のような軍隊でもフリーザ軍のようなならず者でもない。別の世界とは言え、一般人なんだからよ。

 

 本来のドラゴンボールでは、守られるべき者たちだ。

 

 それが、地球の戦士達と同じ肉体と力を持っただけで何の抵抗もなく破壊活動に手を染める。

 

 洗脳されてるって言うのなら話は分かるが、奴らのは単なるゲーム感覚。

 

 未来世界で人造人間たちが、一般人を虐殺したような心境に近いんだろう。

 

 ーーいや、アレより質が悪いな。アレは勝手に改造された上に目的を見失った果ての暴走だ。

 

 だが、コイツ等のはーー!

 

「紅朗。オメエ、コイツ等が誰の指示で動いてんのか分かんのか?」

 

「ーー指示っつーか、提案だな。それにノリノリのガキどもが犯人だ」

 

「どういうこった?」

 

 俺たちが会話する中、16号が声を上げた。

 

「! 孫悟空、クリリン達の生体反応を確認した。こっちだ!」

 

「よし!」

 

 走りだそうとする二人に、思わず声を上げた。

 

「待ってくれ! ブルマさんを独りにするのかよ!! 誰か残らないのか!?」

 

「なら、紅朗。オメエが残れ! オラと16号はクリリン達を助けてくる!!」

 

 そう言って悟空と16号は建物の中へ駆けていった。

 

 今のクローンナッパの動きは明らかにブルマを狙っていた。おそらく、転生者たちの中にゲームのストーリーを知っている折戸と同じような奴がいる。

 

 今回の事件解決にブルマが何らかの関わりを持っているのだろう。

 

 俺がやったことのある以前のゲームではサイヤ人絶滅計画のデストロンガスーー。

 

 地球の全ての生命を徐々に毒していって悟空達をも、最終的に死に至らしめる遅効性の毒ガス。これを中和したのもブルマだ。

 

 なら、今回のブルマの役割も悟空達の助けになる。それもクローンの肉体を持ってるアイツ等にとって不利な、何かを。そこまで考えたがブルマは首を横に振っている。

 

「カプセルコーポレーションは文字通り私の庭よ。かくれんぼで、私に敵う奴はいないわ。それに、孫君たちとの付き合いも長いんだから。こんな状況は慣れっこよ! だから、アンタも行きなさい! 孫君たちを助けて!」

 

「で、でもよ!」

 

「うるさいわね! ゴチャゴチャ言ってる暇があったら、走って! クリリン達を頼んだわよ!!」

 

 二ッと力強い笑みを浮かべて笑うブルマに、何も言えない。その瞳には明確な覚悟が現れているような気がする。

 

「私も、クリリン達の身体を動かせるように波動の中和装置を作動させてみる! まだ試作段階だけど、やらないよりはマシのはずよ! クリリン達が目を覚ませば、状況も大分マシになるはずでしょ!」

 

 波動の中和装置ーー、奴らがブルマを狙ったのはコレか!!

 

「…! やっぱり駄目だ。ブルマさんも奴らの狙いなら、戦闘力を持ったヤツが護衛に居ないとーー!」

 

「…ありがとう。でも、危険なのは皆、同じよ。アンタも、気を付けなさいね」

 

 一点の曇りもない笑顔に、思わず見惚れちまう。

 

 クソ、やっぱイイ女だな。気が強いし、物事をハッキリ言うしワガママなタイプだけど、それでもーー。

 

 その時、俺の右手に埋まっていた緑の球が光り出した。

 

「!」

 

 なんだ、と疑問に思う暇もなく目の前に俺と全く同じ見た目の赤い目をした孫悟空のクローンが立っている。

 

「ーーえ。えぇえええ!?」

 

 目を見開く俺とブルマの前でジッと何かを待つように黙って立っているクローン。

 

 ブルマがジッとクローン悟空を見つめると俺と見比べるように交互に視線をやった後、告げた。

 

「ちょっと、アンタ。其処から左に二歩動いてみて」

 

 意味が分からないが、取り敢えず指示に従ってみる。すると俺と全く同じ見た目のクローン悟空はジッと俺を目で追ってきた。

 

 右に動くと同じように右に目を動かせ、首まで向けてくる。

 

 だが戦おうとする意志もない。

 

 なんとなくだが、コイツは俺が荒野で殴り倒して掌に取り込んだアイツだと分かった。

 

「やっぱり。アンタは今、クローンの主になってるんだと思う。鳥の刷り込みみたいなものね。アンタからの指示でコイツは動くはずよ」

 

「……ほんとに?」

 

「モノは試しよ、早く! 此処でコイツに私を守らせれば、アンタも孫君たちと一緒に行けるでしょ!!」

 

 イチかバチか、試してみるか。

 

「よし! 右手を上げろ!」

 

 俺の指示に従う様に、クローンは無表情で右手を上に上げた。

 

「右手は下げていい。お前は俺の言うことを聞くのか? ハイなら頷け、イイエなら首を横に振れ」

 

 この指示に従った時点である意味、言うことを聞いてる訳だが。

 

 クローンはコクリと首を縦に振って頷いた。

 

「! なら、この人をーーブルマさんを守ってくれ! できるか?」

 

 コクリと首を縦に振って頷いた。

 

 よし! 理屈は分からないが、ブルマの言ってることが正しいような気がする。俺とコイツの間に、妙な共有意識というか、感覚がある。

 

 このクローン悟空はブルマを守ってくれる、そんな確信がある。

 

「よし、頼んだ! ブルマさん、俺も悟空達を追いかけます!!」

 

「待って! クリリン達の施設に行くなら、孫君たちと同じ道よりそっちから右に回った方が速いわ。頼んだわよ!!」

 

 悟空達が入っていった入口とは違う方を指さして告げてくるブルマに俺も頷いた。

 

「分かったよ、ありがとう!!」

 

「こっちこそ。頼りになるボディガードをありがとう!!」

 

 互いにそう言い合うと、俺はクローンに目をやり頷いた後、ブルマ達に背を向けて走り出した。

 

 やはり、この身体は半端じゃないーー。あっさりと自動車以上の速度で建物の角を曲がれるし、走り抜けれる。

 

ーーーー

 

 ブルマから近道を教わった俺は、ちょうど一本道で悟空達と合流できた。そこからは16号の案内で、だだっ広いカプセルコーポレーションの通路を走り抜けていく。

 

 同じような通路に部屋、敷地もテーマパーク並のものだから16号の案内が無ければ完全に迷子になるだろう。

 

 ある意味、セキュリティは完璧と言えるかもしれない。

 

 入ったら、半日は出て来れないような敷地だ。

 

「孫悟空、この先の通路の奥にクローン達の反応を感知した。クリリン達の施設に真っ直ぐに向かっているようだ」

 

「やっぱり、狙いは動けねぇクリリン達か。こうしちゃいらんねぇ!!」

 

 気を発していないからクリリン達の下に瞬間移動できない。

 

 地道に走るしかないわけだがーー。

 

 つきあたりを左に曲がったところで大きな19と書かれた建物の扉が目の前にある。

 

「ここだ!」

 

「…ふぅ! なーんとか、間に合ったな」

 

 中に入ると、医療用ベッドに天津飯、ヤムチャ、クリリンが寝かされている。

 

「? 悟空? あわわ、お前、クローン! それに人造人間!!」

 

 白い肌をした幼い少年が悟空を見て安堵し、俺と16号を見てパニックになってる。すると、悟空が鋭く呼びかけた。

 

「詳しく説明してる暇がねぇ。チャオズ、みんなを連れて逃げっぞ!」

 

 そう、ひと息ついてる場合じゃない。

 

 早いとこ、運び出さないとーー。

 

「そうだ、急いでーー悟空?」

 

 俺がクリリン達に駆け寄ろうとするのを悟空が手で止めてる。彼の見る先に顔を向けると同時、建物の壁が轟音と共に爆破された。

 

「…な?」

 

「うわわっ! 天さん、みんな!」

 

 驚く俺やチャオズとは対照的に、悟空は白衣の医療チームの人達を、16号は寝かされていたクリリン達を咄嗟に高速移動で救い出すと、冷静に空いた大穴を見つめている。

 

 その向こうから歩いてきたのは赤い目のクリリン、ヤムチャ、天津飯を従えた灰色の肌をした人型のトカゲ。

 

「フフ、カプセルコーポレーションか。悪くない家だ」

 

 その隣には背の高い独特な頭とセミのような羽根、身体に斑点模様のある端正な顔立ちの怪物がいる。

 

「フリィィィザァ〜よぉ〜。ぁあそこぉにぃ、見えるぅうのぉうはぁあ孫ぉおん悟空ぅううでは、なぃかぁあ?」

 

 これでもか、と独特な抑揚をつけて声を上げる異形はセル完全体のクローン。

 

 これにフリーザのクローンが笑う。

 

「そのようだね、セルさん。軽く捻ってあげましょうか。波動の影響下にある孫悟空など、超サイヤ人程度の力しか出せない。サイヤ人は、皆殺しだ!」

 

 芝居掛かった動きで両手を広げて、恍惚とした表情で構えてるクローンフリーザ。クローンセルも、口の端をこれでもか、と釣り上がらせて笑っている。

 

 他の死んだような目をしたクローン達とは明らかに様子が違う二人に悟空が声を上げた。

 

「……オメエら、他のクローンと違って感情があるみてえだな?」

 

 俺が悟空にアイツらの正体を言おうとするも、他でもない悟空が分かってるとばかりに頷いてきた。

 

「おやおや。貴方にそんな知能やまともな感性があろうとは、驚きですね。ブロリーに突っ込んで返り討ちに遭ってるバカにしては中々の観察力です、ホーホッホッ!」

 

「確かにぃ〜、ぅお驚きぃだぁ〜。孫悟空ぅう。あ、いぃつからぁ。そぉんなぁ、まともなぁー知能を?」

 

 過剰なまでの奴らの演技に、イライラしてきた俺に代わり悟空が淡々と告げた。

 

「ふざけたモノマネやめて、さっさと用件を言え。何のつもりで、此処を襲った? 関係ねぇ人間を巻き込みやがって」

 

 あ、悟空のやつ、静かだけど俺よりキレてる。

 

 あきらかに奴等二人に対して怒ってんな。

 

「悟空、悟空じゃないか!」

 

「消えろ、悟空。ぶっ飛ばされんうちにな」

 

「排球拳、いつでもいいわよー!悟空〜!」

 

 赤い目に白い肌をした3人のクローンが、ニタニタ笑いながらモノマネを披露している。

 

「…オメエら。ふざけんのもいい加減にしとけ。他人の家を壊しといて、オラの仲間やフリーザ達の真似して遊んでんじゃねえ」

 

「ジョークだよ、ジョーク。意外に頭が硬いんだな、クズロットーーあ、ごめん。カカロット」

 

 クローンフリーザの言葉に周りの奴等がバカ笑いしている。

 

 これを16号が静かに見つめた後、俺を見た。

 

「…オメエ達、何を笑ってんだ?」

 

「いやいや、凄いね。さすがクズロットーーあ、ごめん。カカロット。自分の状況を顧みずに挑んで返り討ちに遭ってるバカーーMADどおりだ」

 

 転生者フリーザの言葉に違いない、と笑ってる取り巻きの中、転生者セルが高らかに笑う。

 

「お前の馬鹿さ加減に笑うだろ。何?勝てると思ってんの?波動の影響で力も出せないクズロットが、フルパワーで戦える俺たちに?しかも、この人数に?マジワロスwww」

 

「おwいw、やwめwろwよw そゆの、フラグだろ。漫画ならーーww」

 

 腹を抱えて笑いながら、クローン天津飯が言ってる。コイツらマジで締めねぇと、まともな話も出来そうにねえや。

 

 俺は医者や看護師を庇うチャオズの方に行き、16号がクリリン達3人を抱えてるのを見ながら告げる。

 

「とりあえず、アンタ達は16号と逃げろ。此処にいる奴等、全員殴り倒したら、俺と悟空も合流するから」

 

「……分かった。天さん達をバカにしたアイツら。倒してこい」

 

 俺の顔をジッと見た後、チャオズはコクリと頷いて俺と同じ転生者達を指差した。

 

「おう!」

 

 俺が拳を握って応えるとチャオズは満足そうに16号と出入り口から出て行った。意外にも転生者クローン達は、彼らに手を出さなかった。

 

「悟空。コイツら、俺がやるよ。アンタは下がってくれ」

 

 とりあえず、首を横に倒して筋を伸ばしながら俺は拳を握る。

 

 こんなゴミカスーー、悟空が手を下すまでもない。そういう意味を込めて拳を握る俺だったがーー。

 

「…気ぃ使ってもらって悪りぃんだけどよ。ここは、オラがやる」

 

 淡々とした声。振り返れば瞳が鋭く細まり、甘さのあった顔は厳しい戦士のソレへと変じていた。

 

「オメエ達。今からでも、迷惑かけた人達に謝んなら許してやっぞ?」

 

 穏やかな声で文字どおり諭す口調の悟空をアイツらは嘲笑っている。

 

 ヤバい、悟空より俺がキレそうだ。更にフリーザやセルタイプの転生者が煽る。

 

「は?自分だって変身とか闘う度に街をぶっ壊してる癖に偉そうに説教すか?アンタがワクワクしてる度に、さっきの俺たち以上に多くの人が迷惑してるんですけど〜?謝ってんの見たことないよー?」

 

「怖いねー、戦闘民族サイヤ人は。あ、じゃあ俺たちにも言えんじゃね?どうせ殺されてもドラゴンボールで生き返れるって。な、悟空〜?てか、謝って許されんの?見殺しにしてごめんなさい〜って」

 

 笑いあう二人に、クリリン達の転生者も馬鹿騒ぎして笑ってる。まるで緊張感がない。

 

 これに悟空は苦笑する。

 

「…確かにな。地球に迷惑かけてるオラが言っても説得力ねぇか。けんどよ、今オメエ達がした事は間違いなく悪りいことだぞ?」

 

 悟空の言葉に転生者フリーザは笑う。

 

「悪いこと?当たり前だろ、俺は宇宙の帝王たるフリーザ様だぞ」

 

「すぉーして、ぅ私は〜セルゥだぁ〜」

 

 他の連中はニヤニヤと笑いながら構える。悟空は静かに瞳を閉じた後、怒りの表情に変わった。

 

「どうしようもねぇ、バカなヤツだ。痛い目に遭わなきゃ分かんねぇみてえだな!!」

 

「お、ようやくヤル気? 戦闘民族にしてはトロいね〜」

 

「オラ、無駄な戦いはしたくねぇ。オメエ等じゃ、オラの相手にゃなれねぇ」

 

 瞬間、クリリン、ヤムチャ、天津飯タイプの三人が悟空に襲いかかる。三方向からのラッシュ。

 

「うほー、速い速い! 身体が軽いし、パンチや蹴りが分裂して見えるよ!!」

 

「狼牙風風拳ーー!受けてみろ、あチョー!!」

 

「だだだぁっ! クリリン、ヤムチャ!弾幕薄いぞ、何やってんの!!」

 

 ふざけた連中だが、肉体や技はZ戦士そのもの。パンチや蹴りのキレが半端じゃない。

 

 にも関わらず、悟空はまったく危なげなく紙一重で三方向からのラッシュを躱していく。

 

「悟空ーー、アンタ」

 

 紙一重でラッシュを躱し続けていく悟空に、その意図に俺は何となく気付いた。かなりの手数を放つも当たらない事実に、転生者達の表情が険しくなる。

 

「ちくしょう、やっぱクリリンじゃ弱過ぎて当たらねぇ」

 

「ヤムチャは、所詮ヤムチャかーー」

 

「は?ーー21号のヤツ、悟空の力は波動で弱らせてんじゃねえのかよ?全然ゲームと違うじゃねぇか」

 

 不貞腐れた態度を取り始める連中ーー、ゲームで自分の思い通りに行かなくてイラついてるガキそのもの。

 

 ラチがあかないと思ったか、フリーザとセルの転生者が指先を悟空に向ける。

 

「やれやれ、役立たずですねぇ」

 

「仕方ない〜、所詮はカス共よ〜!」

 

 放たれるのは、貫通力が高く弾速が速い光線ーー。デスビームと呼ばれるフリーザとセルの使う技だ。

 

 悟空が背を向けた瞬間を狙って背後から放つ二人。

 

 すると、悟空は転生者クリリンの拳を右手で押し離し、天津飯の右上段回し蹴りに左の肘打ちを脚の付け根に放って反対に吹き飛ばし、ヤムチャの貫手を左脇に避けて投げる。

 

 ここまで刹那の拍子でやり抜け、デスビームにくるりと向き直ると左右に身体を揺らして見事にすり抜けた。

 

「なんだと?気を開放せずに俺たちの攻撃を躱した?」

 

 目を見開くフリーザとセルの転生者に、起き上がってくるクリリンの転生者達。

 

「まだ、続けっか?」

 

 相手になっていないのは、対峙してる奴等が一番分かるだろう。悟空は、ほとんど攻撃を繰り出さず、転生者の攻撃に合わせるという高度な武術で圧倒している。

 

「〜!! なんだよ、つまんねぇ! やってらんねぇ!!俺は一抜けた! こんなつまんねぇゲームねぇし、クソゲーじゃんかよ!!」

 

 突如、クリリンの転生者が騒ぎ出した。悟空の動きについていけなかったのが、気に入らないか。

 

「まったくだ。波動の中和装置があるから喧嘩売ったのに効き目ないとか、21号マジ無能だな!!」

 

 ヤムチャの転生者が騒ぎ、天津飯はフリーザ達に向かって叫んだ。

 

「もっとちゃんとフォローしろよ、役立たず。レイドクエストのボス相手ならーー!」

 

 瞬間、転生者天津飯の胸を赤い光ーーデスビームが撃ち抜いた。

 

「なーー!?」

 

 赤い瞳を見開いて、天津飯が仰向けに倒れた。あまりにもアッサリと、胸板を撃ち抜いた。あの、フリーザ野郎。

 

「……役立たず?自分の身の程を知れよ、雑魚のくせに」

 

 目を見開く俺をフリーザ野郎はバカにしたように見下ろしてくる。

 

「な、何考えてんだ、テメェ? よりによって、仲間を」

 

「は?仲間?顔も見たことねー、同じ日本人だってだけの赤の他人を仲間?笑かすなよ」

 

 なぁ、と転生者セルに目を向けて転生者フリーザは笑いかける。転生者セルも笑っていた。

 

「当たり前だろ。クエストクリアに役立たずのアバターで参加されても邪魔なだけだ」

 

 折戸も大概だが、こいつ等も大概クソだ。碌なヤツが居ねえのか、転生者の日本人!?

 

 俺が舌打ちしてる横で、悟空が必死の表情で転生者天津飯を抱き上げる。

 

「おい、オメエ! しっかりしろ!!」

 

 胸を貫かれて血を吐き、転生者天津飯は痛みに震えている。

 

「血、血が…、痛い、痛い。し、死にたくない、、、た、助けてーー!」

 

 涙を流している転生者天津飯の姿にフリーザ野郎は笑った。

 

「無様ぁ! ゲームじゃ中々味わえない、不細工で無様な顔だ!? あのヘタレ王子みてぇな顔面崩壊作画!!マジワロス!!」

 

 笑いまくるフリーザの姿をした野郎。ありえねぇ。自分で怪我させてんだぞ?撃ったんだぞ、それを。ありえねえだろ。頭イカれてんじゃねぇか?

 

 し、信じられねぇ…!

 

「大丈夫、急所は外れてる。良かったな、オメエ。本物のフリーザなら、一撃であの世だ」

 

 そう言いながら、悟空は気で転生者の胸に空いた穴を塞いでいく。

 

「…お優しいじゃないか、クズロットのくせに。あ、そうか。そいつを盾にして逃げんのか?たしかに肉の盾くらいしか使い道ないよな、地球人のクローン(アバター)は」

 

 震えているクリリンとヤムチャのクローン(転生者)たちに向かってヤツは言った。

 

「今、孫悟空を攻撃すれば勝てるぞ? 気を分けたことでヤツの戦闘力は下がっただろうからな…! 安心しろ、お前らが役に立たなくても、運が良ければ悟空が助けてくれるさ。自分の気を分け与えて戦闘力を大きく下げながらーー!」

 

 フリーザの姿をした下衆の言葉に頭がーー身体の中の芯が冷えていく。

 

 何もかも、冷えていく。頭は白く、視界は白黒にーー。

 

「紅朗。悪りいが、オメエは我慢してくれーー」

 

 悟空の声に目を向けると、彼の黒い目は怒りに燃えていた。

 

「オメエ達、こっちに来い!」

 

 同時に悟空はクリリンとヤムチャの転生者たちに声を上げる。彼らは狼狽えたようにこちらとフリーザ達を見比べていた。

 

「そっちに居ても利用されるだけだぞ! そんな奴らの為に戦うこたぁねぇ!!」

 

「良いのか? 俺たちに刃向かうと、殺すぞ」

 

 悟空の言葉に上乗せるように転生者フリーザが声を上げる。

 

 ビクっと怯えた顔で見上げる転生者クリリン達。実際に目の前で仲の良い感じで居た天津飯のヤツが殺されかけている。

 

 悟空のことを碌に知らない連中からしたら、命を大事にするのは予測できる。だからーー

 

「分かったよ、フリーザ。お前に付くよ」

 

「…お、おい。でも仮にうまく行かなかったら、俺たちが殺されるんだぞ」

 

「フリーザに歯向かってもクリリンやヤムチャの身体じゃ勝てないだろ。悟空なら、負けても殺されやしないよ」

 

 そう言いながら、こちらに構えてくる転生者クリリンにイラつく。気持ちは、分かる。頭では、理解できる。

 

 だが、イラつく。それは俺がクローン悟空の身体だからだと。

 

 クリリンやヤムチャの身体と違って刃向える力があるからだと、コイツ等はきっと言うのだろう。

 

 転生者クリリンと転生者ヤムチャのコンビは同時に技を繰り出した。

 

「気円斬!!」

 

「繰気弾!!」

 

 クリリンの代名詞とも言うべき薄い気の刃と、ヤムチャの代名詞である硬い気の球。

 

 全てを切り裂く刃と何に当たっても壊れない練度の球。

 

「先に俺から動く。クリリンは気円斬で動きの止まった悟空を狙ってくれ!」

 

「分かってるよ。ヤムチャこそ、繰気弾を当ててくれよ」

 

 言いながら、転生者ヤムチャが気弾を放ってくる。

 

 デスビーム程ではないが速く鋭く、キレのある追尾弾。

 

 悟空は危なげなく紙一重で、それを躱していく。

 

「無駄だ。その技は奇襲に使うもんだ。いきなり撃っても、当たりゃしねえ」

 

 それだけを告げると悟空は、左掌を繰気弾に向けて突き出す。目に見えない気弾が放たれ、繰気弾は爆発した。

 

「今だ、クリリン!」

 

「当たれぇえ!!」

 

 気円斬が放たれるも、目を見開いて気合いを込めて睨み付けただけで刃は爆発し、消え去った。

 

「な、なんだと?」

 

「バカなーー!」

 

 目を見開いて動きを止めた二人の前に悟空は、高速移動で踏み込んでいる。

 

「「!?」」

 

 目にも映らない速度で右拳を二つ。クリリンに腹、ヤムチャに顎をそれぞれ決め、簡単にダウンを奪う。

 

 一撃でうずくまって悟空の足下に倒れる二人。

 

「役立たずめ!!」

 

「まぁ。雑魚アバターなんだから、そんなもんだろ」

 

 指先から小さな紫の気弾を作り出す転生者フリーザ、転生者セルは両手の手首を上下に合わせて腰だめに青い光の球を生み出す。

 

「消え失せろ、孫悟空!!」

 

「さあ、死ぬがいい!!」

 

 デスボールと、かめはめ波。

 

 同時に悟空に向けて放たれている。下手に避ければブルマの家だけではない。都に被害が出る規模の威力だ。

 

「…ま、待って…!?」

 

「た、助けてくれぇえ!!」

 

 悟空は、足下に転がって怯えた顔で絶叫する二人の前に立つと気合いを入れた。今回の闘いではじめて白い気を纏ったのだ。

 

「かめはめーー波ぁああっ!!」

 

 そのまま間髪入れずに両手を組んで前方に突き出し、かめはめ波を放った。

 

 ほとんど気を溜めずに放たれたかめはめ波は、フリーザ達の放った光に大きさで負けている。

 

 3人の中央でぶつかり合う光。フリーザとセルの放つ光を悟空のかめはめ波が押し止めている。

 

「なんだと、黒髪状態で俺たちの技を止めた!?」

 

「どう言うことだ?フリーザとセルの身体なら、黒髪の悟空なんか軽く倒せるはずだろ?超サイヤ人でさえない雑魚なんかに手こずるって、この身体が欠陥品なのかよ」

 

「つまんねぇ。ゲームならゲームらしく、さっさと倒れろよ。孫悟空!!」

 

 更に強大に光が増幅されるも、悟空は涼しげに俺を振り返ってきた。あの目が語っている。ーー足下に転がってる二人を助けてやれ、と。

 

 悟空は、俺とコイツらが同じ世界の人間だって悟ってるようだ。そらそうか、ゲームだの漫画だのと前の世界の知識をひけらかしてるんだ。

 

 俺の傍らには悟空に助けられて傷は残ってないが、未だに痛みの記憶と死の恐怖に震えてる転生者天津飯がいる。

 

「…おい。テメェ」

 

「は、はいっ!」

 

 震え上がる転生者天津飯に、その姿で震えてんなと苛立つがーーそれよりも。

 

「アレは、テメェの仲間だよな?」

 

 悟空の足下に転がってる二人を顎で指して告げると、震えながらも転生者天津飯は頷く。

 

「一人、任せる。もう一人は俺が助けてやるから、ちゃんと連れて来い」

 

「え! な、なんで?? 悟空アバターなら、簡単に二人くらい連れて来れるよなーー!なんで、俺がそんな事しなけりゃいけないんだよ!!」

 

 思わず胸倉を掴んで拳を鼻先に叩きこんだ。

 

「…ぐぁ! ひ、ひでえ。なんで、俺がこんな目に。みんな、みんなやってるのに。俺だけーー!」

 

 鼻先から血が流れるのを見て、泣き始める転生者天津飯に俺の声は知らずと冷たく低くなっていた。

 

「なんでーー俺がテメェ等みたいなカスを助けなきゃならない?」

 

 俺の内側から声が聞こえる。殺しちまえってーー。

 

 こんなやつ等生かしておいて意味はないってーー。

 

 正直、ソレが出来たら苦労しない。吹っ切れて、折戸やフリーザやセルの体を使ってる奴らみたいになれたら。

 

 思考を停止できたら、きっとーー楽だろう。

 

 それでも、俺の目の先には憧れた人がいる。助けてやれと、その人は言ってる。身体で態度で、目で。

 

「テメェの仲間ぐらい、テメェで守れ。誰かに甘えてんじゃねぇよ」

 

「な、なんでだよ。俺は、ただゲームしてたら巻き込まれただけなんだよ。なんで、殺されそうにならなきゃいけないんだ? みんなだって、同じことーー!」

 

「テメェ。もっかい痛い目に遭いたいか?」

 

 自分でも信じられないくらいに冷たい声がした。俺の顔を見る転生者天津飯の顔を見るに、どうやら酷い顔をしているようだ。鬼のようなーー。

 

「痛いって分かったろ?コレはゲームじゃない。現実だ。お前がーーお前等が面白半分で壊した街や建物、傷付けた人は全て本物だ。自覚しろ」

 

 震えながら、転生者天津飯は言い訳をやめない。

 

「だってーー21号の言うとおりにしなけりゃ、元の世界に帰れないんだろ?俺だって被害者じゃないか!!なんで、俺だけ責められるんだよ!!」

 

「…そうか。自分が被害者だから、何しても構わないか」

 

「そうだよ。俺だってやりたくて、やってんじゃない。そうしないと元の世界に帰れないから、やってんだよ。俺は何も悪くない!なんで俺が悪いって言うんだ!!」

 

 居直りながら叫ぶ転生者天津飯に、ふと思う。時間の無駄だーーと。話しても、殴っても無駄なんだ、と。

 

「こんな奴に情けをかける必要なんか、ないだろに」

 

 腹立つし、ムカつくし、助けられて当然みたいな顔してるの見てるとーー。なんだか、心が黒く染まりそうだ。

 

 ああ、それでもーー。それでも。アンタは、孫悟空は言うだろう。あの目で、声で。

 

「…助けてやれ、か。俺だって、そんな強いわけじゃねーんだぜ。悟空よ〜」

 

 頭に浮かんで来たのは、誰にも気取られる事なく助けられる移動技ーー。瞬間移動ーー!

 

 額に人差し指と中指の二本を揃えて当てる。気を感じ、イメージしろ。孫悟空ならば、出来て当たり前だーー。

 

 瞬間、俺の身体は何処に引っ張られるように消え、感覚を取り戻した時には悟空の足下に転がってる転生者クリリン達の目の前に移動していた。

 

「紅朗、サンキューな」

 

「…礼なんか要らねぇよ。さっさと勝って、ブルマ達と合流しようぜ」

 

「ああ!」

 

 転生者クリリン達を捕まえて、転生者天津飯の所へ移動する。それを合図に悟空の目が見開かれた。

 

「…波ぁあああっ!!!」

 

 瞬間、悟空の放っていたかめはめ波が一気に倍以上にでかくなってーー転生者のフリーザとセルの光を、一瞬で吹き飛ばした。

 

「ーーえ!?」

 

「嘘ーー?」

 

 茫然とした表情で棒立ちになる二人の頭上を、強大なかめはめ波が通り過ぎていった。

 

「…アンタは、優しすぎるよ。悟空ーー!」

 

 そんな声を、俺は上げていた。

 




今回の悟空の決まり手は、復活のFで使用したバーストかめはめ波(ゼノバース2 命名)です(´ー`* ))))

次回も、お楽しみに(´ー`* ))))

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