雪に埋もれたゴールドシップを救うために必死になるトレーナーを見守るゴールドシップの話 作:黄金モルモット
原作:ウマ娘プリティーダービー
タグ:オリ主 ウマ娘 ウマ娘プリティーダービー ゴールドシップ トレゴル
降っては降っては ゴルシ積もる
山も野原も わたゴルシかぶり
枯木残らず ゴルシ咲く
雪やゴルシ あられやゴルシ
降っても降っても ゴルシ降りやまぬ
ゴルシは喜び 庭かけまわり
ゴルシはこたつで 丸くなる
早朝からトレセン学園のある府中市周辺へ振り始めた雨は7時前に雪へと変わった。
窓に音を立てるほどに吹雪き、白色に染まる外の世界を想起させる。
野生動物は雪が大好き、そんな話を思い出したトレーナーは実にその通りだと思った。
「トレーナー! 見ろよ、雪だ! 雪! こんなに積もるの久しぶりじゃねえのか!?」
「……そうだな、ゴールドシップ」
今までトレーナーはゴールドシップの事を時折大型犬だと思う瞬間があった。いちいち抱きついてくる所や、顔をやたらと舐めて来る所や、夜に寂しいからと布団に潜り込んで来る所がそっくりだからだ。しかし今トレーナーは確信した。自分の彼女はウマ娘の形をした大型犬だと。そうに違いないと。
この雪でトレーニングは屋内でやるしかなくなり、トレーナーは今日を休みにした。結果として暇を持て余した大型犬がトレーナーという玩具で遊びにやってきたのである。
「んだよ反応わりーなあ、口に雪詰めるぞ」
「雪が降ってるからなんなんだよ」
「あ? オメー雪国出身か? 違うだろ」
「お前こそ雪見るの初めてじゃねえだろ」
「だってよ、雪だぜ! 雪! 雪!」
トレーナーは窓の外に目をやった。光が乱反射して妙に明るい世界に雪がどんどんと積もり、既に三女神像の台座が半分覆われていた。少々降りすぎてはないかと思う程だ。
「ゴルシ……まさか外に出たいのか?」
その遠慮がちな質問にゴールドシップの耳と尾がピクンと跳ねた。そして勢いよくパタパタと尾が揺れる。まさしく大型犬だ。
そしてその度にスカートがめくれて下着が見えるのでトレーナーは溜め息をついた。
「なあ、パンツ見えてるぞ……」
「んだよ、今更パンツくらいで動じるなよ」
「別に動じねえよ、ただ外では気をつけろ」
「なに言ってんだよ、ゴルシちゃんのパンツ見ても良いのはこの世界でオメーだけだぞ」
「出来る事なら俺にも見せるなよ!」
しかし完全に雪遊びに心を奪われたウマ娘に何を言っても無駄だ。暖簾に腕押し、泥地に細杭、猫に小判、ゴルシに説教。
今のゴルシがほしい言葉はただ1つ──。
「……暗くなる前に帰ってくるんだぞ」
「マジで? マジでいいのか!?」
「ああ、風邪ひくなよ」
「よっしゃ! じゃあ行ってくる!」
風のように部屋を飛び出していくゴールドシップ。トレーナーは微笑ましく見送った。
やがて数分後、外から騒がしい2つの声が部屋の中にまで届いた。
『おっしゃああ! 雪じゃああ!』
『ちょっと、離しなさぁぁぁい!』
『オッケー! 離すぜマックちゃん!』
『あ、今じゃありませんのよ──キャー!』
気になってまた窓の外を覗くと、ゴールドシップの友人(又は腐れ縁?)のメジロマックイーンを担いで投げ飛ばしていた。
メジロマックイーンは勢いよく雪へ突き刺さると即座に立ち上がり、ゴールドシップへ怒りの抗議をした。どちらも大きな声だ。
『スッゲ! マックちゃんK点超えだぜ!』
『ぶっ飛ばしますわよ!!!』
その後も外からは雪にダイブしてついた体の跡が残酷な程差が出てるだの、メジロマックイーンが投げた雪玉がゴールドシップの良い所に当たり悶絶するだの、なんとも女学生らしい雪遊びの声が聞こえてくるのだった。
さらにそれからしばらくすると他のウマ娘の声も混じり始め、外は雪が降っているというのに随分と賑やかになった。
日頃の疲れだろうか、トレーナーはそんな楽しげな声を子守唄に眠ってしまった。
→→→→→→→→→
──さん
──ナーさん!
──トレーナーさん!
──起きてくださいましトレーナーさん!
そんな声に起こされて目を覚ますと、自分を起こそうとするメジロマックイーンに激しく体を揺さぶられていた。
「……え、なに?」
「やっと起きましたのね、大変ですわ!」
トレーナーが時計を見ると時刻は17時頃を示していた。窓の外は随分と暗く、静かだ。
「随分と昼寝してしまったな……」
「呑気を言っている場合じゃ無いですわ!」
「え?」
トレーナーが感じる違和感、それはいつも自分に体を密着させてくる大型犬ウマ娘の存在がどこにも見当たらなかった事だ。
「アイツ……まだ帰ってないのか?」
「そうなんですの! 姿が見えませんの!」
「嘘だろ……!?」
トレーナーは急いで校舎を飛び出し先程まで楽しげな声がしていた広場の方へと走る。
不安や焦燥感で胸がいっぱいになった。
「と、トレーナーさん! あれを……!!」
追いかけてきたメジロマックイーンが指差す方に目をやると一気に血管が収縮した。
そこには冷え冷えとした威圧感を放つ巨大な雪の山が鎮座し、照明によって煌々と輝いていた。
雪山は時計台の下にあり、トレーナーの記憶が正しければ明るい時間帯にそんなものは存在しなかったのだ。そして時計台の屋根は不自然なほどに雪が少なかった。
つまりそれは、時計台から雪が滑り落ちて出来た物だという事を意味する。
そこから導き出される最悪のシナリオが脳裏に恋人の無惨な姿を想起させた。
「ゴルシ──っ!」
トレーナーは無我夢中で駆け寄ると、もう氷に近いそれを素手でかき始めた。
「ちくしょう、ちくしょうちくしょう!」
指先の感覚が無くなろうともトレーナーは必死に氷と雪を掘り続けた。その奥底に眠る命が消えないうちに。
「ゴルシ……ゴルシ……ゴールドシップ!」
爪先が割れ鮮血が雪を染めたが痛みなど微塵も感じなかった。そして涙が血を滲ませた。
「頼むから、頼むから返事してくれよ……」
静叫するトレーナーを見つめていたメジロマックイーンは隣に立つウマ娘を見上げた。
「あの、そろそろ行かれてはどうですの?」
「んーもう少し見てようぜ」
「胸が痛くて見ていられませんわ」
スーパーエキセントリックボディウマ娘はその言葉が飛び出た胸をじっと見つめた。
「……なにか?」
「……いいや」
「貴方は心が傷まないんですの?」
「いや、実はこんなに真剣になるとは思わなくて少し引いてる……悪い事したなあ」
「物凄く悪いですわよ!」
「そ、そんなにか?」
「わざと雪を落として山を作ってわたくしも使ってトレーナーさんを呼びつけるなんて、物凄く悪い事ですわ! 悪魔的ですわ!」
「悪魔って……そこまで言う?」
「言いますわ! さあ謝ってらっしゃい!」
ハイパーミラクルボディウマ娘はゆっくり歩を進めると小声で雪山に這いつくばる男を呼んだ。男──トレーナーが恐る恐る振り返るのに冷や汗をかきながら。
「ご……ご、ゴールドシップ? お前……」
ウルトラロマンスキュートボディウマ娘、つまりゴールドシップが半笑いで手を降っている現象をトレーナーは夢だと思った。その後ろで口元を抑えながら優雅に立ち去るメジロ家令嬢も雪山も何もかも全部夢だと思った。
ただ何度目を凝らしてもそれは現実で、それが尚更にトレーナーを困惑させた。
「ほ、本物なのか?」
「うん……まあ、そう! 本物だぜ!」
「あは、あははは、あははははははは!」
「エヘ、エヘヘ、エヘヘへへへへ!」
「やりやがったなお前」
「ゴメン、やりすぎた」
安堵して全身を再び血液が巡った途端に訪れた急激な寒さと痛みにトレーナーは襲われた。そしてそのまま脱力し白い溜め息を吐く。
それに合わせるようにゴールドシップは両肩を上げて万歳するようなポーズをした。
「今度は何をするつもりだ?」
「ほら、オメーの手冷たそうだろ? ゴルシちゃんが温めてやるよ」
「温める? 何をどうやって?」
「腋」
「ワキ?」
「アタシの腋にトレーナーが手を挟む。すると手が温まって良いだろ?」
「お前の腋に手を?」
「そ!」
トレーナーはゴールドシップの腋をしげしげと見つめた。ムワンとジトッとしている腋は柔らかそうで熱そうだ。そこに手を挟む。
「ゴルシちゃんの腋、温かいだろ?」
「まあ、確かに」
しかし場所が場所なので他の部分に触れる度にキャッ♡だのアッ♡だのなんだの言うので非常に面倒だと思った。
しかし面倒に思いつつもゴールドシップの腋から手を離さなかった理由は匂いだ。腋に手を挟めば自然と違いの距離が近くなる。すると髪や首元や胸元や背中からゴールドシップの甘い匂いが漂いトレーナーをくすぐるのだ。
それを知っているゴールドシップはわざとトレーナーにもたれると頬ずりをした。
2人だけの雪世界に影は1つだけだった。
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