カメラが写す景色~キミと視るセカイの在り方~   作:幽美 有明

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桜並木と校舎と女生徒

 春に咲く桜。日本各地で咲く時期が違う桜が、ちょうど満開に咲き誇る日に。入学式を迎えることができるのはどれほどの確率だろう。しかもそれが桜並木のある大きな学校ならばなおさらだ。

 などと御託を並べてみたはいいが、その光景が今目の前にある。玄関の前には入学式の板が立てかけられ在校生は皆返されてしまった。体育館からは微かに音が漏れ聞こえてくる。

 

「風が冷たいな」

 

 冷たいそよ風に吹かれて、桜の葉が擦れあいカサカサと音が鳴る。風に乗った桜の花びらが、空に舞い上がっては墜ちていく。

 桜並木と校舎、その景色を今俺はカメラに写している。

 在校生でありながらも、俺は帰っていない。理由は持ちをン写真を撮るためだった。写真部だからと言うのは方便で、単純に写真を撮りたいからなんだが。

 写真ならいつでも撮れるだろうというのは間違いないが、間違っている。

 誰も人が写りこまない写真を、昼頃に撮るには今日しかない。

 

 昼休みだろうと、誰かが写りこむ。だが今日だけは在校生が全員帰り、人が写りこむ可能性は零に近い。

 

 数枚、アングルを変えて写真を撮っている間に入学式が終わったらしい。玄関から続々と新入生と親が出てきた。

 まぶしい笑顔の人の群れが居なくなることを静かに待った。

 やはり写真を撮るなら人が居ない時が一番綺麗だ。人の姿は風景写真には邪魔過ぎる。

 玄関から出てくる人が減っていき。誰も玄関から出てこなくなったのを確認してから、さらに五分待った。

 もう人はいなくなったと判断し、改めてカメラを持って写真を撮る。

 カメラを顔の前で構え、ファインダーを覗き込んだ。そのには桜並木と校舎が写っているはずだった。

 なのにその中に、女生徒が入っていた。

 

 桜並木と校舎と女性徒が、ファインダーの中に写りこむ。

 

 俺は人が写真に写りこむのが嫌いだ。ただ美しい景色だけを取りたいんだ。だからいつもならこの瞬間すぐに写真を撮ることを辞める。

 

 だが腕が動かなかった。シャッターから指が離れなかった。それどころか、シャッターを切る瞬間を今か今かと、待ち望むように。指に力が入る。ピントが桜から女生徒に移る。

 

 冷たいそよ風がまた吹いた。桜の花びらが木から離れ空に舞っていく。空高くまで舞い上がった桜の花びらが、重力に引っ張られて地面に落ちていく。

 女生徒がひらひらと舞い落ちる花弁を掴もうと、手を空に向かって伸ばした時。

 

『カシャ』

 

 シャッターを切った。

 初めて俺は、人の写った写真をカメラに保存した。

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