カメラが写す景色~キミと視るセカイの在り方~ 作:幽美 有明
「何故俺はあの時、シャッターを切ったんだろうか。しこもこうして現像して眺めてる」
平日の授業が終わり放課後、写真部の部室の椅子に座り俺は独り言をもらしていた。
窓から差し込む日の光を背にして、入学式の日に取った写真を眺めている。
桜並木と校舎と、そして女性徒。
写真に人が写りこむのが嫌な俺が、なぜ写真を撮ったのか。今でもその理由がわからない。
いつもはカメラ片手に風景を撮りに歩き回っているが。今日は部室にいる。理由もなしに部室にいるわけではない。
今日は新入生が入部届を持ってくる日だ。幽霊部員の多い写真部でまともに活動しているのは俺だけ。新入部員も何人か来たが入部届だけを置いてさっさと帰ってしまった。
一応今日は部室にいないといけないから、こうして部室の椅子に座ってるが。暇で仕方がなかったから写真を眺めている。そして一人ごとを呟いているわけだが。
「失礼します」
女生徒の声とともに、部室の扉が開いた。どうせ幽霊部員だろう。
「ん、入部届ならそこの机の上に置いてくれ」
「はい」
入部届を置く場所を伝えて、また写真を眺める。
数分が経っても部室の扉が開く音がしない。女生徒はまだ帰らず部室にいるらしい。
「あのほかに部員はいないんですか?」
「俺以外幽霊部員だよ。君もそうなんだろ帰ってもいいぞ」
どうせ幽霊部員なんだからと、決めつけ帰るように促した。が、
「私ちゃんと写真部に入りたくて来たんです。カメラだってちゃんとあるんですよ」
そんな女生徒の声が聞こえ、写真を机の上に伏せて女生徒の方を見た。
自分の目を疑った。目の前にいる女生徒は、今の今まで眺めていた写真の中に移っていた女性徒の姿だったのだから。
その姿を見間違えるはずがない。なぜ写真に写したのかわからずずっと眺めていたのだから。
「写真部に入部するんだな。幽霊部員じゃなくて」
この女生徒を前にして感じる感情の名は何だろう。初めて写真に残した人。なぜか目を離せない少女。美人と言うわけでもなく、美少女と言うわけでもない。ありふれた普通と表現される少女。
「はい。私写真を撮るのが好きなんです」
「そうか」
少女がカメラを持って入部してきたのは偶然か?
写真を撮るのが好きだからと言う理由は本当なんだろうか?
その全てを俺は知らず、その全てを少女は知っている。
「あの、先輩って呼んでもいいですか?」
「ああ、好きに呼んでくれ。俺も後輩って呼ぶことにする」
「ありがとうございます。先輩って呼ぶのあこがれてて」
「そうか」
何故俺が嫌悪感を抱かず、後輩を写真に写したのか。その理由を俺は知りたい。その過程で感情の名もはっきりするだろうから。