カメラが写す景色~キミと視るセカイの在り方~   作:幽美 有明

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先輩のファインダーを覗く理由

 写真部の活動内容は、二種類ある。

 一つはコンクール用の写真を撮ること。

 二つ目は行事の撮影係だ。

 行事の撮影係なのだから、当然人を撮らないといけない。俺は人を取ることが嫌いだ、だが部活動の一環なのだから写真を撮らないという行動を選べない。なので一眼レフカメラを肩に下げてはいるが、デジカメに持ち替え無心で写真を撮る。

 最初の行事は体育祭だ。今年は、後輩がいるから撮る枚数は少なくて済む。どうせなら一枚も撮りたくはないが。そうもいっていられない。

 校庭で協議を楽しむ生徒の姿をファインダーに収めて。シャッターを切る

 

「皆が笑顔で行事を楽しむ姿を見てると、私まで楽しくなってきます」

 

 隣で写真を撮る涙の言葉の意味が解らない。

 

「後輩、そんなに楽しいか?」

「先輩は楽しくないですか?」

「楽しくない。まだ空を撮ってた方が楽しい」

「そう言えば先輩の写真は風景写真しかないですね。どうしてなんですか?」

「俺は人間ほど醜い存在を知らない」

「写真に写った姿は外面に過ぎない。人の本質である中身が、写真には写らない。どんなに醜い中身の人だろうと、写真を撮ればきれいな外面が写る」

「それに比べて、景色は写真に写る姿が全てだ。醜さも辛さも美しさも。美醜のすべてを映し出す。景色だけは写真の中で真実の姿を見せる。だから俺は風景写真を撮るんだ。ファインダーを覗いている間だけ、人の醜さを忘れられるからな」

「うーん。私はそうは思いませんけど」

「なんでだ?」

 

 後輩の考えを聞けば入学式の日、写真の中に後輩を収めた理由がわかるかもしれない。

 

「先輩の言うように、人は醜い存在だと思います。でも、見てくださいよ。楽しそうに笑ってる姿を」

 

 後輩に言われるがままに、勝って笑っている生徒を見る。

 

「あの勝って笑ってる人はすごく楽しそうです。心の底から笑顔になって声を出して笑ってる」

「ああ」

 

 楽しそうだな。

 

「逆に負けて悔しそうにしてる人は、悲しいんだって見るからにわかります」

「そうだな」

 

 悲しくて顔を歪ませて泣いてる。

 

「あの人たちのようにわかりやすくないこともありますけど。誰しも感情が動いたときに見せる姿は、どれも真実の姿だと思うんです。感情の喜怒哀楽によって見せる姿を変える人間を撮ってて、私は楽しいですよ」

「四季みたいなものか」

 季節によって景色は様々な側面を見せてくれる。

「そうですね、そんな感じです。醜いって先輩は言いますけど、それは先輩が人の醜い部分しか見ようとしてないからなんじゃないですか?」

「そうかもしれないな」

 

 後輩は、そう言って真剣にファインダーを覗き込んだ。

 俺は肩に下げている一眼レフを構える。ファインダーの中には写真を撮ろうとする後輩の後姿。

 後輩がシャッターを切ろうと、指に力を入れるのを見て。同じように力を入れる。

 そして、

『カシャ』

 俺と後輩のシャッター音が重なった。

 結局、入学式にシャッターを切った理由はわからなかった。

 

 

 

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